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ツタヤ図書館、和歌山市が利益供与か…スタバと蔦屋書店の賃料9割引きのカラクリ

文=日向咲嗣/ジャーナリスト

スタバ&蔦屋書店の賃料が異常に安いカラクリ

 CCC和歌山市に申請していた使用許可は、2020年65日の市民図書館オープン当日に下りていた。その行政財産の使用許可書で、真っ先に目につくのが使用面積である。

 許可物件の“カフェ、書店・物販・文具販売、自動販売機1台”の使用面積は“220.91平方メートル”とされている。

 先の試算を思い出してほしい。1650平米ある市民図書館の1階部分について、少なめに見積もっても800平米程度は賃料の対象になるはず。しかし実際には、その4分の1ほどの200平米ちょっとしか賃料の対象になっていないのだ。

 いったい、なぜそうなっているのか。図面を見てみると、そのカラクリが判明した。

ツタヤ図書館、和歌山市が利益供与か…スタバと蔦屋書店の賃料9割引きのカラクリの画像1

 カフェの専用テーブルやカウンター、書店の棚など店舗が使用する部分のみをピンポイントに対象としていて、床や通路などはすべて“共用部分”として使用料の対象からきれいに外れている。賃料を1円でも安くするためなのか、厳密な線引きがなされていたとしか思えない。

 1階部分は8割以上がカフェと書店スペースに見える。高い位置に祭り上げられた高層書架など、ほんの一部が図書館スペースになっているにすぎない。あとはすべてCCCの店舗なのに、この使用料申請では、それとは真逆に、ほとんどが「共有スペース」の扱いで、賃料の対象となる民業店舗は、ほんの一部だけ。賃料対象部分を意図的に狭くする操作が行われていたことが、誰の目にも明らかだろう。

 賃料が安くなったもうひとつの要因は、使用料単価の値下げだった。使用申請書にあった10カ月で193万円の使用料(年間231万円)を、許可申請面積である220.19平米で割ると、オープン後の実際の単価は、1平米当たり年間約1万円。募集要項の平米あたり年3万円の3分の1になっていることがわかる。

 つまり、使用料の対象とする面積を極限まで狭くしたうえに、単価も当初設定した金額の3分の1に下げることで、月19万円という破格値を実現していることになる。

 平米当たり年1万円という単価を一般の賃貸住宅にあてはめてみると、20平米のワンルームの月額賃が1万6000円になる計算。築50年の風呂なし木造アパートですら、今どき、そんな家賃では借りられない。それが県庁所在地のターミナル駅に新築された超一等地だというのだから、何か特別な政治的パワーでも発動されない限り、これほどまでの激安賃料が適用されることはありえないだろう。

非常識すぎる和歌山ツタヤ図書館の賃料

 では、同社が営するほかのツタヤ図書館ではどうなっているのだろうか。

 和歌山市と同じく、駅前にCCC運営の賑わい創出型の徳山駅前図書館を新築した山口県周南市のケースを調べてみたところ、意外な事実が判明した。

 徳山駅前図書館のカフェ・書店スペースを借りているCCCが周南市に払った2018年度の賃料(行政財産の目的外使用料)は、年間1110万8000円だった。月額に直すと92万5666円であり、和歌山市の月19万円の約5倍である。

ツタヤ図書館、和歌山市が利益供与か…スタバと蔦屋書店の賃料9割引きのカラクリの画像5

 

 人口36万人を擁する県庁所在地・和歌山市よりも、人口14万人の周南市のほうが賃料が5倍も高いのである。

ツタヤ図書館、和歌山市が利益供与か…スタバと蔦屋書店の賃料9割引きのカラクリの画像6

 一体、なぜそんなに差が出るのか。使用許可書に記載された「面積」の部分を見たら、その理由は一目瞭然だった。

ツタヤ図書館、和歌山市が利益供与か…スタバと蔦屋書店の賃料9割引きのカラクリの画像7

 周南市の使用許可の対象面積は、903平米となっており、和歌山市の220平米の4.1倍。つまり、通路も含めて1階の大半のスペースと2階の書店部分が賃料の対象となっていて、和歌山市のような、棚とテーブルのみピンポイントに賃料発生という屋台方式ではない。この点をみただけでも、いかに和歌山市が非常識かがよくわかる。

 平米当たりの単価を計算してみると、年間1万2000円程度と、周南市も和歌山市の1万円とほぼ同水準であることから、この賃料対象の線引きの違いが賃料5倍の差に大きく貢献していることがわかる。

 さらに、周南市の徳山駅前図書館の“目的外使用”が和歌山市と大きく異なる点が、もうひとつ見つかった。

 下の表は、周南市が開示した、徳山駅前図書館における行政財産の使用料に関する57枚の文書の内容を項目別に整理したものだ。

ツタヤ図書館、和歌山市が利益供与か…スタバと蔦屋書店の賃料9割引きのカラクリの画像8

 赤線で囲んだ部分を見ると、同市には新図書館がオープンする2018年4月1日よりも前から、行政財産の使用申請がCCCによって行われていた。

 館内の内装工事が完了した後、商品や什器、機材などを搬入したり、スタッフの研修を行ったりする開業準備は、どんな店舗でも必要である。周南市の徳山駅前図書館では、その準備期間として、オープン前4カ月にわたって、店舗スペースを市から借り受けて賃料を払っていた。その額はトータルで357万円。

 和歌山市はどうかというと、行政財産の使用許可が出たのはオープン当日の2020年6月5日となっており、筆者が以前、和歌山市に請求して出てきた図書館の目的外使用に関する文書には、開業準備期間についての申請はどこにも見当たらない。

 和歌山市では、どの程度、開業までの準備期間を要したのかは不明だが、その間の使用料をCCCは、和歌山市に1円も払っていないのだ。いったい全体、どうなっているのか。

(文=日向咲嗣/ジャーナリスト

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日向咲嗣/ジャーナリスト

1959年、愛媛県生まれ。大学卒業後、新聞社・編集プロダクションを経てフリーに。「転職」「独立」「失業」問題など職業生活全般をテーマに著作多数。2015年から図書館の民間委託問題についてのレポートを始め、その詳細な取材ブロセスはブログ『ほぼ月刊ツタヤ図書館』でも随時発表している。2018年「貧困ジャーナリズム賞」受賞。

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