First world パターン:救世主補佐
第二十五話 確かに世の中は不公平だ。美人や美青年がいる一方で、あなたがいる。 だからなんだ!?今は二次元がある!だから俺は勝ち組なんだよ!勝ち組なんだ!だからそんな目で見るな!
感想をくださった長月チャカさん、からげんきさん、hakiさん、いろいろとネタの提供をしてくださった地海月さん、ありがとうございました!
今回も更新が遅くなって申し訳ありません。
学校とバイトで普通に忙しいです。はい。
こんな作品ですが、今後も暇潰し程度に読んでいただけると有難いです。
※7/29 歌詞の無断掲載に関して公式様よりご注意を受けましたので、作中で主人公が歌っている箇所をカットさせていただきました。
内容自体を変更しようかとも思いましたが、出来れば内容は変えたくありませんでしたので、中途半端ではありますがこのような処置を取らせていただきます。
大変、申し訳ありませんでした。
空どころか空間その物が闇に包まれたかのような夜の世界。
その中で唯一の灯火を囲んで、それぞれが思い思いの瞑想に身をゆだねる。
「(※平●進の『パレード』を熱唱)」
暗闇で生命を呼び寄せる炎は儚げに揺らめき、まるで自分がこの世界で独りきりなってしまったかのような錯覚さえもたらす。
風の肌触り。大地の感触。草の香り。全てが酷く無機質に思えた。
「(※平●進の『パレード』を熱唱)」
それでも、誰一人として“言葉”を発することはない。
初めての旅の夜は、一行に共通の思いを芽生えさせたようだった。
「(※平●進の『パレード』のサビを熱唱)」
「「「焚き火囲んで怪しげな歌歌うなよ(歌わないでください)!なんの儀式だよ(ですか)!」」」
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そんなわけで。
焚き火の火でソートの肉が焼けるのを待つ間暇だったので、適当に歌ってたら他三人に総突っ込みをいただきました。はい。
ちぇっ、せっかくサビに入ったところだったのに。
……いや、サビまでよく耐えたというべきか?
前奏や間奏の、あの何言ってるかわからんとこまできっちり歌ったしな。
「なんだよー、せっかく人が気持ちよく歌ってたのにー」
「いや、ホント何あの曲。あそこまで不安定な曲が存在することが驚きなんだけど」
「知らんのか。平●進氏の『パレード』だぞ。『パプリカ』って映画知らん?」
「……いや、知らない。とゆうか、何故今それを歌った」
「状況に合わせてチョイスしてみた」
「どんな状況!?あんなこのまま夜が明けないんじゃないかと思うような曲をチョイスするって今どんな状況!?」
「世界崩壊阻止への門出。過酷な旅路での成長。最悪最凶の敵。不愉快な仲間達。救世主はこの戦いで一体何を得るのか――――って感じの状況」
「いや、絶対そんな歌詞じゃなかっただろ!そんな胸躍り心が弾むような曲じゃなかっただろ!」
「ちょ、ノア混乱し過ぎて逆んなってる。『心躍り胸が弾む』な?」
「てゆうか一つおかしくなかったっスか!?何『不愉快な仲間達』って!俺達不愉快なの!?愉快じゃなくて!?」
まあ、そんなこんなやってるうちに無事夕飯が完成した。
ちなみに今晩の献立は、焼いて味付けした草兎の肉と、煮詰めて灰汁抜きした野草のスープと、保存性を考えられているためめっちゃ固いからスープに浸して食べるパンの三品である。
ちなみに総突っ込み以降一言も声を発さなかった白さんは、私の歌でドン引きしてました。
そんなに引くこともないだろうに……私はあの人の曲大好きなんだが。
「……さて、それじゃあ食べようか」
「お残しは許しまへんでー!!」
「なんでそのネタを持ってきた!お前が作ったわけじゃないだろ!」
「そーいや白さんは毒味とかしない食事は初めてだったりする?」
「無視!?」
ノアがなにやら騒いでいるのが例のごとくスルーする。
これもパターン化して来たな。
ちなみに、夕飯を作ったのはレモンの騎士(七割)とノア(三割)である。
ノアが率先して手伝いたいと言ったのと、特に毒のある食材を扱うわけでもなかったため、私の出番はなかった。
そして暇を持て余した私は、白さんとボーッと待ちながらあの歌を歌い、今に至る。
「そう言われれば、そうですね。いつも毒味された物を食べていたので……こういった食事は始めてです」
「そーかそーか。よぉけ味わって食べんさいね?おかわりもあるけぇね、遠慮せんでええよ?」
「お前は世話好きの親戚のおばちゃんか。あとどこの方言だそれ」
