幼馴染が終末思想のヤバいカルト宗教にハマってしまった件   作:漬け物石

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幼馴染が終末思想のヤバいカルト宗教にハマってしまった件

 日本・某県某市。

 その日、地元の高校に通う女子高生たち三人が、とある場所に集まっていた。

 

「今日はいきなりどうしたん?」

「何やら相談があるとのことでしたけど……」

 

 三人のうち二人は残りの一人に『相談したいことがある』と呼び出され、彼女の家に集まったのだ。

 暗い顔をしている彼女の様子に、二人は心配げな表情で話を促す。

 

「えーと、実はね……」

 

 相談とは、彼女の幼馴染である男の子のことだった。それを聞いた二人は肩透かしと言わんばかりの表情を浮かべる。

 彼のことは二人も知っており、幼馴染同士の何とも言えないじれったい距離感を見て、やきもきしているところだったのだ。

 

「なになに!? コイバナ? コイバナなの!?」

「深刻な表情だったので何かと思えば……それとも、恋敵でも現れましたか?」

「だったらまだ、よかったんだけど……」

 

 盛り上がる二人とは対照的に、彼女の表情は暗いまま。茶化していい場面ではないと悟り、二人は居住まいを正す。

 

「実は彼……最近、危ない宗教にハマっちゃったみたいで……」

『はい?』

 

 重々しく告げられた予想外の内容に、キョトンとした顔で呆けてしまう二人。その反応は予想済みだったのか、それとも余裕がないのか、彼女は二人に構わず、俯いてポツポツと話し始めた。

 きっかけは今年の夏休み。彼が富士山にある神社で行われた、『霊能力に目覚めることができる』と銘打たれた集まりに参加したことだと言う。

 

「なんていうか……もうその時点で怪しさ満載なんだけど」

「よく止めませんでしたね」

「でも、その時は彼も半信半疑っていうか、面白半分みたいな感じだったの。『そういう設定の集まり』って言ってたし。だからあんまり心配してなかったんだけど……」

 

 しかし一週間ほどして戻ってきた彼は、何やら身に纏う雰囲気が変わり、普段通りに振舞いつつも深刻な様子を隠せていなかったという。 

 

「青い顔で『終末……本当に終末が……? ヤバイ、どうしよう……いや、さすがにそこまでは無い、はず……でも本当だったら……』とか、ブツブツ呟いてて……」

「洗脳されてんじゃん! ヤバイじゃん!」

「終末思想のカルトですか……定番といえば定番ですが、厄介なのに嵌りましたね……」

 

 ここに至って、事態の深刻さに気付いた二人は引き攣った表情を隠せない。自分達の知らない間に、ずいぶんと不味いことになっていたらしい。

 

「それ以来、どんどん彼の様子がおかしくなって……」

 

 集会で知り合った人間たちと頻繁にやり取りし、オカルト関連の掲示板や噂話などを調べ、休日には泊まり込みでどこかへと出かけていく。事態の発端となった富士山にも、度々訪れているらしい。 

 

「もしかして、最近学校を休むことがあるのは、そのせいで……?」

「うん……」

「いや、旅費とかどうしてるのさ? まさか、親の金に手を……とか?」

「それは無いみたい。彼はアルバイトだって言ってた、けど……それも、例の人達に紹介されたみたいで……」

 

 彼女の見たところ、彼が休日に出かける時には他県へと遠出することも多く、頻度を考えればとても高校生が稼ぐような額では追いつかない筈だという。

 

「うっわ、怪しいなんてモンじゃないよそれ……」

「親と言えば、ご家族の方は?」

「わたしと同じように心配してたよ。何度か話し合ったみたいなんだけど、彼は『大丈夫』としか言わなくて。それでも聞き出そうとしたら、ちょっと喧嘩になったって言ってた」

 

 彼は決して家族仲は悪くなく、反抗期が酷いわけでもない。しかしこの件に関してだけはかつてないほどに頑なであり、家族も頭を悩ませているのだと言う。

 

「結局、今は様子を見るしかないって……」

「いや、手遅れになったらどうすんのさ」

「とはいえ、これ以上なにが出来るか、という問題もありますよ。詐欺だと言う決定的な証拠があるわけでもありませんし……」

 

 なお当然のことながら、彼女たちは彼が本当に霊能力に目覚めたとは欠片も思っていない。タチの悪い宗教にかぶれてしまったという認識である。

 

「証拠って言ってもさー、実際どうすんのよ? 部屋でも漁れって言うの?」

「それも、実はやってみたんだけど」

「あ、もうやったんだ……」

 

 若干引き気味の呟きを漏らす友人をスルーし、彼女は続ける。大切な幼馴染の彼の為だからね、仕方ないね。

 

「悪いとは思ったんだけど、彼のいない時に部屋をちょっとだけ探ってみたの。そうしたら鍵のかかった机の引き出しから、『終末の過ごし方』って書かれたノートが出てきて……」

「どこのラノベのタイトルですか? と言えたら笑い話で済んだのでしょうけど……」

「いやいや、待って待って。スルーしかけたけど、鍵はどうやって開けたのさ?」

「ピッキングは乙女のたしなみだよ?」

「ですよね。恋人の浮気の証拠とか探す必要がありますし」

「え? これアタシがおかしいの……?」

「それで、ノートの内容は?」

「うん、書いてあったことが、怖いぐらいに具体的でね」

「何事も無かったように続けないでよ……」

 

