〝永遠の若大将〟の異名を持つ、歌手で俳優の加山雄三さん(85)が先日、ホールコンサートとしては最後の公演を東京で開いた▼俳優デビューした翌年の1961年に歌手活動を開始。2019年に脳梗塞を発症、20年に軽度の小脳出血を起こし活動を休止したが、そのたびに復帰してきた。ただ健康に不安があったのだろう。「まだ歌えるうちにやめたい」と今年6月、コンサート活動からの引退を発表。12月の船上ライブが実質的な最後になるが、ホール公演は今回がラストとなった▼往年のヒット曲など20曲以上を歌い、アンコールでは代表曲『君といつまでも』を披露。間奏でおなじみのセリフ<幸せだなぁ>も飛び出し、満員の客席を沸かせた。本当に「幸せ」な歌手人生だっただろう▼2度にわたり、がんで闘病していたシンガー・ソングライターの吉田拓郎さん(76)も、年内をもって音楽活動の一線を退く。6月末に発表したラストアルバムのタイトルは『ah-面白かった』。「やりたいことは全てやり尽くした」という達成感と潔さが伝わってくる▼サラリーマンと違い、芸能界に「定年」はない。とはいえ人気商売だけに浮き沈みは激しい。そんな荒波の中で病気と闘いつつ、やりたいことをやり尽くし、大勢のファンに惜しまれながらマイクを置く〝若大将〟と〝フォークのカリスマ〟。余力を残してのリタイアがまぶしく見える。(健)