少女はお辞儀することにした   作:ウンバボ族の強襲

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新年あけましておめでとうございます。
今年は酉年ですね




スコットランド・ザ・ブレイブ

 

 グリフィンドールとスリザリンが合同で授業になりました。

 例えるならば水と油、犬とサル。まるで仏と英のように延々と喧嘩し続ける定めの寮を一緒に授業させるのが魔法学校ホグワーツのスタイルだった。

 火のないところに煙は立たない。

 火種がないなら作ればいいじゃない。

 学校長のダンブルドア、望むはいつだって大火災。

 

 

「死ね! クソが!!」

「おとなしくしろゴラァ! 燃料にされてぇか!!」

「暴れんな……暴れんなよ……!」

 

 とりあえず生徒の大半は暴れる教科書と格闘していた。

 本のくせに容赦ないので鋭い牙で暴れまくる。

 

 そんな生徒たちを冷えた一瞥し、ハグリッドは口を開いた。

 

 

「よく来たカス共」

 

 

「うわ教師になった途端にコレかよ」

「スコッチ野郎が」

「ミックスのくせになまいきだ」

 

「黙れ」

 

 ハグリッドが目を見開くと数人の生徒がまるでペトリフィカストタルスされたかのように硬直した。

 わずか13歳の生徒たちは本能で察したのだ。

 コレには逆らってはいけないーーと

 

「今スコッチ野郎とか言ったカス、前へ出ろ。楽しい公開処刑の時間だ」

 

「ひっ……!」

 

「うっせ黙れさっさと出てこい」

 

 

 

(やだ……このスコカス(※スコットランドのカス野郎の略)増長してやがるわ……)

 

 

 うっかり口を滑らせたのだろう、グリフィンドールの男子生徒が「いやだぁああ死にたくないぃいい!逝きたくないぃいいい!」と喉のちぎれそうな声で泣き叫ぶ。

 なんだグリフィンドールのあんぽんたんが一匹減るんなら別にいーや、それよか今日のお昼ご飯なんだろう、とべスは思った。

 

 

「あいつ今学期からフルスロットルでぶちかましてるフォイ……」

「黙れマルフォイ」

「おーや、ポッターあのデカブツはお前のお友達だからな庇うのかい? ……と言いたいところだが本当にどうかしてるぞ、このままだとあいつ超えちゃいけない一線を超えそうだフォイ」

「るせぇマルフォイ」

「……この学校どうなってんだフォイ……」

「教師生徒ともに早くも吸魂鬼に脳みそ吸い取られてるんじゃないかしらね」

 

 早くも仕事っぷりをたたえたべスの言葉を聞き、(呼んでもいないのに)ハーマイオニーが口を挟む。

 

「特に貴女ね、年がら年中差別発言ばっかりのレイシストさん? アズカバンへ通い過ぎて吸い取られてるんじゃない? 人としての分別とか」

「好きでアズカバンなんか通ってる訳ねーだろーがカス。って言うかやだ穢れた血が穢れた血の癖に純血の私の行動に口挟んでくるんですけどーー? やだーー身の程知らずってこわ~~い~~。あーあーあーまた石化しないかなーー穢れた血はみんな石化すればいいのにな~~~~」

「おあいにく様、バジリスクなら今頃秘密の部屋で理想を抱いてミイラと化してるでしょ。忘れたのかザコ。あなたもいずれそうなるわ。あと、それ以上差別用語をほざいてみろビチクソ女。燃やすぞ」

「上等だ穢れた血の阿婆擦れが。消し炭にすんぞ」

 

 バチバチバチぃ! と見える形で火花が散っていた。

 

「あぁ……ハーマイオニーとべスまたやってるよ。僕あの二人には仲良くしてほしいんだけどな」

「わぁ、あの二人が仲良しになるだって? はははっ! おったまげさハリー! 君、メガネ買い替えたらどうだい? 君のメガネ、現実が見えてないね!」

「そうかなぁ……じゃあ僕ちょっとヘマしたクソボケのケツをぬぐってくる」

 

 

 ハリーが一歩進み出た。

 

 

「僕だよハグリッド」

 

「はい死ね」

 

「ごめんなさいハグリッド。謝罪しますぺこり」

 

「よし。自白した男気に免じてやろう。えらいぞハリー。相応の死をくれてやる」

 

 森の奥がざわついたかと思うと、次の瞬間。

 木と木の間をかき分けるようにし、謎の生物が現れた。

 言うならば、首から上が鳥。首から下が、馬。

 なんかそんな感じのキメラだった。

 

 

「うっわ、なんだこれ」

 

「ヒッポグリフだ、美しかろう」

 

 確かに多少きれいとも言えなくもなかった。

 