 気になる相手とは言え、他人の部屋を許可なく漁ると言う割とアレな行動はどうかと思う友人だが、目的は手段を正当化するのである。

 ――話を戻すが、ノートに書かれていたのは、早ければ数年、遅くとも十年後には終末が訪れるであろうということ。それに備えたシェルターの値段や、そこに運び込む予定の物資の内容と量。他にも終末が到来した後の生き方などが、何パターンも想定されていたという。

 

「いや、シェルターって……ガチじゃん。いろんな意味で」

「どこでそんなものが買えると……?」

「それも、例の人達が売ってくれるって書いてあった」

「いや騙されてるって! ヤバいって、絶対!」

「どう考えても、高校生が数年で稼げるような金額じゃありませんよね……」

 

 三人の脳裏に、彼が洗脳によって終末思想に憑りつかれた挙句、無茶をしながら金を稼いで最終的に体を壊すという、最悪のケースがありありと浮かぶ。

 

「もうこれだけでよくない? 有罪じゃない?」

「いえ、無理でしょう。ただの妄想とか、小説のネタとでも思われるのがオチです。警察もこれだけでは動いてくれないでしょう」

「……っていうか、よく考えたら捕まるのって、勝手に部屋に入って鍵まで外したこの子の方だよね……」

「他に証拠になりそうな事とか書いてありませんでしたか?」

「うん、他にはね……」

「またスルーか……」

 

 ノートには他にも、悪魔とか天使とかメシアとか、怪しげな言葉が大量に記載されていたらしい。

 それを聞いた二人は、いよいよ頭を抱えてしまう。

 

「悪魔とかさぁ、天使とかさぁ……もうヤバすぎて何も言えないよこれぇ……」

「終末の果てに、メシアや天使が降臨して救ってくれる……よくあると言えば、よくある思想ですけど……」

「ううん、『悪魔はヤバいけど、メシア教と天使はもっとヤバい。というかクソ。滅べ』ってあった」

『はい?』

 

 またもや声を揃えて首を傾げてしまう二人。ここに来て、流れがよく分からない方向に行ってしまったように感じられる。

 とはいえ、打開策になるわけでもないため、気にはなるものの一旦おいて話を進めることにした。

 

「あと、他にも出てきたものがあってね」

「まだあるの……聞きたいような、聞きたくないような……」

「もうここまで来たら、毒を食らわば皿までですよ。それで、他には何が?」

「お札とか、よく分からない石だとか……他にも怪しげなものをいろいろ買ってるみたいで……そういうのがたくさん出てきた……」

『うわぁ……』

 

 さすがに二人ともドン引きした様子を隠せない。ぜったい変な壺だとか売り付けられるやつだこれ、とその顔には書いてあった。

 

「大丈夫? 変な壺とかパワーストーンだとか売り付けられたりしてないよね?」

「家族や知り合いに話を持っていき始めたら、本格的に不味いですよ?」

「お金で買えって言うのはない、けど……」

 

 気まずげに言葉を区切った彼女は、部屋の一角へとチラッと視線を向ける。それを追ってみれば女子の部屋には不似合いな、怪しげな物品が置かれていた。

 気のせいか、何やら異様な気配を放っているように見えなくもない――

 

「まさか、あれは……」

「うん……彼が、お守りだって……絶対に持ってろって……」

「うわ、うわぁ……」

 

 事態はここまで深刻化していたのか――二人の内心が一つになる。

 二人の反応を見て、いよいよ限界が訪れたのか、彼女は涙目になって俯いてしまう。

 彼が自分を心配してくれるのは嬉しいが、こんな形ではまったく喜べない。そんな処理しきれない感情が、雫となって溢れ出す。

 

「わたし、どうしたらいいのかな……? もう、わからないよ……ッ」

 

 唇を噛み締め、それでも堪え切れずポロポロと涙を零す彼女を、友人たちは抱きしめ、必死に慰める。

 

「ああもう、泣かないの! 大丈夫、まだ間に合うよ! アタシたちも協力するからさ!」

「そうです、悲しんでる友達を放ってなんておけません。みんなで彼の目を覚ましましょう」

 

 幼子をあやす様に、彼女が落ち着くまで背中を撫で、懸命に励まし続ける二人。

 そんな二人の優しさを受けた彼女は、未だに涙を流しながらも、何とか淡い笑みを浮かべる。

 

「ありがとう、二人とも……ッ! わたし、頑張るね……!」

 

 彼女は決意する。

 大切な幼馴染を、必ずまっとうな道に引き戻して見せると――

 

 

 

 *

 

 

 

 同時刻。

 某県某所、とある異界にて。

 

「うおおぉ! 死ねぇ、悪魔ども! 【大切断】!」

「■■■■――!!」

 

「随分と気合入ってんなー、アイツ。何かあったん?」

「なんでも幼馴染の女の子を、どうしてもシェルターに避難させるんだってさ。終末が来る前に」

「おーおー、青春だねえ。俺らと同じだから、中身はおっさんだろうに」

「やめてくれカ〇シ、その言葉は俺に効く」

「誰が〇カシか」

 

 未だ終末は訪れず。

 だが、近い将来必ず来るであろうそれを乗り越えるため、今日も転生者たちは走り続ける――

 

 

 




まあ、一般人から見たらガイア連合の人達ってこう見えるよねって話

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