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この作品「【CoCシナリオ】円環の儀」は「TRPGシナリオ」「TPRG」等のタグがつけられた作品です。
【CoCシナリオ】円環の儀/かたりの小説

【CoCシナリオ】円環の儀

12,335文字25分

 このシナリオは『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』に対応しており、探索者3~4人向けにデザインされている。プレイ時間は探索者の作成を含まずに2~3時間程度だろう。
 舞台は現代の日本、休日の昼下がり。探索者は山手線(内回り)の電車の4両目に乗っており、同じ駅で降りる予定だ。探索者たちは、知り合いでも知り合いでなくても構わない。
 シナリオは走行中の電車の中から始まり、電車の中で全て完結するクローズドなシナリオとなっている。
 探索者の少なくとも1人は運動能力に優れていると役に立つが、それは必須ではない。優れた社交系技能も有用で、NPCと接する意欲も同様だ。

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2022年9月7日 14:12
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1.はじめに
 このシナリオは『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』に対応しており、探索者3~4人向けにデザインされている。プレイ時間は探索者の作成を含まずに2~3時間程度だろう。
 舞台は現代の日本、休日の昼下がり。探索者は山手線(内回り)の電車の4両目に乗っており、同じ駅で降りる予定だ。
探索者たちは、知り合いでも知り合いでなくても構わない。
 シナリオは走行中の電車の中から始まり、電車の中で全て完結するクローズドなシナリオとなっている。
 探索者の少なくとも1人は運動能力に優れていると役に立つが、それは必須ではない。優れた社交系技能も有用で、NPCと接する意欲も同様だ。

2.キーパー向け情報
 かつて日本はAku-Shin Kage(ニャルラトテップの化身)の暗躍によって、King of Yokai(クトゥルフ)が支配する国であった。
 しかし、神々の血をひく天皇の活躍と善良な旧神の力により、クトゥルフは海底の奥深くの牢獄に閉じ込められ、その眷属であった深きものや深きものの交雑種も海へと追いやられた。
 クトゥルフは他の旧支配者たちと共に、再び地上を歩む日「星辰正しき刻」を眠りながら待っている。
 一方で深きものどもの一派は、再び日本を取り戻すための機会を虎視眈々と狙っていたが、今回ニャルラトテップの化身の1つであるチクタクマンとの協力を取り付けられたことで、今まで温めていた計画の実行に乗り出す。
 それは山手線(内回り)の電車をチクタクマンと共に乗っ取り、人間を大量に集め、その精神エネルギーごと山手線を高速周回することで中心部にエネルギーを集中させ、次元の歪みを作りだし、海底の奥深くに沈む牢獄を破壊してクトゥルフを呼び出すというものだ。
 日本の真の主が誰であるか、真の住人が誰であるかを思い知らせてやるド派手な計画になっている。

3.導入
 それは穏やかな休日の昼下がり、暖かい日差しが電車の窓から差し込んでいる。電車の中の人はまばらで、探索者たちは山手線(内回り)の電車に乗って揺られており、ウトウトしているものもいるかもしれない。
 そんな中、〈目星〉ロールに成功した者は、電車が停車駅を1つ通り過ぎたことに気付く。
 成否に関わらず乗客の1人が「俺の降りる駅通り過ぎたんだけど!?」と騒ぎ出し、他の乗客も「何?トラブル?」とざわめきながら、スマートフォンで情報を調べだす。
 探索者もインターネットで調べるのであれば、〈図書館〉か〈コンピューター〉ロールを行う。
 失敗すると「山手線故障?」といった乗客の書き込みしか見つからないが、成功するとそれに加え「山手線の先頭車両にローブ姿の人たちが乗り込んでたけど、仮装大会でもあんの?」という不穏な書き込みが見つかる。
 車内の人間が不安に思いながらスマートフォンを眺めていると、「お待たせしました。次は~星辰正しき刻、星辰正しき刻です。供物の皆さまは振り落とされないようお気を付けください。ゲッゲッゲッ……」という更なる不安を煽るようなアナウンスが流れる。
 窓の外の景色が後方へ流れて消えていく時間がどんどん短くなっていき、電車の速度が段々と上がって来ていることが分かる。
 まるで普段の日常から突然ドラマや映画の世界に放り込まれたかのような異様な雰囲気に飲み込まれ、0/1D3の正気度ポイントを喪失する。