「私さ、可愛い姪っ子が欲しかったんだよね。おばちゃーんって言ってくっ付いてくる、可愛い姪っ子が」
「『娘』じゃなくて『姪っ子』なところに子育て面倒オーラが出てると言うかなんと言いますか」
「てゆうか、瑠璃は『おばちゃん』って呼ばれたいのか?普通女性は嫌がるものだと思ってたけど」
「あれだよ、簡単に言うと隠居後の幸せみたいなもんが欲しいんだよ。自分の役目は終わって、あとは巣立ってく子供達を見送ってやればいい。そんな生活に憧れんこともない」
「……なんか、苦労してるんだな」
「お前さんが気にするこっちゃーないさ。まあそれとは別としても、歳を取ってくのはいいことだと思うよ?自分が積み重なって成熟されてく感覚とゆうかさ。白さんあたりそうゆうのわからん?」
「うーん、そうですね……私にはまだよくわかりませんが、でも、この国を支えるためにたくさん勉強して、そしてそれが報われるのは、確かにとても喜ばしいことだと思います」
「だっしょー。ま、私はまだまだ隠居する気はないけどな。とりあえずご飯食べましょーよ、冷めちゃうよ」
「誰のせいで話が発展したと……もういいや、いただきます」
「いただきまーす」
ノアと揃ってご飯の前で両手を合わせると、白さんとレモンの騎士がキョトンとした顔でこちらを見ていた。
……ああ、これも通過儀礼だな。
「……それは、そちらの世界のお祈りですか?」
「え?ああ、いや、こちらの……っていうより、俺達の国の、かな。それに、お祈りというより挨拶だよ。食事を作ってくれた人や、食材を作ってくれた人達、それから自分達の血肉になってくれる食べ物に感謝するんだ」
「そうなのですか……素晴らしい思想を持った国なのですね」
ノアの説明に、白さんは素直に感心している。
うん、こうゆう文化の違いや元の世界に関する説明も主役の役目だよね。
別にちまちました説明ぐらい
モブがいくら説明したところで、基本的に「へー、そーなんだー」程度である。
補正ってすごいね。能力補正とはまた別の。
「てことは、俺は今お二人に感謝されたってことですか?」
「そうゆうこったね。あと私はノアにも感謝したことになる」
「なるほどー……なんか照れますね」
まあ、正直現代で飯食う度に一々そんなこと考える人も少なくなったわけだが、それは見も蓋もないから伏せておこう。
「あの、ノアの世界のこと、お話していただけませんか?」
目を輝かせながら言う白さん。
ほらー言った通りじゃん。話弾むしフラグ立つじゃん。
白さんも相変わらず『
ホントもーやんなっちゃうぜ。
……いや、別にヒガミじゃないよ?構ってもらえないから悔しいわけじゃないよ?
自分が『主役』だった時から「説明フラグうぜー」と思ってたし。
「いいよ。じゃあまず、世界って言っても広いから、俺達がいた国から話そうか。俺達がいたのは日本ってゆう小さな島国で……」
律儀かつ丁寧に、我等が祖国について説明するノア。
白さんは身を乗り出すようにして、時折相槌を打ったり質問したりしながら聞いている。
どうやら二人の空間ができ上がってしまっているようなので、私は特に会話に割り込まずに黙々とめっちゃ固いパンをちぎっている。
レモンの騎士も空気を読んだのか、興味深そうな表情を浮かべてはいたが、口出しはしなかった。単に白さんの身分に遠慮しただけかも知らんが。
とゆうか、なんかノアの口調普段と違くね?
私を相手にしている時より遥かに口調が柔らかいんだが……まあ散々茶化してきたし、当然と言えば当然か。
とりあえず、会話を他人に任せてしまうと暇だな。
口を挟まずも興味津々に聞いているレモンの騎士に話を振るのも酷ってもんだし。
もきゅもきゅと水分を含んだめっちゃ固いパンを咀嚼する。
いや、スープに浸して水分を含ませたから別にもう固くはないんだけど、もう『めっちゃ固いパン』が固有名詞みたいなことになってるから別にいいよね?
「……それで、今では技術も文化も世界的に認められているんだ。具体的に話そうとすると説明が果てしなく長くなるけど、いい国だよ」
「素敵なところなんですね。私も行ってみたいです」
「機会あれば案内するよ。ここにはない物がたくさんあるから」
「本当ですか?約束ですよ!」
「うん、約束する。……いつになるかは、わからないけど」
「いくらでも待ちますよ。ふふ、楽しみにしてますね」
「ああ、俺も今から楽しみだ」
無邪気に笑う白さんに、笑顔を浮かべながらもどこか寂しそうなノア。
多分、無理だってわかってんだろうな。てゆうか無理だろ、JK。
……てゆうか、私スープに砂糖なんて入れたっけ?
