才能ゆえの孤立 「ギフテッド」が集まるバーで記者が考えたこと

有料記事

伊藤和行
[PR]

 東京・新宿ゴールデン街にあるバーで週1回開かれている「サロン・ド・ギフテッド」という集まりにお邪魔した。フォトグラファーの立花奈央子さん(39)がカウンターに立つ。

 飛び抜けた才能に恵まれながら、周囲となじめず困難を抱える子どもたち。そんな子ども時代を過ごした立花さんら当事者や、支える人たちをA-stories「ギフテッド 才能の光と影」で紹介した。

 バーを訪れていたIQ(知能指数)が150超の男性は、会社の上司とコミュニケーションがうまくとれずに退職させられたと言う。コーカサスの民俗舞踊を趣味にする男性は「人の気持ちが理解できず、自分のことばかり話してしまう」と悩みを語った。

 立花さんは36歳で自分のI…

この記事は有料記事です。残り671文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
  • commentatorHeader
    長島美紀
    (SDGsジャパン 理事)
    2022年9月4日0時18分 投稿
    【視点】

    ロシア語通訳として活躍され、その後エッセイスト、小説家としても素晴らしい作品を残した故米原真理さんの作品にはこのギフテッドについての言及(作品では「才能」)を持つ人の存在が紹介されます。 「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」では、米原さんがプラハのソビエト学校に通っていた時代、教師が教え子の才能を発見すると我を忘れて大騒ぎし、うれしくて授業そっちのけで同僚や生徒と喜びを分かち合ったことが紹介されています。米原さんは「恵まれた才能に巡り合えたことを心から幸せに思った」とし、他人の才能を無私無欲に祝福する特徴を紹介しています。その後彼女が通訳で出会った多くのソ連からの亡命音楽家や舞踏家がソ連を涙ながらに懐かしむ理由となっており、「こちら(西側)であ才能ある者を妬み引きずりおろそうとする意図が多すぎる。ロシアでは、才能がある者は、無条件に愛され、みんなが支えてくれたのに」という言葉を紹介していました。 日本でギフテッドという言葉が紹介されるようになったのは最近ですが、記事を読み才能が生き辛さや他者とのコミュニケーションがうまく取れないという、ギフトのはずが負担になっている現状に驚かされます。日本は同質的な社会であるとしばしばいわれ、思考や価値観、行動原理が比較的同質的なものになりやすい環境では、その平等・同質さを重んじる環境になじまない(あるいはなじめない)人は排除や批判の対象になり、その異質性がもつ価値を認めにくいのかもしれません。 ギフテッドをめぐる問題は、日本社会の多様性の受容にもつながります。より議論が広がることを期待します。

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    おおたとしまさ
    (教育ジャーナリスト)
    2022年9月4日9時45分 投稿
    【視点】

    文科省のギフテッド教育が英才教育路線を否定したのは妥当だと私は思う。いま知能指数が突出した子どもをギフテッドと呼ぶ傾向にあるが、「才能」は知能指数だけじゃない。体力が突出している子もいれば、数値化しにくいだけで、音楽的才能や芸術的才能が突出

    …続きを読む