4.現在の車両

電車の見取り図



 現在、探索者たちは4両目にいる。放送を行える運転席がある先頭車は1両目、および10両目だ。
 車内の人たちは皆、今の放送に困惑しており、どうするべきか思案しながら狼狽えているが、ここにいても何も始まらない。探索者たちはその名の由来の通り、直ぐに探索に移るだろう。
 探索者たちが知り合いでなくとも、車両を移ろうとする人間は今のところ探索者だけなので、お互い直ぐに気が付く。
 情報を得ていなくとも、近い方から目指すのが自然な流れだろうが、10両目を目指して後方に突き進んで行くこともあり得る。その場合、後述の『時間経過イベント』を時間の経過に合わせて発生させていこう。

-時間経過イベント1-----------------
 このイベントは、探索者が3両目か5両目に移動しようとすると発生する。
 突如、進行方向前方のドアが開き、「うわあああああ!」と叫びながら血塗れの人間5人が猛スピードで走って雪崩込んでくるため、探索者は全員〈回避〉ロールを行う。
 全員が成功した場合、この集団はそのまま5人とも後方車両に走り去っていく。
 失敗した場合、突き飛ばされて1D2ダメージを受ける。
4人はそのまま後方車両に走り去ってしまうが、1人が残って50%の〈応急手当〉ロールを行ってくれる。
 残った1人に話を聞くと、「ばっ……ばけっ、ばけっ……んもっ……んんんっ!」と、かなり混乱している様子で何を言っているか分からないが、〈精神分析〉に成功すると会話が出来るようになり「先頭車両に化物が現れて、喧嘩売った仲間が殺されちまった……供物をあまり減らしたくないから暴れるなとか言われて、俺らは見逃されたんだ……」と話をしてくれる。
 探索者たちが前方車両に行こうとすると、服を掴んで首をぶんぶんと横に激しく振るが、探索者の意思を変えられないことが分かると諦めて後方車両に小走りで去っていく。
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5.3両目
 4両目と同じく車内の人たちは、どうするべきか思案しながら狼狽えているが、一組のカップルだけが「ぜってぇバズるから写真撮り行きてぇんだけどなぁ……」、「やめよって……さっきの人ら血塗れだったじゃん……」、「バイクで事故ったダチん腕から骨飛び出してるの見たことあっし、俺グロいの平気~」、「あ・た・し・が・嫌なの!」などと騒がしくしている。
 話しかけると男から「あんたらも何か言ってくれよ」とお願いされるが、彼女が「行くなら別れるから」とピシャリと言うと、男は「やっぱ今のナシ」とお願いを撤回し、彼女に謝り倒すのに忙しくなる。

-時間経過イベント2-----------------
 このイベントは、窓から顔を出して前方を眺めるか、探索者が2両目に移動すると発生する。
 グングンと速度を上げていく電車は、やがて前を走っている電車に追いつきそうになる。『このままじゃぶつかる!』そう思った瞬間、電車の1両目は、まるでワニが口を開いたかのように大きく裂け、前を走る電車を飲み込んでしまう。
 飲み込まれた電車は、1両目、2両目、3両目と順番に地面を膨らませながらぬるりと通り抜けていき、後方へと流れていく。
 窓から後方を見れば、飲み込まれた電車の分だけ車両が増え、電車が長くなっていることが分かるだろう。
 この電車による電車の捕食を目撃した探索者は1/1D8の正気度ポイントを喪失する。
 以降も電車は前を走る電車に追いつくたびにそれを飲み込み、車両はどんどん長くなっていく。

