2022.09.08
# ライフ

高齢者に「タメ口」「上から目線」で接する“残念な介護職員”が生まれるワケ

親しくなるのはよいけれど…
河北 美紀 プロフィール

「介護の現場」からのリアルな声

都内の介護サービス事業者連絡会が、介護職員を対象に高齢者虐待防止法に関する研修会と、参加者むけのアンケートを行いました。

アンケートの中の「利用者に軽んじた態度で接してしまったことがあるか?」という問いに対して、下記のような回答がありました。

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・馬鹿にしたことはないが、なれなれしく接したことはある

・同じことを何度も繰り返し聞いてくる利用者に「たった今お話ししたでしょう?」と言ってしまったことがある

・指示を聞き入れない方につい強い口調で言ってしまう

・敬語を使わない

・冗談を言おうとして軽率な言葉を出してしまい、利用者を怒らせてしまったことはある

・軽んじているつもりはないが、可愛らしいなとフッと笑ってしまう

・気を抜くと友達に話しかけるような言葉になってしまう

・言葉には出さなくともイライラした心が伝わっているかも?

*以上、江戸川区地域密着型サービス事業者連絡会調べ

このアンケートの回答をみて分かるように、利用者に対する言葉使いを含む「接し方」について、課題がありそうですね。

介護現場によってはなかなか敬語が定着しない……という背景には、高齢者の介護サービス依存度が高く、介護職員が日常的に生活援助・身体介護を提供することによる親密度の高まり、親しみが理由のひとつにあると感じます。

利用者によっては、家族より介護職員と多く時間を共にすることになります。良い意味で、高齢者にとって介護職員は「頼りになる存在」となり、介護職員は高齢者の日常生活に組み込まれ支えていくことで親密度も高くなっていきます。

こうしたことから言葉使いがフランクになっていく、崩れていくというケースが多いようです。しかし、ここまでは一概に悪いと決めつけることはできないように思います。

問題は、介護職員が、誰かに頼らなくては日常生活を送れない高齢者と接するうち、「この人は、自分がいないと生きていけないんだ」とか、「私がお世話をしてやっているんだ」という錯覚や思い込みを起こすことです。

「支配的な関係」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、無意識に、「上から目線」の感情が芽生えてしまうことがあるのです。

また、介護職員はベテランになればなるほど様々なケースを経験し、場数を踏むことで実績となり、自らのケアに自信を持ち過ぎてしまうこともあります。ふとした場面で、上から目線の軽んじた言葉がふっと出てしまうこともあるのです。

後編記事〈呼び捨て、命令口調、子ども扱い…高齢者が介護職員に言われて「イヤな気持ちになった言葉」〉では、言葉使いについて、介護施設を利用する高齢者のホンネを探ります。

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