少女はお辞儀することにした   作:ウンバボ族の強襲

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シリアスなクィディッチ決勝戦の話



クィディッチ決勝戦

 獅子vs穴熊。

 

 シーカーの負傷、獅子の演説、吸魂鬼の強襲――――まさかの獅子寮敗北。

 ニンバス2000との別れ。

 

 

 白蛇vs穴熊

 

 狙うはセドリック・ディゴリーただ一人。

 シーカー死すべし。

 ――――蛇寮ボロ勝ち。

 

 

 大鷲vs獅子

 

 最新型特攻箒――ファイアボルト

 絶世の美人シーカー、P●2.5、あいつ本当に人間か。

 ――激戦の末に獅子の勝利。

 

 

 

 

「いやぁ、すごかった」

「穴熊と大鷲の戦いはマジで感動した」

「本当にすごかった。まさかレイブンが人海戦術使ってくるなんてな」

「あぁ、本当怖かったな、リザーブ選手フル投入だなんて前代未聞だよな」

「倒しても倒しても敵がおきあがってくるなんて恐怖だよな、ハッフルのビーター最後には死んでたじゃん」

「同じビーターとしてああはなりたくないけれど」

「だが、結局クアッフルだけじゃ勝負がつかなくて、スニッチ頼みになった終盤のシーカー同士のドッグファイトは目を見張るものがあった」

「あぁ、あんな長丁場ずーーっと背後取り合ってるとか凄いわ本当」

「そう、まるで……神に捧げる舞のようだった」

「澄み切った紺碧の下で踊る鮮やかな黄色と青が綺麗だったわね」

「最後二人で一気にスニッチを掴んだときには手に汗握ったな」

「えぇ、どっちだ!? って思ったわ」

「だがどっちが勝ったとしてもいい試合だった……間違いなく、ホグワーツ史に残る名試合になったと言えよう」

「たとえ、この試合を見たすべての人々が死に絶えたとしても、語り継がれるであろう」

 

「「いい試合だった……と…………」」

 

 

 

 

「それ3位決定戦だフォイ!!」

 

 

 

 

 マルフォイの突っ込みが響き渡った。

 控えテントの中。

 

 

 

「いいじゃんマルフォイ。すげぇいい試合だっただろ」

「たたかわなくフォイ! げんじつと!」

「るせぇ。ころすぞ」

 

 容赦なくべスはマルフォイに杖先を向けた。

 

「気持ちはわかるフォイ! だけど……」

「いいじゃないか……ちょっとだけ、現実逃避したって……なぁ?」

「いやべつに私は本気で言ってんだけど」

「はっはははは……俺たちはスリザリン、さ。確かに、勝利のためには手段を択ばない。要は勝てばいいんだ、勝てばソレが正義になるんだ。歴史上の偉人なんてもんは実質人格破綻者ばっかりだ。だが、奴らはなぜ評価されているか……わかるだろ? 『勝った』からだよ。勝利さえすれば全てが肯定されるんだ…………」

 

 ボールは完全に危ないことを言っていたが、その眼はよどみ切っていた。

 光がない。

 完全にヤル気のないままとりあえずホウキに跨って空へと飛び上がった。

 もう恐れるものはなにもない。

 

 大空には既に赤いマントが翻っていた。

 

 

「あ、アレは……ウッド! ウッドさんだ!」

「来るフォイ……来るフォイ!」

「録音準備は済ませたかぁ!? 来るぞ! おそらくは今年最高のガイ×チ演説が!!」

 

 

 若干色めきたつスリザリンチームを睥睨しながら、血に飢えた獅子を率いたボス獅子が、その声の限りに咆哮をぶちかます。

 どう聞いてもマトモな声量ではなかった。

 

 そして、戦気を鼓舞するべく。

 

 言葉に魔力を宿して、放つ。

 

 

 

 

 

 

「諸君、私はクィディッチが好きだ」

 

 

 

 

 

 

 

「フォイ!?」

「マジでか」

「フルスロットルだぜウッドニキ!」

 

 

 

 

 

「諸君、私はクィディッチが好きだ。

 諸君、私はクィディッチが大好きだ。

 

