黒田 悠介(くろだ ゆうすけ)
フリーランス研究家 「フリーランスを実験し、世に活かす」という活動ビジョンのもと自分自身を実験台にしている文系フリーランス/フリーランス研究家。帽子とメガネがトレードマーク。東京大学→ベンチャー社員×2→起業→キャリアカウンセラー→フリーランスというキャリア。経営者のディスカッションパートナーを生業とし、新規事業の立ち上げを支援。
働き方改革を引き合いに出すまでもなく、私たちの働き方は変わり続けています。それは、より個人の生き方にフィットする柔軟な方向への変化。
働くことは生きること。働き方について考えることは、本来とても個人的なことなのです。誰にでも当てはまる理想の働き方なんてものはありません。「あなたにとって理想の働き方」があるだけです。
ただ、もしそれを見つけたとしても「理想」は1年後には変わっていることでしょう。あなたの成長や環境の変化を勘案して、いつでも働き方の「理想」を考え直すのが自然です。
しかし、働き方の舵取りを1つの組織に預けてしまっている場合は、考え直すこと自体がむずかしい。思考は組織のルールに従い、ソトとの関わりは減ってしまう。組織の提示する予測可能なキャリアがあなたの未来を決めてしまう。
本来あなたが秘めている可能性のごく一部しか、まだ発揮されていないはずです。狭い箱の中で「理想」を描くのはやめましょう。自由に思考し、ソトとの関わりを持ち、働き方の舵取りを自分の手に取り戻すべきです。
そのためには、今の組織から一歩踏み出すことが必要でしょう。
踏み出した一歩のことを最近では「複業(副業)」といいます。箱の中に閉じていたあなたの可能性がアンボックスされるプロセスと言ってもいいでしょう。
私の複業について
私自身、いくつかのプロジェクトに関わって複業をしています。どれも自分らしいプロジェクトで、相互に関連しあっています。
・フリーランス互助組織 FreelanceNow発起人
・ニッポンイノベーター塾メンター
・フリーランス研究家
・アイディエーションユニット
・キャリアシナリオコンサルタント
・ディスカッションパートナー×7社
・セミナー講師(開発、開催、研修、コンサルティング)
・「文系フリーランスって食べていけるの?」編集長
もはや口頭での自己紹介では説明しきれないので、自己紹介用の「公式サイト」を用意するハメになりました。
私が複業を始めたタイミングは、フリーランスになった2015年8月です。当時はWebディレクターを肩書きにしていて、自身のマーケティングのためにブログ「文系フリーランスって食べていけるの?」を始めました。
つまり、当時は
・Webディレクター
・「文系フリーランスって食べていけるの?」編集長
の2つの複業をしていたことになります。その頃から2年が経ち、現在のようにいくつものプロジェクトに関わるようになった理由をお伝えできればと思います。
中には「フリーランスだからできることだ」と感じる点もあるかもしれません。しかし、その思考停止こそ「働き方の舵取りを1つの組織に預けてしまっている」状態にほかなりません。
複業のここがいい!
私が2年間の複業を通じて感じたメリットをご紹介します。以下のリストが複業へと一歩踏み出す一助になれば嬉しいです。
その1:スキル・人脈・ノウハウを横展開できる
あなたがこれまでのキャリアで得たスキル・人脈・ノウハウを棚卸ししてみましょう。そのスキルは誰の役に立つでしょうか?その人脈を欲している人はどの領域にいるでしょうか?そのノウハウをどのようにパッケージ化したら有意義でしょうか?
