細山田:いや、そういうのをやってきたことで、あのときに「ぷよぷよ」に楽しんだ方、触れた方がたくさん生まれた。僕も大会に出たかったんですけど、地方なので参加できなかったですし、ぷよまんは買えなかった。広島にも行けないし、東京にも行けない。でも、夜に目を閉じると、ぷよが落下し続けて眠れないくらい遊んでいましたし、そういう「思い出」が残ってます。高校生のときに、クラスの同級生がお正月の年賀はがきに「ぷよぷよ」のキャラクター「アルル」のイラストを描いてきたこともありますね。

もらった自分がその後に作るとはそのときはつゆ知らず。

細山田:ええ(笑)。でもこれは、友達が年賀状のイラストを描くぐらい当時はみんなやっていたということですし、そのブームの背景には会社の投資が大きく効いていたと思う。その投資は今にして思えば非常にメリットが大きかったと思うんです。

 ブームのおかげで芸能人の方とか、メディアに出ている方とかが遊ぶので、収束後の露出も結構多かった。大物芸人さんが芸能人ぷよぷよ王決定戦みたいなことをやったりとか、女優さんやタレントさんが好きなゲームは「ぷよぷよ」と公言して、テレビ番組でプレイしたりとか。1人でも遊べますが、2人で遊ぶことでプレーヤー間のやりとりが発生して、コミュニケーションツールとして生かしてもらえたということもあるでしょうね。

こうして年表にして整理しますと、売り上げの大小はもちろんあると思いますが、こまめに新作が出ていたんですね。

[画像のクリックで拡大表示]

スマホブームにもうまく乗る

細山田:「ぷよぷよ」は何だかんだありつつ、ずっとコンパイルさんが出し続けて、セガもブーム前からハードメーカーとして協力してきたのですが、引き継いだセガもその後出し続けた。マルチプラットフォームにもこだわったので、ユーザーが遊ぶ機会も多かったと思います。それを踏まえてちゃんとビジネスを乗っけてきたのは大きいのかな。セガに入ってからも、かなりの宣伝費を投下しているタイトルの1つであるので、高い知名度は会社のおかげもある。当時の経営だったり、今の経営の判断も大きいと思うんです。

なるほど。

細山田:もう1つあるとしたら、2013年に出したスマホアプリ「ぷよぷよ!!クエスト」ですかね。コンシューマー(家庭用)ソフトとしての「ぷよぷよ」は、20周年でそこそこ売れたんですけど、パズルゲームというジャンル自体に対して、コンシューマーの事業、家庭用ゲームでの市場が今後は縮小するんじゃないかという危機感を常に持っていたので、「モバイルやフリー・トゥ・プレイをやりたい」と考えていたんですけど、タイミングがなかなかなくて。

スマホアプリ「ぷよぷよ!!クエスト」
スマホアプリ「ぷよぷよ!!クエスト」
[画像のクリックで拡大表示]

その考えが実現に向かったのは。

細山田:2011年の20周年のタイミングで動き出しました。当時はガラケーもまだ健在で「ぷよぷよ」自体は好調でした。そのときは「スマホアプリを出す」と考えていたわけじゃないんですけど、「フリー・トゥ・プレイが今後は絶対主流になる」ことは分かっていたので、最終的には社長以下役員の方々と会議をしてゴーサインをもらって、13年に「ぷよぷよ!!クエスト」をリリースして、開発運営はもう6年半ぐらい続けています。で、実は売り上げは非公開なんですが、「ぷよぷよ」のIPの売り上げとしては、これがもう主軸になっちゃっている。

へえ、数百億クラスの売り上げとか?

細山田:トータルで見ると、そんな感じですね。売り上げだけでなく、ここから「ぷよぷよ」の世界観やアクションパズルの「ぷよぷよ」に触れる方がどんどん増えていくので、とても重要な入り口にもなっています。

「ぷよぷよ」がIPとして生き延びてきたリアルな背景ですね。ファンの熱意と愛情が支えた、みたいな美談チックな話になるのかなと思っていましたけど。

細山田:いや、もちろんあるんですよ。それもあるんですけど、一応ビジネス視点で言うと……。

いやいや、分かります。ファンの愛情という太陽が照らしつつ、IPホルダー側が、ちゃんと肥料や水を意識的に与えたから枯れずに育った、という話ですよね。

細山田:そう。アクションパズルの「ぷよぷよ」ファンのコミュニティーはずっと昔からあるんですね。タイトルとしての浮き沈みがある中、キャラクターや世界観が好きなファンもいれば、アクションパズルとしてのぷよぷよが好きなファンもいる。ゲームセンターで支えていたところも結構大きくて。ゲームセンターの店長と交渉して、例えば半日フリープレイ状態にさせて大会をやるとか。さまざまな大学の「ぷよぷよ」サークルがどんどん増えていったり。会社と開発者とコミュニティーとか、ユーザーの方が三位一体となって「ぷよぷよ」全体を盛り上げていく感はある。過去に良いことも悪いことも、いろいろな浮き沈みがあったけれども、そういうターンはちゃんと作ってきている。

「ぷよぷよ」のこういう要素がコミュニティーを維持してきた、というポイントはありますか。

次ページ 基本的に隙間産業、担当1人の時期もありました