いっぽう日本の場合、会社を作ってまともに経営していれば大丈夫です(注.在留資格「経営管理」取得には資本金500万円以上の企業経営が条件のひとつ)。また、経営者であれば原則的には家族を呼び寄せることもできます。私自身については、将来的に華人社会の規模が大きいアメリカなどに移る可能性もありますが、まずは日本にいる形です。
日本から中国国内向けの配信で登録者は数十万人
──王さんのYouTubeチャンネルは中国語で、日本語の字幕がないものもあります。数十万人のチャンネル登録者の大部分は、おそらく中国人でしょう。
王:ええ。私自身、本当は中国国内で取材活動を継続して、14億人に向けて情報を届けたいのです。海外にいたのでは中国社会の改善のために携わることができませんから。しかし、前回の帰国時(注.2021年5月末に母親が逝去して一時帰国)、もはや現在の情勢では中国国内で活動できる可能性はないと悟りました。ならば海外に拠点を置くしかありません。
──誰に向けての情報発信を意識していますか?
王:あくまでも中国国内向けの情報発信を意識しています。さいわい、中国国内からも多くの人が翻牆(壁超え。技術的にネット閲覧規制を突破すること)で私のチャンネルを見ていてくれるみたいです。中国国内のネット空間にこっそりシェアしてくれる人もいますから、数十万人いるチャンネル登録者数以上の影響力はあるのでしょう。
海外の(伝統的な反体制派の)華人向けの放送をやると、どうしてもセンセーショナルになります。やがてアクセス稼ぎのためにどんどん過激になって「習近平が脳動脈瘤で倒れる!」みたいなデマや陰謀論を連発するようになってしまいますから。私はそれとは目指すところが違います。
党がメディアを徹底的に管理する
──習近平政権の成立以来、国内のニュースを肯定的にしか伝えない「正能量」(プラスエネルギー)の風潮が非常に強まりました。メディアの環境はどう変わりましたか?
王:最大の変化は、社会問題の「批評」が許されなくなったことです。また、中国共産党が国内メディアの資本や人事・報道内容・報道の方向性などをすべて管理するように変わったことも非常に大きい。
アリババやテンセントなどの民間企業に対しては、メディア事業からの資本の引き上げを求めています。メディアに対する民間企業の影響力を排し、党のみのコントロール下に置くべきというわけですね。もちろん、報道各社のあらゆる社内人事も党に左右されます。優秀な人材でも、党のチェックを経た人物でなければ編集長その他のポストには就けません。論調が「正能量」ばかりになったのも言うまでもないでしょう。