 もしキーパーがこのイベントを起こしてよいと思えるくらい時間が経過したと判断した場合、探索者に〈目星〉ロールを行わせ、成功した場合は、窓から顔を出して前方を眺め、上記と同じ処理を行う。
 全員が失敗した場合、車両の地面が前方から後方にかけて突如ぬるりと盛り上がるため、〈回避〉か〈跳躍〉ロールに成功しなければ転んで1D2のダメージを受ける。
 また、この異常な出来事に1/1D3の正気度ポイントを喪失する。
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6.2両目
 今までの車両とは様子が違い、血塗れで青ざめ俯き続けている人、ただただ天井を見上げながらボーっとしている人、ぶつぶつと何かを呟き続けている人、ネクタイで口と手足を縛った状態で床に転がされ暴れまわっている人など、色々な人がいる。
 話を聞いてまわると数人から「1両目に化物が現れたんだが、突っ掛かっていった若者が2人も殺されてしまった……大人しくしないとお前らもこうなると脅されて2両目に追いやられたんだ…」と聞ける。
 1両目を見ると、窓ガラスが赤黒く汚れていて中の様子は見えない。

 ここまで異常事態が続くと、窓から外に出て電車の上に登ろうとする探索者も出てくるかもしれないが、様々な原因による揺れ、ちょっとした風の気紛れが、即、死に繋がる。
 具体的にはDEXロールのハード成功により、1両移動できる。失敗した場合、怖気づいたとか、風に煽られてしゃがみ込んだとか、その車両から移動出来なかったことになる。
プッシュロールは可能だが、ファンブルした場合は落下し、4D10~8D10ダメージを受ける。
 オススメはしないが、プレイヤーがどうしてもやりたいと言い張った場合、好きにさせればよい。

7.1両目

電車の見取り図(1両目)



 扉を開けて中に入ると、そこは一面の赤で、鉄臭い香りが車内に充満している。電車の車内だというのに、魚と人間の混じったような男2人が、大きなボールで呑気にキャッチボールをしている様子は全く現実感が湧かない。
 悪い夢を見ているかのような感覚のままその光景を眺めていると、手前側の魚男がボールを取り損ね、探索者の足元まで転がってくる。
 ボールが壁にぶつかって動きを止めると、今までボールだと思っていたものが何だったのかハッキリと視認することが出来た。
 それは人間の頭部だった。光を失った虚ろな瞳は、探索者たちの後ろの虚空をただただ眺めている。
 一気に現実に引き戻され、一連の出来事に2/1d4+2の正気度ポイントを喪失する。
 車内には7人の深きものの交雑種がいて、内3人は談笑、内2人はキャッチボール、内2人は椅子に腰かけてうなだれている。最奥の運転席にはローブを羽織った人物が立っており、運転席と車内を結ぶ扉は開け放たれている。
 探索者の存在に魚男が気付くと、談笑をしていた内1人が「ゲゲ、こっちは立入禁止区域だ。まぁ、でも退屈しているし、冥土の土産に何か少し質問に答えてやろう。」と話しかけてくる。
 別の魚男が「おい!」と怒鳴りながら白い目で睨むが、悪びれた様子もなく「そう怒るなよ、いいじゃねえか。こいつらに何か教えたところで何が出来るってえんだ?」と小馬鹿にして笑う。

