空白期間をつくってはいけない

細山田:「ソニック」は海外を中心に人気がありますが、今あまり日本で触れられていないのは、「サターン(家庭用ゲーム機の『セガサターン』、94年11月発売)」時代に「ソニック」を作ってなかったからじゃないか、とか、プレイする機会や宣伝が日本国内では足りていないんじゃないかなど、個人的にいろいろ分析したりしています。

あれ? 「ソニック」のゲームは、サターンでは出ていませんでしたっけ。

細山田:サターンの後継機の「ドリームキャスト」(98年11月発売)に合わせて、「ソニックアドベンチャー」が久しぶりに出るんですが、ここの空白が利いてしまったのではないかと。

以前、「ガンダム」のライセンシーを担当する創通の方に、こんなお話を伺いました。

田村:それはもう、苦しい状況もありましたけれど、それでもテレビ番組の新作を2~3年置きに放映して、それがないときはイベントを打ち、と、「ライセンサー」(サンライズ、創通)とバンダイナムコグループを中心とした「ライセンシーの各社さん」が、一緒にガンダムという作品をがんばって支え、育んできたことが第1にあるでしょうね。

 とにかく、何らかの形で世の中に「ガンダム」がいるぞ、という存在感を流して続けてきたことが、コアなファンの維持と、「見たこと、買ったことはないけれど知っている」という知名度を作り出したんだと思います。

(「ライツ担当者が語る『ガンダムビジネス』 創通 田村烈取締役に聞く」2015年10月9日掲載、記事は現在クローズ中、役職などは当時のものです)

この記事が出たときガンダムは35周年を越えたところでした。やっぱり空白期間が生まれるというのは、IPホルダーにとっては恐怖なんですね。

細山田:そう。出すだけでなく、やっぱりきちっとリーチさせないとしぼんじゃう。1回いなくなってしまうとなかなか、という。

広報N氏:でも「ソニック」は海外での認知度はすごく高いんです。

海外では新作が出続けていたんですか。

細山田:それもありますけど、海外でかけるコスト、例えばおもちゃやグッズなどを幅広く商品化したり、カートゥーンネットワークでずっとアニメをやったりとかですね、これと日本でかけるコストが全然違っていて。海外ではものすごい力を入れたマーケティングをしているんです。日本ではさまざまな要因はあると思うのですが、もう全然。そして、ゲームが売れなければ売れないほどまたどんどん(宣伝予算が)下がってくる、という。ある意味、海外で「ソニック」と言うとめちゃくちゃ認知度も高くて、尊敬されるし、モテるんですよ(笑)。一流ブランドとのコラボも多い。この状況は、日本で認知度が高い「ぷよぷよ」と逆ですね。

ブーム時にどれだけ投資できるかが寿命を左右

「ぷよぷよ」って、こんなに前に出たゲームなのに、日本中で大会に参加するような熱烈なファンがいる、ということ自体がかなり貴重というか、珍しいじゃないですか。単純に考えると、「ルールが分かりやすくて遊びやすいよね」ということなのかなと思ったりもするんですけど、細山田さんからご覧になって、こういう要素があったから長くずっと遊んでもらえているんだよ、という理由は分かりますか?

細山田:分析は結構していますよ。なにより、「ブームがあった」ことはでかいと思うんですね。

ブームが大昔のことになったとしても、ですか。

細山田:ブームは一過性ですが、長く続けるという意味から言うと、そのブームのときにIPホルダー側が投資をしているかどうかが重要です。大ブームの時期に、(当時の開発会社の)コンパイルさんは、やっぱりかなり大きく投資していたと聞いています。3億円規模の予算を使って全国各地で大会をやっていたり。聞いた話ですが、億単位の広告宣伝費を使って全日本ロードレース選手権に参加し、広告を入れたりとか、あとは「ぷよまん」や数々のグッズを作ったりとか。

そういうのって、「ブームに乗った思い付きの企画」とか言われそうじゃないですか。

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