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エンタメ 2022.08.22

Hey! Say! JUMP編 第9回 山田涼介「同じ夢に向かって歩ける今が、けっこう好きなんだ。」

今年、創刊70周年を迎えるアイドル誌「MYOJO」。それを記念して本誌での好評企画である、10000字ロングインタビュー『僕がJr.だったころ』のテキストをMYOJO公式ホームページにて、8月22日~9月21日まで期間限定公開する。Kis-My-Ft2、A.B.C-Z、Hey! Say! JUMP、中山優馬、ジャニーズWEST、SixTONES 、Snow Man、King & Prince(MYOJO本誌での掲載順)のインタビューを特別に集英社オンラインでも同時公開。キラ星のような珠玉のインタビューたちをどうぞ。

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誰にも言えない悩みを最初に相談した心強い仲間たち、
いつも刺激をくれるムカつくくらいの天才、
ぶっちゃけ「嫌いだった」ライバル……。
同じ夢に向かって歩ける今が、けっこう好きなんだ。

10000字ロングインタビュー『僕がJr.だったころ』
Hey! Say! JUMP編

第9回 山田涼介

やまだ・りょうすけ
1993年5月9日生まれ。東京都出身。B型。身長164cm。
2004年8月12日、ジャニーズ事務所入所。
2007年11月14日、Hey! Say! JUMPとしてCDデビュー。

※このインタビューは、MYOJO2014年8月号に掲載されたものに、加筆・訂正したものです。

2007年、史上まれに見るフレッシュなメンバー編成で
デビューしたHey! Say! JUMP。
少年が大人に成長する多感な時期に、
グループが成長することを両立させるのは、
想像以上に困難なミッションだった。
JUMP編の最終章は、山田涼介が語る絆の物語――。

ひとりでよろこぶより、みんなでよろこびたい

──山田くんにとって、Hey! Say! JUMPって何?

「うーん、もうね、“何?”って聞かれると難しいんですよね。支えだと思うし、器だと思うし……、僕の人生そのものなんで」

──じゃあ、過去のことから聞いていくけど、いちばん古い記憶って?

「1才かな!? 寝転がった親父のおなかの上に乗せてもらって、ほっぺをペチペチってされて。きょうだいで男は俺だけなんで、親父的にはかなりうれしくて、強い男に育てたかったみたい」

──姉と妹がいるんだよね?

「はい。今はすごく仲いいけど、俺を含め血の気が多いきょうだいで、小学生のころとかは、ケンカ三昧(笑)」

──サッカー少年だったんだよね?

「小学校低学年のころ、地元のクラブに入って。学校で仲のいいヤツがキャプテンやってたんです。“今日、ミニゲームがあるから、遊びに来なよ”って軽いノリで誘われて。参加したらおもしろくって」

──それで入部したんだ。

「サッカーって、ボールだったり、スパイクだったり、いろいろお金がかかるじゃないですか。僕んち、裕福じゃなかったんで、やらせてもらえないかもなって思いながら、母親にお願いしたら、“あなたの夢なんでしょ”って言ってくれて」

──Jリーグのチームの、Jr.ユースのセレクションにも合格してるよね?

「こんなこと言っちゃダメなんでしょうけど、受かりたくて受かったわけじゃなくて。そのときも、キャプテンのコに誘われて、チームメイトと4人でセレクションを受けに行ったんです。明らかに俺がいちばんヘタなのに、なぜか俺だけ受かっちゃって」

──すごいね。

「でも、そっからすっげーイジメにあって。地元のサッカークラブではパス回ってこないし、学校でもイジメられるし。まあ何かされたら、やり返してましたけどね(笑)」

──Jr.ユースはどうだった?

「ひとり、大っ嫌いなコがいて。話すようになって、少しずつ仲よくなったんですけどね」

──なんで嫌いだったの?