 以下に探索者がしそうな【質問とその回答例】をまとめたが、キーパーが適当にアレンジしてしまって構わない。彼らの機嫌を損ねない限り、2両目へと引き返すことはいつでも可能だ。
 ただし、奥へ進もうとすると引き返すよう警告され、警告を無視すると襲い掛かられる。
 1つ2つ会話をしたところで、キャッチボールをしていた#4と#6は「暇だから後ろの奴らビビらせてくるわ!」と言い、殺した人間の腕を齧りながら1両目を出て、キーパー任意の車両、あるいは1D3+2両目まで遠征しに行く。
 また、更に話を続けているとうなだれていた#7が「電車酔った……外の空気吸ってくる……」と言って、2両目へと移動する。
 〈聞き耳〉ロールに成功すると、うなだれている#5の方から寝息が聞こえ、ぐっすり寝ていることが分かる。#5は大きな物音がしたり、誰かから声をかけられるまで起きることはない。

【質問とその解答例】
・何やってるの?
「クトゥルフ様の復活のため、円環の儀を行っている」

・運転席の人は?
「クトゥルフ様の神官様だ。偉いお方なんだぞ」

・クトゥルフって?
「この日本における真なる神よ」
「偉大な御方だ」
「顕現されるのが待ち遠しい」

・円環の儀って?
「かの神の力を借り、人間を大量に集め、その精神エネルギーごと山手線を高速周回することで中心部にエネルギーを集中させ、次元の歪みを作りだして海底に封印されているクトゥルフ様を呼び出す儀式よ」

・クトゥルフを呼び出すとどうなるの?
「封印されし旧支配者様たちが立ち上がり、地上を闊歩するようになる。それはそれは素晴らしい世界になる」

・俺達はどうなるの?
「結論を言うと死ぬ」

・神官と話をしたい
・仲間に入りたい
・死にたくないんだけど……
「ゲッゲッ、そうだなぁ。我々の眷属になるなら受け入れてやってもよいが、どうする……?」と訊ねてくる。
 承諾すると赤黒い何かの液体が入った注射器を取り出してきて手渡す。
 〈手さばき〉か〈芸術(演技)〉ロールに成功すると注射をした振りができるが、失敗した場合、深きものの交雑種の機嫌を損ねないためには本当に注射するか、〈言いくるめ〉〈説得〉〈魅惑〉ロールによって上手く言い逃れるか、あるいは敵対して今この場で戦闘するかを選ぶ必要がある。
 注射器には深きものの穢れた血が入っており、注射した場合、CONロールを行う。
 イクストリームの難易度で成功した場合、穢れた血にひとまず打ち勝ち、将来にわたって変化が訪れることはないが、子孫に隔世遺伝する可能性は残るだろう。
 成功しても失敗しても直ちに影響はないが、変化が表れるまでの期間には違いが出る。いずれにせよ今後、目の前の化け物のようになることは免れられず、0/1D6の正気度ポイントを喪失する。
 ファンブルだった場合、深きものの穢れた血とよほど相性が良かったのだろう。直ちに深きものの特徴が現れ、STRとSIZが+1D6ポイント、APPが-2D6ポイント変化し、深きものの交雑種となる。そう遠くない将来、完全な深きものへと変貌する可能性は高く、1D6/6の正気度ポイントを喪失する。
 注射をした探索者は仲間として受け入れられるため、運転席まで行くことが出来るし、深きものの交雑種と戦闘を行う際には奇襲(102ページ)を行うことが出来る。
 運転席まで行くと様々な計器はまるで意思を持っているかのように自動的に動いており、神官が運転している様子は全くない。深きものを直接見た場合、0/1D6の正気度ポイントを喪失する。
 運転席には後述の「クトゥルフの神官の手記」が存在し、〈手さばき〉ロールに成功すれば掠め取ることが出来るが、失敗した場合、直ちに戦闘となる。このことはプレイヤーに伝えてしまって構わない。

