『オデッセイ』編は新しいマリオを描けるのが楽しみ
――続いて『マリオくん』のキャラクターについてお聞きしていきたいと思います。いちばん好きなキャラクターは誰ですか?
沢田 ヨッシーです! ネタが詰まったときは、何かをヨッシーに食べさせればいいので扱いやすいというか(笑)。話的にも役立ってくれますし、見た目もかわいらしいので好きですね。『スーパーマリオワールド』で初登場したときから惹かれるものを感じていました。
――ヨッシーが出てないゲームを題材にしたマンガにも登場させていたので、よっぽどお好きなんだなと感じていました。個人的には『スーパーマリオランド2』編(コミックス7~10巻)で、ヨッシーがクッキーのまま出ていたのがおもしろかったです。(※)
※ヨッシーが贈ってくれた、ヨッシーの形をしたクッキー。顔だけなものの、ヨッシーと同様に動いたり喋ったりして、マリオたちとともに冒険することになる。

沢田 あのころはゲームの枠を越えていろいろな要素を出していましたね。チャレンジ精神に溢れていました。いまは原作にない要素が出た場合は注釈を入れるなどして、ちゃんと説明していますけどね。
――ヨッシーがお好きなら、『ヨッシーストーリー』編(コミックス19~21巻)も思い出深いのではないでしょうか?
沢田 ああ、そうですね。あれはもうベスト3に入るほど気に入っていますね。それぞれの色のちびヨッシーに性格付けするのが楽しかったです。あのころはまだ若かったので、ひとつのコマに7匹描くことができましたね。いまは細かい作業が辛くなってきたのでちょっと難しいです。いっぱいキャラクターが出てくるって聞いただけでドキ! っとしちゃう(笑)。

――マリオについてはどうですか? 主人公ですけど。
沢田 わりと自由に描かせてもらっていますね。ゲーム中ではほとんど喋らないんですけど、『マリオくん』では自由にボケたりしています。そういえば最近気づいたんですけど、最新刊(コミックス52巻)で昔話をテーマにした話があるんです(第8面 マリオ流! 日本むかしばなし)。これ、マリオがいつもの格好をしていないんですよ。
――本当ですね。浦島太郎や金太郎など、昔話の登場人物の格好をしています。
沢田 一話を通してマリオがオーバーオールを着てない話は初めてだと思います。これはちょっと珍しいですね。
――最新刊と言えば、ルイージはとくに活躍していましたね。『ルイージマンション2』編など、ルイージをフィーチャーした内容になっていて。
沢田 ルイージも好きですね。ルイージを中心に描くと、いつもとは違った話になるのでおもしろいです。読者さんからいただいたお手紙でも「ルイージ好きです」って書かれていることが結構多いんですよ。
――ルイージは初登場時から、巻を重ねるごとに変わってきましたよね。最初のころはマリオと同じ顔だったのが、だんだん見た目も性格も原作に近くなっていったり。
沢田 『ルイージマンション』で主役になってから、徐々にキャラクター性もはっきりしてきたのかなと思います。昔は立場的にもマリオと対等に扱っていたんですけどね。
――昔はツッコミをしていた印象が強いです。
沢田 僕の場合はボケもツッコミも両方できるようにしているんです。誰がボケて誰がツッコむかは決めてなくて、状況に応じています。いなかったら枠外からツッコむぐらいで(笑)。
――コマの外から誰かの手が出てツッコんだりしていますね。
沢田 ナレーションがツッコんでくれることも多いですね。
――ピーチについてはいかがですか? 近年のゲームではいっしょに冒険することも多いですね。
沢田 僕、女性キャラ描くの苦手なんですよ(笑)。顔のパターンがひとつしか描けなくて……。だからデイジーとか描くといっしょになっちゃうんですよ。テレサのオバさんとか、デフォルメされたキャラクターはいいんですけどね。
――でもすごくかわいらしいですよ。ロゼッタとかも。
沢田 ロゼッタも大変でしたね。ピーチと顔の違いをつけるためどうやって描いたらいいんだろうって…。結構試行錯誤しました。
――最新作『オデッセイ』では、マリオの帽子となっていっしょに冒険する新しい相棒の“キャッピー”が登場しますね。
沢田 いまもう『オデッセイ』編が始まっていて描いているのですが、楽しいキャラクターですね。ただ、困ることがあって……キャッピーって、マリオから離れたりするじゃないですか。それでも描いちゃうんですよね、帽子を。
――え?
