起業家と投資家の2つの顔を併せ持つ柴田泰成。2017年には『フォーブス』誌が選ぶ「日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキングBEST10」で6位に選ばれるなど、その活躍は目覚ましい。
そんな柴田さんが、新たに「スタートアップスタジオ」なるものを手掛けるとの情報をFledge編集長がキャッチ!
聞くところによるとたくみ編集長、前職では柴田さんが立ち上げた会社で「社員」として働いていたという間柄だったとのこと!
そんなご縁もあり、今回、柴田さんの新しいチャレンジについて伺う取材が行なわれることになりました。早速、取材に向けて記事の構成を考えていると、たくみ編集長の頭にあることがよぎります。
そういえば柴田さん、何かと超人過ぎて“失敗したところ”を見たことないな。すごいエピソードだけを引き出しても、きっと読者の方は親近感がわかないはず……。よし、それじゃあ、もっと庶民派な一面を引き出す企画をぶつけてみよう。ふふふ…。
どうした、たくみ編集長!!
しかし、なんだかおもしろそうですね。果たして取材の目的(と裏目的)は無事に達成されるのでしょうか…⁉
柴田 泰成(しばた やすなり)
1983年生まれ。愛知県出身。2006年楽天株式会社に新卒入社し、複数の新規事業立ち上げに携わる。2010年には、社内で開催される新規事業コンテストにて優勝を果たす。2012年に株式会社リクルートに入社後も新規事業の運営に従事。2013年にはインキュベイトファンド主催の「Incubate Camp 5th」で優勝。同年の9月にはサムライト株式会社を設立し、代表取締役を務める。2016年に同社を朝日新聞社へ売却。同時に、独立系VC「ソラシード・スタートアップス」の代表を務め、シード投資や共同創業を10社以上手がける。
柴田さん、お久しぶりです!
柴田泰成(以下、柴田):たくみさん!今日はありがとうございます。よろしくお願いいたします!
▲柴田さんとたくみ編集長が感動の再会(?)を果たした名刺交換の図
早速ですが、スタートアップスタジオとはなんですか?
柴田さん、以前『フォーブス』に取り上げられていましたね!ただ、それ以降はあまりメディアなどでお見かけしていない気がします。その間はどんな活動をされていたんですか?
柴田:ベンチャー投資ファンド「ソラシード・スタートアップス」の活動に力を入れていましたね。あとは共同創業という形で複数社の0からの事業立ち上げにも奔走してました。具体的には、東南アジアでLIVEコマースを運営する企業や、マッチングアプリの比較サイトを運営する企業の創業など……
いきなり情報量多すぎです。
柴田:それに加えて、既存の投資先である各社のバイアウトや事業グロース支援なども行っていましたね。
つまり、ひとことで言えば「取材を受けている場合じゃないくらい忙しくしていた!」ということでいいですか?
柴田:そうかも知れませんね!(笑)
▲不敵な笑みとともにサラッとすごいことを語り出す柴田さん
今回は「スタートアップスタジオ」なるものを立ち上げると伺ったのですが、そもそもスタートアップスタジオって一体何なんでしょう?
柴田:スタートアップスタジオとは、VC(※)の新しい形と起業の新しい形、その両方を実現できる仕組みのことです。
※ベンチャーキャピタル:有望なベンチャービジネスに対して、株式の取得などによって資金を提供する企業。また、提供される資本。株式公開時に得られるキャピタルゲインの獲得を目的としている。VC。(コトバンクより)
具体的にいうと……?
柴田:自分で作った会社に対して、自分のファンドから投資をするというやり方です。僕が代表として起業してから、経営者になりたい人を連れてきてバトンタッチするやり方が基本ですが、最初から経営者と一緒に共同創業することもあります。
なるほど、徐々にイメージがわいてきました。なぜ今回、柴田さんはスタートアップスタジオを立ち上げることになったんですか?
柴田:これまでは「起業家と投資家の二刀流」という、両方とも未経験の中でチャレンジするということを実践することができたので、次の挑戦もやっぱり前例がないようなことをやりたいなと思ったんですね。
そこで、複数社の起業を同時並行で行うスタイルに手応えを感じていたこともあって、日本におけるその分野の第一人者を目指そうと思ったんです!
やっぱり野心家ですね…!以前にも、「これから孫さんや三木谷さんを目指したって敵わないけど、連続起業家としてだったらNo.1になれる可能性があるんじゃないか」って熱く語ってましたもんね!
柴田:そうでしたっけ?
覚えてますよー!ガチでそんな大物の名前を出す人、なかなかいないですからね。話を戻しますが、スタートアップスタジオの役割によって今後、若手の起業家が増えそうだなと思うんですが、実際に柴田さんはどんな役割をイメージされているんですか?
柴田:うーん…実はあまり若手の起業家を増やそうという思いはないんです。優秀な学生起業家や若手起業家はどんどん輩出されていますし、そうした起業家に投資をする優秀なVCの方々もたくさんいて、すでにいい流れができているので。だから、僕の役割は30歳前後の方をスタートアップの世界へと送り込むことだと思っています。
30歳前後の方ですか?
