第1弾 モンキー・パンチ氏

vol.4 ルパンを立体でみてみたい!


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‐‐‐‐‐‐‐‐お2人とも、コンピューターを使って3DCGをやったり、自分の手でモノを作り出す、ということにすごく強い思い入れがあるように思うのですが。

モンキー あー、僕らは死ぬまであるね。やっぱり面白いもの。やってると時間忘れちゃうもん。ところが、人から頼まれると仕事になっちゃうから、楽しめないんだけどね。(笑)

漫画を立体で見せられたらなぁ、と思うんですよね。というか、自分で見てみたいんだよね。ルパンなんかも、立体でみてみたいの。

おおすみ そんな漫画家も本当珍しいよね(笑)。
モンキーさんの漫画は一番再現しにくい漫画なんだよ。これはアニメにする時から、そこだけは諦めなきゃしょうがなかった。大塚康生(注:1)さんなんかは、必死になって再現しようとしてたんだけど、それでもやっぱりモンキーさんの絵にはならなかった。
これは、僕の考えなんだけど、モンキーさんの絵ってのは、突き詰めていくと「線」にたどり着く、「線の味」なんですよね。

モンキー ほー、自分ではわからないけどね。

おおすみ 「線の味」ってのは、アニメだと違う人が描くんだから、消えちゃうの当たり前なんだよね。じゃぁ「線の味」以外は何だっていうと、僕はルパンを見ていてすごく、裏側に立体思考があるなって気がしてたの。

モンキー あー、なるほど。

おおすみ だから、ルパンが立体になるといいなってのが、どっかにある。

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モンキー そうか。わかるような気がするね。
見て、これ全部立体カメラ!(部屋の中にはいくつもの立体カメラが!)全部オークションで手に入れたの。(笑)

おおすみ (笑)。そもそもモンキーさんを大学院(注:2)に誘い込んで、二人で一緒にやろうって約束したのが、立体映像なんだよね。(笑)

モンキー そう!(笑)

おおすみ そこで、「立体の世界」に二人でどっぷり浸かろうって。(笑)

 

‐‐‐‐立体映像っていうのは、具体的にいうとどんな映像なんでしょう?3DCGとは違う、いわゆるメガネをかけて見る立体映像ですか?

モンキー そうそう。ま、メガネをかけても、かけなくてもいいんですけどね。そこにあるモニターは、裸眼で立体が見えるモニターなんです。

 

‐‐‐‐お二人の、立体映像への強いこだわりっていうのは何なのでしょう?

Monkeypunch4_2 おおすみ ひょっとしたら、僕らの世代に共通するものなのかも。わからないけどね。まだ本当に満足してないんだと思う、あらゆるものに対して。
子供の頃にみたかったものが、まだ今のメディアの中で実現してない。

モンキー あー、それはあるかもしれない。

おおすみ れを見たいという欲求がすごくあって、だから限りなくハイテクの方にいっちゃうかもしれないなぁ。
僕の場合は、キャラクターを動かして一つの世界を作るという時に、その延長線上にある立体の世界、それを見たい。だから、立体カメラで実写を撮るというのは、ちょっと違うんです。自分たちが作ったキャラクターや世界を立体空間として見てみたい。まぁ、いわゆるディズニーランドですね。(笑)

モンキー 僕は、単純ですよ。高校生の時に初めて見た立体映像に感動しちゃったからなんだよねぇ。(笑)今でも忘れない「フェザー河の襲撃」という西部劇。

おおすみ あー、「肉の蝋人形」とかね。

モンキー 中学の時にね、朝日グラフってあったでしょ?そこで立体の特集を毎週やってて、鏡を使って見るやつがあってね、その時にサザエさんの絵があって、ひょっと覗いたら、そこにちゃんとサザエさんが立ってるんだよねぇ!(笑)
お~っ、て驚いちゃって、それ以来ですよ。印刷でもできるんだぁってね。
やっぱり、ルパンも立体にして、自分自身が見てみたいんだな。

