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エンタメ 2022.08.22

A.B.C-Z編 第4回 五関晃一「ダンスだけで終わりたくないから、次のステージをめざせた。」

今年、創刊70周年を迎えるアイドル誌「MYOJO」。それを記念して本誌での好評企画である、10000字ロングインタビュー『僕がJr.だったころ』のテキストをMYOJO公式ホームページにて、8月22日~9月21日まで期間限定公開する。Kis-My-Ft2、A.B.C-Z、Hey! Say! JUMP、中山優馬、ジャニーズWEST、SixTONES 、Snow Man、King & Prince(MYOJO本誌での掲載順)のインタビューを特別に集英社オンラインでも同時公開。キラ星のような珠玉のインタビューたちをどうぞ。

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ダンスだけで終わりたくないから、次のステージをめざせた。

10000字ロングインタビュー『僕がJr.だったころ』
A.B.C-Z編

第4回 五関晃一

ごせき・こういち
1985年6月17日生まれ。東京都出身。A型。身長165cm。
1998年6月20日、ジャニーズ事務所入所。
2012年2月1日、A.B.C-ZとしてDVDデビュー。

※このインタビューは、MYOJO2013年10月号に掲載されたものに、加筆・訂正したものです。

オーディションで、いつもダンスのお手本とされてきた。
そんな“Jr.の教科書”は、皮肉にも最長のJr.歴を経験し、
最年長デビュー記録を更新することになる。
メンバーも謎だという、不屈の男の素顔とは…?

地獄だった幼稚園のお遊戯会

──メンバーですら、「ミステリアスな男」って言ってたよ。自分のこと話すのって苦手?

「うーん、話さないわけじゃないんです。聞かれないだけで(笑)。聞かれたら何でも話します」

──じゃあ、今日は、たくさん聞きます(笑)。

「はい。ホント、言われるほど自分を偽ってるわけじゃないし、わざわざミステリアスなキャラを演じてるわけじゃないんで。本当に自己表現をしないんで、謎なんでしょうね」

──自己表現が苦手なのは昔から?

「そうですね。小さいときから、家族だったり、ずっといっしょに遊んでた幼なじみだったり、限られた人の中ではヤンチャでしたけど。小学校…いや幼稚園から、もうすでにクラスの中では静かでしたね。シャイというか、自分の殻を破れなくて」

──幼稚園くらいからなんだ。

「なんででしょうね? 幼稚園のときの、なんか恥ずかしくて、“わ、ヤだな”っていう思い出、けっこう残ってます」

──たとえば、どんなこと?

「いちばん、イヤだなって思ったのが、お遊戯会。先生が作ってくれた衣装を着て、男のコと女のコでペアダンスをしたんです。女のコは、お姫様役の衣装で、男のコはミッキーとか、ピーターパンとか、いろんなキャラの衣装があって。ピーターパンが大人気だったんで、やりたい役を投票して、ひとつのキャラ3人まで、それ以上の希望者がいたら、ジャンケンで決めるってなって」

──どのキャラを選んだの?

「友だちふたりと、“ピーターパンには、たぶんなれない。3人で、いちばん人気のない狼男にしよう”って。で、ふたを開けたら友だちふたりがピーターパンに入れてた(笑)」

──ハハハハハハ。

「狼男は僕ひとりで決定しちゃって。しかも、男子がひとり少なかったから、僕がセンターで女のコふたりと踊るみたいな。それが、すっごくイヤでしたね。練習も本番も全部恥ずかしかったです。もう地獄でした」

──今、ダンスといえば五関くんの名前があがるのに、ダンスの原点がそんなところにあるなんてね。

「あ、でもダンスの原点っていったら、2才のときですね。ずっとマイケル・ジャクソンのビデオを見て、マネして踊ってたらしいです。お母さんと叔母が、マイケルが来日した東京ドームのコンサートに行って、僕は、お母さんにずっと肩車されてて。そのときのライブビデオを、いつも見て踊って。うちの親戚の中では、何かで集まったときは、俺にマイケルを踊らせるってのが恒例になってたらしいです」

──小学校時代もシャイだった?

