トンチキなはずがちょっとスポ根入っちゃったので初投稿です。
途中少しだけ三人称視点があります。
この世界に生まれ落ちてしばらくして、走るのが好きなのかどうかと自問自答をしたことがある。
ぼくの価値観の大本は以前の世界のそれだ。運動はそこまで苦手じゃなかったと思うけど、好んでやるほどでもなかったと思う。
生まれ変わった後、ぼくは特に理由も無く走るようになり、疲労が心地よく感じるようになった。
しかしこれは、果たしてぼくの抱くべき感情だろうか。そう思ったのが自問自答に至った経緯である。
――結論から言うと、これは「サバンナストライプ」の感情であると自覚した。
この世界にウマ娘・サバンナストライプとして成立するために、両者の魂は切っても切れないほどに結びついている。
元々、サバンナストライプはJAPAN WORLD CUPでも第一回にしかその出番が確認できない、存在が極めて希薄な
それを受け入れるのにそう時間はかからなかった。手の届かなかったものに憧れる気持ちは分かる。
ただちょっと、なんと言うのだろう。個我や心理状態のベースとなっているのはぼくだから、ウマ娘としての感情の動きがなかなか表面化しないのだ。
走ることが好きだ。勝ちたい、とも思う。けれどそれはそれとして少々冷淡なほどに物事を俯瞰する視点も持ってしまっている。
ネイチャに指摘された覇気が無いというのは、それだ。表面的な「ぼく」の理性が、サバンナストライプの負けん気を包んで覆い隠している。
闘争心は、いつでもグツグツに煮えたぎっているというのに。
さて。
レース開始直後の展開は、静かなものになった。
脚質として逃げを得意とする子がいなかったためか、まずは脚を溜める展開から入る。その間に、コースの外から声が届く。
ウマ娘の聴覚はやたら優れている。レースに集中しつつも、ぼくの頭は同時にそれらを処理していた。
「あちゃー……ストライプ、やっぱりちょっとぼんやりしてる?」
「レース中なのに? ストライプー! シューチューしろー!!」
ターボ師匠は応援してくれて優しいね。でもちょっとやかましいから声は抑えてください。
ネイチャはどうもさっきぼくと話してたことが気にかかっているらしい。なるほど、脚を溜めてるとぼんやりしてるように見えるのか。元々の気質も合わせてそういう風に見えるかもしれない。
溜める。溜める。溜める。
脚を溜める。感情を溜める。普段ぼんやりしてたって構わない。
ぼくは全てを一瞬で出し切るために、いつも「溜め」続けてるだけだ。
シマウマは元来極めて気性の荒い動物だ。体格もサラブレッドより一回り小さく、事実今のぼくの身長は、150cmのテイオーよりまだ低い。いいとこターボ師匠とどっこいどっこいか。二人で並んでると色彩も合わせてイロモノ感がパない。
――残り600m。
シマウマはサラブレッドよりロバに近い。それは、最高速で劣っていてもそれだけスタミナがあるということだ。
そして、シマウマにはライオンの顎を砕き蹴り殺すほどの脚力が備わっている。それを兼ね備えていると言うのなら、やることは単純だ。
胸の奥底で煮え滾る闘志と感情を踏み込みの一瞬で爆発させ燃やす。
そして一歩の踏み込みで最高速に乗り――そのままゴールまで最高速を維持し続ける。
――勝ちたい。勝ちたい。勝ちたい!
絶対に勝つ!!