私の場合、中心的な「スキル」は対人コミュニケーションです。このスキルを提供する相手を変えて、経営者には「ディスカッションパートナー」として、個人には「キャリアシナリオコンサルタント」として、集団には「セミナー講師」として価値提供しています。
また、フリーランスとの「人脈」は特に新規事業を立ち上げようとしている人にとって貴重な人的リソースになるため重宝されていますし、心理学の「ノウハウ」は人間が関係するあらゆるプロジェクトで役に立っています。
あなたの手元にあるスキル・人脈・ノウハウというカードを使って、誰に、何を、どのように提供するかを考えてみましょう。
その2:「報酬たち」を組み合わせられる
仕事の報酬にはいくつかの種類があります。あえて「報酬たち」と言っているのは、その事実をはっきり表現するためです。私たちは金銭的な報酬のためだけに働くのではありません。
仕事から得られる「報酬たち」は大きく分けて6つあります。
- 喜び(精神的な報酬):仕事そのものが楽しい。仕事ができる事自体が報酬という、自己目的的な行為としての仕事です。趣味的だと言い換えてもいいかもしれません。
- 学び(技能的な報酬):仕事を通じて自分の成長を実感できることが報酬。また、身につけたスキル・ノウハウもこの「学び」という報酬に含まれます。学び取る意志があれば、この報酬は大きなものになります。
- 稼ぎ(金銭的な報酬):一般的な意味での報酬です。価値提供に対する正当なリターン。この報酬額を上げていくというゲームが好きな人も一定いるようですが、他の報酬たちとのバランスが重要です。
- 信頼(評判に繋がる):一緒に仕事をした仲間、もしくは価値を提供した相手からの信頼が報酬。この報酬が貯まると「評判」となり、新たな機会や人との繋がりをもたらします。
- 貢献(満足に繋がる):誰かの役に立つことが報酬。直接的に「感謝される」ことが必要な人もいれば、感謝されなくても「貢献した」という実感が報酬となる人もいます。あなたはどちらでしょうか。
- 理解(選択に繋がる):仕事を通じて自分と社会のことを理解することが報酬。理解によってあらゆる選択肢の中から自分の価値観やビジョンにマッチするものを選択することができます。
複業の良いところは、これらの報酬たちのバランスを取れることです。
例えばAの仕事では「稼ぎ」と「喜び」を、Bのボランティアでは「信頼」と「貢献」を、Cのプロジェクトでは「学び」と「理解」を得るといった具合です。
その3:一週間で色々な仕事をやる心理的メリットがある
私は多動力が高い(落ち着きがない)ので、同じ仕事を何度もやることがあまり得意ではありません。そのため、一週間のうちにいくつものプロジェクトがあると、飽きずに続けることができます。
当然、タイムマネジメントやアテンションマネジメントが必要にはなりますが、そのぶん得られる満足感も大きくなります。また、あるプロジェクトでうまくいった手法を別のプロジェクトに転用できるなど、提供価値が結果的に高くなり、自己効力感も高まります。
また、複数のプロジェクトがあれば、1つのプロジェクトにこだわる必要がなくなります。この安心感があればこそ、しっかりと自分を主張できるし、チャレンジすることができる。
1つの組織にいたのではこうはいきませんね。
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その4:掛け算で希少性が高まる
あなたが「100人に1人」の希少性を持っているスキルやノウハウがあるはずです。それをいくつも掛け合わせることで、自分自身の希少性を高めて、レアカード化することができます。
最初は自分の仕事についてのスキル・ノウハウしかなくても、複業を通じて様々な経験をすることで、「100人に1人」をいくつも掛け合わせていくことができます。
ある知人は、自身でシステム開発のコンサルティングをしながら、グループウェア企業に勤務し、さらに農業をやっています。彼のような掛け算は珍しく、まさにレアカードです。IoT×農業を語れる希少性ゆえに、様々な講演会に呼ばれているそうです。
私自身も、コーチング×新規事業×起業経験×フリーランス×働き方×採用×心理学×キャリア論×イベント×コミュニティー、というような掛け算で希少性を高めていこうと思っています。
どれも「100人に1人」の希少性だとすると、地球上にたった1人のレアな存在になれるはずです。そういった存在になれれば「この仕事はあいつにしか頼めない」という風にチャンスが舞い込みやすくなります。