「それが、近所の幼なじみで殻を唯一破れるヤツがいて、そいつと5年生のとき初めて同じクラスになったんです。そいつ、ものすごく社交的なんで、いっしょにいるうちに友だちが増えて、殻を少し破れるようになった感じですね。たぶん、いちばんモテてたのも5年生です。バレンタイン、けっこうもらってました」

──そのころ、夢ってあった?

「けっこう、まわりに左右されるタイプだったんですよ。幼なじみがコックさんになりたいって言ってたんで、俺もコックさんになりたいって」

「めっちゃかわいい」「絶対受かるよ、あのコ」

──じゃあ、ジャニーズに応募した経緯は?

「僕、2回応募してるんです。1度目は、5年生のときにちょうど、お姉ちゃんが『8時だJ』にドハマリしてて。子ども部屋がいっしょだったんですけど、部屋中、タッキー(滝沢秀明)と(今井)翼くん、今の嵐の人たちのポスターでいっぱいで。最初は壁だけだったんですけど、そのうち天井にもポスターを貼るようになって。寝るとき、タッキーと必ず目が合ってました(笑)」

──ハハハハハ。

「『8時だJ』のエンディングで、『Can do! Can go!』をJr.のみんなで踊ってたんですよね。それを見てマネして踊ってたんです。遊び半分で。そしたら姉ちゃんが盛り上がっちゃって、履歴書を送るって、全然パジャマだったんですけど写真を撮って(笑)。でも、そのときは、何も返信がなくて」

──そうだったんだ。

「2度目は、6年生の卒業ちょい前くらいに、親友と“もうすぐ中学だから、その前に思い出残そう”ってなって。クラスのイケメンを誘って、3人で履歴書を送ったんです。したら、すぐ返事が2通来て。5年生のときに送ったのと、友だち3人で送ったやついっしょに。“オーディションがあるんで来てください”って。うれしくて友だちに報告したら、友だちふたりには返事が来てなくて、僕だけ来てた。だから、その時点で僕の中ではジャニーズは、もうなかったんです。友だちと思い出作りのために送ったんで」

──オーディションを受ける気はなかったんだ。

「なかったです。でも、やっぱ家族はうれしいじゃないですか。姉ちゃんなんかすげー浮かれてたし(笑)。オーディションの日、履歴書をいっしょに送ったヤツと公園で遊んでたら、姉ちゃんが走ってきて、“あんたオーディションだよ!”って。僕は“行かない”って言い張って。友だちもいるのに、その話すんなよって思ってて。したら、お母さんも来て、“人生勉強として行きなさい”ってムリやり、クルマに乗せられたんですよ」

──ムリやりだったんだ。

「はい。会場の手前から女のコたちがブワッといて。うわ、ここひとりで歩きたくねえーって、うつむいて歩いてたら、“え、めっちゃかわいい”とか“絶対受かるよ、あのコ”って声が聞こえて。“え?”って思って、チラって顔を上げたら、目線が僕じゃないんですよ(笑)。視線の先を見たら、2〜3m、僕の後ろを歩いてる人に言ってて」

──へえー。

「そのあと僕も、2、3人に“かわいい”って言われて。それまで、かわいいって言われることなかったから、すっげー不思議な感覚でした」

──受かると思った?

「やるだけやろうと思って。いきなりダンス審査が始まって、振りつけ師さんが、“いちから教えません。見ておぼえて”って言うから、厳しーなー、ムリだよって」

──踊れた?

「後ろにいちゃ見えないと思って、前に行ったんですよね。ここなら見えるって、ジーっと見てたら、『8時だJ』のエンディングのステップをやったから、“あのステップだ!”って。あのステップを教えてもらえるって思ったら楽しくなっちゃって。その間にひとりひとり呼ばれて面接したんですけど、受かる、受からないじゃなくて、とにかく楽しかったですね。したら、次の日曜日にレッスンがあるんで来てくださいって言われて」

──呼ばれるようになったんだ。

「でも、やっぱ友だちと遊んでるほうが楽しかったんで、親に“レッスンに行くのヤだ”って言ったんです。で、日曜日、また同じ友だちと遊んでるとこに、お母さんが来て。“ヤダヤダ”って駄々こねてたら、友だちが“行ってこい”って言ったんですよね。“俺らはダメだったけど、おまえは、俺らのぶんもがんばってこいよ”って」

──友だちの言葉で、レッスンに行ったんだ。

「はい。今、思い返せば、そのひと言ってすごく大きくて。友だちが、そう言ってくれなきゃ、何も始まらなかったなって」

ホントにテレビで見てた世界にいるんだ、俺

──レッスンは、どうだった?

