糖尿病に良い食べ物は?食材やメニューをわかりやすく紹介
当記事を監修した専門家:管理栄養士・糖尿病療養指導士 白石香代子 、編集長 宮田亘造(詳しいプロフィールはこちらをご覧ください)
「うちの家庭は子供中心のメニューだし…糖尿病の食事って言われてもなかなか出来ないのよ」
糖尿病の治療で取り入れられる「食事療法」。
食事療法は、糖質やたんぱく質などの栄養バランスを調整するものです。血糖値の乱高下を防いで血糖コントロールを良好にし、合併症を予防するため基本の治療として行われます。
しかし「自分はどんなものを食べたら良いのか分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。
今回は、「糖尿病に良い食べ物」についてご紹介していきます。
食材選びから一言アドバイス・レシピまで、料理に役立つ情報が満載ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
それでは、まいりましょう。
目次
糖尿病に良い食べ物とは
糖尿病は、インスリン(血糖値を下げるホルモン)が充分に働かず、血液中のブドウ糖が増え続けることにより、血糖値が高い状態が慢性的に続く病気です。
高血糖が続くと自覚症状なく糖尿病は進行し、神経障害や糖尿病腎症などといった重篤な合併症を招くリスクが上がります。
そのため、まず血糖値を下げることが優先されます。
つまり、糖尿病に良い食べ物とは「血糖値を下げるように働きかけてくれる食べ物」ということが出来るでしょう。
インスリン分泌を応援してくれ、血液中のブドウ糖が増えないように働き、血糖値を安定に導く成分を含む食べ物に着目すれば良いのです。
糖尿病に良い食材
では、具体的にどのような食材が糖尿病の食事を応援してくれるのか、見ていきましょう。
お米は玄米や胚芽米を
様々なお米がありますが、お勧めは玄米や胚芽米です。
玄米や胚芽米にはミネラルの一種、クロムという栄養素が含まれます。
クロムはすい臓から分泌されるインスリン(血糖値を下げるホルモン)が糖を細胞に取り込む際(※)に、サポート役として働きます。
(※)食事から摂った糖質は消化吸収されてブドウ糖になり、血液中の血糖値を上げます。すると膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンが糖を筋肉や肝臓の細胞に取り込み、血糖値を下げます。
クロムの助けがあることで、インスリンの働きがスムーズになり、血糖値が下がりやすくなるのです。
玄米については、炊くのが難しいイメージがあるかもしれませんが、炊飯器で炊き込むだけでOKの商品も販売されています。
玄米や胚芽米を活用し、インスリンの働きを増進させ、血糖値を下げていきましょう。
お子さんと一緒に召し上がる時は、胚芽米が良いでしょう。胚芽米は白色で消化吸収も良く、白いお米が好きな子供も食べやすい米です。
お肉は豚肉を取り入れよう
糖尿病患者さんには、ビタミンB1が含まれている豚肉の活用をお勧めします。
ビタミンB1は糖の代謝(※)に必要な栄養素です。
(※)糖の代謝とは、食事から摂った糖質が分解され、血液中でブドウ糖となってエネルギーとして利用される仕組みのことで、膵臓から分泌されるインスリンが糖の代謝の大きな役割を担っています。
ビタミンB1には糖を分解してエネルギーに変える働きがあります。ビタミンB1が不足すると、分解されない糖によって血糖値は上がってしまいますので、上手に取り入れたいですね。
豚肉を活用してビタミンB1を補い、糖代謝を高めて血糖値を下げましょう。
豚肉の中でも、特にヒレ肉やももの赤肉といった脂身の少ない部分に、ビタミンB1は豊富に含まれます。購入の際は、赤みの多いところを選ぶと安心です。
ビタミンB1の働きを助けてくれるのがにんにく、玉ねぎ、にらなどに含まれるアリシンです。「豚肉×玉ねぎ×にら」で炒め物も良いですね。
魚は青魚を中心に
アジやさば、さんまなどの青魚を積極的に食べましょう。
青魚に豊富に含まれる脂(エイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸)が、インスリン分泌を改善するという研究結果があり、血糖値を下げる効果が期待できます。
青魚が苦手なお子さんには、さんまのトマト煮やイワシのチーズ焼きなど少しアレンジすることで、美味しく一緒に食べられます。
大豆製品では高野豆腐を
原料に豆腐が使われている、高野豆腐がお勧めです。
高野豆腐には、レジスタントプロテイン(たんぱく質が変化した栄養素)が含まれています。
レジスタントプロテインは食物繊維に似た働きをする栄養素。糖質の吸収を緩やかにし、血糖値の急上昇(合併症が発症するリスクが上昇する要因)を防ぎます。
参考記事:納豆は糖尿病患者さんの血糖値を下げる?効果的な食べ方やレシピを紹介
含め煮のイメージが強い高野豆腐ですが、戻した高野豆腐を細切りにしてサラダに加えたり、細かく潰してスープに入れたりと、様々な料理に活用できます。
きのこ類も積極的に食べよう
きのこは全般的に食物繊維が豊富です。
食物繊維は、腸の中に長時間居座ってくれるのが良いところ。糖の吸収を邪魔するため、血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。
なお、特にお勧めなのがまいたけです。
まいたけには食物繊維以外に、インスリンの材料となる亜鉛や血糖値の上昇を抑えるマグネシウムなども含まれています。
ですから、まいたけは糖尿病の強い味方とも言えるでしょう。
味噌汁に入れたり、さっと茹でてサラダに加えたり、色々な料理に活用できます。毎日の食事にぜひ取り入れてみてください。
きのこが苦手..という場合は、みじん切りにしてハンバーグやチャーハンに入れてみては。きのこが目に見えないだけも、お箸が進みやすくなります。
野菜はどうなの?
