Things thatVSCO girls like
THINK PIECES

VSCOガールのカルチャーはレズビアンカルチャーだ

クィア女性の私が、VSCO(ヴィスコ)ガールをみて最初に思ったことは、「これ、めちゃくちゃゲイじゃん」だった。

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24.1.20
まず、Tumblrガールがいた。彼女たちは彩度を過度に調整した、フィルムカメラ風の画像を投稿していた。次にEガールが生まれた。彼女たちはチェーンと小さなサングラスを身につけていた。そして今、VSCOガールが流行しはじめている。
VSCO(ヴィスコ)とは人気の写真加工アプリで、VSCOガールたちはそのアプリを使って加工を施し、スニーカーの写真と夕日の写真の統一感を保っている。私が彼女たちの存在を知ったきっかけは、VSCOガールの流行りに乗った十代の投稿者たちのTikTokだった。動画のVSCOガールたちは、腕に大量のシュシュをつけ、Brandy Melvilleのトップスを重ね、ハイドロフラスクを持っていた。
クィア女性の私がVSCOガールをみて最初に思ったことは、「これ、めちゃくちゃゲイじゃん」だった。
私は20代のクィアだが、VSCOガールの象徴となるアイテムをほぼすべて持っている。しかもずっと昔からだ。Brandy Melvilleで服を買うのはやめてしまったが(ワンサイズでしか展開してないからしょうがない)、個人的にBrandy Melvilleのスタイルには、ゲイカルチャーからの影響を感じている。
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襟付きのストライプオーバーサイズシャツ、ヴィンテージ風Tシャツ、ロールアップして履くマムジーンズなんて実にバイセクシュアル的だ。それと同じアイテムが、TikTokやTumblrにおいて、バイセクシュアルの定番服として着用されている。
ビルケンシュトックだって、長いことレズビアンと環境保護の意識が高いひとたちのための履き物だったし、VANSは16歳のクールな女の子たちと同じくらい、オシャレなワークイベントやゲイバーでレズビアンたちが履いているのを見かける。
ある意味では、この一致は当然といえるだろう。だって、ティーンはゲイ的な傾向が強いのだから。2016年の研究によると、自分は完全なヘテロセクシュアルであると答えたのは21〜34歳のミレニアル世代では全体の65%だったが、Z世代は48%に留まった。
ミレニアル世代にとって〈VSCOガール〉と同義だったのは〈ベーシック〉だろう。TikTokでは、両腕にシュシュをつけ〈sksksksk(VSCOガールスタイルにおける(たぶん)公式サウンド)〉と笑いVSCOガールのスタイルをバカにする投稿者も多いが、VSCOガールたちは〈ベーシック〉とは違い、積極的なストレートではない。
スターバックスやブランチはストレートのものではないが(私はどちらもゲイ的だと思っている。クィアコミュニティでのブランチ人気を鑑みればなおさら)、〈ベーシック〉を公言する女性が、クィアを象徴するものと距離を置くことはよくあった。彼女たちはスターバックスについてツイートするのと同じくらい頻繁に、自分の彼氏はスターバックスを買ってきてくれるから最高、とツイートした。
彼女たちはゲイの親友とブランチをするかもしれないが、政治的レズビアンたちとつるんでいた2000年代中頃のベーシックガールとは違う。〈ベーシック〉という言葉には、中立的な、政治に興味のないストレートの女子像が内包されていた。
クィアの人間である私は、〈ベーシック〉に共感したことはないし、むしろ嫌な印象を抱いていた。なぜなら〈ベーシック〉は私のためにあるのではないと思っていたから。
いっぽうVSCOガールのスタイルには、レズビアンを象徴するようなステレオタイプが組み込まれている。
彼女たちはいわゆるモテ服やフェミニンな服を着ないし(好むのはビルケンシュトック、オーバーサイズのアイテム、ハイウエストのデニム)、美に関して比較的無頓着で(VSCOガールはシュシュを愛用し、無造作なお団子ヘアを好んでいる。また、ナチュラルに仕上げるためにヘアスタイリングもしない)、環境保護への意識が高い(だからこそハイドロフラスクを持ち歩き、金属製ストローの使用やウミガメの保護を主張している)。
自分の身なりに無頓着で、メンズの服を着て、スバルの車に乗って森にハイキングしに行きリサイクルの話をして、ブラを燃やして、家父長制と戦う。それが一般的なレズビアンのステレオタイプだろうが、そんなレズビアンカルチャーが姿を変えて、VSCOガールカルチャーになったのか、という気さえする。
VSCOガールたちの2倍ほど生きてきたクィアの女性としては、そうやって境界線が曖昧になるのをみるのはうれしいことだ。今流行りの新しいファッション・生きかたは、女子用/男子用、ストレート用/レズビアン用、などと分けることよりも、それらの価値観をごちゃごちゃにしているのが良いな、と思う。
VANSを履く独身女性はみんな同性愛者だ、と決め付けられるほうがラクなのかもしれないが、Z世代が流動性を大切にし、自分にも他人にも、スタイルを通してアイデンティティを築く自由を与えているおかげでステレオタイプが消えていくのなら、そこには大きな意義がある。
This article originally appeared on i-D US.
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