「大変だったけど、控室にいたら、シャツをなびかせながら翼くんとタッキーが入ってきて。すっげー、オーラが出てて、“うわっ、ホントにテレビで見てた世界にいるんだ、俺”みたいな。なんか衝撃でした」

──テレビやポスターで見てた人が、目の前にいるわけだからね。

「姉ちゃん、タッキーから入って、次に山P(山下智久)のファンになって、最終的に松本潤くんのファンになったんです。“姉ちゃんの好きな人だ”みたいな感じで、その3人にはなぜか、すごく親近感があって。NHKでやってた『MJ』って番組の楽屋で、山下くんがJr.にバック転を教えてたんです。Jr.っていっても、僕より全然先輩のJr.に。ホント、なんかわからないけど、いきなり僕もそこに行って、山下くんに補助してもらってバック転の練習したんですよね」

──それ、すごいね。

「はい。あと、いつくらいだろう。潤くんが楽屋の前で、なぜかさくらんぼを洗ってて。洗ってる潤くんを、横に行ってジーっと見てたら、“食べる?”って言ってくれて、ひとつもらったんです。なんで、そんな大胆な行動がとれたか不思議ですね」

A.B.C.結成。“なんで後輩のグループに……”

──塚田(僚一)くんが受けたオーディションでは、ダンスのお手本だったんだよね。

「振りつけ師の人が、“わかんなかったら五関を見ろ”って。ちょっと気まずかったです。そんなに注目しないでくれよって思ってました」

──自分ではダンスが得意っていう意識はあったの?

「うまい、ヘタって、また別問題だと思うんですけど、与えられた課題をおぼえるのは確かに早かったですね。お手本と同じように動くことは、得意だったかもしれないです。まあマネですよね」

──それを才能って言うんだと思うよ。

「今でもたまに、藤ヶ谷(太輔)がJr.時代のこと話すんです。すっげーしんどいレッスンのとき、やっと振りつけ師さんが、“OK、休憩”って言ったんで、みんなバーって後ろに水を飲みに行ったら、“何してんだ、おまえら。今、俺が休憩って言ったのは五関だけだ!”って怒られたよなって(笑)。俺ひとり休憩するなんてできないんで、俺も戻って練習再開して。“五関だけ特別待遇だったよな”とかって、今でも冗談半分で言われますね」

──じゃあ、2000年にA.B.C.が結成されたけど、どんなグループに見えた?

「うーん、後輩のグループのひとつくらいにしか見てなかったです」

──そのA.B.C.に加入することになったのが2002年。

「複雑でしたね。いろんな想いがあったけど、いちばん大きかったのは……屈辱だったかもしれない。もっと上の人たちと組みたいのに、なんで後輩のグループにって。何回か、Jr.をやめたいって思ったことありましたけど、いちばん強く思ったのは、A.B.C.に入ることになったときかもしれないですね」

──そうなんだ。

「ホント、今思うと自分のせいなんですけどね。なんかいちばん天狗になってたというか、腐ってた時期というか。『ザ少年倶楽部』の、エンディング曲で専属のバックみたいなポジションだったんです。それが、なんかイヤで。手抜いてたっていうかね。当時のビデオ見返すと“クソだなこいつ”って思います。何を勘ちがいしてるんだろうって。よく生き残ってるなってくらい」

──腐った理由って?