野菜にもきのこと同様、食物繊維での緩やかな血糖値の上昇が期待されますが、実はレタスやきゅうりと言った淡色野菜の食物繊維は少なめです。
おすすめは、ブロッコリーや小松菜などの緑黄色野菜。食物繊維以外にも、糖の代謝を促進する葉酸も含まれています。
糖の代謝がスムーズだと、分解されずに残る糖も少なくなり、血糖値は安定しやしくなります。
また、トマトも率先して食べて欲しい野菜です。
トマトに含まれる成分、リコピンを継続して取り入れると血糖値が下がるという研究結果があります。
サラダだけでなく、トマトスープやトマト煮込みなど温かい料理も良いですね。
参考記事:血糖値が下がる?糖尿病にトマトは良いのか
参考記事:小松菜の驚くべき栄養成分~効能を高める食べ方も伝授します~
調味料などの食品について
調味料には、糖質が多いものと少ないものがあります。
<糖質の多い調味料>
みりんやすし酢など甘みのある調味料や、小麦粉が使われているカレールウは糖質が多いですので、たくさん使うと血糖値は上がります。
使用する際は、量を使いすぎないように注意が必要です。
<糖質の少ない調味料>
一方で酢には血糖値を上げにくくする働きがあります。
糖質の多い餃子やシュウマイを食べる時に、酢+こしょう を活用するだけでも、血糖コントロールに役立つでしょう。
もしあなたの家族のお子さんがいらっしゃるのならば、子供向けのメニューでは、どうしても甘めの味が多くなりがちですよね。最近はケチャップハーフ(カロリーや糖質が半分になったもの)などの市販品も出ていますので、活用するのも一つの方法です。
実際の食事メニューを紹介
それでは、糖尿病に良い食材を使ったメニューをご紹介します。
家庭食の代表格・カレー
家族みんなで楽しめるカレー。材料に高野豆腐やまいたけを使用し、ドライカレーに。
糖質の多い市販のカレールーの使用量を控え、トマトジュースでまろやかさを出しています。
・高野豆腐 1枚
・豚挽肉 50g
・玉ねぎ 1/2個
・にんじん 1/3本
・まいたけ 40g
・しょうが 1かけ(すりおろし)
~調味料など~
・オリーブオイル 小さじ1
・カレールー 1個
・トマトジュース 100cc
・水 200cc
・鶏ガラの素 小さじ1/2
・カレー粉 大さじ1
・白こしょう 適宜
~白米の準備~
白米1合に胚芽米0.5合の割合で、炊飯する。
【作り方】
①高野豆腐は柔らかくなるまで熱湯に浸す。湯の温度が冷めたら高野豆腐を手で押すようにして水気を絞り、みじん切りにする。
②玉ねぎ、にんじん、まいたけはみじん切りにする。
③鍋にオリーブオイル1/2を入れて火にかけ、しょうがと豚挽肉を入れて炒める。豚肉の色が変わったら、いったん取り出す。
④③の鍋に残りのオリーブオイル1/2を入れて火にかけ、玉ねぎを炒める。玉ねぎの色が透き通ったら、にんじん、まいたけを入れて炒める。
⑤④に③の豚挽肉を入れ、(a)を加える。煮たったら弱火で煮込む。
⑥水分が半分ほどになったら、カレールーを入れる。
⑦全体に味が馴染んだら完成。
<一人分の栄養価>
※ご飯は炊き上がり150g、カレーは出来上がり2人分として計算
参考記事:【手軽で美味しい!】糖質に配慮したナッシュの宅配弁当~管理栄養士監修~
まとめ
糖尿病に良い食材とは、血糖値が下がるように働きかけてくれる食べ物ということが分りましたね。
玄米や胚芽米、豚肉や青魚、まいたけ、緑黄色野菜、高野豆腐には、腸内での糖の吸収を抑えたり、インスリンの働きを応援したりと、糖尿病に良い効果をもたらす効果が期待できます。
血糖値の急上昇を抑えて合併症を予防するために、絶極的に取り入れていただきたい食材です。
なお、調味料には糖質の多いものと少ないものがあります。糖質の多い調味料は使用量を控えるようにしましょう。
以上、「糖尿病に良い食べ物」についてご紹介しました。
食事療法は続けることが大切です。今回の内容を、日々の食事に役立てていただけると幸いです。
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参考文献
女子栄養大学出版部 七訂食品成分表2016 香川芳子監修
名古屋文理大学紀要第7号 2型糖尿病患者の健康管理-血糖値の改善効果に果たすリコピンの役割- 芳本信子、吉川裕子ら
国立研究開発法人 国立がん研究センター 予防研究グループ 多目的コホート研究 魚介類摂取と糖尿病の関連について