8.深きものたちをどうしよう?
 外の空気を吸いに行った#7は、2両目で30分ほど窓から顔を出し、気分が落ち着くと1両目に戻ってくる。顔を出しているタイミングで、SIZ80に対するSTRロール、ビルド1に対する戦闘マヌーバー、驚かせて対抗POWロールに成功すると、窓の外へと転がり落ちて即死するが、失敗すると即座に戦闘になる。
 遠征にいった#4と#6は、時間経過イベント4が発生する頃に1両目へ戻ってくるが、バリケードを作ったり、チェーンで鍵をかけるなどして途中の扉を塞いでおけば戻って来られないだろう。
 もし探索者が4人以上の交雑種とことを構えるつもりであれば、〈アイデア〉ロールを行わせ、成功すれば、他の魚男も上手く理由を作って別の車両に行かせることが出来ないか思いつく。失敗した場合、プレイヤーの当初の予定通り戦闘に向かわせればよい。
 ただし、#1、#2、#5は、よほどのことがない限り1両目から離れることはない。
 車両の連結部分を切り離す試みはチクタクマンが電車を乗っ取っているため失敗するだろう。〈機械修理〉か〈電気修理〉ロールに成功すると、連結部分が絶えず組み替えられ、まるで生きているかのように蠢いていることが分かる。これを見た探索者は、0/1D2の正気度ポイントを喪失する。
 戦闘が始まった場合、クトゥルフの神官である深きものもローブを脱ぎ捨て参戦する。クトゥルフの神官である深きものを倒した場合、「無駄だ、我々を倒したところで、既に円環の儀は止まらない。人間ごときにやられるのは想定外だったが、電車に乗り移った『かの神』が儀式を最後まで遂行してくれるだろう……いあ!いあ!くとぅるふ!ふたぐん!いあ!いあ!くとぅるふ!ふた……ぐ……」と不吉なことを言い残した後に絶命する。

9.それで、君のプランは?
 もし深きものたちを倒すと決めたのであれば、先ずは武器を揃えよう。素手の攻撃は1D3だが、手頃な鈍器は1D6だし、両手でフルスイング出来るバットは1D8ダメージにもなる。
 電車の中には色々な人が乗っているので、必ずしも探索者が持っているものでなくともよい。
 次に仲間を募ろう。電車の中には、3両目でイキっていた元ヤンキーの大学生、2両目にいる気弱な現役プロレスラーや発狂して上の空な警察官の老人などの戦える人間もいる。キーパーが追加で用意してもいいだろう。
 しかし、1両目の凄惨な光景を見た者に戦闘へ加わってもらうためには、〈威圧〉〈言いくるめ〉〈説得〉〈魅惑〉技能や〈精神分析〉のロールが必要だ。素晴らしいロールプレイをした場合、キーパーの判断でボーナス・ダイスを与えたり、ロールが不要だということにしてもよい。
 探索者は、〈機械修理〉や〈電気修理〉技能によって何かトラップを作って待ち構えてもよいし、〈科学(化学)〉や〈薬学〉技能によって即席の毒薬を作ってもよい。
 痴漢対策に催涙スプレーやスタンガンを持った女性がいるかもしれないし、ヘビースモーカーの男はライターと替えのオイルを持っているかもしれない。
 難しそうなものや珍しそうなものは、それに合わせた難易度の〈グループ幸運〉ロールを求めた方がよいだろうが、とにかくプレイヤーの提案には粘り強く、柔軟に対応し、自信が付くまで準備をさせてあげよう。
 ただし、あまりにも時間がかかるような行動(例えば、電車の中の人間を手当たり次第に説得して100人くらい集める作戦など)をするのであれば、容赦なく時間経過イベントを進めよう。
 1つだけの作戦や無策で突っ込むことは推奨しないが、戦闘に自信があるならばやってしまってもよい。
 リカバリープランを用意すると安心だろうが、完璧な作戦を立てたところで、ダイスが”イタズラ”をして台無しにしてしまうことはよくある話だ。

