――『ポケモン ウルトラサン・ウルトラムーン』は、『ポケモン サン・ムーン』の発売から約1年と、近作の中では短めのスパンでの発売になりますが、これには何か狙いがあるのでしょうか。
大森 最近はネットの発達によって、情報更新のスピードがものすごく速くなりましたよね。ちょっと前よりも、ある情報を得て、消化するまでのサイクルがとても短くなっている。そういう時世では、なるべく早めに情報を出し、新しくゲームを出していくことも大切になってきていると感じています。今回、短い期間で新作をリリースする理由には、そうしたことも影響しています。
岩尾 『ポケモン サン・ムーン』を作り終えた後に、アローラ地方ではまだまだやりたいことがあるな、と思ったんです。たとえば新登場の“マンタインサーフ”がそのひとつで、ハワイをモチーフにしているアローラ地方では、やっぱりサーフィンがやりたいですよね。そういった要素を遊んでいただくとすると、2年後、3年後では遅すぎるだろうと。ユーザーさんの中でのアローラ地方のイメージが固まってしまう前に、もっともっとアローラ地方の多様性を感じていただけるゲームを提供したかったのです。
――アクション操作が楽しそうなマンタインサーフですが、プレイ感はどのような雰囲気なのでしょうか。
岩尾 パッと見はポケモンライドのようですが、じつはそれ以上にバリバリのアクションゲームになっています。とはいえ、ストーリーにも絡んでくる要素なので、複雑すぎて遊べないということにはしたくなくて。操作自体は簡単で、左のアナログスティックだけで遊べるのですが、それでいて大自然を相手にしている緊迫感を感じられるように、開発を進めました。
――実際のサーフィンのように、波に乗って楽しむ感じなのでしょうか。
岩尾 そうですね。サーフィンは自然を相手にするスポーツなので、対人のスポーツと比べると、採点ひとつとっても大らかなところがあります。マンタインサーフでは、そういう部分も含めて、ある種のリゾート感を表現できるように努力しました。
――新要素も多くあるようなのですが、改めて『ポケモン ウルトラサン・ウルトラムーン』と『ポケモン サン・ムーン』の立ち位置を説明していただけますか。
岩尾 物語としては、“続編”ではないです。まだ詳細は明かせませんが、『ポケモン サン・ムーン』とは“少し違った分岐をしているストーリー”ですね。世界観やキャラクターの基本的な性格づけなどは『ポケモン サン・ムーン』を踏襲していますが、その上で、本作では、キャラクターたちの心理描写や動機を意識して掘り下げています。
――先日公開されたビジュアルを見ると、リーリエが『ポケモン サン・ムーン』ではある出来事のあと以降にお披露目する姿で描かれていますが、リーリエの性格などが変わっているわけではないと。
岩尾 そうですね。性格が変わったりしているわけではないです。『ポケモン サン・ムーン』とは異なるストーリーが進む中で、リーリエというキャラクターが、どのように振舞っていくか、ということですね。そういう意味だといちばん変化があるのはハウですね。
――確かに、ハウは表情からして勇ましい雰囲気になっていますよね。
大森 『ポケモン ウルトラサン・ウルトラムーン』では、『ポケモン サン・ムーン』の登場人物たちに新たな出会いや出来事が待っています。そうした中で、各々が自分なりの選択をし、成長をしていくことになります。
――非常に気になるところですが、新しいキャラクターも登場するんですね。
岩尾 “ウルトラ調査隊”というキャラクターたちが登場し、そこから物語の軸が変わります。
大森 彼らはオープニングから登場するので、ゲームを始めてすぐにワクワクする展開になりますよ。
――えっ!? 本編ストーリーの後に追加エピソードが入るような形ではなく、オープニングから違うと。もしかしたら、『ポケモン サン・ムーン』とは、かなり違う内容に?
大森 そこはプレイしてのお楽しみということで(笑)。ただ、言ってしまうと、『ポケモン サン・ムーン』とは違う展開のメインストーリーがあった上で、殿堂入り後には追加の新エピソードがあります。かつての『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』に対する『ポケットモンスター プラチナ』などをイメージされているユーザーさんから見ると、もっともっとウルトラな変化が期待できると思います!
――それは非常に楽しみです! ちなみに、開発に当たってチーム内で掲げられた方向性やコンセプトなどはありましたか。
岩尾 まず『ポケモン サン・ムーン』とは別の作りかたをしなければいけない、ということを早々に感じました。『ポケモン サン・ムーン』は弊社スタッフがほぼ総がかりで3年強かけて作ったタイトルです。それと比べると今回の開発期間は約1年。同じようなパワーの掛けかたでは作れません。ですので、どういうポイントを進化させていくのかを徹底的に考えました。そこから導き出されたのが“深める”というコンセプトです。あることを“深める”ためには、どうすればいいのか? そこからさらに考えを巡らせて出てきたキーワードが“核心”です。よく“核心に迫る”や“核心を衝く”という言いかたをしますが、ものごとの“核心”について考えることは、すなわち“深める”ということです。本作について、開発スタッフが何か発想したり判断する際の指針として、この“核心”という言葉を置き、チームの意思統一を図りました。
――なるほど。『ポケモン サン・ムーン』という元作品を受けつつも、異なるゲームを作る上では、あらゆる事物の深みを増し、核心に近づくことがテーマとなったわけですね。
大森 その通りです。
岩尾 本当は自分が細かい仕様を決めて実装していきたいと思うこともあります。直接、手を動かしたいのです。でも、現実問題としてそれには無理があると。そこで重要になってくるのが、現場スタッフのあいだでクリエイティブに関する共通の意識を持ってもらうことなんです。しっかりと開発テーマを定めて、全スタッフがそれを意識しつつ、現場スタッフの判断で、各パートの開発を進めていくことが理想だと思います。
――ゲーム全体の方向性についての共通意識がないと、各パートの開発が間違った方向へ進んでしまったり、それをリカバーするためにさらに時間を要したりしますからね。
大森 今回、そこはとてもうまくいったと思っています。開発終盤で『ポケモン ウルトラサン・ウルトラムーン』を遊んでみて感じたのですが、とにかく、いろいろな人たちのアイデアが随所に詰まっているんですよ。そうしたアイデアが彩りとなって、作品全体が活き活きとしているように見えます。きっと、遊ぶ人にもそれが伝わるんじゃないかなと。