イラストエッセイストの松鳥むうさんが、紀行エッセー『むう風土記~ごはんで紐解く日本の民俗・ならわし再発見録』で、唐津市呼子町の小川島に伝わる家庭料理「なべぞうせ」を取り上げている。2度にわたって島を訪ねて、旅先での温かな出会いを交えながら鯨食文化の魅力をユーモラスに描いている。22日、出版する。
小川島の「なべぞうせ」は、短冊切りにした皮鯨とサツマイモの雑炊。鯨食文化が今も残っていないかと訪れた小川島で、むうさんは「鯨の骨切り唄保存会」のメンバーに偶然出会い、家庭の味である「なべぞうせ」の存在を教えられる。
骨切り唄は、鯨を解体するときにリズムを取る歌で、小川島では他の捕鯨基地とは異なり、解体は女性たちの役割だった。
♪アー よう切る よう切る
アー 小川山見から ソーライ こう崎見れば
保存会メンバーに実際に歌ってもらい、「骨切り唄を歌いながら、小さく刻まれた鯨の骨は、大釜で煮られ、そして鯨油が抽出されたのだ」と感激をつづる。
『むう風土記~』は全国各地の食文化を軸に、伝統行事や伝承などを100点以上のイラストともに紹介する。取り上げた郷土料理は、鹿児島県の茶節、沖縄県の沖縄てんぷら、滋賀県のふなみそなど。
冒頭、むうさんは「日本人の味覚はどんどん変化していて昔の行事食が苦手という人が老若男女問わず増えています。今のうちに見て食べて話を聴いて、ゆるめの『風土記』として残しておきたい」と思いを記している。(古賀史生)
▼『むう風土記~ごはんで紐解く 日本の民俗・ならわし再発見録』はエイアンドエフ刊。四六判、304ページ。税込み1980円。