渡りをやめた「野鴨」は生き残れない!“複業”で時代に合った生き方を ── エッセンス株式会社

渡りをやめた「野鴨」は生き残れない!“複業”で時代に合った生き方を ── エッセンス株式会社

渡りをやめた「野鴨」は生き残れない!“複業”で時代に合った生き方を ── エッセンス株式会社

社員の副業解禁に向けたトライアルの実施に踏み切ったエッセンス株式会社。そこに至るまでの過程について伺った前回に引き続き今回は、社外活動を積極的に行い、副業ならぬ“複業”を実践する、プロパートナーズ事業部マネージャー・島崎さんにお話を伺ってきました!複業家のリアルとは?

島崎 由真(しまさき ゆうま)

エッセンス株式会社 プロパートナーズ事業部マネージャー  2015年、エッセンス入社。プロパートナーズ事業部のプロデューサーとして、文系フリーランサー・上場企業役員OBのシニア人材と経営課題を持つ企業をマッチングする役割を担う。2017年、「One HR」「たいとうパパママ応援隊」のそれぞれを立ち上げ、いずれも共同代表を務める。

第2回
渡りをやめた「野鴨」は生き残れない!“複業”で時代に合った生き方を ── エッセンス株式会社

2つの社外活動を始めたキッカケ

島崎さんは、勤務先であるエッセンスでの仕事以外にも、積極的に社外活動をされていると伺いました。それぞれの活動内容と、始められた経緯について教えてください!

島崎 由真(以下、島崎):主に2つあって、1つ目は「たいとうパパママ応援隊(※)」。こちらは妻と2人で立ち上げた団体なんです。もともと妻とは学生時代に知り合ってから8年間付き合って結婚したんですが、その頃から学祭のステージ企画をやったりしていました。また、それとは別に芸人としてもコンビで漫才をやっていたり、2人でよく変なことをしてたんですよ。

※「たいとうパパママ応援隊」とは、台東区のパパママを応援したい、台東区からすべてのパパママを応援したい、そんな思いから発足した、台東区を中心にした、パパママに役立つ情報やイベントを発信するコミュニティメディアです。

へーー!面白い!!素敵なコンビですね。

島崎:ただ、社会人になってからは仕事も忙しくて、いわゆる普通の夫婦だったんですが、またいつか2人で何かできたらいいねって話していたんです。そんな中、子どもが生まれることになって。自分たちにとっても初めての経験ですし、周りのママ友・パパ友もみんな初めての子育てに困っていたので、何かできることはないかということで団体を立ち上げることにした、というのが経緯ですね。

そうなんですね。その行動力が素晴らしいです! 

エッセンス株式会社島崎由真1

島崎:もう1つは「One HR(※)」という団体です。こちらは昨年、2016年に「One JAPAN」という団体が立ち上がったことに影響を受けて作ったんです。「One JAPAN」は大企業の中で、若手社員がムーブメントを起こしていこうという団体なんですが、その構図がすごく面白いなと思ったんです。

ただ、うちの会社は大企業ではないので参加できない。じゃあ自分の分野で何かできないかと考えた時に「One HR」という発想が浮かんできたんです。HR業界全体と企業の人事担当者を巻き込んでイノベーションを起こしていくことができたら、と。

※「One HR」とは主にHR事業者の若手メンバーで構成している任意団体です。「Innovation by HR」を謳い、事業創出・産業の活性化・個人の成長に繋がる、これからの「個人」と「組織」の関わりカアを、国家・企業人事・個人の3プレイヤーと共に研究・実践・発信する活動を行っています。


そこで、同じくHR企業に勤める麓(ふもと)さんという同い歳の友人がいるんですが、彼の飲み会にHR系の会社の人とか企業の人事が集まっていたので、彼と一緒に立ち上げたいなと思って。それで今年の年明け頃に、メッセンジャーでひと言「One HR立ち上げませんか?」って送ったんですよ。そしたら「ちょうど僕も考えていました!」って返って来て。本当かよ!て思ったんですけどね(笑)

(笑)そのやりとりがキッカケとなって団体を立ち上げられたわけですね。現在はどの位の頻度で活動されているんですか?

