伝説のゲーム会社「サン電子」ファミコン開発者「爆笑座談会」…!
潜入!『いっき』『アトランチスの謎』……元祖"クソゲーブランド"が令和に復活! 大量の「お宝ファミコン原画」を特別公開! 今だから話せる秘話を一挙公開!
いま、世の中は「レトロブーム」。銭湯や『写ルンです』が流行(はや)る時代だ。この波はゲーム界も同様である。
先日には、サン電子株式会社のゲームブランド「サンソフト」が復活を発表した。名作ゲーム『いっき』の新作をオンラインゲームで発売するというのだ。
『いっき』とは、1985年に発売されたファミコンのアクションゲームだ。ロボットや戦闘機が主流だった当時、農民を主人公にした異色さ、たった二人で一揆をするというトンデモな世界観が話題となった。愛すべきゲーム=クソゲーと呼ばれたのも『いっき』が最初だ。
愛知県江南市のサン電子を訪問すると待っていたのは、当時のパッケージや宣伝物に使われたイラストの原画だった。このお宝と共に、’80年代のファミコンブームのさまざまなエピソードを当時の開発者たちに聞いた。
まずは『いっき』について。なぜ、農民がメインのゲームを作ったのか?
竹内昭人(プログラマー)「最初は兵士が銃などをバンバン撃ち合う(現代的な)戦争ゲームを作っていました。でも、評判がイマイチで。『じゃあ舞台を戦場から百姓一揆に変えちゃおう』って、チームのリーダーがひらめいて……。ずいぶんブッ飛んだ発想ですよね(笑)。背景とか全部作り直しですよ」
『いっき』は二人プレイできるゲームだったが、それも当初は違っていた。
竹内「最初はプレイヤー一人で二人のキャラクターを動かす斬新なスタイルだったんです。ボタンを押してキャラを切り替えるんですが、敵を倒しながらその操作は無理ですよね。一人のキャラが進んでいくと、もう一人は置いてきぼりになって画面からいなくなっちゃう(笑)。操作が難しすぎるのであきらめました」
『いっき』はまず、ゲームセンターなどに置かれる大型のアーケードゲーム版が発売されたが、ここでも問題が起きた。
竹内「当時のタイトルはそのままズバリ『百姓一揆』。でもゲームセンターでロケテストをした際『この名前で大丈夫か?』と言われて…万一回収騒ぎになったりでもしたら大変ですから、タイトルを変えました」
『いっき』のアーケード版は大ヒットを記録し、ファミコンに移されてこちらも大ヒット。「サンソフト」のブランドを確かなものにした。
「バグ」は禁句
続いてサンソフトが世に送り出したのが冒険アクション『アトランチスの謎』。ステージが100面もあるという壮大さで、こちらも大ヒットを記録した。当時のキャッチコピーはなんと〈スーパーマリオを超えた!〉だった。
竹内「メインプログラマーが僕でした。『パックランド』という横スクロールのゲームが面白くて、自分も作ってみたいなと思っていました。すると『スーパーマリオ』が出て、影響を受けた作品になってしまいました(笑)。あのキャッチコピーですか? んー、お客さんが言うならわかるけど、自分たちで言うのは……(笑)」
『アトランチスの謎』はゲームの中身も謎だらけで有名だ。いくつか巷間(こうかん)でささやかれている謎について訊(き)いてみよう。
その①「主人公が弱い」。プロフィールには〈すごい訓練を積んだ強い男〉とあるのにコウモリの糞(ふん)に当たっただけで死んでしまうのはなぜか?
竹内「うーん……これは作っているとき全然考えなかったんですよ(笑)。ファンの方が『糞の中にはじつは石や毒が入ってる』などとフォローしてくれましたけど。また、モアイ像が背景に出てきますが、『なんでモアイ像がアトランチスにあるんだ』とかいろいろ言われました」
その②「たどり着けない面」がある。このゲームは普通に進んでいっても到達できない面があるのだが、それはなぜか?
竹内「これもあとから気づいたんです。ゲーム攻略本を作っている出版社の方から『行けない面が3つくらいあるんですが』と連絡が来て、確認すると本当に行けなかった(笑)。発売後も問い合わせの電話がかかってきましたが、回収騒ぎになると大変ですので、全部『仕様です』と答えました。『バグ』という言葉は禁句でした」
実際、’80年代のファミコンブームを牽引(けんいん)した高橋名人はかつてこんなことを語っている。「ファミコンにバグはない。それは裏技だ」と……。
その③「エンディングがない」。100面をクリアすると画面に「Congratulation」の文字が出るだけで、何か謎が解決されることもないのだ。巷(ちまた)では「真のエンディングがある」などと都市伝説のようにささやかれているが。
竹内「最後も中途半端になってしまいましたね。本当は、100面をクリアしたらバルーンに乗って戻る、という設定だった。でも、時間も容量もなくなってしまったんです……」