アマゾン下請け、個人配達員に他人のID使用を指示 労働時間超過で

片田貴也
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 ネット通販大手「アマゾン」の配送を担う神奈川県内の運送会社3社で、個人事業主として契約を結ぶ配達員の労働時間を実際より短く見せかけるため、他人のIDを使って働かせていたことがわかった。過重労働につながりかねないとして、配達員らでつくる労働組合が改善を求め、運送会社側が認めたという。

 組合によると、アマゾンの配送を巡っては、同様の事例の相談が、関東や九州地方の複数の運送会社の配達員から寄せられているという。

 個人事業主の配達員は、企業と業務委託契約を結んで働く。表向きは対等とされるが、雇用されていないため「労働者」として労働法制の保護の対象にならないことが多く、過重労働になりがちだと指摘されてきた。改善に向け、初めての労働組合「アマゾン配達員組合」横須賀支部が6月に結成された。今月には長崎支部もでき、関東地方の複数の地域でも支部を作る動きがあるという。

 組合によると、アマゾン側は、配達員の労働時間をアプリを通じて管理。週の労働時間の上限を60時間とする基準を独自に定めている。ところが、横浜市の運送会社が、60時間を超えた配達員に他人のIDを使うよう指示しているという相談が組合員から寄せられ、元請け会社とその下請け2社に改善を要求。元請けは組合に対し、指示したことを認め、要求以降は運用が止まったという。

 元請け会社は朝日新聞の取材に対して他人IDの使用実態については回答せず、メールで「個別具体的な回答につきましては、差し控えさせて頂いております」と答えた。

 組合はアマゾンにも「使用者」としての責任があるとして、長時間労働の是正や団体交渉などを求めているが、現時点では交渉に応じていないという。

 朝日新聞の取材に対し、アマゾンジャパンは週60時間の稼働時間制限の有無や他人IDが使われている問題については回答せず、メールで「ドライバーはアマゾンの委託先の配送業者のもとで業務を行っており、アマゾンの従業員ではない。ドライバーの雇用・契約、稼働管理、支払いは、委託先が責任をもって行っている。アマゾンの基準などを遵守(じゅんしゅ)していないことが確認された場合は、適切に対処する」と答えた。(片田貴也)

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