「すっごくうまいコだったんです。でも、パス回さないし、自分ひとりでやるし。ワガママの塊みたいなヤツで。サッカーって個人競技じゃない、団体競技なわけで。だから、何を大切にするかっていうか。自分が多少うまいから、それを周囲に認めさせるのが大事なのか。チームが試合に勝つのが大事なのか。ひとりでよろこぶのか、みんなでよろこぶのかのちがいっていうか。俺は絶対に、みんなでよろこびたいから」

僕は追加で受かった人間。“おまけみたいでヤだな”

──じゃあ、小5でジャニーズのオーディションを受けた経緯は?

「母親と姉貴が勝手に履歴書を送ってて。僕、芸能界、全然くわしくなかったんですよ。母親がKinKi Kidsが好きだったんで、KinKiのコンサートには行ったことあったんですけど」

──コンサート、どうだった?

「カッコよかったですね。そのときちょうど、薮(宏太)くんや(八乙女)光くんが出てて。“あんなちっちゃいコもがんばってんだ。すごいな”って」

──そしたら、知らないうちに履歴書が送られていたんだ。

「突然、“今日、オーディションだから”って言われて。“え!?”って」

──行きたくなかった?

「行きたくなかったですね。だって恥ずかしいし。でも、ワールドカップ限定ピンバッジを買ってあげるって言われて、つられました(笑)」

──参加者3千人。薮くん、光くんが出演していた『Ya-Ya-yah』の公開オーディションだったんだよね。

「そうですね。何回も何回も審査があって。僕、どっかで1回、消えた時期があって。“ダメだったのかな”って思ってたら、その後、復活して」

──そして、見事に合格した。

「でも、僕は追加で受かった人間だったんで。“なんか、おまけみたいでヤだな”って思ってましたね」

誰かの夢を背負うのも悪くないな

──Jr.時代のレッスン、大変だったんじゃない?

「大勢いる中で、僕はいちばん後ろの端っこで。レッスン場、鏡ばりなんですけど、後ろすぎて自分の姿が鏡に映んなくて。もう何も見えない。自分が踊れてるのかどうかもわかんない。そんなこと、ポロッと言ったのかな。親が大きな鏡を買ってくれて。家でよくダンスの練習してました。踊ってる姿を家族に見られると、“あっち行って!”とか言って。なつかしーなー」

──なかなか評価されない日々が続いたよね。

「マイクを持つまで2年かかりましたからね。同期が先にマイクを持つようになって、その後ろで踊るわけで。悔しかったです。マイクを持つ人はスポットライトで照らされるけど、僕は照らされない。わずかな距離なんですけど、永遠に届かない距離に思えて」

──悔しかったね。

「ぶっちゃけ、2年でやっとって思ってたけど、まわりが早かっただけで、もっと苦労してるヤツもいっぱいいる。なんとも言えないんですけどね。でも、俺にとっては、すげー長かった、この2年は。すげー」

──あきらめそうにならなかった?

「何度も。なんか、“実力だけじゃねーな”って思っちゃってた時期もあって。社長や誰かの目に留まる運も必要なんだなって」

──難しい部分だよね。

「俺、社長に“あなたより、あのコのほうがいいよね”って言われたことありましたからね。“終わったな、俺”って思いましたもん(笑)」

──そんな逆境すら力に変えられたのは?

「嫌いだよって言われても、逆に俺は火がつくっていうか。“そんなこと言っても、気になる存在になっちゃうかもよ”みたいな。ま、見といてよって。張りきりすぎて失敗しちゃうこと、何度もあったけど」

──ホント、負けず嫌いだね。

「うん。あとは、親が悲しむのがイヤだったのかもしれない。俺のつらそうな姿を見て、“やめていいよ”って言ってたんですけど、内心は絶対続けてほしいんだろうなって思ったし。“誰かの夢を背負うのも悪くないな”って。鏡を買ってくれたことだけじゃない。送り迎えから何から、家族がこんなに応援してくれるんだったら、俺、行けるとこまで行ってみようって」

──そのころの夢って何だった?

