ハリポタGO……だと……?
前門の校長、後門の毒親。
まさに狂育機関となっているホグワーツ。
更に魔法大臣の犬となって強襲する元父親。
果たして、クラウチ・ジュニアは親父、校長、眼鏡を乗り越え、闇のお辞儀王を復活させることができるのか。
と言うわけで授業になりました。
ジュニアは早急にマッドアイごっこを始めてください。
「教科書はいらん! 油断大敵に閉じろ!!」
本人はなかなかのクオリティだと自己満足した。
「なんだこいつ」
「油なら足りてんぞ」
「油断大敵の使い方間違ってんだろ」
「ころすぞ」
「ひぇ」
「閉じます」
「光の速さで教科書をしまいます」
生徒たちは例年と大して変わらないようだった。
「お前らの情報をみたが、どうやら闇の生物()と戦ってきたらしいが勉強の進行速度はクソ遅れてるぞ!というか遅れているぞ油断大敵に!!」
確かに、前任者が後頭部闇の帝王だったり、ロックハート先生だったり人狼だったせいか、進度は遥かに遅れている。
「アラスター・ムーディだ! マッドアイなんて呼ばれることもある!! よろしく!!」
「よろしくお辞儀します」
「お辞儀します」
「よろしくお願いしまあああああああああああす!」
「元闇祓い、オーラーだ! あの校長に脅迫されたからこの仕事をしぶしぶ引き受けた」
「やべえぞ校長の差し金だ」
「こわ」
「校長にスカウトされるとか逸材じゃねーか」
「六年生になるまで『闇の魔術』には一切触れてはいかんことになっているが俺から言わせれば油断しまくってる油断的な考えだ! 油断大敵な実践あるのみ! 油断大敵!!」
本当に戦うべきは油断ではなく権力だということをそろそろ生徒に教えるべきだろう。
だがムーディーの皮を被ったジュニアはそんな面倒なことはしたくなかった。
「お前達にまずは質問だ。『許されざる呪文』と呼ばれる油断大敵はいくつある!?」
「3つです」
ハーマイオニーが答えた。
「その意味はなんだ」
「使用するだけで、アズカバンにぶっこまれるからです」
「そうだ! あのジメっとした暗い牢獄で一人膝を抱えて寒さや孤独に震えながら乾いたパンと味と具のない薄い塩スープだけの食事を延々と繰り返されるだけの日々になる!! 何が辛いってメニューが365日エンドレスで同じものばかりが出てくるという斬新で金と手間のかからない拷問フルコースを出してくるという事だ!」
「描写がリアル」
「コイツ異様に詳しいな」
「そら脱獄もしたくなるわ」
マッドアイはうるせぇなこいつら、と思った。
「アズカバンのことをこれ以上掘り下げるヤツは闇の陣営のスパイ容疑として拘束する!!」
「やっべ油断した!」
「油断大敵! 油断大敵!」
「やべぇよこいつ」
「禁じられた呪文が言えるヤツは居るか! おらんのか!? 誰も居らんのか!?!?」
「机に杖を置き、両手に何も持ってないことを証明するかのように高く手を上げます」
「よろしい、グレンジャー」
両手に何も持っていないことを証明したハーマイオニーは発言を許された。
優等生な彼女は自信満々に答えるだろう。
「『アグアメンティ』です!!」
「油断大敵!! それお前の願望だろーが!! 油断大敵! 油断大敵!!」
「アグアメンティ…それはインセディオの反対呪文として知られます。つまり、火を消すんです! 火を! 炎を!! 燃え盛る火を消そうとする呪文なんて許せません!! 私は許さない! たとえ火は消せたとしても、人間の血潮に潜むその強い放火の意志までは消すことは出来ない!! 屋敷下僕解放!! 解放!!」
ハーマイオニーはかなりアレなことを言っていた。
周りの生徒は「放火魔がまたなんか言ってるな……」程度のことを思ったが、マッドアイはその魔法の目であっても目の前の少女の発言の真意を見通すことはできなかった。
尚、本音でしゃべってるだけである。
「何言ってんだこいつ……?」
「じゃあなんだっていうんですか!!」
「それを質問してんだろーが! シレンシオ!! グレンジャ―は5分黙ってろ! 他に! 他に分かる頭がマトモな神経をしているヤツはおらんか!!」
ざわ……ざわ……ざわ……! と生徒たちは騒ぐ。
しょうがないので、勝手に成績優秀なヤツを指名することにした。
「じゃあスリザリン! ノット! セオドール・ノット!!」
「ご指名入りましたー」
「禁じられた呪文を応えよ! ただし油断はするな!」
「油断大敵に応えます。『磔の呪文』だと何となく思いました」
「そうだ! クルーシオだ! これは拷問の呪文、禁じられた呪文の一つだ!」
「「「え?」」」
「……え?」
生徒たちは目を見開いて答えた。
「……ソレ、禁じられてたの……?」
「……」
(……分かっていた……。相手はあのダンブルドアだ……)
(奴が法律なんぞ守らねぇことは……分かっていたじゃねぇか……)
(……そうだ……だが……)
(ファッキン! やっぱりホグワーツは魔境だったじゃねーーか畜生がぁあああああああ!!)