島崎:「たいとうパパママ応援隊」も「One HR」も月に1、2回程度イベントをやっているので、そのミーティングを月に2回ほどやって、あとはオンライン上で細かく打ち合わせを行っている感じですね。

エッセンスのミッション、事業が起点となって複業の道へ

エッセンスに勤務しながらも、そういった社外活動も並行して携わられているわけですが、どんな想いでやってらっしゃるのでしょうか?

島崎:うちの会社自体が「新しい、仕事文化をつくる」と言っている中で、社員である自分も新しい働き方に挑戦すべきなんじゃないかと、ミッションに駆られているというのが一つの理由ですね。

あとは普段、私は「プロパートナーズ事業(プロ紹介サービス)」の法人営業をしているんですが、そこでお会いするプロ人材の人たちは、勤務先の仕事をしながら社外でも人脈を構築してこられた方ばかりです。それによって仕事の幅を広げて会社と対等な関係性を築かれてきたんですね。

間近でそういう人たちを見ているので、私も自社の仕事だけをやっていることにある種の“危機感”が芽生えてきたんです。であれば、自分も社外での活動をしていった方がいいと考えて思い切って始めました。

エッセンス株式会社島崎由真2

とはいえ、自社の仕事で一定の成果を収めていないと「そっちで何してるの?遊んでるの?」という話になってしまうので、成果が上がるまでは他で何か団体をやろうとか、そういった発想はありませんでしたね。

副業ではない、“複業”で得られたメリット

これまでに、副業を通じてどんなメリットがありましたか?

島崎:まず、「フクギョウ」という言葉に関してはこだわりがあって、私にとっての「フクギョウ」はサブの副業ではなく、同時並行を意味する「複業」という認識なんですね。優劣・主従関係はなく、どれも重要な仕事です。

それを踏まえて、「One HR」の活動は、まさにエッセンスでの仕事にも深く関わってきます。活動を通じて出会った人がエッセンスの顧客候補や提携先候補にもなったりするので、すごくシナジーが生まれていると感じています。

具体例としては、以前に『複業フェス』というイベントで事務局のお手伝いをさせてもらったことがあるんですね。そこで登壇された人に自社のサービスに登録していただき、その方をプロ人材として実際にニーズのある企業に提案したことがあります。

そういった例が増えていけば、社外での出会いがエッセンスの売上にも貢献することになるので、今後はさらに力を入れていきたいと思っています。

それ以外のメリットでいうと、自分の思考の幅が広がるなとも感じています。「たいとうパパママ応援隊」は、メンバーのほとんどがママさんなんですよね。そこで皆さん、パパを説得して活動に連れてくることに苦労されているようでして。私たち夫婦からすると、夫婦揃って子育てに向き合うのは当たり前なんですが、それが世の中の当たり前になっているわけではありません。

「ワンオペ育児」なんていう言葉もありますしね。

島崎:そうなんです。活動を通じて、そういった現実を知ることができたり、また、ワーママさんや、専業主婦の人といった、エッセンスの仕事ではまず会わないような人たちと接する機会を得られたのも、すごく意味のあることだと思います

エッセンス株式会社島崎由真3

複数の仕事を並行する大変さ

今度は逆に、複数の役割・仕事を両立する上で大変だと思うことはなんですか?

島崎:実際エッセンスでの仕事もすごく忙しいので、他の活動に時間を割くようになると単純に時間が足りなくなります。そこで「どう自分の時間を最適化していくか」という点は、今後も課題になると思っています。

あとは、頭の切り替えもすごく柔軟にしなければならないですね。「そういえば、来週はOne HRのイベントだ!」とか「あれ、来週はどこに行くんだっけ…?」みたいなことがあったりするので、そこをマルチに進めていくのは、すごく大変なことだなと痛感させられました。

島崎さんの活動ならではの苦労などありますか?

島崎:「One HR」も「たいとうパパママ応援隊」も私にとって複業ですが、その2つに所属する他のメンバーにとっても複業なんですね。

と、言いますと?