おおすみ とはいいつつ、立体になったルパンを、二人とも結構見てるよね。前にモンキーさんに誘って頂いて、ソニーの研究所に行って、わーっと飛び出してくるルパンや、拳銃がこっちに飛び出してくるのを見て、二人でキャーキャーと喜んでたの。それはまだ開発途中だったんだけど、企業の都合で解散しちゃったんだよね。その時に、ちょうど大学院の話がきたから、そこで続きをやろうってことにしたの。(笑)

モンキー (笑)そうそう。まぁ、大学入っちゃったら、お互いに研究課題が違って続きはできなかったんだけどね。

 

‐‐‐‐大学での研究課題はなんだったんですか?

 

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モンキー 僕は、漫画をデジタルでみせるいい方法はないかっていうので、おおすみさんは、ストーリーをデジタルで作る方法、だったよね。
大学では無理だったけど、ルパンを立体にするプロジェクトというのは、きちんとあって、ある程度のところまできてるんです。今それを、僕のデジタル漫画とどう組み合わせるかっていう研究をしてるんです。前人未到の「未到プロジェクト」っていうの。(笑)
僕の頭の中のルパンは平面でなく、いつでも立体なんだよね。

 

:1    大塚康生(wikipedia)

:2    大学院・・・ふたりは東京工科大学メディア学部の第一期生

モンキー・パンチ氏 略歴

1937年北海道厚岸郡生まれ出版社で漫画家のアルバイトをした後、1965年『プレイボーイ入門』で漫画家デビュー。1966年「漫画ストーリー」に『銀座旋風児』を発表。1967年「週刊漫画アクション創刊号」より『ルパン三世』を連載。アメリカン・コミック調のタッチで人気を呼び大ヒット。のちにテレビアニメ化、映画化を果たした。1998年から漫画週刊誌「WEEKLY漫画アクション」で17年ぶりに連載を再開。東京工科大学大学院博士前期課程終了。
2005年より大手前大学人文科学部メディア・芸術学科教授。

次回ゲストは「ナイスレインボー」の三木俊一郎監督、石井克人監督
公開は6/3の予定です。お楽しみに!

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vol.3 音へのこだわり


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モンキー そういえば、この間久しぶりにチャーリー・コーセー(注:1)さんに会ってきましたよ。

おおすみ まだ歌ってるんだってねぇ。

モンキー  そう、そう。彼は自分でお店を持っていて、そこで歌ってるの。結構お客さんもいっぱいで、リクエストはルパンの主題歌が多いんだよ。

おおすみ 一日に一回は歌ってるらしいねぇ。

モンキー そうそう。その時、増山江威子(注:2)さんと一緒に行ったの。増山さんが宝塚に住んでいて、僕が神戸に行った時、たまたま増山さんも時間が空いていて、会うことになったの。で、たしかこの近くにチャーリー・コーセーさんのお店があるから行ってみよう、ってことになって、携帯で検索して探してみたら、すぐ近くだったの!(笑)


‐‐‐‐歌声は変わってなかったですか?


モンキー 変わってないねー。張りのある声でね。

おおすみ ほんとに、いい声だよなぁ。

そういえば最近、峰不二子のテーマ曲を、奥田民夫が歌ったんだけど知ってる?

モンキー へー、そうなの?

おおすみ 結構おもしろいよ。ちゃんと感じが出てるの。

あー、CD持ってくりゃよかったな。こんど持ってきますよ。

今日はモンキーさんの新しいスピーカー「エベレスト」で音楽を拝聴するというのも大事な目的だったからね。(笑)

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モンキー あはは(笑)。

おおすみ 僕も昔、ちょうどルパンを作ってた頃、スピーカーが欲しくなって、音響監督の田代敦巳さんに相談してみたの。そしたら「行きましょう!」って、丸一日かけてショールーム巡り! 何種類ものいろんなスピーカーを聴き歩いたんだよね。まだその時はスピーカーの知識も何にもない頃だったんだけど、最終的に一番いいと思ったのが、ジムラン(JBL)だったんだよね。田代さんに「おおすみさん、お目が高い!」って褒められたよ。(笑)