「デビュー!! グループを組んでデビューすること。だから、今はまだレッスン場の鏡にすら映らない存在だけど、夢のために、目の前の人垣を、少しずつでいいから、かき分けて前へ進んでいこうって」

限界を感じちゃって。裕翔の壁は越えられない

──そのころ、中島(裕翔)くんって、どんな存在だったの?

「カリスマっていうか、Jr.の中で“裕翔は誰も越えられない”って空気があって。でも、俺だけは越えてやろうって思ってたんだよね。密かに(笑)」

──なるほど。

「でも、俺も限界を感じちゃって。裕翔の壁は越えられないって。やめようかなって思ったことも何度もあって。毎日毎日、怒鳴られて、俺の中では裕翔が振りをまちがったと思う瞬間でも、怒られるのは俺だったり。だけど、“今のは……”って言った瞬間、ポジションがひとつ端にずらされる。だから、“すみません”って言うしかなくて。情けなかったな。言いたいことあるのに、保身のために言えないってダサくないですか? 言い返せない男って。屈してる自分が許せなくて」

──タッキー&翼のコンサートに、中島くんの代役で出たこともあったよね。

「うん。裕翔の代役だけど、センターに立つわけじゃなくて、同期のいちばん端。悔しさもあったけど、絶対にチャンスだって。コンサートの2日前に代役が決まって、24曲分の振りつけを覚えなきゃいけない。Jr.の先輩にお願いして、教えてもらって」

──大変だったね。

「でも、必ず誰か見ていてくれるんだなって。『滝沢演舞城』で出番を待ってるときなんですけど、突然、大倉(忠義)くんに。“キミ、山田くんやろ? 踊りうまいなあ”って声をかけてもらって。“えっ!? こんな下っ端の、しかも端っこで踊ってる俺の名前を覚えててくれてるの?”って、すごくうれしかった。そのくらいから、いろんな先輩に声をかけてもらうことが多くなって。一生懸命だったこと、いつかは誰かに届くんだなって」

──そうだね。

「舞台『One!』のときも急遽、裕翔の代役を任されたんですけど、滝沢(秀明)くんが僕を指名してくれたと思ってるんですよね。言われたわけじゃないですけど。それまでの僕を見ていてくれて選んでくれたんじゃないかなって。だから、滝沢くんにも、すごく感謝してて」

──どれくらい急だったの?

「1日2公演あって、その本番と本番の間(笑)。数時間で、振りつけとセリフを全部覚えたんですよ。どうにか乗りきったら、社長が客席からすっげー走って来てくれて、“やばいよ、YOU!!”ってほめてくれて」

──その年は、ドラマ『探偵学園Q』にも出たよね。

「誰かのコンサートの合間に呼ばれて、面接みたいなことして。“何だったんだ?”って思ってたら、それがオーディションだったらしくて。最近聞いたんですけど、天草流役は裕翔で決まりかけてたらしいんですよ。誰かが僕の名前を出してくれたらしくて、じゃあ、会ってみようってなったらしくて」

──Jr.内で、少しずつポジションが上がっていったこと、うれしかったんじゃない?

「でも、足りない。まだ足りないって気持ちのほうが強くて。満足はしたことないんですよ、1回も。『青春アミーゴ』のバックのとき、裕翔とシンメになって。それくらいから、歌番組で手越(祐也)くんのバックに、ふたりでついたりもして。裕翔が赤で、俺が青の衣装。そのとき、“やっと追いついた”って初めて思ったんですよね。そのへんから、裕翔のことチョー意識するようになって。並んだだけじゃ満足できない。突き抜けたいくらい思って」

──そんなこと思ってたんだ。

「でも、なんか、言い方は難しいんですけど、楽しかったんですよね」

──楽しかった?

「明らかに自分より強いライバルがいて、そこを目指してる感覚が。刺激してくれる人がいるから、俺も強くなれるじゃないですけど」

思い描いてたグループって、こういうことじゃない

──2007年、Hey! Say! 7 が結成されたときはどう思った?