-時間経過イベント3-----------------
 このイベントは、キーパーがこのイベントを起こしてよいと思えるくらい時間が経過したと判断すると発生する。
 目安としては、探索者の準備がある程度済んだ頃、突入させるキッカケにするといいだろう。
 グングンと速度を上げていく電車は、山手線(内回り)に存在する電車を全て飲み込んだのか、もはや地面が動くことはなくなった。
 窓から顔を出して後方を眺めると、どこまでも車両が続いている(探索者は知る由もないが実に190両編成となっている)。
 一体どれだけの速度に到達しているか不明だが、窓の外の景色があまりにも早いスピードで通り過ぎていくため、視認できなくなり、まるで雑に色々な色を横に引いた画用紙のように写る。
 このスピードまで達すると、いよいよ携帯の電波が入らなくなる。
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10.クトゥルフの神官の手記
 運転席にはクトゥルフの神官の手記が存在する。
 中身は、過去クトゥルフが封印され、深きものどもが海へと追いやられたことについての恨みつらみ、円環の儀についての計画を綴った日記などで、《クトゥルフの招来/退散》と《チクタクマンの招来/退散》の呪文が載っている。
 この手記を読んだものは、1D4正気度ポイントを失い、1ポイントのクトゥルフ神話技能を獲得する。
 《退散》の呪文を唱える場合、どちらも1分(5戦闘ラウンド)の時間がかかり、手記を持った人間しか呪文を唱えることができない。

-時間経過イベント4-----------------
 このイベントは、探索者が手記を読み終わるか、キーパーがこのイベントを起こしてよいと思えるくらい時間が経過したと判断すると発生する。
 最高速度まで達した電車の窓の外の景色は、もはや全ての色が混ざった灰色の横線だけが、ただただ流れている。
 大きな力の奔流は止められず、乗客全員のMPが1D6失われると、遂に山手線の内側が光り始めた。
 クトゥルフの一部が現れ、まともに外の景色が見えない状態にも関わらず、その恐ろしくも偉大な姿の片鱗がくっきりと浮かび上がる。1D3/1D10の正気度ポイントを喪失する。
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11.呪文の詠唱
 どちらかの退散の呪文を唱え始めると、電車と同化しているチクタクマンが車内の人間に牙を剥き始める。
 しかしながら、脱線しないように超高速で線路を周回することに集中しているため、行動は限定的だ。
 詠唱者に対し、天井から金属片を落下させるか、壁から棘を生やして攻撃するか、底に穴を開けて落とそうと試みる。
 金属片と棘は〈回避〉ロール、穴は〈回避〉か〈跳躍〉ロールで避けることができる。失敗した場合でも、味方の誰かがDEXロールに成功すれば、突き飛ばしたり抱き寄せたりして避けさせることができる。
 全て失敗した場合、金属片は1D6ダメージ、棘は1D8ダメージ、穴に落ちると8D10ダメージを受ける。
 また、生き残っている深きもの、あるいは深きものの交雑種がいる場合、詠唱の場に駆けつけてくるが、1車両を移動するのに1ラウンドかかる。

 5ラウンドの詠唱を続ければ、呪文は完成する。
 幸か不幸か、今この電車には精神的なエネルギーが満ちているため、キャスティング・ロール(174ページ)のプッシュ・ロールに失敗した場合に支払うMPは肩代わりされ、呪文の成功率は99%となっている。

 《クトゥルフの退散》が効力を発揮すれば、クトゥルフは光る地面の中へと沈んでいく。チクタクマンは悔し紛れに電車のスピードを一気に緩めてから退散する。壁に叩きつけられないための〈回避〉ロールを行い、失敗すると1D8ダメージを受けるが、電車は徐々に速度を緩めていく。

 《チクタクマンの退散》の呪文を無事に唱えきると、電車は即座にチクタクマンの制御を離れる。〈グループ幸運〉ロールを行い、ファンブルだった場合のみ脱線事故を起こし、4D10ダメージを受ける。そうでなければ、電車は徐々に速度を緩めていき、それに合わせて山手線の内側の光が収まっていくと同時に、クトゥルフが光る地面の中へと沈んでいく。

