やさしいうそ ⑤ 「究極のうそ」編

サエキけんぞうの素晴らしき20世紀ポップ

放送日:2022/04/30

#音楽#うた♪#なつかしの名曲#J-POP

4月のテーマは「やさしいうそ」。「永遠のうそ」対「最後のうそ」、どちらがやさしいのでしょうか。特集5回目は「究極のうそ」編です。(聞き手:渡辺ひとみキャスター)

吉田拓郎「永遠の嘘をついてくれ」(1995年)

サエキ: 作詞作曲は中島みゆき。吉田さんからの「遺書のような曲をお願いします」という注文だったそうで、もともと吉田拓郎さんのファンだった中島みゆきさんは、「これを最後の曲にはしない」という条件で楽曲の依頼を引き受けたそうです。歌詞は「ニューヨークは粉雪の中らしい」と相手の人がニューヨークに住んでいることをにおわせところから始まり、友達からお金を借りまくればニューヨークぐらいいけるんだけど、「永遠の嘘(うそ)を聞きたくて」この町にとどまっているという主人公の気持ちを歌っている曲なんですね。つまりニューヨークに行って本音を聞いてしまえば、すべては済んでしまうのかもしれないですけれども、それを聞かないでこのまま、うそのままでも種明かしをしないで、この恋に酔っていたいということなんでしょうかね。こういうふうに虚構の中でもとどまって、ある状態を続けていたいっていうのは、人間としては究極の願いなんでしょうかね。

――知らなければよかったか、知らないほうがよかったという言葉もありますし、うそをつき通してほしいというのは、やっぱり時に生まれる感情ではありますよね。

サエキ: そうですよね。そして僕はこれを聞いていると、中島さんの究極の気持ちは吉田さんに対する愛があらわれているような気がしちゃうんですよね。歌手とファンの関係って、時にそういうずっと「永遠の嘘をついてくれ」っていう気持ちに近いものがあるのかなって気がしちゃうんですよ。不思議に歌詞とか理屈ではなく、心情で中島さんの愛が伝わってくる曲だと思います。

松任谷由実「最後の嘘」(1996年)

サエキ: 松任谷由実が1996年に発表した29枚目のシングル「最後の嘘」。この曲の宣伝コピーが「あなたは必ず5つの隠し事を持っています」。というものなんですよね。ひとみさん、5つ隠し事、持ってますか。

――持ってます…

サエキ: 持ってますか、やっぱり。

――5つ以上。

サエキ: 5つ以上ね。この歌詞の重要な部分は「Tell a lie  最後だけ本当の嘘をついてよ きみが嫌いになったって」というんですね。何らかの事情で別れなければならない二人が、最後嫌いになったと言ってもらえば気持ちにけりがつけられる、ということをうたってるんですね。

――本当のうそ、という歌詞はすばらしいですよね。本当のうそですよ。

サエキ: 本当のうそ、この「本当」って言葉の中に、ある種の願望も入っているんでしょうかね。

――うそについて考えているようで、実はやさしさについて、いま私たち考えているんですね。

サエキ: そうですね。やはり「やさしいうそ」っていう、テーマそのものの曲だったとも言えますね。きょうは「永遠のうそ」対「最後のうそ」。「中島みゆき」さん対「ユーミン」ともとれる組み合わせでしたし、両方とも1995年と96年という同じような時期に作られてるんですね。果たして「究極のうそ」はどちらのうそなのか、皆さんも一度自分に問いかけてみてはいかがでしょうか。

【放送】
2022/04/30 マイあさ!「サエキけんぞうの素晴らしき20世紀ポップ」 サエキけんぞうさん(ミュージシャン・作詞家)

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<マイあさ!>[R1] 毎週月曜~日曜 午前5時00分~