「うれしかったです。家族も、すごくよろこんでくれて」

──『探偵学園Q』が連ドラになったり、忙しかったでしょ?

「ここ、やばかったですね」

──じゃあ、Hey! Say! JUMPが結成されたときは?

「横浜アリーナでJr.のライブやってて。密かに集められ、聞いたことのない曲を練習して。“これ、なんなんだろう?”って思ったんです。カンがいいメンバーは、そこで気づいたんですよね。俺は、すごいカンが悪いんで気づかなくて(笑)。そしたら社長に呼ばれて、“君たちデビューだよ”って。ホワイトボードに、Hey! Say! JUMPって書いてあったんです」

──夢がかなった瞬間、何を思った?

「ドッキリだろ(笑)。“ウソだあ”って。あんだけの人数の中から、なんで俺が選ばれたんだろうって。あの瞬間は、うれしかったけど、戸惑いましたね。だって、KinKiのコンサートを見に行ったときに出てた、薮くんと光くんもいたんだよ。そのふたりといっしょ。“ホントこれ!?”って思いましたね」

──セカンドシングル『Dreams come true』では、髙木(雄也)くんとふたりでセンターになったよね。

「“センター”って言われた瞬間、何が起こったか全然わかんなくて。“いつか裕翔を越えたい”って思いながら、どっかで越せるわけないって思ってたから。雄也は『ごくせん』で、いい感じにグッてなってたから、今回だけ、このふたりがセンターなんだろうなって自分を納得させて。でも、それからもセンターで定着して。そこから、俺と裕翔の関係は崩れまくりですよね。もう、わけわかんなくて。想像もしなかったことが起こったんで、どう接していいか全然わかんなくて」

──JUMPのコンサートでも、最初のころは、かなり声援の大きさに差があったと思うんだけど。

「歓声が大きいのはうれしかったです。素直に。でも、正直メンバーへの気まずさもあって。違和感を感じたっていうか。“あれ!? なんで、なんで、なんで?”って。その声援、やめてって、一瞬思っちゃったんですよね。なんか、目が覚めたっていうか」

──どういうこと?

「僕は、こうなることを目指してきたと思ってたのに、実際なってみたらちがうって。僕が思い描いてたグループって、こういうことじゃないって」

──それって、小学生のときのサッカーチームで思ったような感覚?

「似てるかもしれない。俺がグループを組みたかったのって、メンバーみんなで同じ目標に向かって、同じ歩幅で、同じテンションで歩いていきたかったからなんだって。ひとりでよろこびたいんじゃない。みんなでよろこびたいからグループになりたかったんだって」

誰かができたなら、俺にもできる

──2008年には、ドラマだけでも4本出演してるよね。

「そんなに出てました?」

──ほかのメンバー以上に忙しくて、どこか孤独を感じたりしなかった?

「ありますよ。それに浸りはしなかったけど。“なんで、俺だけなんだよ”って。でも、今ならわかるけど、ほかのメンバーは、“なんで、アイツだけ!”って思ってたんだろうなって。たぶん、それをいちばん感じてたのは、裕翔だろうね」

──多忙を極めながら、翌年は高校に入学。どんな高校生活だったの?

「楽しくやってました。でも、やっぱ仕事の重圧っていうか、精神的に不安定だったときもあって。2年のときの担任が、僕が不安定なときは一瞬で見抜く人で。国語の先生だったんですけど、授業中でも“ちょっと来なさい”って、クラスは自習にして、僕を図書館に連れ出してくれて。いろいろ話を聞いてくれたりしましたね。“これも授業だから”って」

──『SUMMARY 2011』では、JUMPが座長を務めたよね。

「初日が終わって、“ありがとうございました”ってあいさつをした瞬間、首が上がんなくなっちゃって。そのまま病院に行ったら、“入院しましょう”って言われて。肉体的にも精神的にも、負担がかかってたらしくて。あいさつをしたとき、一瞬気がゆるんじゃったんでしょうね。俺、プロじゃないなって。でも、JUMPが座長だし、先輩たちだって、どんなことがあっても乗り越えてきてる。翌日から、裏でトレーナーさんに常についてもらって、氷で冷やしながら乗りきって」

──なぜ、そこまでできるの?