モンキー 俺もちょうど、その頃からハマり出したんだよね。

おおすみ 田代さんは、普通のスピーカーじゃ満足できないって言って、取り壊される映画館から、劇場用のでっかいスピーカーを家に運び込んでたよ。あまりにも大きいからスピーカーの後ろ部分が、家の外壁から出てたけど!(笑)。

モンキー (笑)。僕もやっぱり昔からJBLのスピーカーの音は一番いいと思ってたんだけど、値段が高くいてね。当時はなかなか手が出なかった。

僕は一つのこだわりがあって、買うときは必ず聴いてみるんです。一番の条件で聴けるところを探しすんですけど、「HiVi(ハイヴィー)」という雑誌があるんですけど、そこの視聴室が一番いいんですよね。聴きたいと思う音があると、連絡して聴かせてもらうんです。長い付き合いだから、指定したスピーカーもちゃんと用意してもらえるの。

おおすみ こうやって話しを聞いてると、すごい音響マニアと思うんだけど、モンキーさんのすごいところは、どんなに凝っても、生の音には敵わないという考え方を、最初からきちん持っているところなんです。みんな観念ではわかってるんだけど、なかなか認識できない。

モンキー 生の音ってのは、自分でチューニングできないでしょ?ところが、スピーカーの音は、自分でチューニングして好きな音で聴ける。音ってキャラクターだと思ってるんですよ。だからJBLのスピーカーの音もキャラクターで、そのキャラクターを好きか嫌いかってことなんですよ。


‐‐‐‐自分好みのキャラクター(音)を作っていく作業なんですね?


モンキー そうです。だから生の音よりは、自分の好みで聴けるスピーカーの音が好きなんです。たまに生演奏も聴きにいくけど、ホールによってかなり違うんだよね。それもまた一つのキャラクターになってる訳なんだけど。

おおすみ  全ての音が耳に入ってくる生の音と、「いらない音」と「いる音」を調整できるスピーカーの音は、まったく違うものだよね。

音響スタジオのモニタースピーカーって、ものすごいいいもの使ってるんだけど、あれで音楽を聴いて、いいなと思った事ないんですよ。

モンキー うん。

おおすみ なんでだろう?って思ったら、あのスピーカーは全ての音を聴けるようになってる、それは言ってみれば、ひどい言葉ですけど「あら捜し」ができるようになってるんです。欠点をすぐに見つけられるように。だから、そういうので聴くと疲れるんですよ。そうすると、家に帰って自分でチューニングした音で音楽を聴くとほっとする。安いスピーカーでもね(笑)

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モンキー (笑)そういうことってあるかもね。

おおすみ 今日はモンキーさんの新しいスピーカー、エベレストでぜひ聴ききたいと思ってピンクフロイドの「原子心母」持ってきたんだ。

モンキー おお、いいねー(笑)。聴こう聴こう。

:1    チャーリー・コーセー(wikipedia)

:2    増山江威子(wikipedia)

モンキー・パンチ氏 略歴

1937年北海道厚岸郡生まれ出版社で漫画家のアルバイトをした後、1965年『プレイボーイ入門』で漫画家デビュー。1966年「漫画ストーリー」に『銀座旋風児』を発表。1967年「週刊漫画アクション創刊号」より『ルパン三世』を連載。アメリカン・コミック調のタッチで人気を呼び大ヒット。のちにテレビアニメ化、映画化を果たした。1998年から漫画週刊誌「WEEKLY漫画アクション」で17年ぶりに連載を再開。東京工科大学大学院博士前期課程終了。
2005年より大手前大学人文科学部メディア・芸術学科教授。

次回更新は4/29の予定です

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vol.2 ルパンはアニメ化不可能だった?!


