俺は、つけ麺などという、普通のラーメンに比べてスープをケチってるくせにいっぱしの値段を取るボッタクリメニューは嫌いなのですが、近頃よく通る道に新しい店ができて、しかもそれが「精肉店直営」の出した牛骨スープの店とあっては、やっぱり目が留まってしまうものです。この近辺で牛骨ラーメンっていうと、例の家系もどきの
雪濃湯とか、もちっと離れるとすっかり資本化して工業ちっくな味になってしまった
牛次郎なんかがありますが、つけ麺がメインで牛骨ってのは確かに珍しいですよね。しかも店先に大きく「和牛」と書いてある。和牛ってのは、国産牛のことではありませんよ、
黒毛和種・
褐毛和種・
日本短角種・
無角和種の4種に限って、和牛と名乗ることができるわけです。そんなせっかく貴重なお肉を、たかがラーメンなんかに使うなんてもったいないと思いますが、本当に精肉店が経営してるんなら在庫の中から半端モノや売れ残り品を流用できますからね、これはたしかに大きなアドヴァンテージであります。

もちろん、とんこつくん的には、せっかく煮出すなら牛骨より豚骨のほうがいいに決まっていますが、しかし「ラーメン専門店」ではなくて、お肉やさんが出してるラーメンという部分が非常にそそられます。なぜなら、ラーメンよりもお肉のほうが美味しいですからね。たんなる飲食店ではなくて、美味しいお肉を一般客に小売しているようなお店が、自分とこで売ってる肉を使ってラーメンを出すなら、きっとラーメンやさんよりも美味しいラーメンを出してくれるはずだという、淡い期待を持ってしまったわけです。
しかし、実際にお肉やさんなら、どこにある、なんと言うお店なのでしょう。「らんまる」っていうお肉屋さんは検索しても出てきません。違う屋号で経営しているのかもしれませんが、もしかして、ハッタリだったりしませんかねえ?卸売り専門という可能性も考えられますが、しかし少なくとも「精肉店」を名乗るならどこの店かハッキリさせてくれないと困りますよね。そうじゃないと、精肉店を継ぐのがイヤになったドラ息子が家を飛び出してつけ麺屋を作ったは良いが、売れるかどうか心配なので、反発したはずの親の肩書きの力を借りて売り出そうとしているという、肝っ玉の矮小なロクでもないガキのお店なのかと邪推してしまうではありませんか。というか、実際そうなんじゃないの?どうなの?
とはいっても、 今なら全メニュー500円で食べられるとあっては、ついついふらっと店内に入ってしまうのも致し方ないと思いませんか。やっぱり結局は値段ですよ。美味くても、それとも不味くとも、500円でブログのネタがひとつできるわけですから、慢性ネタ不足のとんこつくんにはおあつらえ向きのお店と言えるでしょう。とりあえず年内はどのメニューも500円で食べられるそうですから、気になる奴は今日明日あたり行ってみてはいかがでしょうか。
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めにゅう |
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さて、通常なら、「名物」の和牛牛骨つけ麺が、なんと950円もする!いくら和牛でも、スープをケチってるつけ麺に、950円も出せないよね。これが500円なんだから、今のうちに食べとくしか手はないですよ。他にも、まぜそばの癖に880円もするやつとか、あとは、普通のラーメンは、塩ラーメンしかないようですね。なんでだろ。せっかくなら濃厚な白濁した牛骨白湯ラーメンを出してほしいですがね。出さないのは、やっぱスープをケチってるとしか思えません。こんな、つけ麺みたいなちょびっとじゃなくて、たっぷりの白濁牛骨スープに浸ったラーメンをリーズナブルに食いたいんですがねえ。どうしてそういうメニューは出してくれないんでしょう。ケチくさいですねえ。
出ました、こういう気取ったオシャレ臭い店にありがちな、ウンチク。
なんでも、竹筒に「昆布水」が入って提供されるようですね。
あーやだやだ。ただ安易に流行に便乗した感じが鼻について嫌気が差しますね。さしません?