スープに浸しためっちゃ固いパンが、なんだか甘く感じるよ。
私の夢の産物だと思ってたんだが、シュガーポットの精は実在したんだろうか。
「……やっぱり、その……故郷が恋しいですか……?」
ノアの表情に気付いたらしい白さんが、心配気に尋ねる。
心配そうな表情+上目遣いとは、いいコンボです。
「まあ……恋しくないと言えば嘘になるかな。一応生まれ育った場所なんだし」
「そう、ですよね……ごめんなさい、私達が
「ホワイトさんが謝ることはないよ。実際、困ってたんだろ?」
「ですが……」
「いいって。それに、俺はこれでも感謝してるんだ」
「えっ?」
「三年くらい前に……まあ、ちょっと落ち込むことがあってさ。未だにその傷が癒え切ってない。ずっと、何で俺は生きてるんだろうって思い続けて、何の目的もなくただ生きてた」
「…………」
「でも、ここには俺にしかできないことがある。過去に捕らわれてきた俺だけど、これをきっかけに、ちゃんと前を向いて進めそうな気がするんだ」
「ノア……」
「だから、君には感謝してるんだよホワイトさん。この先、きっと危険な旅になるだろうけど……ホワイトさんは、できる限り俺が守るからさ」
「そ、そんな……わっ私は王女として当然のことをしただけで……」
「それでもいいんだ。ありがとう、ホワイトさん」
「……///(ポッ)」
「
感動のフラグイベントをバッサリと斬り捨てる。
もう駄目だ。口の中が
なんだこのテンプレも砂糖もベタベタな会話。
今まで、ノアと白さんのフラグ建設現場には極力立ち会わないようにしていたが、それには「二人を邪魔しないため」という理由の他に、もう一つ重大な
まあ、もうわかると思うが、私は恋愛だのなんだのが大層苦手なのだ。
トリップ先で散々甘ったるいセリフを吐かれてきたため、最早そういったセリフに拒絶反応を示す程だ。
それに、今までの散々な体験から、少女漫画みたいな甘い恋愛は夢のまた夢どころか宇宙人の所業だと思っている。
恋愛自体が苦手だから「リア充爆発しろ」とかとはあまり思わないけど、こうも見せ付けられると嫉妬とは別の理由で「爆発しろ」と思ってしまう。
「なんスか補佐様、もしかして嫉妬っスかー?」
「ちぇいやっ」
「ごふぅっ!」
茶化しに入ったレモンの騎士の下顎にデコピンを喰らわす。
「パァン!!」と小気味いい音がしてレモンの騎士が後方に昏倒するが、まあ大事には至らないだろう。
ふん、身の程知らずめ。
「嫉妬ってなんのことだ?」
おぉっと、こっちはまさかの反応だ。
単に私が嫉妬するはずがないと思ってるだけならいいが、もしや白さんの
「なんでもない。それよか、食事に集中しなさいよ。横でイチャつかれちゃ碌に料理も味わえないわ」
「は?別にイチャついてなんてないだろ。なぁ、ホワイトさん?」
まさかの朴念仁でした。
哀れ白さん。
「自覚なしかよ……まあいいや。刺される前に改めろよ、この色男」
「……なんか、色男って言ってる割にはすごく
「実際貶してる。…………ったく、これだから鈍感系の主役はブツブツ」
「何言ってるかはわからないけど、口で『ブツブツ』って言うなよ……」
これも私が恋愛だのが苦手な理由の一つだ。
なんだってハーレムや逆ハー物の主人公達はああも鈍感なんだ、気付かないんだ。
私も何度か逆ハー的な展開に陥ったことがあるが、漫画やら小説やらで主人公が何故気付かないのか、全く理解できない。
だってあいつら露骨過ぎるんだよ!
顔合わせる度真っ赤になったり、会う度人の容姿を無駄に詩的に褒めてきたり、権力者特有のワガママっぷりで独占しようとしてきたり、聞えるような独り言で「僕だけを見てよ……」とか呟いたり。
全部スルーして来ましたけどね!ええ、もちろん!
つまりこんだけ露骨にアッピールされてるのに、なんで主人公達は気付かないのかってことですよ!
気付けよ!まだっるこしいわ!
……話が大きく反れたが、ともかく、白さんと言い海の子といいノアは絶対ハーレム属性を持っている。
そして、例に漏れずこいつも鈍感である、と。
……今後もこんなまだるっこしいやり取りを見せ付けられるのかと、考えるだけで辟易とする。
「…………不幸だ……」
「どうしたんだ、某幻想殺しみたいなセリフ吐いて」
「そうゆうお前はさっきから全力で白さんの幻想ブッ殺してるけどな」
「何が!?え、何ホワイトさんの幻想って!俺が悪いの!?これ俺が悪いの!?」
「あー、ジョンが恋しいぜ……」
「またもや無視!?そして誰!?」
こうして、夜は更けていく。
ホントに、なんでハーレム属性持ちの主人公ってあんなに鈍感なんでしょうね。
元ネタの紹介
※作中で説明(?)があるものは省きます。
・『パレード』について
作中で一応説明(?)がありましたが、アーティスト名に伏字をしてしまったので。
正確には平/沢/進さん(スラッシュは検索避け)です。
個人的に好きな曲なので、よければ聴いてみてください。
※7/29 歌詞をカットしました。
・お残しは許しまへんでー!!
割りと有名ですよね。
某忍術学園の食堂の方の口癖。