「うーん。……仲よくしてたJr.が身長も伸び始めて、カッコいい曲とか大人っぽい曲に出始めたんですよ。だけど僕は背がちっちゃかったんで、そういう曲に選ばれなくて。ちっちゃいコたちの曲のいちばん前とか。それがたぶん大きかったです」

──俺にも、カッコいい曲をやらせてくれよと。

「うん」

──そう考えてたなら、後輩と組まされるのは余計に悔しいね。

「でもホント複雑で。ちょうど、(堂本)光一くんの『SHOCK』に出させてもらったころが、僕がA.B.C.入るか入らないかくらいの時期で。『SHOCK』の千秋楽が午前中で終わって、みんなその後に取材が入ってたんです。A.B.C.の3人も。俺はA.B.C.に入るって、はっきり決まってないから取材がなくて。ひとりで帝劇を出て、まっすぐ帰って。すっげー悔しいし、恥ずかしくて。だから、やっぱグループって大事だなって想いもあって」

──その後、NEWSやKAT-TUNがデビューしていくよね。

「NEWSは特に複雑でした。先輩の山下くん、錦戸(亮)くんがいるにしろ、ほかがもうホント後輩だったんで。手越(祐也)なんか入ったばっかだったし。増田(貴久)がいちばん近かったのかな。小山(慶一郎)とはいっしょのグループにもなってたし。NEWSのデビューイベントも出させてもらったんですけど、正直すげー悔しかったです」

──いつか、A.B.C.でデビューという想いは?

「僕ら、すっごいバックで使ってもらってて。でも、たぶん4人が4人とも思ってたんじゃないかなって思うんですけど、A.B.C.では、デビューできないんじゃないかって」

──そうなんだ。

「感じてたんじゃないですか。たぶん。グループって感じも、それほどなくて。思い返すと当時、“メンバー”っていう言葉を使ったことがないですしね。ここから抜け出したいとか、抜け出してやるっていうのが、いちばん大きかった気がします」

──仲が悪いわけじゃないよね?

「仲はめちゃくちゃよかったです。でも、先を見たとき未来がまったく見えなかったんで。みんな器用だったから、踊りおぼえるのは早かったし、うまいし。だから、すげー使ってもらってたんですけど、どれもバックの仕事だったんで」

──バックはバックだと。

「“一生バックで終わっちゃうんじゃないか”って思いが強くて。ひとつひとつの仕事が、次につながってるなんて考えられなくて。タッキーとかのソロコンや、舞台に出始めてからですね。ただのバックじゃないんだ、自分たちが出る意味、出るからには何か残したり、次につなげようって考えを持ち始めたのは」

変化や進化じゃない。この5人でA.B.C-Zなんです

──2007年のHey! Say! JUMPのデビューはどう思った?

「“平成”ってついてたのがデカかったですね。キスマイもそうだけど、あきらめたわけじゃない。だけど、もうムリかなって思いもあって。いろんな声も聞こえてきたし。A.B.C.とキスマイは、もうないねとか。それが、すげームカついて。なんでねーんだよ。ふざけんなよって。でも、どっかやっぱ、デビューって夢が明確に見えなくなっちゃってて」

──Kis-My-Ft2とは、どういう関係だったの?

「キスマイは、もう単純に仲よくて。うーん、でもやっぱおたがいを見てたというか、意識してた部分はあったなと思いますね。キスマイが『ザ少年倶楽部』とかで新曲を歌ったら気になったし、あせったし。逆に俺らが新曲やったときは、向こうも同じこと思ったはずだし。でも、こっちはこうだよって感じで、見せ合ってた部分もありますしね」

──そして2008年、橋本くんの加入があった。

「初めてって言っていいくらい、僕たちのまわりが動き出した感じがしたんですよね」

──動いた?

「初めてバラードの曲もできたし、初めて社長が演出してくれたり。なんか、なんかね、周囲が動き出すというか、そんな感覚がありました」

──なるほど。

「難しい部分もあったんです。A.B.C.のファンは、橋本が入ること、どうなのって思っただろうし、橋本のファンは、“なんでA.B.C.に?”って思ったと思うんです。“大丈夫かな?”って僕も一瞬思ったんですけど、河合が言ったんですよね。“これマジやったね”って。いろんな意見があって当然。でも、こんなに俺たちのことが話題になったのは、チャンスだ。これからパフォーマンスで納得してもらえればいいんだからって。5人だってことを見せつけようって」

──誰にも文句言わせないぞと。

「はい。4人+1人じゃない。変化や進化じゃない。“俺たちは、この5人でA.B.C-Zなんです”って、見せたかったです」

──橋本くんの印象はどうだった?

