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松岡久蔵「空気を読んでる場合じゃない」~CAが危ない!ANAの正体(5)

ANA、CAのパジャマ紹介する新事業で炎上…マスコミがANA批判報道を避ける本質的原因

文=松岡久蔵/ジャーナリスト
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メディア側のオヤジジャーナル化が課題発見を遅らせる

 情報提供者によると、ANAの問題に関を持つ記者クラブメディアの女性記者が過酷な労働に苦しむCAに接触したことが数回程度ではあるが、あったという。記者個人の関心や能力もあるだろうが、女性記者の割合が多ければ取材テーマとして取り上げられる可能性は高くなるのはいうまでもない。

 例えば、男の職場である新聞・テレビでの「CAの取り上げ方」というと「合コン」だの「デート」だの、「キラキラした世界で遊んでいる若い女性」というイメージを前提とすることが多く、せいぜい航空会社のCAを扱った施策をヒマネタとして取り扱うくらいだった。それに加え、「どうせ20代で寿退社する」という航空業界の男性幹部同様の思い込みがあるため、「同じ労働者」という認識は生まれづらく、CAの労働環境の話はメディアの男性幹部の琴線に触れない。それが実際にどれだけブラック労働だとしても、である。まさに、オヤジジャーナルの弊害である。

 今回のコロナ禍でCAが他業界への出向を余儀なくされた後も、乗務手当がないことで手取りの給与が著しく下がったことが報じられたのは、少なくとも新聞では随分遅れてからだったと記憶している。

森失言問題で表れたメディアの偽善性

 筆者は2に日本を騒がせた、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の前会長であった森喜朗氏の「失言」問題について「偏向報道の被害者」という観点から擁護した。もちろん森氏の発言は時代錯誤で許されるものではないが、ここでメディアやスポンサー企業の幹部がほぼ男性で占められている現状を指摘し、「森氏に斬りかかれば自分を斬ることになる」と書いたが、今回のANAのCAの労働問題はまさにそれである。

 女性差別だと森氏をその場の勢いで魔女狩りしたのは結構だが、ANAのCAのようなブラック労働問題について、これまでどこのメディアも報じてこなかった点で、そして経営幹部に女性をまったく登用しようとしてこなかった点で、ダブルスタンダードの偽善でしかない。

 日本テレビは4月からCS放送『日テレNEWS24』のキャスターに、ANAグループ社員5人を受け入れている。相変わらずキラキラしたCAの世界がここでも展開されているが、その影で何が起きているかを見極めるのがメディアの本来の役割ではないだろうか。

男女格差ランキングで日本は中国、韓国にも劣る最低ランク

 世界経済フォーラムが06年から調査している「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数(GGGI)」の最新版が3月31日に発表になった。政治、経済、教育、健康の4分野で男女格差がどのくらいあるかを数値化した国別のランキングだが、日本は156カ国中120位と最低ランクで、お隣の中国(107位)、韓国(102位)にも19年から抜かれている。女性国会議員と女性閣僚の少なさが足を引っ張ったようだが、日本の場合、先に見たようにメディアも同様に惨憺たる有様だ。

 今後もメディアが若い女性を使い捨てにするANAの体質を報じない状況が続けば、女性を少しでも社会進出させようという世界的な努力から、日本社会を逆行させていくことに荷担することになる。

 ジャーナリズムには「不報(報じないこと)」という罪があるが、可能な限りこれを犯さないよう努めるべきだろう。

(文=松岡久蔵/ジャーナリスト

ANA、CAのパジャマ紹介する新事業で炎上…マスコミがANA批判報道を避ける本質的原因の画像2●松岡 久蔵(まつおか きゅうぞう)

Kyuzo Matsuoka

ジャーナリスト

記者クラブ問題や防衛、航空、自動など幅広い分野をカバー。特技は相撲じゃらし。現代ビジネスや⽂オンライン、東洋経済オンラインなどにも寄稿している。ツイッターアカウント@kyuzo_matsuoka

ホームページはhttp://kyuzo-matsuoka.com/

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