少女はお辞儀することにした   作:ウンバボ族の強襲

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シリアスな親友との戦いです。




変態教師と笑えない犬

 夜空は透き通るように晴れ渡っていた。

 雲は一つとして存在しない。

 だが澄み切った黒い空の下では、赤い炎が燃えていた。

 遠くから見ればソレはさぞ美しい緋色に映えただろう。

 

 そう、つまり。

 

 ルーピンがわざわざ月光を浴びないように……と注意して選んだはずの森は、ハーマイオニー・グレンジャーによって焼き尽くされてしまったために遮蔽物が全く無い状態になっていた。

 

 煌々と冷たく光る白銀の直射月光が、

 燃え盛る森へと降り注いだ瞬間。

 

 おや、ルーピンのようすが……?

 

 

「うぉおおおおお!!」

「!?」

「リーマス! ちゃんと薬は飲んだのか!? リーマス!!」

 

 ルーピンの来ていたヨレヨレの上半身の背広が謎の勢いで弾けとび、

 胸の意味不明の七つの傷が剥き出しになる。

 

「てめえらに今日を生きる資格はねえ!!」

 

「リィイイマァアアアス!!」

 

「ウォオオオオオオオオ!」

 

 おめでとう ルーピン先生は世●末覇狼にしんかした!

 趣味はヒャッハーたちを肉塊へと華麗に変身してあげることだ。

 

 

「おっしゃ、チャンス到来なのだ!」

 

 すかさずスキャバーズだったピーターが鼠へとメタモルフォーゼ!

 そして「逃げるんだよォーー!」とかほざきながら、とっとこ隅っこ走って逃げてった。

 一方残された者たちの戦いは続く。

 

「シリウス……貴様の罪の数を数えろ」

「リーマス! しっかりしろリーマス!」

「貴様は、私の銀行口座を更地にした」

「え?」

「アレが全財産だった」

「マジ? あんなハシタ金が?」

 

 

「あ」

「あ」

「フォ」

「……やってしまいましたなぁ」

 

 

「 は し た 金 だ と ? 」

 

「り、リーマス落ち着けやめろrrrrr冷静になれ人の心を忘れるなぁあああああ!!」

 

 

(はいキレましたーー! シリウス・ブラック終了のお知らせ!)

 

 

「坊ちゃん育ち……」

「金銭感覚狂人め」

「金持ちなんか皆くたばれば皆幸せ」

 

 

「くっ……やるしかないのか……!」

「変わった遺言だな我が友よ……」

 

 

 シリウスが、「ここは私に任せて君たちは逃げるんだ!」とか死にそうなこと言った。

 シリウスがおもむろに上半身に纏っていたボロ雑巾を脱ぎ始める。

 そこには。

 

「ふん……ぬぉおおおお!」

 

 鍛え上げられた筋肉が。

 

 

(は?)

 

 

「来いよ、リーマス……杖なんか捨ててかかって来い!!」

「フン、言われるまでもないッ! ほあたっ!!」

 

 二人が土を削りながら蹴り上げ、高く飛翔ッ!

 そしてお互い残像を残す程度の速さで拳を交えるッ!

 鍛え上げられた筋肉と筋肉。

 筋肉がぶつかり合い、ほとばしり、そして弾ける……。

 

 

「え? え? ……おい魔法しろよ……」

「最強の魔法使いの戦いに杖など不要」

「ヤレヤレだね、あのオッサンが人狼をひきつけている間にズラかるぞ、ハーマイオニー!」

「そうね、もう燃やすものもないしね」

 

 ハーマイオニーとロンは通報しに逃げました。

 だが、ハリーは動かない。

 ベスは動けない。

 ノットは残ったほうにオブリビエイトやっとけばいっか、とか考えていた。

 その時だった。

 

 

『アオォーーーーン』

 

 

 遠吠えが響き渡る。

 

 

「ぬ!?」

 

 同族の遠吠えを聞いたルーピン先生が着地。

 そして反応。

 

「どこかで誰かが私を呼んでいる声がする……!」

 

 と、現実を自分の都合のよいように解釈していた。

 

「私を求めている声が聞こえるッ! 行くぞ!!」

 

 アオォオーーーーン! と叫びながらルーピン先生は四速歩行でダッシュし、戦いの場所から去って行った。

 そう、ルーピン先生は森へ帰っていったのだった……。

 

 遺されたシリウスも着地する。

 

「シリウス!!」

 

 唯ひとり残った、今のシリウスの味方であろうハリーが名づけ親の下へと駆け寄った。

 

 シリウスの肩からは血が流れている。

 皮膚は避け、所々に打撲跡が散り、血とか汗とかそんな感じの液体がいろんな場所についていたけど、シリウスは満足したかのような笑顔だった。

 

「……あぁ、ハリー……ケガは……ないな……」

「おじさん! 大丈夫だ。もうルーピン先生はいない!」

「ハリー……私……は……」

 

 ゲホッとシリウスが何かの混じった咳をする。

 内臓が傷ついたからであろう、シリウスの口元には血が見えた。

 ハリーは呆然とそれを見る。

 

