First world パターン:救世主補佐
第二十七話 「普通の人」と言われるより、「変人」と呼ばれたい。「変人」は、ほめ言葉です。我々の業界ではご褒美です
またもや感想をくださった啄木鳥さん、ありがとうございました!
どうも皆さん!
あまりにも暑くて一日でカリカリ梅を一袋空けた作者です!
皆も熱中症と塩分過多には気をつけようね!!
さくしゃさんとのやくそくだよ!!
私達は馬車を駐車スペースに移動させ、馬を馬舎に繋いでから宿屋に入った。
「……正直、この出だしは捻りがなさ過ぎてぶっちゃけ不本意だ」
「なんの話だよ」
「ノゃ……ノアの気にすることじゃにゃいよ」
「前触れなくも噛むなよ……言い直しても結局噛んでるし」
「かみまみた」
特に意味のないやり取りも、最早お約束である。
ちなみにこちらの宿屋、『グリーンピース』とゆうらしい。
……なんで豆?と思ったが、単に直訳して『緑のやすらぎ』みたいな意味の看板のようだ。
どうゆう翻訳だ、言語自動翻訳機能よ。直訳過ぎるだろ。
宿屋の入り口にあるカウンターでは――おそらく、宿屋の主人であろう――人のよさそうなおじさんが、私達を迎えてくれた。
レモンの騎士がさっき話をつけてきたのはこの人か。
「いらっしゃいませ。四名様でよろしいでしょうか」
ああ、そうだ。
言い忘れてたけど、一応私らは変装はして来てるんだよね。
レモンの騎士はここに来たことあるって言ってたけど、今は騎士団の物とは違う鎧を見に付けてるから、ただの旅の剣士にしか見えないと思う。
あと、騎士団って結構人数いるし多分顔は覚えてないだろう、とゆうのはレモンの騎士の談。
ちなみに、特に鎧とか見に付ける物がなかったため、私含む残り三人は『ただの旅人』ルックです。
……べ、別に後付けとか、たった今考えたとかそんなんじゃないんだからねっ!本当に言い忘れてただけなんだからねっ!
まあそんなわけで、宿屋の主人にはこっちの身元は割れてないと思う。
てか、そう信じたい。
「ああ。二泊で頼む」
「一人部屋と二人部屋、共に空いておりますが、いかがいたしますか?」
「では一人部屋を……」
「待て待て」
レモンの騎士によって率先して進められていた会話に割り込むと、怪訝そうな視線が向けられた。
「どうかしましたか?」
さすがに人前とあって「補佐様」とは呼ばないらしい。
「二人部屋二っつ頼もーや。そっちのが安いでしょうに」
「しかし……」
言い淀むレモンの騎士。
ああ、白さんに二人部屋になんか泊まらせられないってか?
やれやれ、まったく。
こうして旅に出たからには、いつまでも王族気分じゃいられんだろうによ。
「お金はなるたけ節約せい。余裕ぶっこいて使ってると足りなくなった時後悔するよ」
ねぇ?とノアの方へ視線を振ると、こうゆう場の判断は慣れていないのか、曖昧な生返事を返された
ちっ、使えん奴め。
「……あの、私は二人部屋でも構いませんよ?」
結局、白さんの鶴の一声により、レモンの騎士は渋々ながら二人部屋を二つ頼んだ。
「二人部屋を二部屋で、青金貨三枚と赤金貨二枚になります。お食事は料金には含まれませんので、一階の食堂か外の料理店をご利用ください」
王都にいた頃こっそり城下に出てわかったが、この世界の通過は黄金貨、青金貨、赤金貨、緑金貨の四種類で、一番価値が高いのが黄金貨、一番価値が低いのが緑金貨らしい。
緑金貨は大体一枚十円くらいで、百枚分で一つ上の赤金貨一枚と同じ価値になるとのこと。青金貨も百枚で黄金貨になり、赤金貨だけが十枚で青金貨になる。
となると、それぞれの金貨が日本円でいくらになるか計算できるが、そこは日本とは物価がいろいろ異なるため、あまりアテにしない方がいい。
おやつ用の果物が緑金貨三枚とか、日本で果物一個三十円とか有り得んでしょ。
そんなわけで。
レモンの騎士が主人に必要な金貨を払い、部屋の鍵ももらったので、さっさと荷物を置きに行くことにした。
ちなみに、部屋は二階だった。
「さて、部屋割りに関しては……言う必要ないか」
「そっスねー」
「まあ、このメンバーだしな……瑠璃、お前ホワイトさんに変なことするなよ?」
「しねーよ。私は変人だが、変態ではない!(キリッ)」
「どうゆう主張だよ!どの道変なことには変わりないだろ!」
「ちっちっち。残念ながら、変人と変態は大きく異なる。そりゃあ私は美少女の類の生き物は好きだが、そもそも美少女に関してはゴータッチ派ではなくノータッチ派だしな」
「その発言が既に変態の域なんじゃないのか!?てか何、ゴータッチ派とか!」
「とりあえず、白さんには別に
「もう変態以外の何者でもないだろ!!一文字変えたところで不安なのは微塵も変わらないから!」
「心外だな。一緒に寝ることや、一緒に着替えることや、夜中こっそり起きて寝顔眺めたりすることのどこが変態なんだ」
「…………ホワイトさん、何かあったら俺のところに来ていいからな?」
「てゆうか、最後のは普通に変態じゃないんスか」
「え、あの……ノアと一緒の部屋ではないのですか?」
「「「うぉい」」」
***************
部屋にそれぞれ荷物を片付けたあと、下の食堂でご飯を食べようという話になった。
ちなみに今はお昼時。
二日ぶりのNOTサバイバル料理である。
男性陣と合流すると、ノアが胡散臭げな視線を向けてきた。
「……何もしてないだろうな?」
「してねーって!私は年中発情期の兎か!」
「そうじゃない。無茶振りとか悪戯とかして困らすなよって言ってるんだよ」
「大丈夫だ。私はノアみたいな天性の突っ込みや、レモンの騎士みたいないじられキャラにしかあーゆーことはせんよ」
「俺……いじられキャラなんスか……」
「天性の突っ込みってなんだよ……」
レモンの騎士とノアががっくりとうなだれるのを完全にスルーして食堂に向かう。
一階に下りて行くと、ざわざわと人の声が聞こえてきた。
……ん?