和牛牛骨つけ麺 ¥500
よくあるつけ麺屋と同様に、同料金で麺を大盛にできるようなんで、そうしましたが、ま、大盛ってほどの量じゃありませんね。某店の小ラーメンよりもずっと少ないですね。
なるほど、この竹筒に入ってるのが昆布水ってわけですね。でもこうやって出されると、なんだかまるで、お墓にお供えするお花を挿す竹筒みたいにみえますよね。なんか無理にオシャレ感を出そうとして、辛気臭くなってしまってるという感があります。そのうえ、お花が飾られていないから、雨水が溜まって何日も何ヶ月も放置された無縁仏みたいな印象を受けてしまいますね。これは演出としては大失敗と言わざるを得ないでしょう。
まあいいや。俺はこういう場合、まずつけ汁にはつけずに、麺だけ食べるのであります。
まず温度ですが、うーん、ぬるいとまではいかないけれど、キンキンに冷えてるってほどでもありませんねえ。少なくとも積極的に「冷やす」ということに力を入れていないように思います。まだこの寒い時期だから水道水もそこそこ冷たいけど、これ夏になったら生ヌルいシロモノになってしまうパターンなんじゃないでしょうか?つけ麺は、麺と汁の温度差こそが魅力ですから、麺が冷えてないつけ麺は、ただの汁が少ないだけのボッタクリ商品でしかありません。ここはしっかりと改善してもらいたいところです。
で、麺の味ですが、ちょっと硬いお餅みたいな、くにゃっとした感じですね。低反発まくらみたいな感じです。あれを舌で押したらこういう食感になるんじゃないでしょうか。全粒粉ではないですが、なんだか半粒粉くらいの、殻のかけらが少し含まれてるような感じですね。だけど味にどう影響してるのかはわかりませんでした。ほのかに甘みはあるんじゃないでしょうか。よく噛んで食べないと飲み込めないので、ダイエットとかにいいんでないですかね。
そのくにゃっとした麺、まず下半分を汁につけていただきます。麺のヌルさと違って、汁のほうは、よく煮だっていてアツアツで、つけ麺用の汁としては合格点です。ですが、あまり麺に汁が絡んできませんね。表面にだいぶ脂(牛脂かな?)が浮いているせいで、その下層のメインのスープに到達しづらいように思います。つけ麺に限らず、ざる蕎麦などでも、汁につけるのはせいぜい下半分までにしておかないと、麺の味を殺すし温度差も楽しめないので、そうする人が多いと思いますが、その食べ方だとこの汁の良さはよくわかりません。
なので、仕方なく、俺としては不本意だが、 麺を全部ドボンとつけてみよう。これだと、温度差は楽しめないし、汁はヌルくなるしで良いとこないんだが、確かにさっきよりは汁の味がよく麺に絡んでくる。
だけど、この汁、あまりパッとしませんね。よくあるまたおま魚介豚骨つけ麺とどう違うんだろう。豚骨が牛骨になったことで、なにか大きな変化があるとも思えない。せっかくの牛骨ならではの味わいが存分に生かされているとは言い難く、むしろ豚骨の代用品として牛骨が使われてるに過ぎないという印象を受けますね。魚介はかつお節などの節系と煮干し系が半々くらいな感じですね。酸味があって、細かくきざんだゆず(すだち?)の皮かなんかが入っているようですね。ご他聞にもれず、甘みが強いあたりが俺の好みとは外れるけれど、でも別にそんなにイヤな甘みではないですね。
さて、味変アイテムが大まかに二つ、まず一つ目の、麺の上に乗せられてるスダチ、これを絞ってみます。麺に直接のってるので、麺に直接かけるのがいいかと思いましたがそれで合っているのでしょうか。これはなかなかいいですね。もともとつけ汁のほうにも酸味がついていますが、このスダチの汁を直接麺にかけてからつけ汁につけると、つけ汁のこってり感と実に良く合います。これは絶対つけ汁にしぼっちゃうより麺に直接かけたほうが旨い。だけど、ちょこっとしか入ってないからすぐになくなってしまうのは残念なところ。
も一つが、上記の、うんちクに書かれている、竹筒に入った昆布水ですが、これ本当にただの昆布水ですよ。水に昆布つけたままにしといただけ。煮物料理とか作る時に、最初に昆布つけて一晩置いたりするでしょう。あれと同じやつです。そこに材料入れて、煮込んで、味付けして初めて料理になるので、この昆布水はまだ料理未満って感じですね。少なくともこのままお客に出すような代物ではない。だけど、流行りに便乗して取りいれたんですかねえ。
勿論水分なので麺にかければほぐれるけれど、その分麺がびしゃびしゃになるし、昆布の味が加わったことでなにか特段美味しくなったような感じもしない。むしろ昆布臭くなったとしか言えない。もちろんタダの水をかけるよりなんぼかマシだとは思うけれど、こんな大げさに竹筒なんか入れて出すほどのものじゃないよ。そもそも、麺がくっつかず上手くほぐれるように盛りつけるのがプロの仕事ってもんですよ。それを、てきとーに盛っておいて、麺がくっついたらこの水かけてほぐしてね、では、プロの仕事として、いかがなものでしょうか。
