自慢することがないのでプライバシー

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なぜプライバシーに敏感なのかといえば、見栄を張るのが面倒だからである。昭和の頃は今よりひとびとが見栄っ張りだったが、これはやはり隣近所の付き合いが深くてプライバシーがなかったからだと思う。人間と人間が関わるからには、自慢のネタくらいは持ちたい、あるいは、他人にいろいろ聞かれて、冴えない人生について正直に説明して会話が途切れるというのも、お互いに気まずいものであるから、場を寒々しくしないために自慢する材料を用意したいと考えていたのである。こういう自慢やお世辞の世界がとても面倒であるから、自分の人生がネタとして俎上に乗らないようにプライバシーを守ろうとしている。見栄を張るのはコストが掛かるしお世辞も言われたくない、お互いを品定めする品評会にはうんざりだ、服はユニクロでいい、という姿勢だ。水商売が廃れているのも、見栄を張るのが馬鹿らしくなっているからだろうし、香川照之という俳優のスキャンダルを見るに、昨今の夜遊びはなんぞやといえば、高い服を着て、高い腕時計をつけて、高い酒を飲んで、ホステスに告発されることである。悪いことだらけだ。ホステスが著名人を告発するようになったのは宇野宗佑首相からだが、宇野内閣の誕生は平成元年であった。水商売はまさに昭和も昭和、昭和らしい産物であり、コンプライアンスの高まりには耐えられない。見栄を張るのが馬鹿馬鹿しい、ホステスに告発されても馬鹿馬鹿しい、水商売から人々の足が遠のくのは当然であるし、未だに行っている人は昭和の感覚が抜けないというか、お世辞や自慢話が好きな病気なのであろう。
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