柴田:日本では優秀な学生ほど大企業に進む傾向があるので、企業には優秀なビジネスパーソンが大勢います。それにも関わらず、チャレンジの機会が無かったり、きっかけをつかめずに埋もれてしまっている人もいると思うんです。これは、独立する前に勤めていた楽天やリクルートの同世代の人たちを見て感じていました。
また、そういう人たちが「すでに家庭があって生活レベルを下げられない、リスクを取れない」「気持ちはあるけど、ここぞの起業アイディアがない」「仲間がいない」といった理由で、起業に踏み切れずに諦めてしまうのを目の当たりにしてきたんですね。
やはり起業するというのはまだまだハードルが高いなと感じているので、そこを変えていきたいとも思っていて。スタートアップスタジオなら、それが実現できるのではないかなと。
つまり「起業へのハードルを下げる」ことがスタートアップスタジオで叶えられるわけですね?
柴田:そうなんです。スタートアップスタジオで生まれたアイディアに乗っかって、リソースを活用し、年収もキープした上で、さらにキャピタルゲインが得られるような仕組みが提供できる。
仮に事業が失敗したとしてもリスクがほぼ無く、むしろその経験を次のキャリアに生かすことができると踏んでいます。そういった点では、キャリアの面でも魅力的だと思っていて、簡単に言うと、スタートアップ経営者に「転職」するというようなイメージです。
柴田:「僕、失敗しないので」
なるほど。今回の件もそうですが、柴田さんは常に時代の流れを読み取って、先端を走っているようなイメージがあります。時代の流れを読み取る秘訣って何ですか?
柴田:良い質問ですね!実は起業の場合も、投資の場合も「タイミング」と「ここの領域で攻めよう」というのを決めるだけで8~9割決まるって思っています。早すぎてもだめだし、遅くても勝負がついてしまう。失敗を恐れずに、ちょっと早めのタイミングで果敢にトライするのが重要ですね。
お話を伺ってて思ったんですけど、柴田さんって失敗することあるんですか?
柴田:失敗は…しませんね(笑)いや、正確に言うと、失敗しても全く気にしないというのが正しい答えですかね。失敗を失敗と思いこまないというか、あくまでプロセスの一部としてとらえるんです。実際、何度も会社が失敗しかけたことがありますけど、ギリギリのところで起死回生できていています。そもそもスタートアップは失敗を許容してチャレンジ数を求めるので、全然失敗だと思ってないですよ。
つまり、柴田さんは失敗しないと。
柴田:そうですね。このマインドで、これ「カラ」スタートアップ界隈をさらに盛り「アゲ」ていきたいと思ってます!
柴田さん、いただきましたーー!!
柴田:……へ?
▲状況がつかめない展開に、思わず何とも言えない表情を浮かべる柴田さん
検証:「失敗しない男」柴田泰成は本当に失敗しないのか?
そんなわけで、Fledge読者のみなさん!
ここからは、「『失敗しない男』柴田泰成も人の子だよ!企画」を緊急開催します!
だって、このまま柴田さんのすごいことだけ伝えても、
読者Aさん:へー…すごーい。すごい人って考えていること違うな。でも自分とは関係ないや。ポチッ(ページを閉じる)
で終わっちゃいますよね?
というわけで、今回のチャレンジはこちら!(バーバンッ)
失敗しない男、柴田泰成はクリアできるのか?「第1回利きからあげチャレンジ」!!
ルールは簡単!目の前に、ローソン、ファミリーマート、セブンイレブン、ミニストップ、なか卯で売られている「からあげ」があります。柴田さんにはアイマスクをした状態で、これらのからあげを食べていただき、どこのお店の商品か当てていただきます。
というのも柴田さん、実は大のからあげ好き!ミスターパーフェクト戦士にもかかわらず、週に5回はコンビニのからあげを食べている庶民的な一面を持っているんです。(むしろ食べ過ぎ…?)
今回の企画を伝えると「100%当てられます!!」と豪語していたものの、実際にパーフェクトを狙うことはできるのでしょうか!?(検証結果はガチです)
以下、実施中の様子を写真を交えて。
入室前に柴田さんには、アイマスクを付けていただきます。(本当に好きなら見た目でわかっちゃいますからね!)たくみ編集長が先導し、
チャレンジャーシートに君臨!たくみ編集長から、今日のからあげはどこのものか説明をし、いよいよ挑s…
柴田:ちょっといいですか?
どうされました!?(まさか失敗したくなくてチャレンジを辞めるのでは…)
柴田:どこのコンビニかはわかったんですけど、商品名まで教えてもらっても良いですか?セブンイレブンのからあげといえども、「丸から」もあれば「揚げ鶏」もあるんですよ!
あ、すみません。からあげに対して完全に知識不足ですみません…。
▲アイマスクごしのドヤ
それでは早速チャレンジスタート!
左から順番に食べていただきましょう!(たくみ編集長楽しそう)
柴田:あーーー…これはファミリーマートですね!
