早めに投稿しようと思ったら短めになったので初投稿です。
イカれたクラスメートを紹介するぜ!
GI通算7勝かつダービー制覇者のウオッカ!
全出走レースで2着以上という成績を残した通称「ミスパーフェクト」、ダイワスカーレット!
最後の個性派、破滅逃げのツインターボ師匠!
ガラスの脚を持ちながらも二冠を達成した不撓不屈の帝王、トウカイテイオー!
GI未勝利ながらだいたい掲示板入りする抜群の安定感を誇るナイスネイチャ!
もはや説明不要、春の天皇賞連覇の最強格ステイヤー、メジロマックイーン!
以上だ!
だれかたすけて。
……いやね? 分かってはいるんだよ。ウマ娘の名前というのはあくまでひとつの指針。いつもいつもあちらの世界と同じ結果になるわけじゃない。努力と根性で覆すことはできる。アニメ一期のスペちゃんはそう教えてくれた。ぼくだって自分にできる限りは頑張ろうと決めていた。
だからって難易度をインフェルノにしろとは言ってないぞぼかぁ。
デビュー、遅らせた方がいいだろうか。
いや、それは少し軽率な気がする。上の世代には……今の高等部の筆頭ウマ娘はシンボリルドルフ会長だけど、あのひとだけじゃなくオグリ先輩やマルゼンスキー先輩といった傑物が集っている。中等部も期待のホープが数多くいるし、今の環境は人脈を構築するにはうってつけだ。
周りにいるのも当代最強格のウマ娘たち。技術を学び取るには絶好の環境だし、注目度も段違い。必然的にレースにも人が大勢集まり、経済効果も大いに見込める。お金も集まる。活躍できればぼく自身に対する注目も集めやすいし、発言力も高まるかもしれない。
ピンチはチャンス、考え方によってはこの世代こそが最高の
(そう考えると、むしろこの世代と一緒になったのは幸運――――)
悪い、やっぱ
・・・≠・・・
――アレコレ考えてはみたけど、そもそもを言えば今のぼくらはまだ入学したばかりの一年生だ。
入学前でも町内大会みたいなレースこそあるけど、そこまで大規模なものじゃない。ターボ師匠は楽天的で諦めを知らずある意味精神的に完成されているターボ師匠だけど、他の面々は今の所発展途上の段階だ。一番話題性が高いのは、この中ではメジロ家のご令嬢マックイーンだろうか。
ぼくは見ての通りただの一般通過シマウマである。海外出身者も別にトレセン学園じゃ珍しくない。
……の、だけども。
「海外から一人で殴り込みかけるとか……そんなのカッコいいじゃねえか……!」
「おい……何で……ぼくが殴り込みをかけたことになってる……?」
ぼくはどういうわけかウオッカの中で「海外から日本ウマ娘界隈に殴り込みをかけにきたイキのいいヤツ」ということになって絡まれていた。
確かに日本に来た理由はある意味トゥインクルシリーズへの
「殴り込みじゃねえの?」
「じゃないよ……」
「そっかー……でも海外挑戦って響きがカッコいいだろ?」
「それはちょっと思う」
オレより強いウマ娘に会いに行く。
じゃないけど、勇気を持って踏み込んで何かに挑もうとしているひとは、カッコいい。
だろ? と机の前の方でニカッと笑うウオッカがそこまで考えて言っているかは分からないけど。
「海外に挑むからには、どんなレース場があるかも知っておきたいんだよなー。ストライプが知ってるレース場ってどんなのだ?」
「あ、それボクも気になるー」
そんな折、横から割り込むようにテイオーが語りかけてきた。
「テイオーも?」
「うん! 無敗の三冠ウマ娘になったら、海外のレースにも行ってみたいからね~♪」
「お、おう」
……いや、将来的にどうなるかなんてこの世界じゃ分からない。テイオーが無敗の三冠ウマ娘になれるだけの素質は十分、いや十二分と言っていい。
仮に叶わなかったとしても、素質が曇るわけじゃない。ガラスの脚とは言うけど、怪我を克服しさえすれば黄金にも勝る輝きを放つ脚でもある。復帰できれば海外挑戦も決して不可能なことじゃないのだ。
とはいえ……うん、レース場か……。
