岩手で活躍する朝ドラヒロイン
そんな不思議ちゃんっぽさでブレイクし、また、失速したのがのん(元・能年玲奈)だ。
2013年前期のNHK朝ドラ「あまちゃん」でヒロインを演じた彼女は、翌年、傾倒する女流演出家とともに個人事務所を設立。人見知りだが、のめり込みやすい性格がもたらした無謀な独立だった。
この結果、それまで所属していた大手事務所・レプロエンタテインメントとトラブルに。本名でもある芸名の使用を差し止められ、改名したものの、メジャーな仕事からは干された状態が続いている。
それだけでも十分に義経的悲劇だが、共通点はまだある。義経が奥州平泉、今でいう岩手で育ち、頼朝に追われてからも平泉に落ちのびたように、のんもそうなのだ。
「あまちゃん」は岩手が舞台で、ヒロインも岩手で活躍する設定なので、彼女は岩手での人気が高い。「のん」として再出発する際には、達増拓也知事を表敬訪問した。
これが奏功したようで、JA全農いわてや岩手銀行のCMキャラクターに起用されたり、地域起こしイベントに呼ばれたりしている。いわば、知事や県民が藤原秀衡のような庇護者になっているおかげで、兵庫生まれの彼女が岩手ではまだそこそこ売れっ子状態なのである。
これには、岩手の土地柄も関係しているのだろう。平泉では今年5月、3年ぶりの開催となった春の藤原まつりの義経役を伊藤健太郎が務めた。一昨年にも彼が呼ばれる予定だったが、コロナ禍でまつりが中止。その後、伊藤が不祥事を起こしたため、次は他の芸能人が起用されるのではとも見られていた。
しかし、観光協会は、
「久々となるまつりと一緒に再起してほしい。平泉としても奥州藤原氏以来の心意気を示したかった」
と、コメント。まさに、判官びいきを貫いたのである。
その結果、伊藤は史上第2位となる24万人もの観衆を集めた。なお、1位は滝沢秀明が登場した2005年の25万人だ。
そんな滝沢は、引退してジャニーズの幹部になった。NHK大河ドラマ「義経」で主人公を演じただけに、権力者側にいるのはいまひとつそぐわない印象でもある。