コラム

日本人が見誤る、「親日国」イランの危険すぎる実態

2021年07月28日(水)11時45分

国内では少数派を弾圧

国民の半数以上が貧困ライン以下の生活に苦しむなか、今年5月には革命防衛隊の予算が60%以上増額され、パレスチナの過激派ハマスにこれまでの5倍以上の資金提供を約束したと2019年に報じられた。国民の福利でなく「革命の輸出」を優先している証しだ。

イラン国内で反体制派や人権活動家、同性愛者、少数派などの弾圧、拷問、処刑が行われていることに対し、国際的非難が相次いでいる。2019年にはジャバド・ザリフ外相自らが、同性愛者に対する死刑を「イランの道徳的原則」として正当化した。

長く検察官を務めたライシ次期大統領は1988年、数千人の政治犯の処刑を決定したいわゆる「死の委員会」の一員とされ、アメリカの制裁対象とされている。

イランは近年中国との関係を強化し、今年3月には経済や安全保障など幅広い分野での連携について25年間の協定を締結した。「被抑圧者」の解放を掲げているにもかかわらず、同じイスラム教徒であるウイグル人弾圧については言及すらしない。

日本はイランという国の現実を直視し、警戒する必要がある。「親日国」と位置付け、融和政策に徹すればよい時代はとうに終わっている。

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プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。イスラム教という切り口から国際情勢を分析している。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)。

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