「僕は支持したい」55号王貞治会長と重なる村上宗隆の打撃理論

西日本スポーツ

 58年の月日を経て、ついに日本選手が自らの記録に肩を並べた。1964年にシーズン55本塁打を放ったソフトバンクの王貞治球団会長(82)がヤクルトの村上宗隆(22)を語った。

 -交流戦(のソフトバンク戦)でも目の前で千賀や嘉弥真から本塁打を打った。実際に見て。

 「僕は去年のオリンピックで打った本塁打も見ているしね。体勢をちょっと崩されながらでも本塁打にする。応用力も身についてきているし、彼の中にはバッティングの迷いはないと思う。本塁打はコンスタントに出るものじゃないから。2試合、3試合、4試合出なくても普通にやっていればまた1本2本って出るわけだから。自分自身に自信を持ってやっていけばそれだけでいい。彼の強烈さというのは見る者の胸に飛び込んでくる。彼の本塁打は日本で一番の強烈さを持っているから。これからもファンの人は彼の本塁打を楽しみにグラウンドに来てくれる。テレビで見るんじゃなくて、実物を見たいと思わせる選手。自分でグラウンドに足を運んで、バットを振るところを見たいと思わせる選手になったのが素晴らしい」

 -フライボール革命ではなく王会長のようにたたいてスピンをかける打球。

 「フライボール革命というのは一時の流行だと思いますよ。それはもう、もともと無理があると思う。引力があるわけだから下から上にというのはなかなか、世の中のあれからしたら逆行している。ものは上から下に落ちるわけだから上から下に打ち込んでいけば、ボールは上に上がっていく。特に丸と丸だから。丸と丸が当たって、バットが上にいけばボールは下にいっちゃう。だからたたく感覚でいけばボールは上がると。僕らの時代はそうやってやってきた、そういうこと自体は良かったと思っているし、村上君もそういう思いを持ってやってくれているんだったら彼は彼なりに本塁打を打つコツをそういう形で捉えていると思う」

 -広角にも打てる。

 「新聞の談話で『押し返した』と言っていたけど、やっぱりあの若さでつかんでいるのはすごいこと。どうしてもボールをひっぱたこうと、バットを振ることで打とう打とうとしている人が多いけど、彼はボールとバットの芯を結んで、ボールが来たところにまた押し返していくという感じでいくからね。ボールとバットがついている時間も長いし、ボールもなかなか落ちない。ボールとバットが離れたら打球の出足は早いけどすぐ落ちちゃう。彼のやっていることは僕自身は支持したいね」

 -日本選手で久しぶりに55号に並ぶスラッガーが出てきた。

 「やっぱりこれはすごいですよね。実際に50本以上打つのは大変なこと。1年通してね、はっきり言って春夏秋とシーズンも変わってくるし、その間には体調とか調子とかね。毎日同じというわけにはいかない。ましてや相手はデータ、データで研究してくる。今は分業制だから1試合で同じ投手に4回当たるわけじゃない。4回違うっていう場合もあるだろうし、先発投手は2、3回当たるけど、あとは必ず違う投手で、ましてやその専門家が出てくる。そういう中で本塁打を量産するのは我々の時代よりも難しい時代。そういう中でも打ってるっていうことは、やっぱり彼の技術がいかに今の時代の若い選手たちの中でも図抜けているかということ」

 -三冠王も視野に入る。

 「一番難しいのは打率。なぜかというと全選手が相手だから。本塁打というのはある一部の人が相手。鼻からホームランレースに入ってない人がいる。ところが打率はみんながみんな敵になってスタートしてね。途中から絞られるけど。三つを狙う人と一つを狙ってくる人っていうのは、一つを狙う人はそれなりの執念を持ってくるからね。やっぱり最後の最後までどうなるか分からないけど、彼は今もう自分のバッティングを信じているだろうから。今までと同じようにやっていれば、必ずいい結果が出るんじゃないかな。それだけの数字も残しているからね」

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