「根性ありましたね。おぼえることだらけで、頭パンパンだったと思うんです。でも、あいつは弱音を吐かなかった。それこそ、結成当初は、河合に何回も何回も怒られたけど。あいつの中に、ダンスだったらごっちっていうのがあったみたいで、ダンスでわからないとこは、絶対僕に聞いてきたんですよ。教えるからには、ちゃんとできるまでやめさせなかったし、あいつもやめなかった。おぼえる量が、どんだけ多くても」

──とはいえ、葛藤もあったんじゃない?

「まあ、橋本がメインボーカルってことは、ちょっと悔しさというか、ありつつも。でも、やっぱそんなちっちゃなことより、ついに動き出したっていうのがうれしくて。腐ってる場合じゃないって」

──なるほど。

「だいぶたって、北山(宏光)とメシ行って、そのときの話とかしたら、北山も“あせった”って言ってましたもんね。橋本が入ったとき、ちょっとヤベーな。うかうかしてらんねーな。A.B.C-Zのグループ感が外から見てて伝わったって」

──ただ、そこからすぐにデビューとなったわけじゃないよね。

「はい。でも、橋本が入ってからはホント、グループというか、A.B.C-Zとしての自信があったんで。もう信じて進むだけだなっていうのがいちばんデカかったですね。橋本を含め、誰ひとりA.B.C-Zをあきらめてるヤツがいなかったんで」

人生で自分がなんもできなかったベスト1

──2011年の『PLAYZONE』。河合くんが、舞台上でケガしたとき、腰を抜かしたらしいね。

「動揺しましたね。みんな対応が、すごく素早くて。ケガしたってわかった時点で、とっつーがまず、“ケガしたから、止めて!”って、すっげー大声で指示を出して。橋本はもう、河合にずっと声かけてて。俺、なにができるだろうってなったときに、塚ちゃんが、“運ぶ”っておんぶして。俺はもうテンパって、みんなの行動に全然追いつけてなくて。結果、声すら発してない(笑)」

──人生で、トップ3に入るくらいの失態?

「そうですね。人生で自分がなんもできなかったベスト1です。悔しかったですね。メンバーですよ。メンバーに何かあったとき、支えてあげられるのがメンバーじゃないですか。それができなかったっていうのは、悔しかったですね」

──病院に行く前、河合くんと言葉は交わした?

「出番が終わって、リハ室に帰ってきて、僕は河合の荷物まとめたりして。顔色も真っ青だったし、フツーに会話できる状態じゃないのもわかったんですけど、逆の立場だったら、“大丈夫か?”って心配されたくないだろうなと思って、“これは持ってくの?”って荷物をまとめながら、“こっちは大丈夫だよ。ステージのことは気にしないでいいよ”って話をして」

──その1年半後、『ジャニーズ・ワールド』で、今度は塚田くんがステージ上で脱臼したよね。

「俺、塚ちゃんのシンメだったんです。バッと俺の視界に入った瞬間、変な動きをしたんですよ。“あれ?”って思って。5人で上手に移動したとき、かがみながら舞台袖に走っていったんです。で、袖で倒れて。ただごとじゃないなと思って。すぐ袖からスタッフさんが、“ごっち、塚ちゃん出られないよ”って伝えてくれて。でも、舞台は続く。誰かが塚ちゃんのセリフを言わなきゃいけない。とっつーは役的に言えない。よし、俺が言わなきゃって。山田(涼介)が1コーラス歌い終わって、みんなで動き出すんですけど、塚ちゃんのセリフ、あのタイミングでこう言ってたとか、目をつぶって思い出してて。したら、トンって橋本が後ろから肩叩いて、“塚ちゃんのセリフ、ごっちやる?”って。“俺やるから大丈夫だよ”って返事したら。“オッケー”って戻ってったんです」

──そうだったんだ。

「で、河合が同じこと考えてたら、セリフがかぶっちゃうから、塚ちゃんのセリフの一瞬前に、前に出て、河合に“俺、言うよ”ってアイコンタクトして」

──河合くんは気づいた?