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モンキー 時々、昔描いたものを読み返す時があるんだけど、俺は当時こんなこと考えてたんだぁ、ってびっくりするね。とてもじゃないけど、今じゃ考えられないと思うモノが結構ある。体力的にもだけど、思考的にも今じゃ描けない。だからもう一回リメイクしようかな、なんて思うモノもあるんだよね。

おおすみ そこには、昔の作品は青臭くて今の自分の方がマシだな、という思いがあるのか、逆に今はもうそこには行けないな、という思いなのかどっちなんだろう?

モンキー 後者の方だよね。でも悔しいとかじゃなくて、それが普通だと思うんだ。

おおすみ なるほどねぇ。

モンキー ところで、「16ブロック(注:1)」っていう映画は観た?

おおすみ んー、まだ観てないなぁ。

モンキー 囚人を裁判所まで連れて行く16ブロックの間に、いろんな事件が起こるとういう話なんだけど、とても面白かった。僕が昔描いたルパンの中でもそれやってるんだよね。

おおすみ ルパンには、結構そのパターン多いよね。

黒澤明の「隠し砦の三悪人」もそういうふう作られたんだってね。旅館に泊まり込みで、朝起きると先に黒澤さんが起きていて、その日の枷(かせ)を作ってある。その枷をどうやって突破するかってのでライターみんなが、うんうん頭を捻って考える。そして、解決したらその日は寝る。すると翌朝、また新しい枷が作ってあり、またみんなが頭を捻って考える。そうやってストーリーを考えていったと黒澤さん自身が書き残してるよ。

‐‐‐‐モンキーさんが初めて、ルパンをアニメ化すると聞いた時、演出家おおすみ正秋さんの情報って何かあったんですか?

モンキー 東京ムービー(注:2)の先代の社長の藤岡さんからは少し話は聞きました。あまりMonkeypunch2_1_1 誰が演出するとか気にしてなかったんだよね。不安はまったくなかったんだけど、ルパンはアニメにはできないだろうって当時は思ってた。だけど、できた時には「んー、さすがプロだな」って思ったね。漫画のルパン三世の世界観からずれてなかった。キャラクターの動きにしても、声にしても、僕の考えたものに近かったし。

だいたいあの頃、打ち合わせなんてあったけ?

おおすみ モンキーさんとはないよ。

モンキー ないよねぇ。

おおすみ 当時、メインのスタッフで打ち合わせした時、モンキーさんの言うとおり、ルパンはアニメにならないって、僕以外はみんな思ってたんだ。

モンキー はじめTBSに話を持っていった時、藤岡さんに呼ばれて僕も一緒に行ったんだけど、TBSの人から「ルパンがアニメになったらどう思いますか?」って聞かれて、「アニメになりませんよ!」って言っちゃったんだよね~(笑)。

藤岡さん慌てちゃって、それ以来、僕、会議に呼ばれなくなっちゃった(笑)!

‐‐‐‐どうしてアニメにならないって思われてたんですか?

モンキー 僕の書くストーリーってランダムだから、話があっち飛んだり、こっち飛んだりするんだよね。それに対する説明がかなり必要だと思ってた。そうするとアニメーションとしての「流れ」ができないなと。

Monkeypunch2_2 おおすみ そのうちに藤岡さんが必死になって、「ルパンはアニメになるよ」って人を何人か集めたんけど、その人達は、原作をアニメ風に作り直すというか、それまでのアニメのパターンに合わせられますよ、という発想の人が多かった。

だから、原作の味をそのままアニメに移し変えられるって思ってた僕は、その点だけ孤立してたな。

「アニメ風にやれますよ」っていうのが宮崎駿さんや高畑さんで、彼らは途中から助けてくれた訳なんだけど、時々「ここは、こういう解決方法がいいじゃないですか?この方がアニメ的ですよ」と、善意のあるアドバイスをくれて、それはそれなりに面白いんだけど、やっぱりその当時から、既にアニメーションのパターンってのがあったんだよね、ディズニーも含めてね。ぼくはアニメ出身の人間じゃなかったから、「この原作でなんとかなる」と、頑なに思い込んでたんだよね。(だからアニメのパターンをほとんど捨てちゃって、実写のやり方を参考にしてやるしかなかった。)