「マジか、禁じられてたのか」
「誰も守ってないよな」
「許されざる呪文とは何だったのか」
「黙れ貴様らごく普通に狂った会話をするな!!」
「狂人扱いするんじゃねーよ!」
「うるせー! 人のコト狂ってるって言う奴が狂ってんだー!」
「ようこそ。『ホグワーツ』へ」
「ほ、ほかに分かるヤツは居ねーのか!?」
マッドアイはマッドなアイできょろきょろと教室中を見回してみた。
何か血を裏切りそうな赤毛とか復讐鬼眼鏡とか、フォイフォイいいそうなヤツとかが目に入ったがスルーする。
その中で、爆睡する黒い髪の美少女が目に入った。
「…………は?」
「フォイ! ラドフォード起きるフォイ!」
「おはようございました……なんだフォイカス」
「お前、マッドアイにガン付けられたフォイ!」
「マッドアイ イズ 誰」
マッドアイの目がべスに向いていた。
「……まさか……いや……だとしたら……?」
「誤解です! 私ちゃんと起きてました先生!」
「それ自白だフォイ!」
「……そうか……だから……」
何かブツブツ言っていた。
やがて、何かを納得したかのようにべスを指さす。
「じゃあラドフォード! お前は多分優秀だな! 許されざる呪文の一つを言ってみろ!」
「え? 許されざる呪文……? 何それ」
「使ったらアズカバン行きになる呪文だフォイ」
「そんなもんあったっけ?」
「ヒントをやると緑色の光線が出て、直撃したら即死するアレだ!」
ムーディに擬態したクラウチが露骨に誘導をかけた。
「アバダアバダアバダですか」
「そうだ! なんか違うが正解だ素晴らしい! その油断大敵精神を忘れるな! スリザリンに10点!!」
「フォイ!?!?」
「やったぜ」
「何をしているか貴様ら!! 今言ったものをノートに書き留めろ! 一言一句油断せずたがわずな!! いいか! 表紙に大きくこう書け!! 油断大敵と!!」
「任せろ、ゆっくりと敵意がないことを示しながら机にノートを出します」
べスが敵意がないことを示しながら机の上におおよそ書いたり、見直したりした痕跡、つまり勉強に使っているとは思えないキレイなノートを出した。
「素晴らしいぞラドフォード! ノートの出し方がいい! スリザリン5点!!」
「フォフォフォフォイ!?!?」
「るせーぞマルフォイ」
「まて……おいまて……ろ、露骨すぎるフォイ……? なんだコイツ……?」
「今年の闇の魔術に対する防衛術の先生は話が分かるヤツの様みたいね。妄信します!」
「え? おかしいフォイ! こんなの絶対おかしいフォイ!!」
「これは私の時代、到来! このビッグウェーブに乗るわ」
「ロリコンか……? さてはロリコンかフォイ!?」
「マルフォイ!! ラドフォードに近すぎだ! 離れて座れ!!!! 個人的に罰則を与える!!」
「やった! 死ね、マルフォイ!」
「納得いかねえフォイ……」
マルフォイはイタチにされました。