沢田 帽子を投げて被ってない状態のはずなのに、ついクセで帽子を被った姿で描いちゃう。下書きで気づいて直すんですけど、自然と手がそう動いちゃうんですよね(笑)。
――(笑)。ある意味、職業病ですね。
沢田 帽子と頭が一体化しちゃっているんですね。
――今回のマリオは帽子や衣装が変わったりもしますね。
沢田 しかもキャプチャーすると姿まで変わるじゃないですか。いつもと違ったマリオを描くのが楽しみです。広い世界を描くのが大変そうだなぁ…という不安はありますが。
――(笑)。
沢田 ビル街の“ニュードンク・シティ”とか。いままでふつうの街を描いたことがないですからね。でも、あのテーマ曲「Jump Up, Super Star!」(※)はノリがよくて好きで、最近はダウンロードしたものを聴きながら描いてます。
※ 『オデッセイ』主題歌。「iTunes Store」にて250円[税込]でダウンロード販売中。また、公式ホームページでショートバージョンを期間限定で無料ダウンロードできる(2018年1月まで)。
親子二代で『マリオくん』を読んでほしい
――9月29日に、過去の話の中から選りすぐったお話を収録した『スーパーマリオくん 傑作選』が発売されました。こういう形のエピソード集を出されるのは初めてだと思うのですが、その経緯を教えてください。
沢田 2015年に『コロコロアニキ』で『スーパーマリオッさん』という話を描いたんですね。自分の過去の辛い経験を語った若干シリアスな内容で、通常のコミックスに入れるには重すぎると言われたんです。でも、何か別の形で出せないかと思っていて。そしたら、『スーパーマリオッさん』を含めてちょっと年齢層高めの人に向けた『傑作選』として出しましょう、と提案されました。親子二代で読んでくださる人も多いので、大人向けの『マリオくん』を、ということで。
――装丁も通常のコミックスとはちょっと違いますね。
沢田 新鮮ですよね。デザインにもこだわってもらって。帯が地面になっているんですよ。裏を見ると、地面から足だけが見えていて、帯を外すとマリオがひっくり返っているのがわかるのがおもしろいんです(笑)。
――『スーパーマリオッさん』のほか9話が収録されていますが、これらはどのようにして選出したんですか?
沢田 年齢層ちょっと高めの人に向けるなら、泣ける話にした方がいいんじゃないかなと思いました。
――収録された話は沢田先生みずから選ばれたんですか?
沢田 はい。自分の記憶に強く残っている話の中からいくつか選びました。あとは、ウンチが出てないやつ! (笑)。
――(笑)。
沢田 ウンチが出てない話となると、20巻以降が多くなるんですよ。先の『ヨッシーストーリー』編の話も入れようかと思ったのですが、どれもウンチが出てくるので止めました(笑)。だいたい小さくウンチが出ているんですよね。
――収録されている話は、家族をテーマにした話が多い印象です。
沢田 ああ確かに、多いですね。そういうマンガを描きたかったんですね、『マリオくん』に限らず。家族のエピソードをマリオでやろうとすると親子のキャラクターが少なく、イカ(ゲッソー)ばかりになるんですよ。……ゲームにいましたよね?
――小さいゲッソーを連れた“子連れゲッソー”がいますね。
沢田 見返してみたらイカの親子の話が多いこと(笑)。あとパックンフラワーやキラーは、それぞれ大きいのと小さいのがいるので親子ということにして、親子をテーマにした話をやってると思いますね。
――『傑作選』には裏話なども載っていて、長年のファンからしても読み応えのある内容でした。あとがきも印象的で……。
沢田 担当さんの提案で最後にあとがきを書きました。けど、これを読んだ人から心配されるんですよ。「え?どうしたの!?」って。締めにマリオの帽子を描いたものだから、山口百恵がマイクを置いて引退するような雰囲気になってしまって。周りから「がんばれよ!」って励まされるようになりましたね。いえいえがんばりますよ(笑)。
――改めて、27年間続けてこられたことは本当にすごいことだと思います。その秘訣は何ですか?
沢田 マリオのゲームは毎年新しいのが出ますし、マンガも時事ネタを多く取り入れているので、長く続いているのだと思います。僕としては、あまり先のことは考えずに目の前のことをこなしていく。10月号の次は11月号、52巻の次は53巻……と。そうやってひとつ先のことしか考えなかったからここまで続けてこられたのかな。50巻が出たとき「つぎは100巻ですね」なんて言われたりもするんですけど、「(100巻が出るころには)死んどるわ! 」ってツッコんだこともあって(笑)。50の次は51ですよ。とりあえず、目の前の目標としてあと3年はがんばります。30周年で55巻を出せるように。
――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
沢田 このマンガを読んで、少しでも明るい気持ちになってもらえればいいな……と思っています。『マリオくん』は小学2~3年生をターゲットに絞っていて、マンガを読み始めた子供たちの入門マンガ的な役割もあるのかと。子供たちから届くおたよりは、常に励みになっています。親子二代で読んでくれている人もいて。もう少しがんばってみますので、今後もよろしくお願いします!
――今後も楽しみにしています。本日はどうもありがとうざいました!
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