島崎:会社で勤務時間という規定があれば、例えば、同僚や部下に対しても「この時間はエッセンスのこの仕事をやってね」と言えますけど、「One HR」や「たいとうパパママ応援隊」の人たちに関しては、現状では報酬が発生するわけでもないですし、「この時間帯は絶対にこれをやってね」ということは言えません。

その点でメンバーのモチベーションをどう高めていくか、そのためのビジョンをどう共有していくか、そういったマネージメントの方法に関して、すごく考えるキカッケの一つになったと思っています。

家庭、地域、職場 ── 3つの地域を行き来する働き方

過去、そして現在の状況について伺ってきましたが、続いては島崎さんの未来についてお聞かせください。今後はどのように働いていきたいと考えていますか?

島崎:個人的には、どんな人に対しても何かしらの気づきや新しい情報を提供して、「こんな人間がいるんだ!」と面白がってもらえるような人になりたいと思っています。

それは妻とお笑いコンビをやっていたからかも知れないですが、そんな想いがあって。なので、可能な限り知見を広げて、今後も多くの人と関わって行きたいなと思っています。

エッセンス株式会社島崎由真4▲インタビュー中も終始笑顔が絶えず、サービス精神も豊富な島崎さん

島崎:働き方に関しては、「たいとうパパママ応援隊」のミッションが一番イメージに近いんですが、職場、家庭、地域という3つのフィールドを、みんなで行き来するような生き方ができたら一番ハッピーだなと思っています。

「社会人は3つのフィールドを持て」という話を聞いたことがあると思うんですが、家庭で学べることはあるし、地域で学べることもあるし、職場で学べることもある。最近、面白かったのが、仕事で抱えていた悩みを試しに奥さんに相談してみたら、彼女からの助言で解決したことがあったんですね!

企業単位のオープンイノベーションが話題になってますが、個人単位のオープンイノベーションをもっと増やしていくべきだなと思っていて。自分自身で体現しながら、そういう広がりを作っていきたいと思っています。

これからの働き方は「野鴨の哲学」に学ぶべし

島崎:あと、今後の生き方という点では、最後にこれだけ言っておきたいと思っていることがあるんです。これからは、みんな「渡り鳥」になるべきだと思っているんですね。

要は特定の餌場にずっといるのではなく、他の湖や餌場を求めて探索し続けるべきなんです。元の発想は「野鴨の哲学」というものなんですが。

「野鴨の哲学」?

島崎:これ、実際にあったデンマークの哲学者による話なんですが、湖に来ている鴨に、おじいさんが餌をまいていたら、渡り鳥なのに“渡らなく”なって、ずっとその土地に居続けるようになってしまったんですね。その結果、鴨はぶくぶくと太って、ついには空を飛ぶことすらできなくなったんです。

その後、ある日おじいちゃんが亡くなりました。すると、餌をもらえなくなった鴨は慌てて他の餌場に行こうにも、もう飛ぶことができなくなっているので、結局そのまま死んでしまった…。そんな結末の話なんです。

それは知りませんでした…!

エッセンス株式会社島崎由真5

島崎:実はこれ、IBMの社訓に使われている話で、「Wild Ducks(野鴨たち)」という言葉で表現されているんですね。

この話はあくまでも例えですが、今の、特に大企業には比較的そういう傾向があるなと思っています。「年収うん百万あるし、別に今変わらずに仕事ができればいいじゃない?」って。

そういう組織になって硬直化しているというのが現状だと思うんですが、それだとやっぱりその会社が傾いた時に、他の道が無いために、八方塞がりになってしまうと思うんです。

なので、これからの時代は特に「渡り鳥」の要領で社外活動をしたり、新たな出会いの中で今までなかった知見を貯めていく、そういう行動がさらに重要度を増してくるんじゃないかと思っています。

あとがき

今回の取材を通じて、今まさに働き方が変革している“真っ只中”にいるのだという認識を改めて強く持ちました。

これまでは、ある意味上から与えられる仕事を淡々とこなしていくことで、次の道が用意されていた側面がありました。しかし、これからは自分のキャリアに対しても俯瞰的に見れる視点が必要で、さらに別の分野の情報収集や、新たな出会いにも能動的な姿勢が重要になってくることは間違いなさそうです。

「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である」

イギリスの自然科学者、チャールズ・ダーウィンの言葉がふと頭に浮かびました。

▼今回お話を伺った会社
エッセンス株式会社

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渡りをやめた「野鴨」は生き残れない!“複業”で時代に合った生き方を ── エッセンス株式会社