モンキー 僕が漫画を描く時は、読者がわからなくても、あえていいやっていう描き方なんだよね。途中どうなってんだ?と、わからなくなったら、また最初に戻って読み返せばいいやってね(笑)。でも、アニメーションではそれができないでしょ。

おおすみ できないね(笑)。

モンキー だから、そのままやるのは、ちょっと難しいだろうなと思ってた。

おおすみ でもルパンはそこをきちっと説明で埋めちゃうと、面白くもなんともなくなっちゃうからね。

モンキー そうそう。

おおすみ だから、それがテイストだってわかってからは、わからないところは、わからないままでいいや、ってのをアニメでも取り入れたんだよね。

でも、そこのところを一番攻撃されたんだよね。僕がクビになったのは、そこです。説明不足ですよ、一言でいえば。テレビ局側は、これじゃぁ見てる人がわからないよって。

モンキー あぁ、そうか…、なるほどね。

おおすみ そりゃわかってんだけどね。こっちは、そんなこと百も承知でやった訳だから。

モンキー でも結果的には、おおすみさんがやった初代のルパンが一番よかった。

僕の世界観に全く近かったからね。

:1  16ブロック--------ブルースウィリス主演のアクションムービー。2006年作品。

:2  東京ムービー(wikipedia)

モンキー・パンチ氏 略歴

1937年北海道厚岸郡生まれ出版社で漫画家のアルバイトをした後、1965年『プレイボーイ入門』で漫画家デビュー。1966年「漫画ストーリー」に『銀座旋風児』を発表。1967年「週刊漫画アクション創刊号」より『ルパン三世』を連載。アメリカン・コミック調のタッチで人気を呼び大ヒット。のちにテレビアニメ化、映画化を果たした。1998年から漫画週刊誌「WEEKLY漫画アクション」で17年ぶりに連載を再開。東京工科大学大学院博士前期課程終了。
2005年より大手前大学人文科学部メディア・芸術学科教授。

次回更新は4/22の予定です

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vol.1 はじめにキャラクターありき


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対談の始まりはインターネットの話題から。

モンキー インターネットが普及し始めた時、僕はパソコン通信が楽しかったね~。当時からチャットとかもしてたしね。

おおすみ ずっと以前に、作家の佐々木守がパソコン通信をネタにして一本作品を書いた時、すごい!って思ったなぁ。多少空想交じりだったけど、本当にそんな時代が来るのかよ、ってね。

今考えるとなんでもないことなんだけどね。彼はルパンやる時、ライターの最初の候補だったんだよ。

モンキー そうだったの?

おおすみ 交渉したんだけど結局無理で、誰かいないかってんで、大和屋竺さんを推薦したの。

モンキー 大和屋さんもよく見つけたよねぇ。Monkeypunch1_1_4

おおすみ 彼の作っていた怪しげな映画をよく見ていて、ファンだったんだよ。それで直接電話したら、彼は緊張しちゃって、あの頃俺まだ30歳そこそこだったんだけど、40過ぎのおっさんからかかってきたと思ったらしくてね、(笑)。

モンキー そういえばルパンを作る時に、はじめて紹介されたのが大和屋さんだったなぁ。

おおすみ そうだったんですか。大和屋さんは、もうルパンだって言ったら舞い上がっちゃって、ルパンなら書きます、書きます!って。でも当初は構成が大変でね。たとえば第二話なんか、はじめの台本通りそのままやったら1時間以上の作品だったんだから。

モンキー へぇ!

おおすみ 当時俺が、ルパンってのは、今までのアニメのやり方ではダメだから、1時間半の劇場もの書くつもりでやってくれと、無茶苦茶なこと言ったんだよね(笑)。

モンキーさんの世界をアニメにするには、30分の中に構成をギュッと詰め込みたかった。それを説明するのに、「1時間半の劇場ものを毎回30分に縮めるくらいの密度で。」と例えで言ったら、みんなきちんと1時間半の台本を書いてきちゃった!(笑)。

モンキー あはは。それは直すの大変だね~。

おおすみ しんどかったぁ!

