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二周目のサイコパス 作者:ニキ

1章:WAKE UP FAFNIR!

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オープニング・エンド

感想欄に正解がいて「ああ読み込んでくれたんだなぁ」と嬉しくなる反面、下手に感想返信出来ないなぁって沈黙せざるを得なかった(´・ω・`)

モチベに繋がるので気にせずドシドシ感想くれよな!

「くぅ……」

「……………………???」


 半ギレでログインして目に入った光景は想像を絶していた。

 かけられている布団に何も備え付けられて無い室内天井、右手のサイドテーブルにはベッドサイドランプが乗せられている。

 ホテルというよりは宿の一室と言うべき空間、そこで何故か目覚めた私を最も困惑させたのは、左手に居る無視出来ない質量と熱量だった。


 コヒメが私の腕に抱き着きながらすやすやと眠っていた。


 ………………


 はぁ?


「……待ってマジで意味が分からない」


 気持ち良さそうに眠っている角の生えた泣き虫少女。

 あれこいつ死んで身代わり札になったよな? んで私が死んでデスドロで消えた筈だよな? なんでいるの君?


「だらしない寝顔晒しやがって」


 布団がズレて彼女を覆う影が半身起こした私に変わり、長い白髪が不規則に乱れて掛かる。

 ふにゃけた顔に何故だか無性に腹が立って、気付けばコヒメの頬をつついていた。

 ぷにぷにした肌に沈む指、むにゅりと歪む顔。

 可愛い。


「じゃねぇよ」

「んぅ……?…………ぁ、ふぉきたんれふかせいさん」


 目を擦り、惚けた声で眠り姫が目を覚ます。

 ゆっくりと絡められていた腕を離された私は困惑の尽きない頭で自由を得て、少し離れてベッドの上に座り直した。

 なんなんだろうこの気分、さながら審判を待つ罪人のようだ。ふざけんな私はこれまで一度も罪犯したことねぇわ。


「んっ、んー…………はぁ、よく寝ましたね」

「……………………あー、うん、どういう状況?」

「お腹が空きました」

「聞いて? いや寧ろ答えられたのかこれ?」

「何を言っているんですか?」


 ぺたんと女の子座りになって、ふにゃっとした顔でそう言うコヒメ。

 数日ぶりに改めて見た彼女は記憶から随分と変わっていた。

 表情からは影のようなものが消えて印象が明るくなり、白い水玉のピンクのパジャマに身を包む彼女の腰からは()()()()()()()()()()()()()()……


「待ってなんで私もパジャマなの?」

「コートがボロボロで汚かったので着替えさせました」

「汚い言うな」


 反射的につっこんでみたものの、そこから会話を続けることが出来ない。

 謎の緊張に縛られる私に対し、コヒメはどこまでもマイペースに覚醒を進行させて。

 感覚が一向に噛み合わない。


 なんなんだろうこれ?


「取り敢えずご飯にしません?」


 そんな言葉に釣られて私達はベッドを後にした。











「完璧に忘れてた」

「……待って、なのにアイツに仕掛けたの?」

「え、うん」

「はぁ〜…………一回殴っていい?」

「え、やだ」


 ついさっき現実で見たような光景を頬杖を着きながら眺めている。

 分かってしまえば簡単で、それは突飛で都合の良い解決なんかじゃない。


("神のいたわり"とかあったなそういや)