チャーシューの代わりに乗っているレア牛肉、これはさすがに、めっちゃ旨い!そこらの凡庸な店で出してる、くちゃくちゃした食感のレアチャーシューとは次元が違う。口に入れればとろけて、おいしさがふわっとお口の中に広がる感じです。火の通し加減も絶妙で、これ以上生でも火が通っていてもだめでしょう。これは確かに、お肉やさんだからこそ出せる味だとは思います。
でも、見てわかるとおり、チャーシューというよりもしゃぶしゃぶ肉と言ったほうが適切なほどの薄っぺらさ。一瞬でなくなってしまいます。ラーメンの具材というより、高級デパートの試食コーナーといったほうがいいようなサイズで、せっかく950円も出して食べるんなら、この小ささにガッカリすること請け合いです。もうちょっと安い肉でもいいので、もうちょっと食べたいです。このラーメン(つけ麺ですが)自体が特に高級な味でもないのに、肉だけがちょこっと乗っていて、そこだけがやたらと高級だと、全体としては調和しないですね。肉だけとってつけたような印象が残ってしまいます。それだったら、もっと安い肉を、手間かけて美味しく味付けして、ボリュームたっぷりに乗せてくれたほうが、つけ麺全体としては良かったような気がしてしまうのです。そうでなければいっそのこと、精肉店に行って、この肉を950円分買ってきて家で食べたほうがよっぽど満足できそうです。卵とカイワレは特段どうということもないですが、だからこそこのつけ麺にはよく調和します。
そして、上記ウンチの中に書いてある、竹筒に入った昆布水で最後にスープ割りってやつ。これは最悪ですね。スープ割りってのは、ただ単につけ汁を薄めて飲みやすくするだけじゃなくて、あったかいスープを入れて、冷め切った汁をちょうどいい温度に上げるという役割もあるんですよ。この冷え切った昆布ウォーターでは、 つけ汁も水みたいな温度になってしまって、ひどくマズくなります。濃厚なダシって、脂分もふくまれてるから、ある程度の温度がないと美味しくないはずなのに(だからわざわざつけ麺にして汁の温度を高くして提供するわけでしょう?)、水を入れてしまったら、せっかくの濃厚ダシが完全に裏目にでてしまう。これは本当に大失敗ですよ。まあスープ割りなんて食べ終わった後の余興みたいなもんですけど、でもせっかくのつけ汁を最後まで美味しく食べたいじゃないですか。それなのに最後こんな最悪な気分で食事を終えないといけないだなんて。終わりよければ全てよし、とまでは言わないけど、せめて終わりくらい気分良く締めたいもんですが、このお店はそんなささやかな願いをことごとくぶち壊してしまいます。
うーん。全体として、さすがに肉は最高に美味しかったけど、どうしてもこのつけ汁が、まあ悪くはないんですが牛骨スープである必然性を感じなかったし、それになによりこの昆布水が全てを台無しにしてしまっている。これなら無いほうがいいんじゃないのって思う。スープ割りに使うんなら、あらかじめ温めておいて、お客さんに頼まれたらその都度提供するってほうがいいんでないの?そうしない理由ってのは、ただ単に竹筒に入れてオシャレ感を演出し、お客さんが写真を撮ってインスタグラムなんかに乗せて、勝手に拡散宣伝してくれるというのを狙っただけのように感じるのですが、どうでしょうか。つまり、この竹筒は、CM代なんですよ。お客のためじゃなくて、店が繁盛するために、お客にこんなシロモノを提供しているんです。お金を払うのはお客なのになあ。
これ、500円なら、ああ得した、って気分になるけど、もし950円で食べてしまったら、涙が出てしまうに違いありません。別に、つけ麺としてはそう悪くないですけども、余計な演出だの無駄に高級な肉だの、アンバランスな付加要素のおかげでこの高価格になってるんだとしたら、その分のお金が勿体無すぎて、地団太を踏みたくなること請け合いでしょう。
俺は500円で食べたんで、そんなに荒んだ気持ちにはなりませんでした。むしろ500円で食べるつけ麺としては、それなりに良かったと思います。
だから、今日の評価は、: ★★★3、くらいにはしときましょう。
この評価は、500円期間だけの評価ですよ。くれぐれも、950円でこれを食べないように、皆様お気をつけ下さいませ。
つけ麺 RANMARU
愛知県名古屋市北区大曽根4-1-3 長谷川ビル 1F
営業時間
12月30日までは 17:00~21:00
1月4日からは
11:30~14:30
17:30~20:30
定休日 日曜日