「こいつらは誇り高い。そんですぐキレる。絶対侮辱しちゃなんねぇ、それがお前の最期の仕業になる」

 

「マジか……プライド高くて沸点低いとか最悪だね。まるでどっかのマルフォイ親子みたいだ」

 

 

「死ねポッター」

「わかる。全面的に同意するわ」

「ははは! なぁ、レイシスト。ブーメランって知ってるかい? すっごいんだぜー、なんと投げた相手に返ってくるっていうマグルのオモチャなんだ!」

「あ? マグルの玩具なんか知らねーよカス。黙れ死ね窒息死しろシレンシーー!!」

「インペディメンタ!!」

 

 

 

 

「そんでこのバックビークは特別な訓練を施した。コイツはただの鳥畜生じゃねぇ。『戦士』だ」

 

「は?」

 

「え?」

 

「フォ?」

 

 

 

 

(((何言ってんだこのアフォ……)))

 

 

 

 

「俺が去年何をしていたと思っとる? お前さんらがバジリスクだか石化だかでテンヤヤンワしている頃、俺はしっかり自らを研鑽していた……」

 

 

「……」

「……」

「…………え?」

 

 

 

 べスは思い出していた。

 去年そういえば盗んだ車で学校に突っ込んで暴れ柳焼死させたなーと。

 ハリーは思い出していた。

 スネイプとかいう自分の母親のストーカーが新聞を持ってなんか言ってたことを。

 ロンは逃げる準備を始めた。

 

 

 

 

「やれい! バックビーク! お前のカギ爪を英雄の血で染めてやれ! スコットランドにぃいいい! 栄光あれぇええええええええ!!」

 

 

「ギャーーーーッス!!」(任せな)

 

 

「生き残った男の子! 生き残れなかった!」

「魔法界の希望、ここに眠る」

「死んだwww第三巻、完!」

「うるせよスリカス共!!」

 

「やれやれだね。しょうがないな」

 

 ハリーは目を離さなかった。

 

 目をそらすというのは逃げるということ。

 目をつむるというのは受け入れるということ。

 ハリーは今までの人生でよく知っていた。

 視線を逸らすということの、愚かさを。

 

 そう、ハリー・ポッターはーー『生き残った男の子』はただ、運が良かったから生き残れたのではないッ!

 

 生き残るべくして生き残っているのだッ!!

 

 

 

 そう、ハリーは納得も許容もできない死を受け入れる気など一ミリたりともありはない!!

 

 

 

 

 それは、

 

 

 

 

 

 

 嘘もなく

 

 

 

 気高く

 

 

 

 誇り高い

 

 

 

 

 

 

 

 お辞儀だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くるっぽーーーー」(素晴らしいお辞儀でした。心洗われました)

 

 

「ヴォルデモートとかに比べれば、ちょろいね」

 

 

「コッケーーコッコッココココッケー」(しかしながら、私は戦士だ。お辞儀なんかに屈しない!)

 

「追撃します」

 

「くるっぽーー」(くやしい……でも……お辞儀しちゃう……!)

 

「嘴では嫌がってても、羽毛は素直だね」

 

 

 

「まずいわ……ハリーのお辞儀レベルがリミットブレイクだわ……」

「ダメだこの醜いデカブツの野獣君……相当頭わいてやがる……はやく何とかしないとフォイ……」

「あ」「あ」「あ」

「なんだフォイ……?」

 

 マルフォイが、きょとん、とした顔で目を丸くした。

 

 

 

「マルフォイ、アウトーー」

 

「フォイ!?」

 

 

 ハグリッドが告げたように、ヒッポグリフは沸点が低く、キレやすい。

 そして、プライドだけは、山のように高い。

 

 

 

 

 

「ギャーーーーーーーーース!!」(ファッキン!! ブチ殺すぞゴミがァ!)

 

 

 

「フォオオオオイ!!」

 

 

「自業自得www」

「ざまあwwww」

「なんて酷いことを! 今すぐあのテロリストをクビにすべきよ!!」

「うっせーぞブルドックフェイス女! マルフォイが悪いんだろ!!」

「正気か!?」

 

 

 マルフォイの死をはじめとして、一斉にそこいらじゅうに放し飼いにされていたヒッポグリフ(訓練済)がぞろぞろと現れた。

 ケーーン!と鋭く啼きながら突進を開始。

 独立の精神と自由のために、と進撃しはじめた

 蹂躙を目的とした波状突撃を見た生徒たちは悲鳴を上げた。

 もはやマルフォイとかどうでもいい。

 数秒後の自分たちは肉塊と化しているかもしれないのだ。

 

 だが、魔法学校で鍛えられて3年目に突入しようとする彼らは、死の運命にあらがうことを選択した。

 