 最初の街の教会で貰った二つの加護、その片割れであるデスペナルティを無効化させるバフ。

 もう私すら忘れていたような遥か昔に思える伏線、それが回収された結果として彼女はこうして生きている。


 彼女の語った私が寝ている間の、死んでからの物語は教会から始まった。


 まず、デスペナルティが免除され教会に送られた私のアイテムボックスにあった身代わり札から出てきたコヒメは、近くに居た神父から加護について話を聞いたという。

 そうして自分が生きている理由を知った彼女が次に気にしたのは、過剰刺激で強制ログアウトさせられた私のアバターだった。

 プレイヤーのアバターは正式なログアウト手順を踏まない限りゲーム世界に残り続けるため、実質死体と化した私の処遇に彼女は困り果てたという。


 教会に邪魔物と自分の世話を頼める程図太くは無く、生きるための金も食料も宿も無い彼女が取った選択肢は労働だった。

 どうやら私が使徒を殺して以降追っ手が現れなくなったため、街の外で普通に行動出来る彼女にとって金を稼ぐことは簡単だったらしい。

 近場のモンスターの討伐依頼をギルドで普通に受けた彼女は普通に処理して報酬に換金、後は宿の一室を取ってそこに私をぶち込んで就寝。


 それが初日までの出来事だ。


「……随分と満喫してんね」

「自由とはかくも素晴らしく、如何にあなたに振り回されていたか分かりましたよ」


 相槌代わりにオレンジジュースを啜る、どう反応しろってんだ。

 私が寝ている間のことを、それはもう楽しそうにコヒメは語った。

 あれを食べただの、あれを読んだだの、あれを買ってみただの。

 まるで休日を満喫する女の子のようだ。

 私のごちゃごちゃとした感情なんて知ったこっちゃないとばかりに話す彼女を見て、いつしか私も毒気を抜かれていて。

 遠い過去にいる妹の話に付き合うような既視感に思わず脱力してテーブルに伸びた。


「……あ゛〜……()()()()のが馬鹿みてぇ」


 無意識にぽつりと漏れた言葉。

 どんな意味を吐いたかを理解しないまま目を細め、頬で無機物の温度を知る。


(……コヒメちゃんより結構冷たいなぁ)


 脳死だったんだろう、何故か静かになったコヒメちゃんが気になって。

 目線だけ上げて捉えた彼女は、面食らったような表情をしていた。

 心做しか目がキラキラしていて、あぁやっぱこいつモデルに良いいなぁとか考えながら……


「心配してくれたんですか?」


 爆弾発言を耳にする。


「……………………はえ?」


 待て今私なんつった?


「もしかしてセイさんが中々起きなかったのって私を殺しちゃったと思い込んでたからですか?」

「いや、違いますけど?」

「自己中って自分で言ってて、人の命なんて知ったことじゃないとかカッコつけてたのに、本当は知り合いが死んだだけで逃げちゃうような人だったんですか?」

「違うっつってるよね?」

「顔真っ赤ですよ」

「ねぇ喧嘩売ってる? 喧嘩売ってるよね?」


 分からない。

 自分のことが分からない。

 まるで二つの精神が混ざって溶けていくように、出来上がった価値観に感情が反逆していた。

 エンジンとフレームが合ってないように、何かが致命的にズレ始めていた。

 或いは人でなしが人に戻っていくような、そんな同期の過程なのかもしれない。

 それは良いことなのだろうか。

 これから辿る運命、殺していく不倶戴天を前に、こんな下らないことを気にしてしまうのは、人間のような反応は果たして。

 ただ私には分からない。


「ふふっ……これまでは狂気地味ててまるでわからない人でしたけど、セイさんって──」



 ──彁は後々知ることになるが、タイムリープという学問にはある解明されていない謎があった。

 誰一人として成したことの無い分野であるが故に、その非科学的な空想の記録は無い。


 それは魂の在り処。


 時間を遡り未来の記憶と価値観を得た過去の体は、果たして以前よりあった意識と価値観は、ともすれば魂は何処に行くのだろう?

 ある一定の法則により虫食いになっている未来の記憶と価値観は、最も精神が安定していた時期の彼女を喰らい。

 誤差は積み重なり、齟齬は深まり。


 やがて収束したその果てに、彼女はどんな人格を形成するのだろうか?



「──以外と人間らしいところもあったんですね?」


 言外に馬鹿にされたような気がして。


 感情のざわつきが止まらず、こめかみピキつきながら、何故か無性に恥ずかしい私を尻目に。


 小さな羽をパタパタと揺らしながら、コヒメは満面の笑みでそう言った。

尚絵面は幼女のヒモ

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