無情にも放り込まれた
故郷まで送っていってもらうために麦わらの一味と旅をする。
主人公の女は悪魔の実も食べないし、覇気もできない。強くもない、どこにでもいる日本人がワンピースの世界にトリップしたらこれがリアルかなって。
殴り合いの喧嘩だって非日常の主人公からすれば、ルフィたちの戦いも暴力と一緒に見えそうだなあって。序盤は一味に馴染めず浮いてます。
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船長であるルフィに連れられて船に乗ったのは根暗で俯いていてばかりの女だった。
少なくとも他のクルーたちは少女、もしくは子ども、ガキと評しただろうが、女の年齢からすれば既に成人として認められる年ごろである。
しかし自分の年齢を女が面々に話すことはなかった。
ルフィに連れられて、名前だけ名乗り居候として世話になると告げた女。
突然のことに、はあ?と呆れるクルーに「故郷に送り届けてやるんだ」とルフィは胸を張る。各々思う所はあったが、船長が決めたこと。まあ、ルフィだし、このノリに一々突っ込んでたら身がもたないことをクルーたちは既に知っていた。
と、その場では恭順の意を示した。
女は明るい性格ではなく、こそこそと小さく隠れるように生活した。
ただでさえ幼いと思われているのに、そこからさらに下を向き接触を拒む様子は麦わらの一味にとって好意的には見えなかった。
面倒見のいいナミやウソップ、サンジが女に話しかけるが曖昧に返されて沈没。どこが故郷なのか、場所はグランドラインにあるのか、そもそもなぜ帰りたいのか、彼らは言葉を変え物を変え、女の為人を知ろうとした。
しかし「そうですね」「はい」と困ったように笑いそこから話が前に進まない。
面と向かって嫌いだ、話しかけないでくれと言われるよりも女の間接的な拒絶は彼らを戸惑わせた。
いくつかの島を経由し、女が何の役にも立たないと気づくのに時間はかからなかった。戦闘員としての力もない、コックや医者、なにか特別な知識や経験を生かしてくれるわけでもない。
戦いが始まればルフィの背に隠れるか、後ろに引くか、そもそもあまり船から外に出ない。
役に立たないことに対してクルーは頭を悩ませているわけではない。女が彼らと関わる気をまるで見せないことに多少なりとも不満を抱いていた。個性大爆発、自己主張当たり前の彼らにとって女は未知の生物と言えた。
共に生活するのであればある程度の接触は免れない。しかし食事の時間をずらされたり、顔を合わせてもすぐに下を向かれてそくさくと逃げられてしまえば誰だって傷つく。
その時船に便乗していたビビは根気強く女に付き合っていたが、ビビはビビで自国のことを考えなければならない。それでも食事に誘い、根気よく話しかけ、いくらか女の態度に変化が現れた。
ビビに会えば「おはようございます」と小さく挨拶をしたし、話すときは顔を上げるようになった。まあまだ臆病にではあったが、それでも時々合わさる瞳が綺麗だとビビは思っていた。