未来をリアルに描く「フォーカスモデル」活用術 ── 井上千絵

未来をリアルに描く「フォーカスモデル」活用術 ── 井上千絵

未来をリアルに描く「フォーカスモデル」活用術 ── 井上千絵

井上 千絵(いのうえ ちえ)

東京都出身。2005年〜2016の11年間、民放テレビ局で報道記者として勤務。出産を経て退職し、現在は慶應大学大学院メディアデザイン研究科の修士課程にママ学生として通いながら、PRプランナーとして起業。スタートアップの会社を中心にメディア掲載のための具体的アプローチをサポートしている。

皆さんは、「こうなりたい」という理想の未来像がありますか?何となくボヤッと頭の中にはあるけれど、そこに向けて具体的な一歩を踏み出すまでには至っていない、そんな方が結構多いのではないでしょうか。なぜなら、私自身が今までそうだったからです。

漠然とした未来に不安を感じ、次の一歩を踏み出せずにいる社会人の皆さんへ。私の体験談を通して、誰もが未来をリアルに描くことが出来る方法をお伝え出来たらと思います。

未来をリアルに描く「フォーカスモデル」の活用術

私が未来への一歩を踏み出すために実践して来たことは、「フォーカスモデルの活用」です。
さて、フォーカスモデルって何だろう?と思いますよね。ロールモデルから派生して作った、オリジナル用語です。

私の中ではロールモデルというと、自分よりも遥か遠くを行く「お手本的な存在」「憧れの存在」のイメージでした。フォーカスモデルはそうではなく、もっと身近な存在、自分の半歩先、一歩先を歩く過去に出会ったことがあるような人物をイメージしています。

ではなぜ、「フォーカスモデル」の活用が、未来への一歩に繋がるのか。それは例えると、カメラのレンズの様だと思っています。これまで、ファインダーを覗いた先に広がる世界がボヤッとしてはっきり見えなくとも、フォーカスモデルからリアルな体験談を聞くことで、それを自分に置き換えて、理想の未来像をリアルに描くことが出来る。つまりは、ファインダー越しの世界に焦点が合い、クリアになるような感覚をフォーカスモデルはもたらしてくれると思っています。

では、私がどのような場面で「フォーカスモデル」と出会ってきたのか、過去の振り返りも含めてお伝えしたいと思います。

「仕事99%プライベート1%」からの転換点


▲テレビ局の報道記者時代の様子

これまで10年余り、テレビ局で報道記者の仕事をしてきました。特に20代の頃は、連日連夜取材で現場を駆け回り、「倒れるまで働くことが当たり前」という思考の中、プライベートの時間はいらないとさえ思う始末。逆に言うと、そこまで夢中になり、やりがいを感じることが出来た報道記者の仕事が心から好きだったのだと思います。

そんな中で2011年、私の思考の転換点が訪れました。それは、「東日本大震災」の現地取材です。津波や震災により、一瞬で家族と離れ離れになった多くの方とお会いし、人間を支える根幹が「家族」であることに、改めて気付かされたんです。こうして言葉にすると、当たり前のことかもしれないですが、震災前の私と現場に行った後の私の心の中の変化は、とても大きいものでした。そこから、「仕事99%プライベート1%」でほとんど自分の未来について考えてこなかった私が、自らの未来を考え始め、今の夫との結婚・出産にも繋がったように思います。

産後に直面した課題

2015年、長女の出産を機に、大きな悩みに直面しました。「娘との時間を優先し、大切に過ごしていきたい」という新たな気持ちが芽生えたことで、職場に復帰し、週5日朝から夜まで会社員生活を続けることが、今の自分が本当に求めていることではないように感じ始めたのです。仕事復帰=週5日通勤の会社員という固定概念を取っ払い、一人ひとりのライフスタイルに合った自分らしい働き方を選択出来る時代がまさに今、来ているんじゃないか、と感じたことも背景にあります。そして 結果的に、私は退職の道を選びました。

と、ここまで言っておいて何ですが、その後のキャリアプランについては、かなりモヤモヤしていたのも実情です。「自分の強みを活かした自分らしい働き方」とは具体的にどうすることなのか。思いだけは強く抱いていましたが、自分の未来像がまだまだボヤっとしていたんです。

退職からママ学生へ フォーカスモデル活用術

次のキャリアプランをどうしようかと悩んでいた時、「いままでの社会人10年間で私が何を得たのか、客観的に見つめるためにも、一度自分自身のキャリアを俯瞰した上で次のステージに進みたい」という思いが次第に強くなってきました。でも、あまりにその思いが漠然とし過ぎていて、やはり次の一歩に向けてどうアクションして良いのかもわからないし、なかなか一歩を踏み出せずにいたのです。

そんな時、これは本当に不思議なのですが、過去に一度だけ会ったことがある一人の女性が頭の中にふっと浮かびました。その方は、二児のママさんで、子育てをしながら大学院に進み、今は大手IT企業へ転職、キャリアチェンジしたリンさんという方でした。

「リンさんに会えば、次の自分の道がクリアになるかもしれない」

直感にも近い感覚でそう思った途端、Facebookからコンタクトを取り(その時点ではお友達としても繋がっていませんでしたが)、お話を聞きに行きました。リンさんとお会いしたことで、ママ学生として大学院に入るとは、どんな日常が待っているのか。子育てをしながら学業の時間を確保し、卒業するまでのリアルなオペレーションやそこで得られたものを知ることが出来たんです。