 殲滅戦が好きだ

 電撃戦が好きだ

 打撃戦が好きだ

 防衛戦が好きだ

 包囲戦が好きだ

 突破戦が好きだ

 退却戦が好きだ

 掃討戦が好きだ

 撤退戦が好きだ

 

 平原で 街道で

 城内で 草原で

 凍土で 砂漠で

 海上で 空中で

 泥中で 湿原で

 

 この地上で行われるありとあらゆるクィディッチが大好きだ」

 

 

 

 

「そんな所でクィディッチやらねーフォイ」

「クィディッチの殲滅戦って何」

 

 

 

 

 

 

「戦列をならべたチェイサーの一斉パスが轟音と共に守備陣を吹き飛ばすのが好きだ

 空中高く放り上げられたクァッフルでゲームが崩壊したになった時など心が踊る

        

 ビーターの操るブラッジャーがチェイサーを撃破するのが好きだ

 悲鳴を上げて燃えさかる箒から飛び出してきた敵を箒なぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった

 

 箒先をそろえたプレイヤーの横隊が敵の戦列を蹂躙するのが好きだ

 恐慌状態の一年生が既にゴールしたゴールを何度も何度も旋回している様など感動すら覚える

 

 敗北主義のカスを談話室に吊るし上げていく様などはもうたまらない

 泣き叫ぶ応援が私の振り下ろした手の平とともに金切り声を上げるクアッフルにばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ。

 勝った気になった抵抗者達が雑多な箒で健気にも立ち上がってきたのをスニッチが木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える

 

 スリザリンに滅茶苦茶にされるのが好きだ

 必死に守るはずだった寮の点数がガンガン減っていく様はとてもとても悲しいものだ

 レイブンクロー物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ

 セドリック・ディゴリーに追いまわされ害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ

 

 

 

 諸君 私はクィディッチを地獄の様なクィディッチを望んでいる

 諸君 私に付き従うグリフィンドール戦友諸君

 君達は一体何を望んでいる?

 

 

 更なるクィディッチを望むか?

 情け容赦のない糞の様なクィディッチを望むか?

 鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す嵐の様なクィディッチを望むか?」

 

 

 

 

「「「「クィディッチ! クィディッチ!! クィディッチ!!」」」」

 

 

                

「よろしい ならばクィディッチだ」

 

 

 

 

「我々は満身の力をこめて今まさに振り降ろさんとする握り拳だ

 だがこの暗い闇の底で6年もの間堪え続けてきた我々にただのクィディッチではもはや足りない!!

 

 大クィディッチを!!

 一心不乱の超クィディッチを!!

 

 

 さぁ 諸君

 

 地 獄 を 創 る ぞ」

 

 

 

 最早ウッドを止めるものは、何処にも居なかった。

 

 

 

「時は来た!」

「箒を掲げろ!!」

「「柄を起こせ!!」」

 

 

 そして始まる。

 

 

 

 

「獅子王の旗の名に誓い――」

「純血の誇りの名のもとに――」

 

 

 ウッドの獅子吼に呼応するが如く赤いローブが空を舞い、緑色が風に翻る。

 

 

 

「野郎共! 狩りの時間だぁあああああああああああああ!!」

「奴らに身の程を教育してやれぇええええええ!!」

 

 

 

 激突する赤と緑が。

 

 深い蒼穹を一直線上に切り裂いていった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってなことがありましたけどはいフツーに負けましたーーーー」

「今年の優勝は安定のグリフィンドールでーーーーす」

「ファイボルトに手も足も出ませんでしたーーーー」

「無理ゲーwwww」

「勝てるwww訳wwwねーwwww」

 

「えーじゃあ皆さんゴブレッドを~~」

「せーのっ」

 

「「「「完敗ーーーー!!」」」」

 

 という感じでスリザリンは約束された準優勝だった。

 圧倒的ファイアボルトの蹂躙に勝てるわけが無かったのだ。

 こうして祝準優勝会が粛々と行われる中、べスはぶっちゃけ(癖になることで定評のあるウッドの演説以外)どーでもいいーと思っていたのでさっさと使命であるホグワーツのトイレ清掃に行くことにした。

 まずはほぼ唯一の友人(洗脳済)であるマートルのトイレだ。

 

 

「入ります」

 

 するとトイレには先客が居た。

 

(こんな寂れたトイレに来るなんて……さては上級者か……?)