「そんな……血が……!」

「ハリー……私のことは……いいんだ」

「おじさん!」

 

 

「…………いいんだ……これで」

 

 

 シリウスは満足げな表情、そう。

 何か大きな仕事をやり遂げたあとの漢の顔をしていた。

 

 

「ずっと、ずっと後悔していたんだ」

「おじさん……」

 

「あの日のことを……ずっと。

 あの日もし、もっと自分が気をつけていたら、と何度も何度も。

 もしあの日に戻れたらと。あの時に戻ることが出来たのならと……。

 時間を巻き戻せればいいのに、と……何万回も、後悔した。

 だから……」

 

 

「おじさん!」

 

 

 何かベスは明日の朝ごはん何かなーとか考えていた。

 

 

 

「ハリー、君が無事で本当によか……」

 

 

「一緒に暮らそう! おじさん!!」

 

 

 

 

「!?」

「……禁じられた森のみんなー僕の友達がーー同棲するそうでーーすw」

 

 

 

「え? ……ハリー? その発想はあったけどまさか君の方から提案してくるとは思わなかった……?」

「おじさん! 一緒に暮らそう! ゴッドファザーなら十分その資格はあるはずだよね!? 僕、ダーズリー家はもうまっぴらさ! だからおじさん……もういいなんて言わないで」

「……ハリー……そんなことを言われると……俺は……僕は……私は……」

「エピスキー!」

 

 ハリーが呪文を唱えると。

 

「死んでも死にきれねえ!」

 

 べりっと何か薄い皮が破れ、下半身をやっとのことで覆っていたズボンまで消し飛びパンツ一丁になって復活したのだった。元気百倍、シリウス・ブラックだ。

 

 

「……蘇ったわ」

「マジ使えねえなあの人狼」

 

「ベス。君とは戦いたくないな」

 

 眼鏡は光を反射していた。

 今、ハリーは目前に迫った幸福な二人暮らし、という理想に目がくらんでいる状態だ。

 おそらく、その邪魔をするものは何であろうとぶち壊すであろう。

 

 ベスとノットはお互いに冷や汗をかきながら頭をフル回転させていた。

 

 相手は無駄に超タフなブラックと、『生き残った男の子』だ。

 過去ヴォルデモートと何度も立会い、さらには去年バジリスクまで殺しやがった奴だ。

 

 

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

 

 火が消えてゆく。

 周囲の気温がガクリと下がる。

 それは。

 

 まるで真冬が突如として訪れたかのように、ピキピキと凍っていくようだった。

 

 

「この感じ……」

 

(来たか……)

 

 

「やめろ……」

 

 シリウスがうめいた。

 

「やめてくれ……頼む……」

 

 真っ黒な何かが視界に飛び込んできた。

 それも、ひとり、ふたり、ではない。

 絶望の使者、恐怖の体現者たちが。

 

 百人もの群れを成して、真っ黒な塊になって滑るようにシリウス・ブラックに近づいてくる。

 遥か向こう側では(まだ居た)マルフォイがガタガタと震えながら「起きるフォイ! 先生起きるフォイ!」とスネイプを叩いていた。

 そこにいる誰もがいつものように、冷たい何かが身体を貫き、目の前が霞んでいくような感覚にとらわれたことだろう。

 四方八方から現れた吸魂鬼たちが、規律正しく包囲網を敷く。

 刹那。

 

 

 

 

 

「見つけたぞおぉおおおおおおおお!! シリウス・ブラァアアアアアアアアアアック!!!!」

 

 

 

「!?」

「……今度は何だ……?」

「起きるフォイ! ヤバいフォイ先生!! おきてくれなきゃ困るフォイ!!」

「zzz……」

 

 

 

(……え? でも……間違いない……この声……)

 

 

 

「おじさん! 何か来た! 女の人の声だ!! おじさんの名前――」

「……だ」

「おじさん!」

「……誰だ……? アイリーンか? リザか……? 元カノが追ってきた!?!?」

「……おじさん……」

「だめだ! まずい……心当たりが!! 多すぎる!!!!」

「おまえもう黙ってろスケコマシが」

「はい」

 

 

 

 

「……ブラックの元カノが特定してきたのか……?」

「違うわ」

「……は?」

「違うわ、だって……だってこの声」

 

 

 ベスは何か光が収束することを確認した。

 そしてその光が緑に染まっていることにも気づいた。

 

 

 

「……あの予備動作……間違えないわ!! 伏せろノット!!」

 

「え」

 

 

 

 

 

「アバダゲダブラ――――」

 

 

 

 

 

「……なんか死の呪文が聞こえ気ががががが」

「ママよ」

「は?」

「私の…………ママだわ!!」

「……は?」

 

 

 

 

 そして弾け飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マキシマァアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放たれたのは。

 

 極大の圧倒的な直死呪詛。

 

 

 

 

 

 






記念すべき『第一回! オリジナル魔法の紹介コーナー♪』です。


『アバダゲダブラ・マキシマ』
特大アバダです。死と恐怖を局地的に撒き散らす超迷惑な呪文です。
多分愛があればしなない。



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