貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。 作:はめるん用
貴方がうっかりトレセン学園に就職してしまってから、初めてのメイクデビューが近付いてきました。
出走予定のウマ娘の情報も一般公開され、学園内はもちろんファンの間でも未来のスターウマ娘は誰になるかで盛り上がっています。本来ならば貴方もその情報を気楽に眺めて楽しんでいたはずなのでしょうが、素直に喜べない事情があります。
貴方の取り引き相手であるミスターシービーの単独出走が決定したからです。本人からはトレーナーが見つからないのでメイクデビューに挑めないという話を聞いていたので、てっきり相性の良いトレーナーが見つかるまでは見送るものだと貴方は考えていました。
制度として存在する以上は本人の自由です。ミスターシービーに限らず、それなりの人数がトレーナー不在でメイクデビューに出走するのですからそういうものだと割り切るしかありません。なので貴方も前向きに、レースに出るために相性の悪いトレーナーと組まされるよりはマシかと頭を切り替えることにしたようです。
モチベーションの影響が大きいことは、以前にハチミツを食べ過ぎたのか顔色が悪くなるほど体調を崩していたトウカイテイオーで確認済みです。せっかく改善した脚の故障率まで上昇していたものですから、このときはさすがの貴方も焦りました。
食べ過ぎが理由で怪我はいくらなんでも酷すぎる。今後は同じことがないように「お前の脚ならこれから何億と稼げるんだ。ハチミツ程度で調子を落としてるんじゃない」と、欲張って食い意地を張らないよう釘を刺すことでその場は解決しています。なぜかトウカイテイオーのやる気は普通を超えて好調まで上昇しましたが、貴方がその理由に気付く日はおそらく来ないでしょう。
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夜間練習に参加しているウマ娘の中にも、メイクデビューが決定した子たちが何人かいるようです。いつもより走る姿から気迫が伝わってきますし、貴方が『脚質そのほか押し付けて嫌われちゃうぜ大作戦!』で制作したマニュアルを握りしめ、ウマ娘同士で積極的に意見交換などもしています。背に腹はかえられぬ、利用できるなら悪魔のトレーナーにでも魂を売り渡す覚悟といったところかと貴方は感心しています。
ダートの長距離用マニュアルを見たときに転げ回るほど爆笑していたゴールドシップも、中距離追い込みに適性を持つウマ娘たちと一緒に、意外と真面目に走っています。破天荒の二つ名がこれから与えられるであろう彼女も、やはりメイクデビューを控えたウマ娘たちの前では悪ふざけも自重するようです。
その代わり、というワケではありませんが、エアグルーヴはかなり忙しそうにしています。最初は貴方が直接ウマ娘たちにマニュアルを配布する予定でしたが、せっかく取り引きという理由付けもあることだし……と、組み合わせの名簿ごと彼女に丸投げしたからです。お前が作れと言ってきたんだからあとは自分でなんとかしろと押し付けたときの、エアグルーヴのしかめ顔はなかなか傑作で貴方も大満足でした。
いよいよレース本番を迎えると浮き足立つウマ娘たち。担当のいない貴方は完全に他人事なのですが、まぁ今回ぐらいはと飯テロ行為を控えてのんびり練習風景を眺めていると。
「ハァーイ♪ あなたがシービーちゃんの言ってたトレーナー君ね! ちょっとトレーニングのメニューで相談にのってほしいんだけど、いいかしら? あたしともステキな取り引き……しちゃいましょ♪」
現れたのは
個人的に、ウマ娘世界は『サザエさん時空』ではなく『クレヨンしんちゃん時空』だと思っています。時代は進んでも登場人物はそのままなところとか。なので時系列などのリアリティは基本的に無視して書いています。面倒なので(クズ作者)
まぁ三冠ウマ娘を達成したシンボリルドルフやナリタブライアンが当たり前のように日本ダービーに乗り込んでくるアプリのことを思えばなにを(文章はここで途切れている……)