エリザ@elizabeth_munh·Jul 3お昼のTIPS。 19世紀以前、料理は過酷な仕事であり、しばしば命の危険が伴った。 料理をするには火を使わないとならないけど、木炭や石炭を使っていた時代は有毒ガスが発生し、しかも温まるのに時間がかかるし火加減の調整も利かなかった。料理人はしばしば厨房で失神して死んだ。434,19910.7K
エリザ@elizabeth_munhこれを改善したのがガスコンロ。つまみを捻ってガスの出力をいじれば火加減は思いのまま、すぐに望みの火力も出る。 この発明者がアレクシス・ブノワ・ソワイエ。イギリスの料理人で、また、食史に巨大な一歩を記した戦うシェフ。 その生涯は波瀾万丈だった。2:44 AM · Jul 3, 2022·Twitter for iPhone1,150 Retweets22 Quote Tweets2,808 Likes
エリザ@elizabeth_munh·Jul 3Replying to @elizabeth_munh19世紀のフランスに生まれたソワイエは修行を積んだ末、外務省お抱えのシェフとして栄達する。 しかし1830年、ナポレオン没落後、反動政治を布いていたブルボン王朝に対して七月革命が勃発。革命派が外務省にも殴り込んできて、ソワイエは命の危険に晒された。貴族の一味と思われて殺されかねない。12991,320
エリザ@elizabeth_munh·Jul 3慌てて帽子とエプロンを脱ぎ捨てたソワイエは群衆の中に混ざり、革命派のフリをしてその場をやり過ごすと、命辛々、イギリスへと亡命する。 当時のイギリスはメシマズ街道をまっしぐらに進み、フランス料理を礼賛、メニューでは意味もなくフランス語で料理名が記されるレベル。13071,347
エリザ@elizabeth_munh·Jul 3ソワイエのような優秀なシェフが職を得るのに時間は要さず、たちまち彼はセレブ御用達のシェフとなり、イギリス貴族同士で彼の取り合いとなり、貴族から貴族へとソワイエは条件の良い方へと流れていき、最終的に高級クラブの総料理長になった。12881,270
エリザ@elizabeth_munh·Jul 3照明のために使われていたガスをソワイエは厨房に転用する事を思いつき、こうして世界初となるガスコンロが生まれた。当時世界で最も洗練されたインフラを持つロンドンだから出来たことね。 ソワイエの厨房は評判になり、彼はイギリスいちの料理人となった。13991,577
エリザ@elizabeth_munh·Jul 3エリート料理人街道まっしぐらのソワイエだけど、転機が訪れる。 1845年、アイルランドで飢饉が発生。 主食であったジャガイモが一斉に疫病に感染し、アイルランド人は飢餓に苦しんだ。イングランドの植民地であるアイルランドでは小麦はイングランドに流され、貧民はジャガイモを食べるしかない。13161,217
エリザ@elizabeth_munh·Jul 3欲深いイングランド人の農主達はアイルランド人が飢えても構わず小麦を輸出したので、アイルランドの人口は最終的に半分になった。 この危機にソワイエが派遣されるけど、現地の状況にソワイエは衝撃を受ける。 痩せ細った人達に料理を届けようとしても、そもそも何もない。13141,212
エリザ@elizabeth_munh·Jul 3限りある食材の中でソワイエは最善を尽くし、『貧者のスープ』と称される、可能な限り味と栄養に気を払った料理を届けた。それでも焼け石に水で、アイルランド人はばたばたと餓死し、祖国に見切りをつけてアメリカに渡る。 エリート料理人ソワイエの心に火が灯った。13371,342
エリザ@elizabeth_munh·Jul 3『美味しい料理を万人に届けるべし』 料理書を執筆し、キッチンの改善に励み、上流でなくても、素材に限りがあっても美味しい料理を届けられるよう、ソワイエは尽力。貧者向けに無料で施してもいたけど、それも手を抜かない。 やがてクリミア戦争が始まると、彼は従軍した。13621,461
エリザ@elizabeth_munh·Jul 3現地の状況は酷いもので、兵士達は不衛生な環境で栄養価の乏しいものを食べていた。兵士達は輪番で料理しており、将校達は自分の家から料理人を連れてきている。負傷兵の状況はなおひどく、彼らは弱った身体で犬の餌のようなものを食べて死んでいった。 ソワイエの心が燃える。13301,308
エリザ@elizabeth_munh·Jul 3「以後は俺が仕切る! 臨死の兵士にも不味いものは食わせん! 連隊ごとに俺の弟子を配置しろ!」 傷病兵の看護にナイチンゲールが活躍する一方、食はソワイエが統括し、死ぬに任されていた兵士たちに可能な限り栄養と品質に配慮した食事が届けられる。24941,819
エリザ@elizabeth_munh·Jul 3エリート街道まっしぐらで、イギリスの食の頂点に達したソワイエはこうして、砲弾降り注ぐ戦場の料理人となり、戦争中、野営のテントの中でも構わず万人のための美食を追求し、限られた食材を如何に美味に調理するかを研究し、発表した。やがてその本はベストセラーとなる。13541,538
エリザ@elizabeth_munh·Jul 348歳の若さで亡くなったソワイエだけど、食の大衆化を推し進めた功績はあまりに大きい。 かつて、美食は権力者やお金持ちの特権で、料理人はその奉仕者だった。 しかしソワイエ以後、どんな階級の人であれ、相応に美味しい料理を食べることができるようになる。34041,737
エリザ@elizabeth_munh·Jul 3フランスからイギリスへ、エリート街道から、貧民の料理人、そして野戦陣地のコックへと。 波瀾万丈の人生は、最終的に貧しい者への燃える闘志となって結実した。173761,724
エリザ@elizabeth_munh·Jul 3よかったらこれも。Quote Tweetエリザ@elizabeth_munh · May 4おはよう。今朝のTIPS。 わたし達の生活に欠かせない『レストラン』。実はこの言葉が生まれたのは18世紀末と新しく、しかも施設の名前ではなく、元々は食べ物の名前だった。 革命前のフランスにおいて、都市民の殆どは自宅に調理のための施設を持たず、基本、外食に頼ってた。Show this thread171316
エリザ@elizabeth_munh·Jul 3これも読んでって!Quote Tweetエリザ@elizabeth_munh · May 22お昼のTIPS。 偉大なるローストこそがイングランド人の食べ物だった頃 それは我らを気高くし、我らが血を豊かにした 我らが兵士は勇敢で、我らが国土は素晴らしかった おお! いにしえのイングランドのローストビーフ いにしえのイングランドのローストビーフ! https://youtu.be/YgUHa8WvdfMShow this thread464285