「それじゃー、闇の帝王復活計画を始めるのだー!!」
何か薄暗いどっかの廃屋みてぇな所でお辞儀教の黒ミサが始まっていた。
「死を超越し、死から蘇ると人は神になるのだ! そーゆーわけなんでお辞儀王を神に担ぎ上げるために皆でなかよく協力するのだ! イギリス国旗を~~純血で~~染めあげるのだ~~!」
「うるせぇわ、とっとこ黙れペテ公」
「お前はアズカバンから回りくどい脱獄方法をしてきたジュニアなのだ!」
「あぁ全く最悪だった……クソが」
「おつとめごくろうさまなのだ~~」
「うるせぇっつってんだろ! その癪に障る喋り方を辞めやがれペテ公!! ムカツクんだよ口縫い合わせんぞカス!!」
「やってみるのだ~~」
「シレンシオ!!」
「プロテゴ! 効かないのだ~~」
「ド畜生が黙れ喋んなうぜぇんだよ!!」
「若者はキレやすくて嫌なのだ~~」
元鼠と脱獄犯(3人目)がなんか食っちゃべってるところに、おもぐるしい声が響いた。
「仲良くお辞儀しろ……」
「無理です我が君」
「我が君に怒られたのだ~~真面目な話をするのだー」
「さっさとやれ……」
(俺様の部下……もうこんなのしか居ないの……?)
闇の帝王は泣きたくなってきた。
敵はあの校長だ。そして油断ならない小僧だ。こんなんしか手駒が居ないのにどうやって戦えばいいんだ、と絶望したくなった。
考えてみたら優秀だった部下は大抵アズカバンにぶち込まれている。
「闇の帝王を復活させるためには、儀式をやるのだ~~。具体的には『下僕の肉と、父親の骨と、敵の血』が必要なのだ~~。そーゆーわけで、ポッターから採血する組とお肉と骨を調達する組みに別れるのだ~~」
「……ポッターから採血か? だがアイツは」
「そうなのだ~~。ポッターより『名前を呼んではいけないあの校長』が面倒なのだ~~」
「……そうだな。ホグワーツに侵入する必要がある。……侵入してからが問題だ」
「そーなのだーー。あの校長の目をかいくぐってポッターから上手く血を流さなきゃならないのだ~~」
「……」
「……」
「「無理だ」」
(あきらめるなよ……)
「実は手下を何人か手配してホグワーツに送り込もうとしたのだ~~」
「マジかよ、ペテ公。で? どーだったんだ?」
「実は屋敷僕妖精を洗脳したのだ~~。だけど、不思議なのだ~~……そして、誰も、帰ってこなかった」
「…………殺ったな、甘く見てた。流石『校長』だ。中途半端な小細工じゃどうしようもねぇよ」
「三下を派遣しよーと思ったのだーー。だけど、皆嫌がるのだ~~」
「……」
「ひぃ!? なんですか幹部の皆様!? い、行きませんよホグワーツなら! 俺は嫌だ!!」
「やっと卒業したんだ!! やっと! なのにまた行くなんて嫌だだだだだだだだ」
「ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ怖い怖い怖い怖い怖い怖いホグワーツイヤだなんであんな学校に行っちまったんだ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない学校嫌だ学校ヤダ学校ヤダ学校ヤダ」
「お先に参ります! アバダ――」
「この有様なのだーー」
「酷く共感を覚えました」
「なので、我々幹部が逝くしかないのだ~~」
「幹部って、アンタと俺しか居ねぇじゃねぇかよ」
「あと、オフィーリアが居るのだ~~」
「は?」
「でも、オフィ―リアは今、絶賛復讐中なのだ~~」
「……ちょっと待て、オフィ―リアって……オフィ―リアか?」
「オフィ―リアなのだ」
「……え、なんで?」
「繋ぐのだ~~もしもしオフィ―リアー?」
『シリウス・ブラァアアアアアアアック! どこに!! 隠れやがった畜生がぁあああああああ!!』
『なんで見つからない……!? 誰だ!! 誰が隠した!?』
「話にならないのだ~~」
「……大変そうだな……」
ジュニアは、考えることを、やめた。
「と、言うわけで、お前かボクのどっちかがホグワーツに潜入するのだ!」
「マジかよ、この俺か、ジャンガリアンドブネズミしか居ねぇのかよ……」
「厳選なあみだくじによるデス・マッチで決めるのだ~~!」
「仕方ねぇ。ベット」
「ショーダウン! あ~みだ~くっじ~~♪あ~みだっくじ~~♪あ~~みだっくじぃ~~♪」
「おい、ちょっと待てペテ公! お前今一本書き足しt」
「シレンシオ!!」
「むぐうううううううう!!」(テメェエエエエエエエ!!)
