旧統一教会と興行との蜜月 格闘技や韓国グループのイベントで客席を埋める信者たち
「カネと人」を提供することで、旧統一教会が政界中枢と深い関係を持ってきたことが注目されている。同じように、エンターテインメントや興行の業界でも、旧統一教会に「カネと人」で頼ってきた実態が浮かび上がってきた。
【写真】信者が多数ゲスト出演したテレビ番組。司会はユースケ・サンタマリア
「例の教団から“反撃”を受け、スタッフ陣に動揺がみられました。そんな状況でも、無事に放送を終えることができてホッとしています。例年より寄付額は少なかったですが、視聴率は大幅に上がったので……」
こう安堵するのは、8月27日から2日間にわたって放送されたチャリティー番組『24時間テレビ 愛は地球を救う』(日本テレビ系)の番組スタッフだ。
彼らの動揺の理由は、放送の2日前、宗教団体が公式ホームページ上で発表した声明にあった。
《現在、民放の雄と言われる日本テレビが、同社ネットワークの総力を挙げて毎年取り組んでいる「24時間テレビ」ですが、当法人の女性信徒がボランティアスタッフとして7年間にもわたって関わり、番組ボランティアをまとめる中心的な立場で活躍していたことが分かりました》
「当法人」とは、旧統一教会(2015年に世界平和統一家庭連合に改称。本稿では旧統一教会と記述)。その声明と合わせて掲載されたのは、2014年放送の『24時間テレビ』で流れたボランティア団体の紹介テロップだ。そこにはたしかに「世界基督教統一神霊協会能登教会」という文字がある。
「2日前というタイミングでの“暴露”は、放送を混乱させることを狙ったのでしょう。同じ日本テレビ系の『ミヤネ屋』が果敢に旧統一教会批判を展開していることへの“報復”とみる向きもあります。実際、声明には大きな反響があり、局には批判が殺到した。日テレは放送前日に急きょ釈明の文書を発表するなど、対応に追われました」(テレビ局関係者)
旧統一教会を巡っては、30年以上前から多額の寄付や脱会阻止などの問題が指摘されていた。しかし、名称変更など巧みな“正体隠し”で、世間の批判を免れてきた。
今年7月、安倍晋三元首相(享年67)の銃撃事件で一気に風向きが変わる。逮捕された山上徹也容疑者(41才)は、犯行の動機について「母親が旧統一教会に多額の寄付をして生活が破綻した。報復として、教団と関係の深い安倍氏を狙った」と供述。事件の背景にある、旧統一教会の問題が注目された。
その過程で明らかになったのが、旧統一教会と政治家との関係だ。安倍氏の弟である岸信夫前防衛相(63才)は、信者に選挙活動を手伝ってもらったことを認めた。萩生田光一自民党政調会長(59才)も、旧統一教会の関連団体での講演で「日本を神様の国にしましょう」と話していたと報じられた。
政治家に近づくことは旧統一教会側に大きなメリットがあるという。ジャーナリストの鈴木エイトさんが解説する。
「1つは、政治家を内部統制の手段として利用できることです。高額な献金を要請され、教団に疑問を抱いても、政治家が教団イベントに来賓で出席する場面を誇示すれば、教団の価値を“錯覚”させることができます。
また、政治家と親密になることで、団体が最も恐れている『解散命令』を出されないようにするという意図もあるでしょう」
旧統一教会から、陰の支援を長らく享受してきた政治家たち。だが、彼らと切っても切れない蜜月関係にあるのは、政治家だけではない。
自衛隊に負けない声量で全力応援
「どうしても『動員』が必要なときに、旧統一教会は頼れる存在です。ライブやコンサート、舞台といった芸能イベントや、格闘技などのスポーツイベントなど、チケットをさばかなければならない興行の分野で、過去に旧統一教会にお世話になった人は多いのではないでしょうか。
信者の多くは、真面目で純朴な性格で、知らず知らずのうちにマインドコントロールされ、教団幹部に言われるがまま“善意”で動くようになります。つまり、幹部から『〇月×日にこのイベントに来てください』と言われれば、それは絶対なのです」(教団関係者)
熱狂的なファンのみならず、ライトな層からも人気で、広く知名度のある格闘技団体A。Aの関係者が打ち明ける。
「悪しき風習ですが、実はうちは旧統一教会と深いかかわりがあるんです。幹部は“バレたら、うちは終わっちゃうよなあ”と嘆いていますよ」
A主催のイベントは、会場に数万人を動員するだけでなく、ライブ配信で数十万人が視聴することもある。
「世界チャンピオン級に名の知れた選手の試合は、チケットが数百万円で取引されるなどプラチナ化しています。
一方で無名の選手の試合には関係者しか集まらず、空席の多さに目も当てられないこともある。
そんなとき、旧統一教会信者の知人に相談して、無料で信者らにチケットを配ったら、大挙してビシッと空席を埋めてくれたんです。しかも選挙の動員で手慣れているのか、応援にも迫力があった。あのときの試合は盛り上がりましたよ」(前出・Aの関係者)
格闘技団体Bの関係者が続ける。
「うちでは、自衛隊と旧統一教会にお願いして空席を埋めてもらったことがあります。
あのときは首都圏の大きい会場でのイベントで、メインの席は埋まったのですが、それ以外の席に空席が目立ち、お願いせざるを得ませんでした。声の大きい自衛隊のかたがたに負けじと大声を張り上げて、全力で応援してくれたのには驚きましたね」
旧統一教会は韓国発祥だけあって、韓国の芸能界とも縁が深い。日本で一世を風靡し、NHK紅白歌合戦にも出演した韓国発のアイドルグループCの関係者が語る。
「Cのコンサートに、旧統一教会をお招きしたことがあります。Cは、教団主催のイベントに出演したこともあり、旧統一教会とは縁が深い。信者は素直に楽しんでいたでしょうし、教団の力を再確認したでしょうね」
スポーツ界の興行で声がかかることもあるという。
「韓国のサッカーチームが日本で試合をした際に、旧統一教会の信者にチケットが配られ、応援に参加していたそうです。また、テコンドーなど韓国発祥のスポーツの試合を日本でやるときには、信者の選手や団体関係者から動員がかかると聞いたことがあります」(韓国の事情に詳しいジャーナリスト)
テレビの出演者に“動員”がかかった例もあるという。前出の鈴木氏の話。
「『世界ナゼそこに?日本人』(2012~2020年・テレビ東京系)という、世界各地に住んでいる日本人を紹介する番組があったのですが、出演者に信者が多かったことが明るみに出て問題になりました。
どうやら、ある信者がブローカー的存在となり、取材を斡旋していたようです。スタッフが確信犯だったかは定かではありませんが、なかなか自力では見つけにくい世界各国の“ネタ”を簡単に紹介してもらえたことで、次第に関係が深くなってしまったのでしょう」
協力を惜しまず、任務を“遂行”する旧統一教会の信者たち。彼らの“真っすぐさ”の所以をいま一度考えなければならない──。
※女性セブン2022年9月22日号