愛喰む食喰餓神 — LUNATIC PREDATOR —
雅彩ラヰカ/絵を描くのが好きな字書き
プロローグ 月に彩られたテーブル
人が寄り付かない山でサバゲーをしよう。臨場感って大事だろ? そんな謳い文句にほいほいとのった自分を殴りつけてやりたいと思いながら、彼らは山を走っていた。
背後から悲鳴が上がり、バキバキと
町田裕二は大学にできて半年ほどしてできた恋人を抱き寄せて、「大丈夫だ、悪い夢なんだ」と必死に言い聞かせるが、彼女が落ち着くことはなくパニックを起こし、わけのわからないことを喚いていた。
「大声を出すな、居場所がバレる!」友人の熊谷に言われ、だからといって恋人を無視することもできない町田は彼女の手を引き、
ぷらん、と、恋人が肘から先だけになっていることに気づいた。
「うぁ……ぁぁ……っ、ぁぁあああああああ!」
「待て町田! 俺を——っ、ぎぁああああっ、あっ、が……ぁぁ——あ」
ミシミシ、バキッ、ゴリュッ。
ベキッ、パキン、ゴクンッ。
「お腹すいた」
ぬばたまの闇から這い出てくるのは、今しがた異形の捕食形態を取っていた女。
青みがかった銀髪と、赤い目。衣類は細胞組織を組み替えて作った擬似的なもので、ビジネススーツの形を取っている。
口の中の、さっきの子供っぽい男女の奥歯をこりこりと噛んで砕き、嚥下した。
「狩りはまだ終わってないだろう。……ふふっ、いい時代に帰って来れたよ、本当に」
逃げ回る小鼠を見据え、女はずるりと走り出す。
青年が泣きじゃくりながら走り、そして足を滑らせて滑落。派手に全身を打ち付け、手足がおかしな方向にねじくれた状態で岩場に落っこちていた。
だが、まだ息はある。
「楽にしてほしいかい?」
女が問うと、青年は泣きながら「かえりたい、うちにかえらせて」と懇願してきた。
うっそりと微笑んで、女は首を横に振る。絶対の捕食者の笑みで。
「駄目。ご飯を残すのは良くないって、教えられただろう? ——じゃあ、じっとしているんだ」
ばうっ、と女の体が裂けて巨大な口になり、青年を頭から飲み込み——ぐしゃり、と噛み砕いた。
咀嚼して、飲み込んで、擬態している姿に戻ってから両手を合わせる。
それから清々しいまでの笑みを浮かべ、こう言った。
「——ご馳走様でした」
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