(……大丈夫かな、こやつら……)
(俺様、ちゃんと復活……できんのかな……?)
闇の帝王は不安だった。
●
『よろしい、ならば教育だ』
『校長殿! 校長! 狂人! 狂人殿! マーリン勲章勲一等大魔法使い殿!』
『そして、我がホグワーツは遂にドーヴァーを渡る……』
『ヨーロッパだ! ヨーロッパが見える!』
『一千人の学生の戦闘団で世界を燃やし尽くしてやる……!!』
「……」
「……」
『征くぞ 諸君 地獄を造るぞ』
「……」
「……」
「以上が、現在ホグワーツで起こっている『事態』を表したものです」
魔法省は厳粛な雰囲気に包まれていた。
壇上から良く通る声で話すのは、黒いローブに身を包んだ上品そうな紳士であった。
「賢者の石の喪失、謎の怪物バジリスクによる連続生徒強襲事件……のみならず、昨年度は脱獄囚まで確認された! さらには吸魂鬼まで!! 最早、ダンブルドアには任せておけない。過去3年の『異常事態』という事実が純然たる統計として我々に突き付けられている」
熱弁を振るう拳の先。その眼は優雅な英国紳士ではなく、大帝国の暴君に喧嘩を売る壮年の将軍のそれだった。
「今なのです。みなさん、この英邁たるグレート・ブリテンを統べる最高の魔法使いにして理性の精神を司る魔法省の方々!! 今この国最大の危機が! 迫っているのです!!」
「……」
「この映像は、未来を憂えたとある生徒の一人が命を懸けて密かに撮影したものです。それをフクロウ便に託しわざわざ届けに来てくれたのです!『どうか、僕たちを助けてください』と赤毛の少年は言っていました!!」
「やべぇそれうちの息子かも……」
「少年は命を懸けたのです!! たった50ガリオンに!!」
「お前映像買ってんじゃねーか……」
「特定しました、ウィーズリー家の子だな」
「血は裏切る癖に金は裏切らないのか……」
「みなさん!! これを放置していいのですか!? 今、教育の現場はあの校長が支配している!! あの場所で!生徒たちは! 戦っているのです!! 校長と! 学内恐怖政治と! いいですか!?
事件は魔法省で起きているんじゃない!! 教育現場で起きているんだ!!」
熱意溢れるその言葉に魔法大臣の目に光がともった。
「……で、君はどうするのだね?」
「アルバス・ダンブルドアを校長の椅子から引きずり下ろします」
「……なるほど」
その覚悟に嘘はない、と誰もが悟った。
「ならば、よろしい、バーティ・クラウチ君。君をホグワーツに送るとしよう。
アルバス・ダンブルドアの暴政を、打ち砕く魔法省の鉄槌として」
「必ずや、義務を果たして見せましょう」
コーネリウス・ファッジは思った。
(アルバス・ダンブルドアよ……走狗は、煮らるものなのだ……)
(お前は、やりすぎた)
(自由こそが最大権力を振るう今の世に……『英雄』は必要ないのだよ……)
(過ぎた英雄への幻想は、やがて個人への崇拝を呼ぶ)
(その時、人々は自由を捧げ、平伏する)
(行きつく果てが独裁ならば、ダンブルドアも『お辞儀』と何が違うと言うのか)
その答えはどこにもなかった。
●
(なんで親父ホグワーツに居るんだよぉおおおおおおおおおお!!)
マッドアイをボコってポリジュースったクラウチ(息子)は頭を抱えていた。
なんか更新してない方がお気に入りの伸びがいいんですけども…??