「……なんか、騒がしいな」
ノアが私の思ったことを代弁してくれた。
食堂は一階のカウンターとゆうかフロント(と言っていいのか)と扉一枚隔てた場所にあり、ちょっと大声を出せばフロントに丸聞こえなのである。
まるで隠そうともしない怒号は、先程受け付けをしてもらっていた時には聞こえなかったはずだ。
これはもしや……。
「…………フラグか?」
「え?何か言ったか?」
「うんにゃ。なんもないよ」
私の予想が正しければ、イベントフラグが一本立った、ということだ。
つまり、面倒事の予感。
私は一応、いつでも能力を発動できるようにしておく。
一瞬目配せをされたので頷いてみせると、ノアはなるべく音を立てないよう、そっとフロントと食堂を隔てる扉を開いた。
「おい、ねーちゃんよぉ!オレの一張羅汚してくれやがって、どうしてくれんだよ!」
「も、申し訳ございません!」
…………。
よし、状況の確認をしよう☆
①なんか怒鳴り散らしてる服に液体の染みが付いたチンピラがいる。
②平謝りしてる店員らしきおねーちゃんがいる。
③床に散乱する割れたグラスと飲み物らしき液体。
以上。
……とりあえず、予想の範囲内の状況であることは察しがつく。
幸い、どうやらチンピラは怒鳴るのに夢中でこちらには気付いてないようだ。
それをいいことに、私は唖然とする他三名を尻目に、扉の近くの席に座る男性客にそっと耳打ちする。
「ねぇ、これはどうゆう事態なのよ」
「……ああ、オーカーの奴のいつもの嫌がらせでさ。飲み物運んでる娘さんの足引っけたまではいいけど、転んだ娘さんの持ってた飲み物があいつの服にかかったんだ。……まったく、自業自得もいいとこだってのに、迷惑な奴だよ」
苦々しげに、男性客は囁き返す。
……ふむ。
とりあえず、律儀にも説明してくれた男性客のお陰で、いくつか情報が入ってきた。
①チンピラはオーカーとか言うらしい。
『いつもの』って言われるくらいだから、結構悪いことばっかしてるっぽい。
②おねーちゃんは実際店員らしい。
んで、文面からして宿屋の主人の娘っぽい。
てゆうか、娘の一大事にご主人は何してんだよ。なんでいないんだよ。
……まあ、とりあえずこの場で重要なことは、あのチンピラが非常に不快であるとゆうことと、ここでおねーちゃんを助けて恩を売っとけば、多少のサービスを期待できるかもしれないとゆうことだ。
なら話は早い。あのチンピラをとっちめる。
もちろん、ノアに華を持たせて、だ。
ノアのハーレム属性があれば、助けられたおねーちゃんは確実にノアに惚れる。
さすれば、期待以上のサービスを受けられるかもしれない。
「……ノア。私が相手の注意をそらす。その隙を突いておねーちゃん避難させてから、チンピラを捻じ伏せろ。白さんは部屋の端っこにいな。レモンの騎士はいざって時に白さん守る。OK?」
そんな私の下心も知らず、指示された三人は神妙な顔を頷く。
「……気を付けろよ」
「言われんでもヘマはせんよ。任せんさい」
緊張した顔のノアに、にっ、と笑って見せる。
「……わかった。任せる。……あと、ふざけて●魂みたいなことはするなよ?あの……なんだっけ、四天王編の最初の方の。あの、『今肩叩いたアレで全身の骨が粉々にー!』とかなんとか言うやつ」
……土壇場で随分と具体的な忠告をしてくださる。
まあ、実際私はそうゆう類のことはやりかねんからな。
「わーかったよ。銀●みたいなことはしないよ。それに、ふざけてとは心外だな。私はいつでも全力だ」
「余計質悪いわ!」
チンピラに気付かれることを考慮してか、ノアが小声で怒鳴るとゆう器用な真似をこなす。
「ま、お互い役割を果たしましょーや。……じゃ、行ってくる」
返事も待たず、私はてってとチンピラとおねーちゃんのところへ歩みよる。
「ちょいとあんた!こんな人が大勢いるところで何しとるね!そがな大声で、おなごにゃ優しくせんといけんよ!」
(だからどこの方言だよ!!)