「僕たちの舞台を、楽しみにしてくれている人たちがいるから」

──それが支え?

「はい。思うんですよね。大事なのは才能じゃない。気持ちだって。できる、できないって誰が決めるのかっていうか。もし、僕らががんばることで誰かがよろこんでくれるなら、もしも誰かのためになってるなら、そんな素敵なことってないじゃないですか。限界? 才能? そんな言葉じゃ片づけられない。だって、楽しみにしてくれている人たちがいるんだもん。そう思ったら、できるか、できないかより、まずやってみることが大事だって思うんだよね。やる前にあきらめる、ダサいヤツにはなりたくない」

──なるほど。

「『金田一少年の事件簿』のとき、改めて思って。スケジュールがすごくタイトな中、セリフもすごく長くて。29ページを一気読みとか。“大変だね。歴代でもいちばん長いセリフだよ”って、ずっと『金田一』に携わってるスタッフさんに言われたんです」

──『金田一』は、セリフが長いことで有名だよね。

「うん。でも、その人が、“だけど、みんなやってきてんだよね”ってボソッと言ったんですよ。そのひと言が僕に火をつけて。“誰かができたなら、俺も練習すればできる”って。それこそ、知念(侑李)に空中ブランコができるんだったら、俺も練習したらできるみたいな。たぶん、できないけど(笑)。でも、できるか、できないか、そんなことじゃない。やってダメなら、ダメな原因を見つけて、改善して、もう1回挑戦すればいい。何回だって、できるまで挑戦すればいい」

──その考え方、素晴らしいと思う。

「自信家ってことじゃないですよ(笑)。俺、別に特別な才能を持って生まれたわけじゃないし、身長だったり、丸顔だったり、コンプレックスだっていくらでもある。でも、誰かができたことなら、時間はかかるかもしれないけど、きっと自分にもできるって思う」

──そう信じられるって強いね。

「うーん、これはあんまり言いたくなかったんですけど、俺、無菌室に入らなくちゃいけないような大病を患ったコから、“JUMPや山田くんから元気をもらってます”って手紙をいただいたことがあって。心配してたんですけど、後日、またそのコから手紙が来て。“退院しました”って。もう、すっごく驚いて。そういうのって、目には見えない。だけど、俺が、俺たちが、どこかの誰かに元気や何かを与えられるんだとしたら、挑戦もしないであきらめるなんてできない」

僕の中で何かが弾けちゃったんです

──デビュー直後、グループのあり方に違和感を覚えたって言ってたよね?

「今は、まったくないですけどね」

──そう思えるようになったのは、いつから?

「けっこう最近なんですけど、『ジャニーズ・ワールド』は大きかったです」

──何があったの?

「リハーサルと同時に、『金田一』の収録もやってて。主題歌はJUMPって話もあって、みんな、すごく楽しみにしてて。『金田一』って歴史のある作品で、きっと主題歌も注目される。俺は、『ジャニーズ・ワールド』がJUMPの勝負の舞台だとも思ってたし、“俺たちに波が来てる”って、みんなで話してて。“やったな。今だぞ!”って。それが……」

──ひとりで歌うことになった。

「『ジャニーズ・ワールド』の練習中、俺だけ呼ばれて。“主題歌、今回はひとりでやってもらう”って言われて。俺、目の前が真っ暗になっちゃって、言葉が出てこなくて。でも、もう時間的に変更できない。それに今、ほかのメンバーを楽屋に集めて、そのことを伝えてるからって」