……はやっ!え、もう少し迷うと思ったんですが…予想以上に早い。
そしてその後も、
柴田:(カリッ)ふふっ…これはもう食感でわかります。ミニストップのクランキーチキン!
やばい、聞いてもないのに商品名まで答えてくれる…。
▲味が混ざらないようウーロン茶で口の中をリセットする柴田さん。アイマスクをしているのに、どことなく余裕の表情を感じる
しかし、次のからあげを食べた時、
柴田さんの動きが止まった…
柴田さん:うわーこっちか?似てるわ――――。あれー?もり山監修の味か?えーーーでもな…いや、迷ったんだよ…
回答変えても大丈夫ですよ?(ニヤニヤ)
来たか?とうとう間違えるか…?失敗しない男が失敗するのか!?
柴田さん:これは、セブンイレブンです!(キリッ)
少しだけ期待してしまった自分が恥ずかしい。当てた…少し戸惑いは見せたが当ててしまった……。(てか、もり山監修ってなんだ……?)
そして、そこからの柴田さんは早かった。
柴田さん:あ、これ食べたことないから、なか卯!
柴田さん:これはもう…からあげクンですよ!(嬉しそう)
さて、これにて回答が出そろいました!柴田さん、ご本人に確認してもらいましょう。
それでは、柴田さん、アイマスクを外してください!どんッ!
順番にローソン、なか卯、セブンイレブン、ミニストップ、ファミリーマート…つまり、パーフェクトです!!
ガタッ!!!!!!!!
柴田さん:ヨッシャあああああ!!!!!
柴田さん:いやー、来たーーー!超嬉しいーーー!!冷静に考えてすごくないですか!?
ラストのローソン手前あたりから鳥肌立ちました!!
柴田さん:いや、セブンとファミマが本当に難しかったんですよね。形状も似ているので。
▲思わずそれぞれの判断ポイントを解説し出す柴田さん
そんなわけで今回の検証結果がこちら!
自称「失敗しない男」柴田泰成は、庶民派な一面を持った、本当に失敗しない男であった。
番外編:実は柴田さんのチャレンジ前に今年入ったばかりの新入社員、タルミさんにも同じ条件でチャレンジしていただきました。
▲結果は5問中2問正解!いかに柴田さんが「ガチ」なのかがわかります。
ご協力ありがとうございました!(編集部一同、セットを片付け元の取材ポジションへ戻る)
アイディアがない、資金がない、それでも経営者になれる時代到来!
さすが「失敗しない男」柴田泰成ですね!そういえば、今回なぜFledgeの取材を受けてくださったんですか?(いまさら)
柴田:Fledgeは、新しいワークスタイルとか、働き方の多様性を提供しているメディアですよね。その観点でいうと、今回のスタートアップスタジオを通して「スタートアップ経営者に転職する」という概念を広めていきたいという僕の想いとマッチしていると思ったんです。
スタートアップスタジオを通じて、これまでのスタートアップの常識を変える…という感じですか?
▲からあげチャレンジから打って変わってキリッとした表情の柴田さん
柴田:そうです。先ほども述べたように、これまでの起業イメージって、一世一代のチャレンジって思われてきたと思うんです。それに収入や生活の不安を抱えながらの挑戦だから、踏み出す勇気がある人も少ないじゃないですか。
だから、すごくフランクに言うと「30歳前後くらいで仕事の経験を積んだ人が、一定の収入を確保した状態で柴田から事業をバトンタッチしてスタートアップの経営者としてキャリアアップする」流れをスタートアップスタジオという仕組みで作っていきたいんですよね。
おお、わかりやすい!しかし、柴田さんから事業をバトンタッチしてもらえるって大きいですね。
柴田:そうです、そうです。だから「起業してみたいけどアイディアが無い」とか「仲間がいない」とかそういう不安、全部こっちで提供しますよという感じですね!
柴田さん、やっぱりめちゃくちゃかっこいいじゃないですか…これからもついていきます!!
▲「5問全問正解やでー!」と「すみません、2問正解でした…」の図
編集後記
今回の取材、柴田さんの物腰の柔らかさを伝え、世の中の「起業家・投資家=雲の上の存在」という考えをどうにか覆したいと奮闘したFledge編集部。
利きからあげの実施を終えて、むしろ“超人っぷり”が際立ってしまったのではないか?と思わなくもありませんが、柴田さんは無茶な企画にもノリノリのリアクションで応えてくださり、編集部に対しても圧倒的な親近感を抱かせてくれたのでした。
さて、スタートアップ・起業というジャンルでもその方法の多様化が進んでいる模様。自分でビジネスをやってみたいという夢を諦めきれない30歳前後のみなさん、不安だとかをめんどくさいことはぜーんぶ捨てて、一度柴田さんに相談してみてはいかがでしょうか?今後のスタートアップスタジオの動向に注目です!!
執筆:於ありさ(@okiarichan27)
企画・編集:たくみこうたろう(@kotaro53)