-時間経過イベント5-----------------
 このイベントは、退散の呪文が失敗するか、キーパーがこのイベントを起こしてよいと思えるくらい時間が経過したと判断すると発生する。
 「円環の儀」は遂に最終段階に突入し、乗客全員のMPが2D6失われる。
 山手線の内側には光の柱が立ち昇り、その光の本流の中にクトゥルフが恐ろしく、そして形容しがたい姿を完全に顕現させる。1d10/1d100の正気度ポイントを失う。
 山手線の中心地に現れたクトゥルフは周囲一体に恐怖と狂気をばらまき、気が触れた住民たちは殺し合ったり、廃人になったりする。
 しかし、クトゥルフが空を仰ぎ、未だ星辰正しき刻ではないことに気が付くと、自らを呼び出した電車をジトッとチラ見した後、来た場所へと引き返していく。引き返す際に乗客全員のMPを勝手に使うため、更に乗客全員のMPが3D6失われる。
 MPが足りない場合、耐久力が失われるため、この過程で力尽きる者も出るだろう。
 深きものたちは、偉大なるクトゥルフ様に粗相をしてしまったことに気が付くと、電車の外に身投げして即死する。
 役目を失った電車は徐々に速度を緩めていく。
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12.結末
 速度を緩めていく電車は、偶然にも探索者たちが目的としていた駅で最終的に停車するが、流石にこれから元の予定をこなそうと思えるほど、豪胆な性格ではないだろう。
 警察や自衛隊による負傷者の救助に、医者や精神科医による治療、政府やマスコミからのしつこい聞き込みなど、暫く休む暇がない。
 いずれにせよ山手線で起きた”脱線事故による近隣住宅の破壊とそのショックから起きた集団幻覚という政府の見解”が全国的に放送され、国民に衝撃を与えるだろう。
 もし探索者がクトゥルフの召喚を防いでいた場合、政府は乗客への聞き込みによって今回の功績者を突き止め、”真のヒーロー”たちのことを褒め称えながら、少しの褒賞金と職場への問題ない復帰を手配してくれる。
 これは今回経験した出来事からすれば、本当にささやかなご褒美だが、死と狂気が渦巻く新クトゥルフ神話TRPGの世界では、そんなに悪いものではないだろう。

13.報酬
 クトゥルフかチクタクマンを退散させた+1D10
 深きものを倒した+1D6
 深きものの交雑種を倒した+1D4
 探索者の行いでNPCの犠牲を出さなかった+1D4
 探索者の行いでNPCの犠牲を出した人数分-1

14.NPCデータ
クトゥルフの神官の深きもの
STR80 CON75 SIZ75 DEX80
INT80 POW75 耐久力15 MP15
DB:+1D4 ビルド:1 移動:8
1ラウンドの攻撃回数:1
さんごの槍:槍は折れやすく、突き刺すことにのみ使える。対象に命中すると、さんごの槍は体に刺さったままになる。犠牲者は自分のラウンドに槍を引き抜こうと試みることができるが、さんごは脆く、DEXロールに失敗すると、砕けた破片が体内に残ってしまう。さんごの破片は〈応急手当〉のハード成功、〈医学〉ロールのレギュラー成功、あるいはナイフで傷口を抉って(通常のダメージロール)取り除くことができる。命中した次ラウンドに、さんごの力が犠牲者をむしばみ始める。傷ついたキャラクターは、POWロールにハード成功しなければ、さんごが犠牲者の体熱を吸い、1ダメージを受ける。次のラウンドには、緑色のしょっぱい海水が犠牲者の体にあふれ出し、傷口から噴出して2ダメージを受ける。一度POWロールに失敗すれば、さんごが体内から取り除かれるまでの毎ラウンド、ダメージが2倍になり、続くラウンドには海水が犠牲者の耳、口、鼻、肛門や爪からも噴き出し始め、最終的に眼球が内部の圧力で飛び出し、犠牲者は死ぬ。
さんごの槍 35%、ダメージ 1D8+1
近接戦闘 45%、ダメージ 1D6+DB
回避 40%(20/8)
技能:隠密 40% 聞き耳 40%、水泳 90%、登攀 30%、目星 60%
装甲:1ポイントの皮膚とうろこ。
呪文:《深淵の息》、《クトゥルフの招来/退散》、《チクタクマンの招来/退散》、《深きものの召喚》
正気度喪失:0/1D6。

