貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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イベント配布のサポートカード、ストーリーを最後まで見ないと1枚足りないことを忘れていたアホが私です。


げいなー。

「さすがに……これは……新しい、ね……ッ!!」

 

「ファイト! 私の上腕二頭筋ッ!!」

 

「テラ根性なのぉぉぉぉ……ッ!!」

 

「ぐぎぎぃぃ……この程度ぉぉ、無敵のテイオー様にはぁぁ……ッ!!」

 

「あい、こぴぃぃぃぃ……ッ!!」

 

「うぅぅらぁぁらぁぁぁぁ……ッ!!」

 

「これぐらい、キングにはぁぁ……キングにはぁぁぁぁ……ッ!!」

 

 

 現在、貴方の目の前ではウマ娘たちが水の入ったドラム缶を押しています。

 

 基本的にトレーニングのアドバイスはチート能力を活用してウマ娘が必要とするものを提案していますが、さすがの貴方もこれには困惑しているようです。

 一応、アプリにも“巨大タイヤ引き”という項目がありますし、ステータスを確認すれば身体はキチンと鍛えられていますので、そういうものなのだろうと貴方は無理やり納得することにしました。

 

 ちなみに周囲の視線はこれまでのどこか貴方を見下すようなものから「どういうことなの……?」という混乱に変わっています。悪評とは方向性は違いますが、とりあえず評価が上がっていないならヨシ! と納得することにしておきましょう。

 ついでに、いかにもお嬢様な雰囲気のウマ娘が挑戦してみたいとはしゃいでいるのを友人らしきウマ娘が止めていましたが、貴方は全力で見なかったことにするようです。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 成長を実感できようとも、走りのタイムが縮もうとも、慣れないトレーニングは疲れるものです。ルームでは貴方と取り引き中のウマ娘が全員グッタリしています。

 そんなに疲れているなら自分の部屋で休めよと貴方は思っていますが、ウマ娘たちからしてみれば貴方のルームを超える快適空間は存在しないでしょう。奇跡か神憑りレベルの癒しパワーを持つソファーは、メジロライアンが筋トレを、アイネスフウジンがアルバイトをサボりそうになったレベルなのですから相当です。

 

 だらけた空気で乙女の尊厳より体力回復を優先するウマ娘たちのために貴方が飲み物などを用意していると、ルーム内にタブレットの着信音が鳴り響きました。どうやら貴方の家族から連絡がきたようです。

 なにか実家でトラブルでも起きたのでしょうか? いえ、どうやら母親が貴方の近況を知りたくて電話をかけてきただけのようです。もちろん貴方は追放狙いの悪党ロールプレイのことは黙秘しつつ、楽しく過ごしているとだけ伝えます。ですが──。

 

 

「……ねぇテイオーさん? 私たち、これだけトレーナーに“お世話”になっているのだから、ご家族にもひと言あってもいいと思わない?」

 

「──! そうだよね~、トレーナーのおかげでトレーニングもとぉ~っても充実してるし、感謝のキモチはちゃんと伝えないとダメだよねぇ~!」

 

「マヤノちゃん! ウララちゃん! そっちから回り込んで確保するのッ!」

 

「りょうかーい☆ フォックスツーッ!」

 

「なになにー!? トレーナーをつかまえればいいのー!? それぇッ!」

 

「あはは……。ごめんね、トレーナーさん」

 

 

 これも日頃の行い、因果応報か。油断した隙に貴方は一瞬で捕縛されタブレットを取り上げられてしまいました。これだけウマ娘たちの鬱憤がたまっていたことに完璧な悪役ムーヴが出来ていたのだなと喜びつつも、さすがにこの状況はまずいと焦っているようです。

 

 しかし残念! 現実は無情なのです! 貴方の母親と挨拶を交わしていたミスターシービーですが、ウマ娘たちに取り付かれている貴方を見てニヤリと笑うとタブレットの画面をこちらに向けました。

 そこには頭の上でウマ耳をピコピコ動かす年齢不詳の母親と、転生してから十年以上過ごしてすっかり見慣れた実家の壁が映っていました。もちろん、貴方に向こうの様子が見えているということは、向こうも貴方の姿が見えているということです。

 

 

「あらあらあらまぁまぁまぁ♪ ちょっとパパ~、パパこっち~! みんなもいらっしゃ~い! お兄ちゃんの担当しているウマ娘さんたちですよ~!」

 

 

 家族連れで賑わう休日のファミレスでひとりフルーツパフェだけ食べて帰ることができる程度には度胸のある貴方ですが、さすがに仕事場を家族に……というよりは母親に見られるのは恥ずかしいようです。

 

 なにが楽しいのか盛り上がるウマ娘たちと家族たち。勘弁してくれと言わんばかりに机に突っ伏す貴方に、キングヘイローがそんなに母親が苦手なのかと問いかけました。

 家族愛と感情は別物なのだと半ばヤケクソ気味に答えた貴方の耳には、そういうものなのかと驚きと納得を含んだキングヘイローの呟きは届くことはありませんでした。

 




次回はキング視点です。

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