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ベビーシッターが強制わいせつ行為で逮捕
私は少し緊張していた。
被害にあった女の子とそのご家族がお台場のフジテレビに到着するまであと数分。頭のなかで、この事件について思い返していた。
「ベビーシッターが、預かり中に5歳の女の子に強制わいせつ行為で逮捕」
女の子の母親はもともと在宅ワークだったが、娘たちの保育園も新型コロナウイルスの影響で4月から休園となったため、仕事をするあいだ5歳の長女と1歳の次女の面倒を見てくれるベビーシッターを、マッチングアプリ『キッズライン』で募集した。
そこに応募してきた30歳のシッター、荒井健被告が4月から5月にかけ複数回にわたり、連れ出した公園のトイレで、また、あろうことか母が在宅勤務中の隣室でも、娘にわいせつな行為をはたらいていたというショッキングな事件である。

「まさか・・・」母親はそう思いながらも5歳の長女に尋ねた。そこで初めてこのベビーシッターの男のおぞましい犯行が明るみに出たのだ。
その時の驚きや悲しみはいかばかりであったろうか。考えるだけで胸が詰まった。
私も5歳と4歳の子供がいる。
そして我が家でもキッズラインは頻繁に使っているのだ。
被害にあった母娘との対面
その母親が、我々のインタビューの依頼を受けてくれた。
仮にAさんと呼ぶことにする。
タクシーから降りてきたAさんは1歳の次女を抱きながら笑顔で会釈をしてくださった。私はその明るい表情に正直ほっとした。ぴょこんとタクシーから降りた女の子が、きょろきょろと好奇心旺盛にあたりを見回している。こんな幼い子に・・・と私はまた苦しくなった。が、気取らせてはいけない。
「近くにレゴランドあるよ」そう話しかけると「行ったことある」と可愛く答えてくれる。
「でもね、レゴランドの電車は怖いからぜーったい乗らないんだ!」と何度も言いながら楽しそうにお父さんと妹とともにお台場散策に出かけていった。
インタビュー中はお父さんが子どもたちと過ごしてくれるという。彼女たちの後ろ姿を見送りながら、平和な休日の、ごく平和な家族の姿にしか見えないのに・・・そんな思いに駆られていた。

一本の電話から始まった
「5月25日でした。その日も荒井被告に預かっていてもらっていて、次の予約を確認して荒井被告は帰っていきました。その2時間半後にキッズラインから電話があったんです。電話口の女性がかなり焦っている感じでした。」
その電話でAさんは唐突に、今後、荒井被告を仲介できなくなったと伝えられたという。
「いくら理由を聞いても個人情報なので教えられない、の一点張りでした。せめて自己都合かどうかだけでも、と何度も食い下がったのですがダメでした。」
ついさっきまで、予約確認までしていたのになぜ急に・・・と理解できず、このときは「荒井被告が交通事故にあってしまったのかな」「家族と住んでいると聞いていたので家族の誰かがコロナに感染してしまったのかな」などと考えていたという。
不思議に思いながらもAさんは長女に「荒井先生、もう来られなくなったんだって」と伝えた。すると長女の顔がパーッと明るくなり、喜んだという。
その表情を見た途端、もしかして、と急に胸が騒ぎはじめた。
隣の部屋でも・・・シッターのおぞましい犯行
「何か変なことされていない?」
「うん、うーん、うん・・・」曖昧な聞き方だと子供に理解できないと思ったAさんは具体的に性器に触られたことはないかどうか尋ねてみた。すると長女は「え?」という感じで「うん」と頷いたのだった。
「トイレでおしっこしたとき?」
「ううん」
「洋服のうえから?」
「ううん」
「下着のうえ?」
「ううん」
「え?下着のなか?」
「うん」
「どこで?」
「公園のトイレ」
「一回だけ?」
「ううん」
「え?家でも?」
「うん」
「毎回?」
「うん」
襖一枚を隔てた隣室でも被害にあっていた。
おそらくAさんがオンライン会議中で、その場から動けない時間帯を巧妙に狙ったのだ。

思い返せば、何度も違和感を抱いたことがあった。
初めての来訪時の荒井被告の笑顔の少ない暗い表情。
しかしコミュニケーションが苦手な人なのかなという程度に考えてしまった。
また、子供2人が荒井被告に公園に連れられて帰宅した5月のある夕方、長女はAさんのもとへ走り寄ってきて「ぜんっぜんおもしろくなかった」と怒った様子で言ったことがあった。
荒井被告がいなくなってから聞いてみたが、長女は理由を言わなかった。コロナ禍でのシッティングなので子供の体温を測るために荒井被告がおでこに手をやろうとすると、長女がさっと逃げてAさんの後ろに来ることも何回かあった。
カレンダーに荒井被告が来る日が長女にもわかるようにして毎日、毎回「またあの先生にお願いするけど大丈夫?」と聞いてもいた。長女は荒井被告が来るのをそんなに喜んでいる様子ではないが、Aさんにはその時点では長女の気持ちははっきりとはわからなかったという。そして犯罪発覚まで荒井被告に8回、シッターを依頼した。
「子どもが自分から打ち明けるってこんなに難しいんだ・・・」母親の悔恨
「本当に、今思うと」Aさんは続ける。

「私はそもそもの大前提でそういった性被害が起きている可能性を、本当にゼロで考えてしまっていました。性被害は、誰にでも起こりうるものだという認識や知識もあったにもかかわらず、です。ましてや何かあったときも子供が私に言ってきやすいような信頼関係を築けていると思っていたのですが、それでもやっぱり言えないんだなって。こういう被害にあったとき、子どもが自分から打ち明けるってこんなに難しいんだなって・・・」
Aさんの瞳がみるみる赤くなって、じわりと潤んだ。
はっとした。私は迂闊だった。ここまで本当に気丈に、はきはきとインタビューに答えてくれていたAさん。とてもしっかりしたお母さんだと思っていた。それはもちろんそうなのだろうが、明るく気丈なその姿は、すべて我が子の今後を思えばこそのふるまいだったのだ。

「その先生との時間がそんなに楽しそうじゃなさそう、そう思いながらも、先生と遊んでくれていてありがとうと声をかけてしまったことがあって、娘にとってはもしかしたら、ママのためにこの先生と我慢していなくちゃ、そう思わせたのかなと、あとから思いました。」
荒井被告は長女が母親のところに行こうと襖を開けようとすると「ママはお仕事してるから駄目だよ」と長女に言い聞かせていたというのだ。
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