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痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 作者:夕蜜柑
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防御特化と小手調べ2。

ペイン達の元に空から大量の攻撃が降り注いだのと時を同じくして、サリー達のいた主戦場にも当然同じことが起こっていた。


「っぶねえ!」


「でも、助かったね」


「ああ、【炎帝ノ国】も追っては来ないだろう」

砦の中で守りを固めていたこともあり、【炎帝ノ国】は素早い追撃も退却も難しい。その分その場に居座るのは強力になるのだが、今回はそれが幸いした。


「生きている人はかなり少ないかな……?」

サリーは自陣側に戻りつつ、同じように退却するプレイヤーを数える。


「避けていて正解……だったのかしら?」

【インフェルノ】を見たことがあったサリーは、あれが持続ダメージを与えるエリアを生み出すことを知っていた。

咄嗟に【鉄炮水】で自分達を押し流し距離を取ったことと、戦場の端の方にいたことがプラスに働いた形だ。

五人はハクに乗って降り注ぐ魔法の雨を避けて移動していく。


「あのミィを包んでいた火球。あれが何か追加効果を持っている可能性が高いです」


「俺みたいにダメージをゼロにするスキルを持ってる奴だって、ミザリーほどじゃなくとも回復役だっていたはずだ。それでもこれだけ死ぬのはただ高火力ってだけじゃなさそうだな」


「スキル封印か、被ダメージ増加か……」


「うーん、【インフェルノ】の継続ダメージを上げている可能性もあるね」


「候補が多すぎて分からないけれど、とにかく当たらないようにしないといけないわね」


「地形ダメージみたいなタイプだとメイプルでもダメだしな。あとで注意するよう言っとこう」

少なくとも当たったもの全てを問答無用で消し飛ばす威力があるのは間違いない。

次に対面した時もここぞというタイミングで撃ってくるだろう。今、生き残ったプレイヤーにできることはこの情報を持ち帰ることである。


「悔しいが……ここは俺達の惨敗か」


「どこかで取り返すとしよう」


「借りは返さないとね」


「はい。イズさんも上手く敵陣に辿り着かせられなかったので……どこかで敵を減らしたいです」


「分かったわ。私はいつでも大丈夫よ」

ミィが未知のスキルによって大量のプレイヤーを葬ったように、【楓の木】にもまだ見せていないスキルがある。上手く状況を整えれば、今度はこちらが大きな戦果を得られるだろう。

同じように逃げているプレイヤーを見つける度、ハクに乗せて安全を確保しつつ、五人は町まで帰りつく。

外壁前のバリケードは健在で特に耐久地も減っておらず、いないうちに襲撃されたというようなことはなさそうだった。

ハクを指輪に戻して連れ帰った生き残りのプレイヤー達と解散したところで、ハクの姿を目に留めた毛玉状態のメイプルがマイとユイに担がれて町の中からやってきた。


「おかえりサリー!空からすっごい魔法が落ちてきてたけど大丈夫だった?」


「そっちは大丈夫。メイプルは……何かあったの?」


「皆を運んであげてたんだ!」

メイプルがその方法を伝えると五人も流石に驚いたようで、なるほどメイプルらしいと笑いをこぼす。


「流石に相手も予想外だっただろうなあ……」


「ふふ、予想する方が難しいね」


「じゃあ思ったより他の所は勝ってるかも……うん。メイプル、ありがとう。ナイスアイデア!」


「そう?でもほとんどマイとユイのお陰なんだー!じゃないとあんなに飛んでいけなかったし!」


「二人もメイプルを吹き飛ばす役、ありがとう。って……なんか変なお礼になっちゃうけど」


「ど、どういたしまして……?」


「メイプルさんが無事に着地できていてよかったです!」

吹き飛ばした後はメイプル次第なのだ。下手をすれば敵陣ど真ん中に落下することもある。そういう意味では運に支えられた戦略でもあったが、結果的には多くの味方の窮地を救うこととなった。


「メイプルが頑張ってくれたのに申し訳ないんだけど、こっちは上手くいかなかった」


「そうなの?」

サリーはメイプルに手短に事の顛末を話す。


「うーん、ミィとはパーティーを組んで戦ったりもしたけどそれは見たことないかも」


「だよね。メイプルも注意しておいて、【不屈の守護者】とかあったはずの大盾使いの人とかも倒されちゃってたから、メイプルなら無効化できるかもしれないけど……」


「駄目だったら大変だもんね!」


「そういうこと。で、どこかで何とか反撃したいんだけど……」

先程の戦闘で総プレイヤー数には差ができてしまった。集団戦に強い【炎帝ノ国】や【thunder storm】、奇襲に強く先制攻撃にも長けた【ラピッドファイア】がいる敵陣営は今回のイベントで強みを活かせると言える。

こちらもどうにかして崩していく必要があるだろう。

メイプルは少し考えて、一つ頷き、自分の中で何か答を出すと口を開く。


「やっぱり……私も戦った方がいいと思う!」


「でも、もし貫通攻撃が当たったら……」

メイプルの【不屈の守護者】はクールダウン中だ。戦場に必要な存在ではあるが、今出向くのには大きなリスクが伴う。


「サリーなら守ってくれるでしょ?ほら!こうやって、いつもみたいに攻撃を弾いて!」

メイプルはサリーがするように、シュッシュッと腕を振って短刀で空間を斬り払う真似をする。


「……!」

それが当たり前であるように。平然とサリーに絶対の信頼を寄せるメイプルを見てサリーは一瞬きょとんとしたものの、それはすぐに自信あり気な表情に変わる。


「分かった。任せて。全部弾いてみせる」


「うん!信じてるよー!」

メイプルを守る最後の盾、それは自分自身であると。もう、何一つ通さない。サリーはそう決意を固めた。


「じゃあ話は変わるね。メイプル、早速攻めに行きたい」


「分かった!」

どのイベントも展開は想定を超えて加速していくものだ。今回もまた様子見をしていられるほど戦場は穏やかではいられないらしかった。


「当然俺達もだよな?」


「勿論です」


「オッケー。ふふ、今度は勝とうね」


「私もそう何度も遅れを取るつもりはない」


「そうね。マイちゃんとユイちゃんも一緒だもの、バフもかけがいがあるわ」


「「が、頑張ります!」」


「いつでもいいよサリー!」

今度は【楓の木】として、全力での再出撃だ。ここで負けると相手も勢いづいてより苦しくなるのは間違いない。

そうさせないために、咄嗟の場合の対応や基本の動きを再確認して、八人は決してミスをしないように準備をするのだった。

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