「作りたいもの、描きたいことは見えている」

 山井氏「完全新作となる『V』で打ち出したい、シナリオやシステムの形はかなり見えてきています。実際に動かせるところまで開発が進んでいるキャラクターもいますし、いよいよこれからが本番ですね。具体的な続報はもうちょっと先になりそうですが、そのときはファミ通さんにバッチリ記事にしてもらおうと思いますので(笑)、どうぞご期待ください

 ありがたいお言葉をいただいたところで、記者はこんな質問もしてみた。ティザー発表後はユーザーからどんな反響があったのか? 『V』はどのような作品になるのか? 山井氏は、内容に関してはまだ明かせないことが多いと前置きしつつ、このように答えた。

 山井氏「ユーザーの皆さんのお声はたくさん拝見しています。個人的な印象ですが、大きく分けて3つの世代のユーザーさんがいらっしゃるように思いますね。まずは、ファミコンやスーパーファミコンの時代からシリーズを支えてくださっている方々。グラフィック性能などの制約もあって“記号的”に描かれることが多かった当時において、映像やセリフで多くを語らずとも、そこに重厚なドラマと中毒性を見出された方が多いように感じます。その後、シリーズの変革を志向した『III』から遊び始めてくださった世代の方は、3Dで描かれる世界を歩みたい、据え置き型ゲーム機でじっくり遊びたいと思っておられる方が多いのではないでしょうか。そして、『IV』や『IV FINAL』でシリーズに足を踏み入れてくださった方は、キャラクターどうしの掛け合いや、寝っ転がりながらでも悪魔合体などをやり込める手軽さを評価してくださっているように思います。

 そういったさまざまなお声があることは承知していますので、『V』では、どの世代の方にも楽しんでいただけるような、その意味においては1つの集大成的な作品にしたいと思っています。もちろん、『V』で追求しているドラマ、システム、キャラクター、価値観などは、いまの時代だからこそ『メガテン』で描いてみたい、まったく新しいものになりますし、なおかつ根本的な“メガテンらしさ”も大切にしています

 “メガテンらしさ”とは何か? この類の質問は、往々にして言葉にすることが難しかったりもするが、山井氏の答えはわかりやすい。

 山井氏「メガテンらしさとは、一度出会い、ハマってしまったら最後、それからの人生なり価値観なりが変わってしまうような作品であること、でしょうか。一般的なRPGであれば、困っている人を助けて悪を倒すような勇者が善とされますが、『メガテン』は、「あなたは本当に助けたいですか?」、「この世界を救いたいと思いますか?」みたいなことを問い掛けてきます。そんなとき、ノーと答えたい人もきっと世の中には少なからずいて、そうした方々にも楽しんでいただける、人生シミュレーターのようなRPGだと思っています。

 僕の私見も含みますが、第1作の『真・女神転生』を始まりとするなら、『II』ではモチーフとする神話や宗教が幅広くなり、登場する悪魔も増えるなどの拡大路線が取られ、クライマックスでは宇宙の創造主レベルの相手と対峙することになり、ある意味では『II』で早くもシリーズが拡大しきった。そこでつぎに考えられたのが『if...』であったり、それを契機として派生することになった『デビルサマナー』、『ペルソナ』シリーズといった、インナースペースへの深まりだったと思うんです。そして『III』では、どちらかと言うと作品のボリュームではなく、質の変革を目指そうという機運があって、LAWとCHAOSからの脱却や、マガタマのシステムを導入するといったチャレンジが盛り込まれました。こうした流れを経て、『IV』では原点回帰と言いますか、初期の『メガテン』が持っていたエッセンスをもう一度、いまの時代に合わせて形にしてみようと考えました。その直接的な続編である『IV FINAL』は、『IV』の世界をさらに深堀りしつつ、“一神教VS多神教”という観点も加えて、神と悪魔、人間たちのドラマを新たな切り口で描いたものです。

 そのうえで、『V』が目指すひとつの方向性を挙げるとするならば、それは“時代性”を見つめ直すこと。かつて、世紀末と呼ばれた1990年代に、「このままでは人類が滅亡するんじゃないか」というオカルト的な盛り上がりが生じ、一部の人のあいだでは「このまま終わってしまえばいい」みたいな思いも芽生えていたのではないかと思います。そんなとき、「いま暮らしている世界が滅んだら、あなたはどうしますか?」という、まさにその時代を生きる人に突き刺さる問い掛けをもって現れたゲームが『メガテン』でした。2010年代がじきに終わろうとしている現在も、就職や老後への不安、テロや核兵器といった内憂外患にフラストレーションを溜めている方はきっと多くて、そんな時代だからこそ皆さんの心に寄り添える、共感してもらえるような『メガテン』を作りたい。『V』ではそれに挑戦してみたいんです」※出典:週刊ファミ通2017年11月9日号

 最後に、成功祈願からの帰り道で聞いたこの言葉で、記事を締めくくりたい。

 山井氏「神と悪魔が存在する“世界”そのものが、『メガテン』の第一の主人公。そこにいるキャラクターは、たまたま事件に巻き込まれてしまった犠牲者にして、世界の一部を担う存在。『V』ではまた新たな価値観を提示しますが、この作品が“メガテンである理由”は守っていきたいですね

完全新作『真・女神転生V』の“メガテンらしさ”はどうなるのか? プロデューサー・山井一千氏が語る、開発の本格化と“成功祈願”に込めた思い──_01
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