ここで、リンさんから得た情報を私にも置き換えてみました。そして、「これだったら、私もママ学生になれる。そしてママ学生として学ぶことで、 次の道への一歩に繋がるな」と確信するに至りました。つまり、リンさんこそが私の「フォーカスモデル」となったわけです

そして2016年、リンさんが卒業した慶應大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)に入学。「Policy」「Technology」「Design」「Management」4つの視点から、メディアデザインについて学び、研究活動中です。ちなみに同学年にママ学生は私1人ですが、20代の学生に囲まれて、とても充実した学びの日々を送っています。


▲慶應大学大学院メディアデザイン研究科へ入学した当日の様子

ママ学生から起業へ フォーカスモデル活用術

ママ学生として大学院に通い始めて1年が経った頃、次のキャリアに向けて具体的に考え始めるようになりました。具体的には、「企業に再就職するか、あるいはフリーで独立してやっていくか」。その中で私は、自分の強みを活かして働く=起業したいと考えるようになっていました。

ただここで、また自分の未来像が漠然としていることに気付かされたのです。大学院に通いながら「起業」するとは、具体的にどう言うことなのか。「ママして学生して、起業する」ことは、本当に可能なのか。考えれば考えるほど、マイナス要素や不安なことばかりが大きく膨らんできて、一向に「リアルな未来像」が見えてこない。具体的なモデルケースも周りにいなかったこともありました。

そんな中で、一つの光が射したような出会いがありました。私がママ学生の日常について発信し続けてきたブログの中で、「ママして学生して起業した人が周りにいないので、繋がりたい」と書いて発信したところ、前職の先輩から連絡が入りました。「ママして学生して起業した人を知っているので会ってみるといいよ」と。その方は、東京の国立大学MBAをママ学生として卒業し、現在は広告企画・戦略立案のコンサル会社を起業したミツヨさんという方でした。

ミツヨさんは、普段は香川県を活動の拠点としている方なのですが、連絡をもらった直後、東京出張の際にピンポイントでお会いすることが実現しました。

そこで、ママして学生して起業したリアルな話を様々聞くことが出来たことで、リンさんの時と同じように、「私だったらどうだろうか」と再び自分自身に置き換え、リアルな未来像を描くことが出来たわけです。大学院卒業までにどんな道を歩んだのか、起業する上でどう言うことを意識したのか、起業して良かったと思うこと、大変だと思うこと、などを聞いた上で、自分に当てはめてみること。

その結果、ミツヨさんとお会いした1ヶ月後に「PRプランナー」として起業。これまでのテレビ局報道記者時代の経験を活かしながら、スタートアップの会社や起業家の皆さんの商品・サービスの魅力を社会に発信していくお手伝いをしています。ミツヨさんが私にとって、第二のフォーカスモデルになったわけです。

▲PRプランナーとして活動中の様子

全ての女性が「フォーカスモデル」と繋がる未来に

私自身、一歩先を歩くフォーカスモデルと出会い、自分のリアルな未来を描くことが出来るようになったことで、次第にある思いを抱くようになりました。それは、私だけではなく「全ての人がフォーカスモデルと当たり前に繋がる未来になって欲しい」ということでした。

これは特に女性に当てはまると思うのですが、「社会人」と一言で言っても、結婚や出産、夫の転職や子供のことで、働き方に対する思いが日々変化していくことが当たり前だと思うのです。私自身がそうでした。その変化にどう向き合っていくのか、自分のやりたいこと、実現したい未来にその都度どうやって挑戦していくのか。きっと、一人では解決出来ないであろう大きなエネルギーが必要になるはずです。

そんな時、誰もが自分の一歩先を行く「フォーカスモデル」と簡単に繋がることが出来たら、もっと肩の力を抜いて、未来に向けた次の一歩を踏み出すことが出来るんじゃないのか。本当に自分がやりたいことに、誰もが真剣に向き合うことが出来るんじゃないのか。そんな思いがどんどん膨らんできて、今春から「ワークル」という社会人コミュニティで、ママ仲間達とともに「働くママのためのワークショップ」を開催しています。


▲社会人コミュニティ「ワークル」でのワークショップの時の一枚

最後にお伝えしたいこと

さて、これまで私の「フォーカスモデル活用術」について書かせてもらいましたが、最後に皆さんにどうしてもお伝えしておきたいことがあります。それは、「フォーカスモデル」は決して私の前だけに現れた特殊な存在ではなく、皆さんの過去の出会いの中にも存在しているということです。

私にとってのフォーカスモデルとなったリンさんとミツヨさんは、「いま振り返ればあの人のあの一言が大きかった」という結果論なのかもしれません。それでも未来への一歩に向けて大切なことは、偶然でも必然でも「あの人のあの一言を聞く」、というチャンスを得ることなのだと、私は思っています。言い換えると、過去の出会いを未来への糧にしていくことです。
きっとこの先、自分の未来への選択に迷ったり、次の一歩を踏み出す勇気が持てない時が訪れるはずです。そんな時、まずは自身の過去の出会いや繋がりから、「自分の一歩先を歩くフォーカスモデル」の存在を意識してみてください。そして、「その人に会いたい」という思いを頭の中だけではなく、言葉にして発してみてください未来がほんの少しでも前に動き始める瞬間が訪れるはずです。

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