・・・ ○ ・・・
「テイオー」
あちゃあ、と頭を抱えているナイスネイチャに苦笑を向けるトウカイテイオーに声がかかる。敬愛するシンボリルドルフだ。
彼女の目線はターフを走る新入生たち一人ひとりに向けられているが、中でも熱を持った視線を受けているのは……白と黒に別れた珍しい髪色をしている友人、サバンナストライプである。
「なになにカイチョー、呼んだ?」
「
テイオーは軽く首をかしげた。
ケニア出身の友人、サバンナストライプ。彼女は普段はどこかぽやぽやとしていて、覇気に欠ける印象があった。ノリが良い方であるため気は合うが、ルドルフのように直感にビビッと来るようなモノを持ち合わせているというわけではない。
言ってはなんだが、友人としてはともかくライバルとみなすにはまだ時間が必要な相手、というのがテイオーにとっての印象だった。
「――彼女は海外のウマ娘に特有の才能を持ち合わせているウマ娘の一人だ」
「えっ……」
シンボリルドルフは海外遠征の経験がある。その際の結果は――6着。本人にとっても苦い経験の一つだ。
海外芝に慣れていなかったり、ダートコースを横切る際に足を取られたというのが主な敗因だが、合わせて彼女が悩まされたのが海外ウマ娘の持つ「特殊な才能」である。
テイオーは、ルドルフの言葉を一瞬信じられなかった。しかし次の瞬間、視線の先でサバンナストライプの表情が変わったことで、嫌でもその片鱗を感じ取ることになる。
「ふッ!!」
直後、ストライプの足元が
表情が変わった。覇気の感じられないぼんやりしたそれと打って変わって、闘志と気力に溢れた獰猛な肉食獣のような鋭い表情だ。
「踏み込み一歩でトップスピードに乗った!?」
「……海外のウマ娘は手足が長く、生まれつき我々と筋肉のつきかたが違う。靭帯も異常なまでに強い。時に『バネが入っている』と称されるほどだ」
苦い記憶が蘇る。しかしルドルフはそれを受け止め、情報として昇華しながらストライプの走りを論じた。
広くストライドを取ることで瞬時にトップスピードに乗る走行技術は、初めて見た時は驚いたものだった。一時はその走り方を研究などしてみたが……すぐに分かった。その走り方は日本のウマ娘には根本的に合わない。体型、骨格、体質……生まれ持った遺伝的要素ありきの走り方だからだ。
「――ああいうウマ娘は、走っていると言うよりも、飛んでいるようだと……羽が生えているようだと、形容される」
恵まれた視力で展開の隙間を見抜き、突き抜ける。
結果は、ストライプが差し切り5バ身差の一着。先のレースで頭角を現したスカーレットやウオッカにも負けず劣らずの好走だった。
全員がゴールするのを見届けて、ルドルフは拍手を贈る。今は負けたとしても、諦めなければいずれ勝ち上がっていける。先達としての激励を込めた拍手だった。
「ねえ、カイチョー」
「どうした、テイオー。勉強になったか?」
「あ、うん、それはそうなんだけど」
自信家のテイオーもこれには触発されたか……と思い視線を向けると、テイオーは更に首をかしげていた。
触発されていないわけじゃないし今の走りでいろいろなことを学び取ることもできた。ただ、それはそれとして。
「なんでストライプは後半ずっと尻尾グルグル回してたの?」
「えっ」
ルドルフは走行フォームや技術などに着目していたため余計な情報は自動的に頭から外れてしまっているが、よく思い返してみれば確かにストライプは後半、仕掛け始めてからずっと尻尾を回していた。
(……?)
尻尾はウマ娘にとってもバランサーの一種だ。カーブの時などに逆に振ったりしてコーナーワークの一助にしたりもする。
しかし回したところで脚が早くなるわけもなく、空力学的にも何の意味も無い。チーターがカーブする時に重心を変えるために尻尾を回すという話も聞くが、そもそもストライプが尻尾を回し始めたのは直線だ。
(……???)
幻惑か?
あのしましまの尻尾を回すことで後ろにいるウマ娘を幻惑させる効果があるのか?
イヤ……幻惑じゃない……イヤ幻惑か? 幻惑なのか?
何だアレは?
(……?????)
何のメリットがあってあんなことを?
ルドルフは困惑した。
・・・≠・・・
皆のところに戻ると、なにやらすごく怪訝な表情と傾げられた首によって迎えられた。
え、何コレ。
何で皆微妙に許されなさそうな角度でこっち見てんの。
「ストライプ、ちょっといいか?」
そこで皆を代表してウオッカが前に出た。
「いいけど角度戻さない?」
「ん、ああ。けどストライプ、聞きたいんだけどさ、何でスパートかけてからずっと尻尾回してたんだ?」
「え?」
「ん?」
「何それ?」
「んん?」
いや本当に何ソレ。
ぼくが? 尻尾回してた? 何でそんな非効率的で不合理なことを?
「ナイスジョーク」
「いやジョークのつもりはねえよ!?」
「……え、マジで?」
マジで?
後ろの皆に視線を向けると一斉に頷かれた。
マジかよ。
「無意識だったのかよ!?」
「し……知らなかった……ぼくの尻尾回ってたのか……」
――回っ……て?
回転してる?
「…………ほぉーう」
分かった……的場オーラ的なアレだコレ。絶対サンコンソウルインストールされてるコレ。
最新式アフリカンタービンかき混ぜてくれ命の渦巻きだよコレ。
ぼくは思わず顔を覆っていた。顔から火を吹きそうだ。
「恥っず……」
「もしかしてああすると速くなれる!? ターボもやってみる!!」
「傷を抉ってやりなさんな……」
やめてターボ師匠……ぼくの前で尻尾をぶん回さないで……。
多分それぼく以外誰がやってもマジでただの無意味な動きだから……。
元から人馬一体なので実質常時ペガサスフォーメーションです。
なおストライプは褐色ロリであることを付記させていただきます。
見切り発車だったことを思い出したのでアンケートを設けました。
ストライプをどこのチームorトレーナーさんに突っ込んだ方がいいでしょうか
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スピカ(アニメ要素多)
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カノープス
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シリウス(アプリ要素多)
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桐生院ちゃん任せた
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モブトレさん
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オリジナルチーム(混沌)