──メンバーもショックだったろうね。

「それが、俺がリハーサルに戻ったら、明るく振る舞ってくれたんです。俺がまだ、ひとりで歌うって決まったこと知らないと思ったらしくて。みんなが、どんだけ主題歌を歌えることを楽しみにしてたか、俺は知ってる。なのに、俺にやさしく接してくれる姿が、つらくて。メンバーの顔見てたら、僕の中で何かが弾けちゃったんですよね。もうムリだって。危うくても、慎重に慎重に積み上げてきた何かが、一気に壊れたっていうか。ジェンガの絶対に抜いちゃいけない一本が抜けちゃったっていうか」

──何かが切れちゃったんだ。

「プライベートでも、いろいろあったタイミングとも重なってたんですけど、何を感じたらいいか、何を優先したらいいのか、もう何もかもがわかんなくなっちゃって。マネージャーさんに会いに行ったんです。“今、入ってるスケジュールが終わったら、辞めさせてください。僕にはもうムリです”って」

──この世界から去ろうと思ったんだ。

「はい」

──でも、“突き抜けたい”って望んでもいたよね。ソロは、そのための近道になるとは思えなかった?

「ヤだよ、置いてくようなことすんの! 大好きなんだもん。みんなのこと。俺は、どんな大変なことだって、つらいことだって、すべてはJUMPのためになるんだって信じてたから、ここまでやってこれたわけで。でも、がんばればがんばるほど、結果的にみんなを傷つけてしまう……」

──だから、やめようと。

「メンバーには言えませんでしたけどね。ソロデビューのことについては、雄也と大ちゃん(有岡大貴)にだけ、最初に相談して。そしたら、“これをきっかけに、でっかい風穴開けてくれ。いい風、吹き込んでくれ!”って。JUMPでグループメールやってて、俺、“今回はごめん。ひとりでやってみる”ってメールして。そしたらみんな、“気持ちは、わかってるから。がんばれ!”って。しかも、いちばん早く返信してくれたのが、裕翔で。なんか“あれ?”って思ったんですよね。裕翔がいちばん悔しいはずなのに、俺なんかより、大人になってるって。なんか、恥ずかしくなっちゃって」

──やめること、踏み留まれたんだ。

「やっぱ裏切れないよ。デビューしたとき、全員で約束したこと思い出して。“みんなででっかい花火打ち上げようぜ!”って。まだ、花火打ち上げてない。一瞬でも、みんなを裏切ろうとしたこと、バカなこと考えたなって。一生つき合ってく仲間なのに。そもそも俺、ここなくなったら、何も残らない。行くとこねーし(笑)」

ずっと、みんなで支え合ってきたから

──「Hey! Say! JUMPが人生そのもの」ってそういうことなんだ。

「ずっと、みんなで支え合ってきたから。ホント、最初から。(岡本)圭人はキャリアがないから最初、何もできなかった。今よりもっと泣いてたし(笑)。結成直後、圭人がいないとこで、みんなで話し合ったことがあって。“アイツがこれから努力して、いつか俺たちに追いつくことを信じて、今は俺たちがアイツに合わそう”って。圭人は人一倍努力したし、今もがんばり続けてる。ギターがあって、英語もあって、ちゃんと武器もある。本人は、今も“俺なんかまだ”って思ってるだろうけど。そこがいい意味で、圭人の良さだと思ってて。完璧に全部をこなしたら、圭人じゃなくなっちゃう(笑)。求め続けるのが、圭人だと思う」

──なるほど。

「それに、俺がソロのとき、大ちゃんと雄也に最初に相談したけど、ふたりは本当に、グループのこと、みんなのこと考えてくれてる。絶対に欠かせない存在。知念の存在も大きい。天才なんていないと思ってたけど、いたよ(笑)。ムカついたのが、俺が綱渡りすげー練習してたのに、あいつ一発で渡っちゃって。しかも、“僕、できたよ”みたいな涼しい顔でメンバーを見るんだよね。その表情見たら、俺やメンバーがカチンとくるのをわかってて。“おまえができんなら、俺だってできる”って思うようなメンバーばっかだから、知念の存在が本当にいい刺激をグループに与えてくれてる。知念は、そこまで考えて、あえて、“僕、できたよ”って顔すんだよね(笑)」

