少女はお辞儀することにした   作:ウンバボ族の強襲

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新学期が始まった全ての皆さまへ……。


ゴブレット大炎上編
開戦


 

 お前がうらやましい、と言った。

 

 自分で決めた生き方と、自分を構成している世界が矛盾していないことが羨ましいと。

 

 「あ?」

 

 ひがんでたわけじゃない。

 ただ、少しだけうらやましかった。

 嫉妬してた、それがお前のブレなさに繋がってるんだと思ったから。

 

 「うっせ」

 

 悩みも、迷いもない、お前が羨ましかったんだ。

 

「……」

 

 祈らなくても、縋らなくても。

 生きる意味がちゃんと存在していた、お前が。

 

 

 

「馬鹿じゃねぇの? お前の人生だろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生きたい様に、生きればいいだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦じゃ……」

 

 

 

「は?」

「え?」

「フォイ?」

 

 

 おいあの校長今何つった……? という困惑が大広間を覆いつくしていた。

 

 

「戦じゃ……」

 

 

(((二回言った……)))

 

 

 どうやらダンブルドアに止まる気配はないようだ。

 戦じゃ、などと意味不明の発言を繰り返すダンブルドア。ついに始まったかアルツハイマーと誰もがダンブルドアがボケていることを願った。が。否。

 ……爺の目は死んでいなかった。

 

 

「我々は平和を貪りすぎたのじゃ……。長きにわたる安寧は魂を肥えさせる。

 命は大切にしすぎると腐るのじゃ……」

 

「……!?」

 

 あいつ何言ってんだ……!?という、圧倒的空気……!

 

 だが、長年この『狂気』に付き合ってきた上級生たちは知っていた。校長が、口だけではない、ということを。

 最悪の有言実行者は常に言に行動が伴う。そう、狂言には凶行が。

 頼むから何もしないでくれ。お願いだからこのまま終わってくれ……という彼らの願いは。

 無残にも、打ち砕かれた。

 

 

「今年度、長らく開催されていなかった三大魔法学校対抗試合を開催する!」

 

 

「「「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァアアアイ!?!!」」」

 

 

 約一名「フォオオオオオイ!?」とか言ったやつ以外の全員の悲鳴が鳴り響いた。

 

 

 

 

「諸君、ワシは教育が好きじゃ」

 

 

「!?!?」

 

 

「諸君、ワシは教育が好きじゃ」

 

 

「ふぉ……フォイ……これ……」

「この流れ……来るぞ……!」

「録音準備よーーし! 今年はウッドさんの代わりにクソ演説を校長閣下がして下さるぜヒャハー!」

 

 

 

「諸君、ワシは教育が大好きじゃ。

 

 

 学校教育が好きじゃ

 魔法教育が好きじゃ

 魔法薬学が好きじゃ

 防衛術が好きじゃ

 変身術が好きじゃ

 マグル学が好きじゃ

 占い学が好きじゃ

 数占い学が好きじゃ

 魔法生物学が好きじゃ

 

 汽車で ホグズミードで

 城で 禁じられた森で

 凍土で 砂漠で

 湖で 空中で

 泥中で 湿原で

 

 この地上で行われるありとあらゆる教育行為が大好きじゃ」

 

 

 

「……フォ……?」

「なにこれ……服従の呪文(演説)……?」

「流石校長! 常人にできないことを平然とやってのけるッ! そこに痺れる憧れるゥ!!」

 

 

 

 

「一列にならべたワシの一斉発射が 轟音と共に生徒を吹き飛ばすのが好きじゃ

空中高く放り上げられた生徒が 効力射で木っ端みじんになった時など心がおどる

 

ハグリッドの操るスクリュートがアクロマンチュラを撃破するのが好きじゃ

悲鳴を上げて 燃えさかる森から飛び出してきた特別保護指定生物を

アバダでなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった

 

杖先をそろえた生徒の横隊が 教師の戦列を蹂躙するのが好きじゃ

恐慌状態の新入生が 既に息絶えた教員を 何度も何度も刺突している様など感動すら覚える」

 

 

 

アイツの中の教育ってどうなってんだよ……?

 

と、誰もが思っていた。

 

 

 

 

「敗北主義の逃亡生徒達を城に吊るし上げていく様などはもうたまらない

泣き叫ぶ生徒が 私の降り下ろした手の平とともに

金切り声を上げるバジリスクに ばたばたと薙ぎ倒されるのも最高じゃ。

 

哀れな抵抗生徒が雑多な悪戯道具で健気にも立ち上がってきたのを

ワシの4.8t暴れ柳が寮ごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える。

 

トムの死喰い人団に滅茶苦茶にされるのが好きじゃ。

必死に守るはずだった生徒が蹂躙され、ついでにワシは女子供が特に嫌いじゃ。

 

アメリカ人に物量に押し潰されて殲滅されるのが好きじゃ。

グリンデルバルトに追いまわされ 害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みじゃったぁ……」

 

 

 

 そこで、ホグワーツの生徒は、

 

 考えることを、やめた。

 

 

 

 

「諸君 ワシは教育を 地獄の様な『教育』を望んでいる

 諸君 私に付き従うホグワーツの生徒諸君

 君達は一体 何を望んでいる?

 

 更なる勉強を望むか?

 情け容赦のない 糞の様な勉強を望むか?

 鉄風雷火の限りを尽くし 三千世界の鴉を殺す 嵐の様な勉強を望むか?」

 

 

 

「「「勉強!! 勉強!! 勉強!!」」」

 

 

 

 

 

「よろしい、ならば教育だ」

 

 

 

 もう、何もかもが手遅れのようだった。

 

 

 

「我々は満身の力をこめて今まさに振り下ろさんとする握り拳じゃ。

だがこの暗い闇の底で半世紀もの間 堪え続けてきた我々には、ただのでは教育ではもはや足りない!!

 

大教育を!! 一心不乱の大教育を!!!!

 

学校を忘却の彼方へと追いやり 眠りこけている社会人を叩き起こそう

髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させよう

大人に学校の味を思い出させてやる

大人に教師の靴の音を思い出させてやる

 

 

天と地のはざまには 社会人の哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる

 

一千人の学生の戦闘団で

世界を燃やし尽くしてやる

 

 

征くぞ 諸君

 

 

 

地獄を造るぞ」

 

 

 

 

 

 

 余談だが。

 

 

 新学期が始まる9月1日前後は。

 

 

 中高生の間で。

 

 

 一年で。

 

 

 最も。

 

 

 

 自殺率が高いと言う……。

 

 

 

 

 

 







なんか「セドリック見たい」って要望があったので書きます。

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