 誰だって。納得できない死を受け入れるつもりは毛頭ない。

 

 

「ペトリフィカス! トタルス!!」

「ルーモスマキシマ!!」

 

 金縛りや目くらましで必死に応戦するも鍛え抜かれたスコットランドの精鋭たちは屈しない。

 そこどいて! と、言ったのはグリフィンドールのハーマイオニー・グレンジャーだった。

 懐から、さっ、と何かを取り出す。

 

 空中に投げる。

 

「レダクト!!」

 

 周囲に広がるのは、乾いた草と木。

 

「インセンディオ!!」

 

 ハーマイオニーが蠱惑的ですらある鮮やかな杖捌きで枯れ木に炎を咲かせた。

 

 

 なんということでしょう、先ほどまで隙間風が吹き荒れ、地面は若干ぬかるみ歩くのさえ難しかった千年の歴史を持つ禁じられた森が匠の手によって炎にあふれる火あたりのいい森へと変貌をとげました。

 

 

 すると、ウゾウゾウゾウゾとどこからか、気持ちわりー生物がはい出してきた。

 足が八本もあるデカくてキモい蜘蛛だった。

 

 

「ヒッ……!」

「ぎゃああああああああ! 蜘蛛だああああああああ!」

「キメェ!! デケーーーー!!」

「わああああああああああ!」

 

 はい出してきた蜘蛛の一匹が一人前に英語をしゃべった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『なぜだ……なぜお前たちは……森を焼くのだ……』

 

 

 

『人間たちよ、……我等が、一体……何をしたというのだ……』

 

 

 

『共存を望んでいた……それだけだったというのに……』

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっせ」

 

 うわぁしゃべったんだけどキモッ!

 とべスは思った、ぶっちゃけ言葉が通じても蜘蛛はしょせん蜘蛛、それ以上でも以下でもないのである。

 

「うーん……どう(やってこいつら抹殺)しよっかなー……」

 

 べスは頭の中の呪文を探す。

 だが蜘蛛をブチ殺せる呪文は知らなかった。

 すると、ハリーがうんうん唸っているべスのほうを向いて何か叫んだ。

 

 

「べス! あのね! アーーーーを使うんだ! アラー……」

 

「聞こえねーよ」

 

 

 何か呪文を言っているようだった。

 ハリーはアから始まる呪文を唱えろと言っている。

 そう、蜘蛛をぶっ殺すことができる、アから始まる呪文を。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アバダ・ケダブラ!!」

 

 

 

 緑色の光線が一番デカい蜘蛛に直撃した。

 

 

 

 

 

『父よ! ああ! なんということだ……!』

 

 

『おのれ人間……』

 

 

『報復じゃ……復讐じゃ……許さぬ……!』

 

 

 

 蜘蛛がヤル気MAXになりました。

 

 

 べスの放ったソレが生徒たちの何かーーたぶん生存意欲ーーに火をつけた。

 

 

「黙れぇ! クルーシオ!!」

「お前らが悪い、お前らが悪いんだぁ! コンフリンゴ!!」

「ボンバーダ!!」

「うわあああああ! レダクト!!」

 

 

 蜘蛛の骨格が裂け、ヒッポグリフの羽毛や鮮血が舞い、それを炎が焦がしていく。

 という、ちょっとした悪夢が形成されつつあった。

 

 そこに、特に罪のない尻尾爆発スクリュート(成体)が現れる。

 

 それを見たスリザリンの小悪魔ダフネ・グリーングラスの目が光った。

 

「あ、アレ知ってる~~。あのね~~私、実はね、休み中すごい魔法使えるようになったんだよぉ!」

「己の力を信じて穿つがよいーーモノノフよ」

「うん! 頑張るね~~!」

 

 ダフネが杖を振った。

 

 

「インぺリオ!!」

 

 

 ダフネの魔法が尻尾爆発スクリュートに直撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゅいーーーーーーーーーーー!」(幸福ですぅぅぅううううううううう!)

 

 

 

 

 尻尾爆発スクリュートはインぺリオの副作用によってなんとも形容しがたい幸福感に包まれた!

 

 幸せな気分になったスクリュートはそのままヒッポグリフとアクロマンチュラの群れに突進!

 

 いまだかつてないほどのテンションで爆走! 轢殺!

 

 そして幸せな気分のまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆発したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「燃えるのじゃ……もっと……もっと……燃えるのじゃ……!

 

 

 灰になるがいい……! ふははははは……! はははははは……!!」

 

 

 

 

 ダンブルドアは超ご機嫌だった。

 






今年が読者の皆さまにとって実りおおき一年であることをハーメルンの片隅でお祈りしつつお辞儀します。


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