──ハハハハハ。

「八乙女くん、薮くん、俺は何回もぶつかった。特に薮くんとは。意見が合わなくて、ケンカ別れみたいになったこともあって。でも次の日、“おはよー”って自然に肩を組んできて、“昨日、ああ言ったけど、おまえの気持ちわかったから。だけど、俺みたいな考え方もあるってこともわかってよ”って。細かい部分では意見がちがっても、目指すとこはいっしょなんだなって。いちばん、俯瞰でJUMPが見えてる、この人がいるからバランスが取れてんだなって」

──そうだね。

「ちゃらんぽらんで、勘ちがいされてることも多いけど、伊野尾(慧)ちゃんも、すっごいJUMPのこと大事にしてる。1年半前くらいかな、これからのJUMPをどうしていくかって、自分たちの未来を決めるような大事な話し合いをして。重い話だったから、終わったら、みんな張りつめた顔して各々の部屋に戻って。そしたら俺の部屋にピンポーンって伊野尾ちゃんが来たんです。いきなり俺に頭を下げて、“ありがとう、山田”って。“さっきみたいな話し合い、おまえ発信じゃなかったらできなかった。おまえがいるから、JUMPは、今こういう形で活動できてる。ありがとな”って。後輩の俺に、そんなこと面と向かって言えるってカッコいいなって。芯の通った、本当に温かい人」

──メンバーのこと、本当に好きなんだね。

「うん。けっこー好き(笑)」

ぶっちゃけ、おまえのこと嫌いだった

──中島くんとの関係も聞いていい?

「もちろん」

──ずっと“裕翔くん”って呼んでたのが、いつからか“裕翔”って呼ぶようになったよね。

「ゆうてぃーとかね(笑)。知念が去年の11月でハタチになって、セブンが全員ハタチになったんです。お祝いに4人でメシに行って。これ、初めて話すんですけど、そのとき、まだ裕翔とは少し壁があったから、“今日は、本音で思ってること話そうよ”って切り出して。“じゃ、俺からいくわ”って」

──なんて言ったの?

「裕翔に、“ぶっちゃけ、おまえのこと嫌いだった”って。知念も圭人も気づいてたから、“突然、何ぶっ込んでんだ!”って、爆弾発言すぎて、ふたりとも笑っちゃって(笑)」

──中島くんは、なんて?

「“わかってたよ。それに、俺も嫌いだった”って。“でも、こういうこと話せてるって、おたがい成長したってことだよね”って。だから、“もう、そういうのやめにしようぜ”“わかった”って。そっから本音でみんなで話し合って。“これからは、もうBESTに頼るだけじゃなくて、自分たちの力でもJUMPを引っ張ってこうよ”って。そっから、ちょいちょい裕翔を家に呼んだり、ふたりでメシ食いに行ったりしてる。あの時間は、すげー大切だった」

──よかったね。

「うん。俺にとってメンバーは、いて当たり前だし、いなきゃダメだし。これからもJUMPは、俺にとって支えだし、器だと思う。その器に、みんなのエキスを、たくさん注ぎ込んでいきたいなって思う」

──JUMPは、これからどうなっていくんだろうね?

「とにかく、上、上、上。まだゴールなんて見えちゃダメだと思う。とにかく、全員で上を目指す。今、本当に全員が同じ歩幅で歩き出してるから」

──いろいろ話してくれて、ありがとね。最後に何か言い忘れたこと、ある?

「話しすぎちゃったくらいなんで、ないです(笑)。でも、これからだから、JUMPは。やっと一歩目を踏み出せたんです。同じ歩幅で、同じ夢に向かって、全員で同じ一歩を踏み出せたから。俺も、メンバーも、ここからだぞって思ってます。だから、“こっからのJUMPを見といてくださいね”って、書いておいてください」

取材・文/水野光博

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両さんVSゴキブリ抗争史 その1

秋本治
週刊少年ジャンプ編集部他
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