「うん」

──すごいね。塚田くん、「みんな、ほかの人のセリフ言えます」って言ってたけど、簡単じゃないよね?

「橋本も、河合も、とっつーも、全員のセリフ、言えたと思いますよ。塚ちゃんだけは、自分のセリフしか、言えないと思うけど(笑)」

北山が更新して、速攻抜かしてやりました (笑)

──前後しちゃうけど、2011年12月にデビューが決定したよね。

「『ABC座』の記者発表の打ち合わせのために、事務所に呼ばれたんですよね。で、渡された書類に、社長の手書きで“DVDデビュー”って書かれてて。記者会見の打ち合わせをしながら、その文字をチラッチラッ見て(笑)。“デビューだよ”って、はっきり言われなかったんで、半信半疑でしたね」

──実感するのはどのタイミング?

「記者発表のときの周囲の反応でしたね。カメラマンさんやライターさん、すげー感動してくれて。長かったぶんっていうか、ホントちっちゃいときから、僕たちのこと知ってる人たちが大勢いて。“俺、泣いちゃったよ”とか言われたんですよね」

──個人的には、デビュー最年長記録だったんだよね。

「そうなんです。北山が更新して速攻抜かしてやりました(笑)」

──この記録、テレくさい? それとも誇らしい?

「うーーーん、まあテレくさくはないけど、自慢げには言うことじゃないなってのはあります(笑)。最年少だったら全然ねえ、言えるんですけど。でも、Jr.時代が長かったぶん、いろいろ気づけたことってあるなって。それこそ入った当時は、先輩のコンサートに出て、自分のうちわを数えて、“おまえ何枚あった?”くらいの意識でやってましたから。だけど、ある日、気づくんですよね。あの日、あの会場で、うちわを振ってくれた人、誰が欠けても、今はなかったんだなって」

“どんなのがいいの?” “ごっちっぽいやつ”

──今、グループのダンスの振りつけもしてるよね。こだわりはある?

「やっぱ個性もあるけど、よりお客さんに見やすいようにっていうのはありますね」

──橋本くんのソロ曲の振りつけもしてるよね。橋本くんの場合は、どんなことを考える?

「まず本人に、“どんなのがいいの?”って、いろいろ聞くんです。でも、あいつ“ごっちっぽいやつ”しか言わない(笑)」

──完全にお任せなんだ。

「やっぱ自分もソロがあるわけで。前々から、この動きしたいなとか、こうつなげたいなっていう動きが頭の中にストックしてあって。それを全部、橋本にもっていかれます(笑)」

──とっておきを出しちゃうと。

「そう。“ごっち、お願い”って言ってくれてるぶん、なんか僕も気合入っちゃうんでしょうね。だからアイデアがつきて、自分の振りつけがいちばん時間かかる」

──いつか、ほかのグループの振りつけをしてみたいって思わない?

「やってみたいですけど、難しいなって思いますね。振りをつけるときって、まず曲を聞きまくるんです。で、頭の中に出てきた動きとかフォーメーションを組み立てていく。そのとき、頭の中で踊ってるのは、A.B.C-Zの5人なんです。クセも、特徴も、全部、わかる。あいつはカッコつけるとき、こうするとかって部分まで(笑)。意識して見てたわけじゃないけど、自然と見えちゃうというか。やっぱこの5人でグループなんだなって改めて思いますね」

──ずっとダンス優等生だった。でも、それとデビューできるかは別だよね?

「ですね。ダンスだけで、バックのままで終わらないっていうのは、やっぱりずっとありましたよ。だから、悔しくても次のステージをめざせたんだと思います」

──なるほど。

「でも、それは僕だけじゃない。A.B.C.4人、そして橋本。デビューすることを誰もあきらめなかった。だけど、僕たちはまだ何かを成し遂げたわけじゃない。始まったばっかなんです。だから、これからもずっと5人で走り続けようと思います」

取材・文/水野光博

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