モンキー でもね、ぼくなんかもそうですよ。一塊のストーリーを長くしようとすると、けっこうダラダラしちゃう。だから色んな要素をたくさん持ってきてそれを縮めた方が濃くなるってのは確かなんだよね。漫画描く時も、はじめからダーと描いていくとどうしても枚数が増えちゃう。どうするかっていうと、最終的に前の方を削っちゃう。省略できる所は削る。それで最終的に枚数を合わせいくというのが僕のやり方だったね。

Monkeypunch1_2_5 おおすみ 描いていくと長くなってしまう漫画家のタイプが2つあって、ひとつはストーリーがどんどん増えていっちゃうタイプ。でもモンキーさんは、このタイプじゃなくって絵のコマが増えていっちゃうタイプだよね。

モンキー そうそうそう。

おおすみ 珍しいタイプの方、笑。でもそのほうが漫画らしくなっていいんだけどね。普通は連載中にストーリーの方が増えってちゃう、だからダラダラと長くなっちゃうんだよね。

モンキー そうかもしれないね。描く順序の問題もあってね、例えば出だしがバッと決まる、そういう時は大体結末がまだ決まってないんだよね。でもとにかく進んじゃおって。でも描いててもなかなか結末が思いつかない(笑)。で、やっと結末が決まった頃には長くなっちゃてるから、前の方を削っちゃう。

おおすみ 映像つくる人間が一番刺激を受けたのがそこで、すごく映像的なんだよね。ひとコマひとコマ描きたい絵があって、その裏側にあるストーリーを書き起こそうとするとわーっと大きな話になっちゃう。

モンキー 削った部分で、またストーリーを作っちゃうこともあるんです。この絵は無駄にしたくない!って(笑)。

おおすみ まさにそこなんです。

最近のオーソドックスな作品の作り方は、まずテーマを決めて、ストーリーを決めて、役割を決めて、役割が決まったら、はじめてキャラクターを作る。そういう作り方をするとあまり面白いものはできないんです。アニメーションに限らず、基本的にキャラクターがあって、そのキャラクターのイメージでストーリーができていくという風に、また戻っていかなければダメなんじゃないかと思う。

モンキー 僕も、はじめにキャラクターありきだと思うね。やっぱりキャラクターが決まらないと、漫画は決まらない。

おおすみ ルパンを見てるとよくわかるよね。最初に面白い絵が思いついて、そMonkeypunch1_3_1 のひとコマに拘ってストーリーを広げていってる、そういうのが原作を見てるとよくわかる。それにアニメーションもすごく刺激を受けていた。

これからは、そういうモノの作り方を、正当なものとして組みなおしていかなければならないと思う。それがまだメソッド化されていない。冗談みたいに言ってんだけど「漫画家の脳内解剖」をしてね、そのプロセスをメソッドにしていこうかと、笑。それにはどうしてもモンキーさんの助けが必要だから、まだしばらく死なないでよ!

モンキー 俺の方が年下だよ(笑)!

モンキー・パンチ氏 略歴

1937年北海道厚岸郡生まれ出版社で漫画家のアルバイトをした後、1965年『プレイボーイ入門』で漫画家デビュー。1966年「漫画ストーリー」に『銀座旋風児』を発表。1967年「週刊漫画アクション創刊号」より『ルパン三世』を連載。アメリカン・コミック調のタッチで人気を呼び大ヒット。のちにテレビアニメ化、映画化を果たした。1998年から漫画週刊誌「WEEKLY漫画アクション」で17年ぶりに連載を再開。東京工科大学大学院博士前期課程終了。
2005年より大手前大学人文科学部メディア・芸術学科教授。

次回更新は4/15の予定です

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