なんかノアの思念を拾ったような気がするが、無視だ、無視。
「んだとテメェ!邪魔すんじゃねえ!!」
案の定怒ったチンピラは、一応私は女性だというにも関わらず、躊躇いなく拳を振り上げた。
そして私はその場から一歩も動かず、甘んじてその拳を左頬に受け――
ゴトリ
――首が、固い音を立てて床に転がり落ちた。
一体、誰が予想できたであろうか。
少女がガラの悪い男に殴られ、その首が転がり落ちるなどと。
あまりのことに、誰も状況に着いて行けず、ただ恐怖と驚愕に目を見開いている。
一瞬で静まり返った食堂で、私は切断面から吹き出る血で服を汚しながら床に落ちた自分の首を拾い上げ、その顔をチンピラの方へ向けた。
「おいてめごるぁ。てめーのせいで血で服が汚れちまったじゃねーか。どうしてくれる。ファッキン」
「●魂どころの話じゃねぇ――――――――――――!!!」
絶叫と共にノアにドロップキックをもらった。
「なんだよ!銀●みたいなことはしてないじゃんよ!」
「●魂以前の問題だろ!!何が『血で服が汚れちまったじゃねーか』だ!!ショッキングにも程があるわ!!」
なんか涙目で訴えられた。
私はア●レちゃんよろしく生首を小脇に抱え、「んちゃ!」のポーズを取る。
「注意はそれただろ!?」
「それたどころか大注目だよ!!」
軽くパニくっているらしいノアに全力で反論されるが、このまま口論に発展しても仕方ない。
どうやら今ので役割のことは完全に頭から吹き飛んだようで、仕方なく私はチンピラの方へ振り返る。
「で!あんたのせいで服が汚れたっつってんの!弁償しろ弁償!!」
そう言って、腕と脇腹の間からギロッと睨みつける。
チンピラはたっぷりの間をおいてから、ぶわっと滝のような冷や汗を全身から噴き出した。
「うわああぁぁぁぁ化け物だあああぁぁぁぁ―――――――!!」
そうして、脱兎のごとく逃げるチンピラ。
……ふぅ、やれやれ。
これで奴はこの店には二度と寄り付かないだろう。
やることも終わったことだし、私は形だけ指パッチンして、『エフェクト能力』でボワンと煙のようなエフェクトを出す。
「……はい、皆さんご安心を。今のは幻術です。わたくし、幻覚術を生業といたします奇術師でございまして。咄嗟のこととは言え、驚かせてしまい、申し訳ございません」
煙が晴れると、そこにいたのはいつもとなんら変わりない私。
首もくっついてるし、切断面から噴き出し床に赤い水溜りを作っていた血はどこにも見あたらない。服も綺麗さっぱりだ。
何をやったのかと言うと、『エフェクト能力』で煙幕を張ったあと、『超回復能力』で首をくっつけ、服の血や床の血溜まりは血液中の魔力に働きかけて蒸発させた。
普通に幻術使った方が遥かに楽だろうって?
手品や幻に見せかけて実はリアルにやるのが楽しんだろが。
切断マジックとかリアルに切断してくっつけてたら面白いじゃん。
とりあえず嘘八百でその場を沈め、プンスカとノアに向き直る。
「もー、言った通りにしてくんなきゃ困るじゃん」
「できるか――――――――――――!!!」
宿屋『グリーンピース』では、この日少女の首が二度舞ったとゆう。
……なんかグロい話になってすみません。
きっと、暑さのせいです。そうに違いない。
この世界の流通貨幣は、緑金貨が十円、赤金貨が千円、青金貨が一万円、黄金貨が百万円となっております。
作中にもある通り、物価はいろいろと違うのですが、一応おさらいということで。
一般常識を考えるのは、何気に大変です。
瑠璃ちゃんはこのあといろんな世界を渡るので、なるべく他の世界と被らせたくないのです。
オーカー=黄土の意。
つまり、作中には出てきませんでしたが、チンピラの髪の色は黄土色です。
元ネタの紹介
※作中で説明(?)があるものは省きます。
・かみまみた
ラノベの某物語に出てくるセリフ。
「かみました」が言えず、さらに噛む。