その5:天職を見つけるプロセスを自由に設計できる
複業を通じていろいろな仕事を経験することで、天職を見つけることができるかもしれません。天職を仮に「WILL(やりたい)」「CAN(できる)」「NEED(求めている人がいる)」が全て満たされる仕事であるとしましょう。
これらの1つが満たされる仕事から始めてもいいでしょう。もし2つが満たされる仕事を見つけたら、それは大切にしてください。2つが満たされた状態は以下のように判別することができます。
・CAN×WILL:「楽しい」と言える。
・CAN×NEED:「有難う」と言ってもらえる。
・WILL×NEED:「頑張れ」と言ってもらえる。
ここから天職まではあと一歩です。3つめの要素を満たすには以下の3通りの方法があります。
・「楽しい」×NEED:趣味を極めて、ニーズがある人を見つける。
・「有難う」×WILL:感謝された仕事に意義を見出すようにする。
・「頑張れ」×CAN:応援される仕事の目標を実現する力を身につける。
こうした天職へのアプローチを自由に設計できるのも、複業のいいところですね。
<関連記事>天職を見つけるアプローチ
その6:AIに代替されない「得意」を見つけられる
先程「CAN(できる)」に触れましたが、CANの中身はいくつかに分類することができます。分類のヒントは、任天堂の元代表である岩田聡さんの言葉にあります。
自分の労力の割に周りの人がすごくありがたがってくれたり、喜んでくれたりすることってあるじゃないですか。要するにね、「それがその人の得意な仕事なんだ」って話で。
岩田さんの言葉を扱いやすく置き換えてみます。「ありがたがってくれる」ということは「CAN'T FOR OTHERS(他者にはできない)」であるということ。「自分の労力の割に」というのは「EASILY(かんたんに)」であるということです。
この言葉を使って表現すると、私たちが「CAN」と呼んでいたものの中身は、以下のように分類することができそうです。
・CAN’T FOR OTHERS×EASILY:あなたが得意なこと(引用文の通り)
・CAN FOR OTHERS×NOT EASILY:あなたが苦手なこと
・CAN FOR OTHERS×EASILY:誰にでも簡単なこと
・CAN’T FOR OTHERS×NOT EASILY:誰にでも難しいこと
私にとっては「得意」に当てはまるのは例えばSNSでの発信です。息をするように毎日Facebookで投稿しています。また、対話も「得意」に当てはまります。できるなら、CANの中でも「得意」を仕事にしたいですね。
ただし、いくら得意なことであっても、近い将来にAIで代替される仕事をするのは悪手でしょう。そこで、私が想像している「人間に残る仕事」についても少し触れておきます。
以下の3つのタイプは当面のあいだ、人間の仕事として残るはずです。
創造:ないものをつくる
偏愛:このみをつらぬく
対話:こころをかよわす
「創造」は新規事業や新しい問いを立てたりすることだけではなく、芸術や哲学をすることも含めます。AIは与えられた枠の中で最適な解を出すことには秀でていますが、新しい枠組みを生み出すことは苦手です。
「偏愛」は遊びが仕事、みたいな話です。食事やファッションなど、個人の好みが色濃く反映される領域。偏愛にみられる嗜好性と非効率性はAIの領域ではない。
「対話」はティーチング、コーチング、メンタリング、カウンセリングのような、高度な対人コミュニケーションのことです。単純なティーチングは動画等のコンテンツに代替されそうですが、それ以外は「相手が人間だからこそ」という側面がありそうです。
皆さんの得意を、「創造」「偏愛」「対話」に結び付けられないか、是非考えてみてください。
最大のリスクは「何もしない」こと
ここまで「複業のここがいい!」というテーマで例を列挙してきましたが、当然メリットばかりではありません。
時間は自分でコントロールしなければいけないし、周囲の理解も必要です。また、モデルケースも多くない中で自分のキャリアを自分で考えなければいけなくなります。
複業をすることにはこうしたリスクもありますが「何もしない」というリスクに比べたら大したことはありません。終身雇用や年功序列を前提としたキャリアが成り立たない今だからこそ、自分で舵取りをする必要があります。
あなたも複業で「1つの組織」という閉じたボックスの外側を覗いてみましょう!
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