殆ど深きものと化している深きものの交雑種
    #1 #2 #3 #4 #5 #6 #7
STR 65 60 55 50 80 75 70
CON 65 60 55 50 60 55 35
SIZ 70 65 60 55 70 65 80
INT 65 65 65 65 65 65 65
POW 70 65 60 55 50 45 40
DEX 70 65 60 55 50 45 40
耐久力 13 12 11 10 13 12 11
1ラウンドの攻撃回数:1(かぎ爪、噛みつき、武器)
近接戦闘 45%、ダメージ 1D6+DB
技能:隠密 46%、聞き耳 50%、水泳 70%、跳躍 45%、登攀 40%、目星 45%
装甲:なし。
正気度喪失:0/1D4。
※彼らはまだ人間としての部分を僅かに残しているため、交渉技能で気を逸らすことが出来るし、重傷を負うし、気絶もすればスタンもする

【戦える人間たち】
本谷 金一(もとや きんいち)、元ヤンの大学生
STR60 CON55 SIZ75 DEX60
INT45 APP70 POW65 EDU50
正気度65 耐久力13
DB:+1D4 ビルド:1 移動:7
1ラウンドの攻撃回数:1
メリケンサック 60%、ダメージ 1D3+1+DB
回避 30%(15/6)
技能:魚男に突っかかる 30%
描写:金髪でロン毛、ダメージジーンズをはいている。
ロールプレイの糸口:本人は喧嘩であれば行く気満々だが、彼女のギャルの河合 唯(かわい ゆい)、SIZ55、APP75を納得させるために、〈言いくるめ〉〈説得〉ロールに成功する必要がある。好戦的な性格だが、彼女を最優先に考えて動く。

クレイ 徹(クレイ 徹)、気弱な現役プロレスラー「オールグレイト」
STR85 CON75 SIZ80 DEX55
INT70 APP50 POW30 EDU55
正気度25 耐久力15
DB:+1d6 ビルド:1 移動:8
1ラウンドの攻撃回数:1
近接戦闘(格闘) 80%、ダメージ 1D3+DB
回避 27%(13/5)
描写:血まみれでタンクトップ、ジーパン、短髪の男。
ロールプレイの糸口:狂気には陥っていないが魚男の虐殺を見て心が折れている。彼の心を再び奮い立たせるには、〈言いくるめ〉〈説得〉〈魅惑〉ロールに成功する必要がある。勇気を出せばヒーローになれることや格闘家としての誇りについて言及した場合、ボーナス・ダイスを追加する。このことは〈心理学〉ロールに成功すれば分かってよい。

古木 啓二(ふるき けいじ)、発狂して上の空な警察官の老人
STR50 CON45 SIZ55 DEX50
INT80 APP35 POW50 EDU70
正気度40 耐久力10
DB:0 ビルド:1 移動:7
1ラウンドの攻撃回数:1
近接戦闘(刀剣) 75%、ダメージ 1D8+DB
回避 25%(12/5)
装甲:防刃シャツによる刃物に対する2ポイント。
描写:よれよれのシャツを着た痩せ型の老人。
ロールプレイの糸口:ハキハキとした老人だが、衝撃的なシーンを目撃したことで夢の中にいると思い込み、目覚めるのを待っている。彼が現実の中にいることを思い出させるには〈精神分析〉ロールに成功する必要がある。

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