 

 べスは目を凝らす。

 よく見るとそれはゴーストだった。

 マートルの友人だろうか。いや、あいつは友達居ないはずだ。

 

 

 

 

「レイブンクロー最下位じゃねーか!! どーなってんだよチクショーがーーーー!!」

「ありがとうございます! ありがとうございます!!」

「聞こえねえんだよもっと大きな声で鳴けオラ!!」

「ひぃいん! ありがとうごじゃいましゅぅううううううう!」

「うるせぇ!!」

「ゴフォ!」

 

 

 

「……」

 

 

 レイブンクローのゴーストだったような灰色のレディが灰色の女王様と化していた。

 

 

 下でうずくまっているのは悲しいことにスリザリンのゴーストである血みどろ男爵だ。

 完全に『お馬さん』状態だ。

 しかも表情は満足げに恍惚としている。とてもいい表情だ。

 あぁーーッ! そこぉ! だめぇ!! はぅううううん! とか

 あっ! あっ! ッ、きもち、きもちいいっ!これ好きぃッ…!とかイイ声で啼きながら灰色の女王様にムチで滅多打ちにされていた。

 血みどろだ。

 べスは血みどろ男爵が血みどろの理由が今分かった気がした。そして知りたくなかった。

 

 そんな冒涜的な光景を見たべスは思わず自分の頭に杖先を向けていた。

 

 

「オブリビエイト!」

 

 忘却の優しい光がべスの頭に流れ込んでいく。

 

 

 

「……さて、マートルのところはあとまわしにしようそうしよう」

 

 

 ベスはこうして時間軸の修正を図った。

 

 

 

 

 ~3階の男子トイレ~

 

 

 

 

「入ります」

「うわ!? な、何だラドフォード!?」

「なんだノットか。生理現象か?」

「ちょ、待ておま」

「気にすんな掃除の時間だ、そこどけ」

「……まだしてる」

「さっさとしろ。もみじおろしにするぞ」

「ひぇ……!?」

 

 ノットを無視してベスはさっさと個室に入る。

 これからストレス解消のためのトイレ清掃だ。

 べスにとってトイレとは聖域。

 つまりトイレ掃除とは、神聖なる場所を清めるための儀式であると言えるのだ。

 そう。

 それは言うならば。

 

 神に捧げる祈りの時間なのだ。

 

 

 

 と、意気込んで個室のドアを開けた。

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこには小汚いオッサンが座していた。

 

 

 

 

「ぎゃあああああああああああああああああああ!?」

「うっせ」

「うわぁああああああああああああああああああああ」

「殺すぞ」

「ひぃいいいいい!? だ、誰かぁああああああああ! 誰かーーーー! 男子トイレにーーーー!! 男子トイレにーーーーーー!!」

「俺の目が狂ってなければ君は女の子のはず」

「オッサンがあああああああああああああああああ!」

「……」

「神様ぁああああああああああ! トイレの!! 神様がぁあああああああああああああ!」

 

 そこに通りすがりのクルックシャンクスが現れた。

 

「にゃーん?」(ここから助けを求める声がする)

「アバダケダブラ」

 

 クルックシャンクスは蒸発して死にました。

 

 目の前で死の呪いをぶっ放されたべスは死に物狂いで逃げ出そうとする。

 だが目の前のオッサンの方が早かった。

 相手は13歳の少女だということを全く考慮しないラリアットをぶちかまし、そのまま床に這い蹲らせ、額に杖を向けた。

 

 

「ごちゃごちゃうるせぇ」

「ひっ……」

 

 

(なんだこいつ……やべぇ……やべぇぞ……)

 

 

 

 

 

 ベスにしては珍しく、額に汗が浮かび、そして頬を伝うのがはっきりと分かった。

 

 

 

 

 

 

「はじめましてシリウス・ブラックです」

 

 

 





PCが壊れたりネットが断線したりで大変でした。
決してリボーンにうつつを抜かしていたとかそうゆう訳じゃありません

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