「けどぼくが知ってるのはンゴング競技場だけなんだよなぁ」
「ンゴ……?」
「あははっ変な名前!」
「ケニア唯一のレース場なんだよ。芝一周2000m、100年以上の歴史があるんだけど……赤道直下だからね、湿気が少ないから芝が乾燥してる感じがあるよ」
「へぇ~……」
通年でレースがあるわけじゃないこととか、ダートコースが無いこととか……日本と比べても違う部分は多く見受けられる。
「ダートコースは無いんだけど……海外転戦を視野に入れてる子が多くてね、海外だとダートが盛んでしょ? 練習も、そっちに力を入れてる子は多かったよ」
「ストライプは?」
「どっちもできるようにしてた」
「ええー? どっちつかずは中途半端でカッコ悪いぜ?」
「どっちもできたらカッコよくね?」
「言われてみれば確かにそれも……ちょっぴりカッコいいじゃあねえか……」
いいのかよ。
ちなみにぼくがダートを走れるのは単にシマウマソウル的なアレだ。
「いやっ、でもオレにも夢があるからな! ころころ言うことを変えるのはカッコ悪いぜ」
「そうだね。一つの道を極めるってカッコいいと思う」
「だろ?」
というか、ぼくのは生まれ持った性質によるところが大きいってだけで、普通にやる分には芝・ダートの両刀よりもどちらかに割り切ってトレーニングした方が効率がいい。それぞれで足元の滑り方が違うのだから踏み込み方も違うし、脚に伝わってくる感覚も全く違う。込める力も変わってくるから脚そのものにかかる負荷の質も別物になるので、怪我の心配も常に付きまとう。また、更に海外の芝は日本の芝と感覚が微妙に変わる。海外遠征に出たウマ娘が勝ちにくいというのはこのあたりが原因であることも多い。芝の植え方や生え方、根の張り方が全く違うので、思ったように実力が発揮できないわけだ。
……中にはダート→芝→海外芝→ダートというローテーションでGIを4連戦してその全部で勝利したアグネスデジタル先輩というウマ娘もいるのだが。彼女はその異次元のローテーションのせいで天才というより変態という呼ばれ方をすることの方が多い。あのひとの足どうなってんだ。
ともかく、ぼく個人は分野に特化したプロフェッショナルもカッコいいと思うし、器用に色々こなせるのもカッコいいと思う。それぞれ違う良さがあるんだよね。汎用量産機いいよね……と思う人もいるし尖った専用機いいよね……と思う人もいる。ぼくはどっちもだ。
話が逸れた。
「テイオーは三冠を目指すならクラシック路線だね。チームは決めた?」
「う~ん、考え中。カイチョーのいるリギルもいいなーと思うんだけど……」
あ、リギルあるんだ。
じゃあスピカもあるなこれ。
「ちょ~っと窮屈そうなんだよねぇ」
近くの席でネイチャが「うわこの子あのリギルに当然入れる気でいるよ……」みたいな呆れ混じりの苦笑いを浮かべている。
前情報が無いとそうなるよね。わかる。あのチーム加入条件絶対やべーもの。
一方でテイオーの言うことも分かる。リギルのトレーナーのおハナさんはかなり厳格な指導者で、トレーニングも徹底的に管理しているとのこと。
アニメを見る限りあの厳格さはひとえに担当するウマ娘たちへの強い愛情ゆえのこと。リギルに入部できたウマ娘たちは一流の指導者のもと才能を開花させ、数々の重賞を制覇し名を残している。それも全員だ。同時に、ウマ娘たちの体を想い組み立てられているメニューは徹底して管理されているため、若干融通がきき辛い。比較的奔放な気質のテイオーにとって窮屈なのはその通りだろう。
「ストライプはどうするんだ?」
「採ってくれるところがあればいいなぁ」
「欲が無いねー」
金銭欲は人一倍やぞ。
多くの感想、評価いただきありがとうございます。たいへん励みになります。
申し訳ありませんが本作においては基本的に感想への返信は行わない方針としておりますのでご了承ください。
もしご質問等をいただきましたら次の話のあとがきやまえがきなどに回答などを記載させていただく予定です。